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小規模SaaSは980円の値付けをしてはいけない

こんにちは、これはおまけ回です。友人が一連の投稿をみて、値付けについても書いてほしい。とリクエストというかネタを教えてくれたので書きます。

小規模でないSaaSはこちらをご参照ください。しかし、ここにはあんまり具体的にいくらってのが書いてないんですよね。なのでイメージを中心に話します。

個人・組織によって1万円の価値は違う

むかしそういう話をブログに書きましたが、お金をもらう側も払う側も、1万円の価値は違うということにまず留意しましょう。

たとえば、うちの子供(中学生)が、はじめてMacBookを買うとなったら、それはそれは年単位でお金をためたり、お手伝いを頑張ったりする必要があるでしょう。

しかし、若いスタートアップ企業がMacBookを買うとなったら、渋谷のAppleStoreにいってポンとかってくるとおもいます。

さらに、大企業がMacBookを買うとなったら、稟議を上げて、Apple Businessアカウントを作成し、MDMを用意してデバイスエンロールメントの手配をして、、ああそのまえにそれができる人がいないからTooと契約しなきゃ・・みたいなかんじで2か月くらいかけて3人くらいしか使わないかもしれないのに10台くらい買うと思います。

ようは、その個人なり組織が普段やり取りしているお金の規模と、なにかを買って使うときに必要な手間はバラバラということです。

そういう話を7年ほど前に書いたブログはこちら。

ではSaaSはいくらにするのがいいか?

まずあなたのビジネスモデルはいくら必要なんでしたっけ?を考えないといけません。僕は20代のころはじめてSaaS(当時はASPって呼んでいました)を作ったとき、何も考えずに1社月額980円にしました。大変でした。

たとえば、エンジニア2人でやってて、ゆくゆくはこのサービスで給料賄えるといいなぁ、でも人は増やしたくないんだよな。という小規模サービスがあるとします。1人50万円で2人で月100万円としましょう。

100万円を980円、ややこしいので1,000円で達成するには1,000契約必要です。24か月で達成したい場合、後半に比重を寄せたとしても最初の半年で100契約くらい獲得が必要ですね。初月10契約くらいはほしいところでしょうか。

おっと忘れてました、サーバ代と広告費が必要ですね。サーバ代(開発系SaaS含む)は安く抑えても当初は数万円、広告費は100契約獲得するために、見込み客を1万件×単価1,000円で連れてくるとして1,000万円くらいですかね。あれ、なんだか急に「借金」の2文字が浮かんできましたね・・

実際はそんないきなり広告投下せず様子をみるので、半年たったけどまだ10アカウントくらいだね。となるパターンが多いです。昔のぼくがそれでした。その時は結局アライアンスというか受託っぽい形で買い切り80万円みたいなプランでお茶を濁したようなきがします。

なので、月額を980円にできるのは、一定の資本力があって、広いマーケットもある場合に限られるのです。そうでない場合は「手動(営業)」の割合を増やして高単価にせざるを得ません。1社あたり平均100アカウントくらい契約するなら実質9万8000円なので問題ないんですけどね。

一般に出ていくお金の多くは集客・営業費用

エンジニアはふだんあんまりマーケティングとか営業をやってないので、気づきにくいのが、この獲得費用なんです。

「小規模な」SaaSを運営するに当たり、サーバ代、開発系SaaS代とかって意外とコントロール可能です。国産VPSを使ったり、Firebaseなどを使うと、サービスのスケールに備えながら月1,2万円以下くらいに抑えることもできるでしょう。

しかし集客は違います。たいていの領域にライバルがいます。そのライバルは上述したように半期で1万件の問い合わせを1,000万円で獲得しにきてるかもしれません。となると自分たちも同じ単価、近い単価で集客せざるをえません。

ちなみにSaaS業者向けの集客サイト、ありますよね。一括資料請求みたいなやつ。あれだいたい1資料請求あたり1万円払わないとだめなので、そういう意味でも980円のプランは見合わないですよね。5資料請求ごとに1契約獲得してたら、最低51か月は利益出ないわけだし。

なので、大体のSaaSが1契約当たり数千円/月をミニマムにしているわけです。獲得コストが数万円~かかるので。資料請求された後に電話やメールで商談する営業マンのコストもかかりますよね。

※ところで、この獲得って言葉、あまり好きじゃないんですよね。ドクセルの場合は、なので、お問い合わせいただいたお客様と温かみのある手作業でむきあっております。

ドクセルは結局どうしてるの?

ドクセルも980円プランを当初用意しなかったのはこのためです。だいたいフリーミアムサービスの課金率というのは、やるべきことをちゃんとやって10%前後だと思っているので、いま2000(個人1500、法人団体500)アカウントくらいいるドクセルだと個人150、法人50くらいが目指すところかもしれません。

200アカウントを月1,000円で提供してしまうと、月20万円ですね。これはドクセルとGroupfileあわせて十数アカウントですでに達成している売り上げなのです。(ご契約ありがとうございます)

ドクセルは契約時期および契約条件によりますが、月額6,000円~1万円、Groupfileが月額3.8万円/7.8万円となっています。

いや、実は個人に関してはけっこう認知がでてきて、上述したような集客費用が掛からなくなってきたので、980円プランをやる土壌はできてきました。それくらい、余裕ができてからやることなのです。

(余談)その他の価格帯について

その他の価格帯でいえば、広告モデルなんかもそうです。あれはユーザーから0.1円をもらうようなビジネスなので、100万人が訪れて10万円とかなわけです。※あくまで例です。

逆に、投資を受けるようなスタートアップでは、最終的にエンタープライズなど大口のお客様に年間最低3,000万円くらいの利用料をもらう製品価格にしないと難しいのではないでしょうか。

年間10万円が1万社で10億、年間100万円が1,000社で10億、年間1000万円が100社で10億、やっとこれで30億つくれるわけです。そこに年間1億のクライアント10社が契約できるといいですね。

まとめ

小規模なSaaSをやってみようとする諸氏は、小規模だからこそかかる固定費や、小規模だったとしても安くならない集客単価について思いをはせ、「980円は強者の価格!」を肝に銘じましょう。

※あくまで小規模なB2B SaaSのおはなしです
※複数の製品ライン・価格ラインがあるとかで980円「も」あるのはありです
※あとは別で生活しながらライフワーク的に5年10年やるつもりならオーガニック集客だけで行けるかも


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