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出版社に関するケーススタディメモ

どこに書くのか悩んだのでこの場をお借りします。マイナビ出版の角竹さんがシェアしてて、DXコンサルの端くれである自分も非常に興味を持ったので、何が起きているのか自分なりに言語化しておきたいと思いました。

こちらの記事および、takaiさんが現在担当されているyoiをざっとみました。

自分は出版社のビジネスモデルはあまり知らないのですが、絵や字でコンテンツを書く人がいて、編集者が紙にパッケージし、取次を通じて書店に売る。再販制度があるので価格は全国均一。ただし10年ほど前からデジタル化がはじまりWebとの境目があいまいに。という程度の認識です。あとこちらのyoiというサイトのコンテンツ自体について言及するつもりも能力もありません。

流通の変化→役割の変化

どういう切り口でメモしていくか迷いましたが、まず大きなポイントとして紙の流通からデジタルの流通になった、ここでいう「流通」とは、コンテンツが生まれるところから読み手に届くまでの経路という意味です。

  • 紙の場合

    • Wordで書く→InDesignで割り付ける→校正複数回→校了(ここからはいじれない)→印刷→取次→全国の書店→購入→読む

    • ここまで週刊誌なら1週間、月刊誌だともうちょっと長いかな。もちろん準備に長くかかる企画・タイアップ・広告などはあるでしょうが

    • 届けられるものは、文字と絵と物理(おまけのトートバッグとか)

    • すでに一定の客足がある書店という場所に並べてもらう

  • デジタルの場合(yoiを見ながら)

    • CMSで書く→校正→公開→訂正や差し替えなど

    • コンテンツが書きあがってからへたすると数分で読まれることも

    • もちろんパッケージングも可能(kindle / DVD )

    • 届けられるものはデジタル全般、文字、絵、音声、動画、ソフトウエア、物理も個別配送は可能(EC)

    • 自分たちで店を運営し、一定の客足があることに広告を打つこともあればパッケージングを委託することもある。

大きな違いとしては、デジタルといっても単に書籍が電子書籍になるだけではなく、ダイレクトに読者(視聴者)と接点を持つところまでが出版社の役割となったということです。いや、別に出版社が担う必要があるわけではないのですが、書店側でそんなことをしているのはAmazonぐらいなので、出版社がそこにプレーヤーとして進出するのは自然な流れでしょう。
これは服飾や食品、化粧品などのメーカーがD2Cなどといって直販に踏み出す流れと同じといえるでしょう。

しかし、ポップアップストアというたとえはとてもしっくりきました。チャネルが細分化されるんですよね。デジタルって。しかもそのチャネルごとの集客ノウハウみたいなのもあって、戦術・兵站のスキルが戦略に影響しやすいというか。

やることは増えたが、やりやすくもなった

yoiを見てみると、もちろんトップに雑誌のような「記事」はあるものの、やっていることは手広くEC、漫画、動画、ポッドキャスト、占いなど多岐にわたります。おおよそ旧来の「編集者」の仕事ではありません。

服飾であればアートディレクターのような人かもしれません、食品ならパティシエかもしれません。そういった人たちに「ECも動画もよろしくね!」みたいになるという、これはとってもDXですね。Dのほうではなくトランスフォーメーションのほうです。事業自体が変革してしまっています。

そういう個人の役割の話の前にシステムに戻りましょう。やることが増えて「大変だな」と思う一方でやりやすくもなったといえます。大昔なら動画を提供するとなれば、撮影機材を100万円ちかくかけてそろえ、何人ものスタッフが編集し、DVD工場でプレスしたものを雑誌の印刷会社に送って巻末付録にしていたわけです。

それが、14万円のiPhoneと1,2万円のマイクで収録でき、編集もiPadで簡単に行えて、Youtubeに無料でアップして配信できるようになりました。ECだってそうです。PCI DSSの何たるかを知らなくてもクレジットカード決済がついたレンタルECシステムが月数千円で借りられ、何ならモバイルアプリも月数万円で既成のものは作れるようになったのです。

個人とそれを抱える組織はどうすればいいのか

さて、流通が変わり流れるお金がデジタルシフトしていき、これまでとは違うスキルセットが求められるようになりました。もちろん大きなくくりで言えば、出版社は世にコンテンツを届ける会社であり(違ったらすみません)変わっていませんが、必要なスキルセットの割合は変わっているわけです。

経営層も、デジタルシフトしたほうがいいのは経営の肌感で分かっているわけですが、自分はやったことないのでどう指示していいかわかりません。そりゃそうです。現場のリーダークラスも従来のビジネスモデルで経験を積んだ人たちばかりなので、新しいビジネスモデルではひよっこになってしまいます。先に言った戦術・兵站が戦略に影響しやすいというのはそういうことです。

わからない経営層と、わからない従来のビジネスモデルでのリーダーが集まって新しいビジネスを立ち上げるのですからそれはなかなか打率も上がりません。しかし従来のビジネスモデルはジリ貧になっていくのでやめるわけにもいかない。そんな苦悩が日本中のDX現場で起きています。

もしかすると、個人の時代は組織人に不遇なのかもしれない

デジタルのおかげで、何の組織の後ろ盾もない個人が何でもできるようになりました。iPhoneとMacがあれば、自主製作映画を撮ってYoutubeに投稿し、ショート動画やTikTokで関連動画を出してオリジナルグッズを制作してECで販売して、、ということができてしまう時代に、企業は、そこに所属する組織人は何をすればいいのでしょうか。

2つあると思います。

ひとつは、デジタル時代の読み書きそろばんを構成員に教育し、だれもが自分のコアスキル以外にSNSやECをある程度扱えるようにすることです。そのためには、社運をかけたプロジェクトではなく、一見お遊びに見えるような実験プロジェクトを何百回も人を変えてやることです。外に出さなくてもイントラでも部活でもいいです。「かっこいい動画は作れないけど、パワポを書き出してスマホの動画アプリでエフェクトかけた動画をアップするくらいならできる」という一般社員を増やすのです。

エクセルマクロは書けないけど、書類の送付状をWordでテンプレ活用して作ることはできる。みたいなイメージです。社会人なんだからその程度知っておこうぜってやつです。いまならChatGPTが何でも教えてくれます。

もう一つは、企業として、個人が活躍できるプラットフォームを作る側に回るということです。Tシャツやキーホルダー工場とのつながりを生かして、個人が安価・小ロットで発注できる仕組みをつくることでオリジナルグッズの大衆化を実現したり、さらには販売までできるようにしたり。

先のデジタルで流通の流れが変わったと書きましたが、なにもその流通を利用するのは自社だけではありません。個人だって利用したいはずなのです。もちろん企業のようにクオリティが担保されたものではありませんが、その分数千倍の個人が集まれば、その中からスターは生まれてくるはずですし、育成だってできるはずです。

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今回は出版社の仕事ってもうこんなに変わっているんだという驚きを自分の仕事と絡ませながら考察してみました。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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