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多言語対応

業界のファウンダリーを片っ端から買いまくっているフィラデルフィアのLanston Monotype Machine Company改めMonotype Corporation改めAgfa Monotype Corporation改めるところのMonotype Imaging Holdingsことモノタイプが、欧文だけでは飽き足らずということになったのか、TDCWinnerの某日本人ディレクターに唆されたのかどうか、そこのところはまったく知らんけど、とうとう日本企業の知財買収にまで手をつけだしてきた。買収されたのは業界で125億を売り上げる最大手モリサワ……ではなくて、それに次いで国内2位の……で、合ってるよね……まぁ、その国内2位のメーカーのフォントワークスとそのフォントを含む知財、同社の保有する技術及び各種サービスで、売却額は非開示らしいので最終的にいくらで買われたのかはよく知らないけど、一部では62億円などという数字も出回っている。……なのだけれど、それだとだいたい4千5百万ドルぐらい? 怪我で離脱する前の大谷翔平のFA契約が5億ドルだの6億ドルだのと云われていたので、その10分の1以下の金額が高いのか安いのかはもはやよくわからなくなってくるけど、SBTが子会社化したときの所得額が17億7100万円、フォントワークス自体は総資産で40億円ちょっとの企業なので、それを62億円というのはいくらなんでも無理があるような気もしないでもない……んだけれども、まぁ、別に他人の懐だし、株で儲けようなどと思っているわけでもないので、そこのところはどうでもいいけど、ともかくそういうことになったので……Monotype Fontに『260種類のフォントスタイルからなるフォントワークスの秀逸なライブラリが加わる』ということになるということらしいから……いや、まぁ会社のニュースリリースでそう言ってるからそうなんだろうけど、そういうことだったらLETSは解約してMonotype Fontに纏めようかなぁ……などということになって、フォントワークスの資産価値だけ下がってまたモノタイプだけが焼け太るようなことになるような気もするけど、このあたりのこともどうする予定なんだろうか? LETSもつい最近定額フォントサービスをリニューアルしたばかりで、また再度ややこしいことになりそうなんだけど、まぁ何はともあれ、切なる願いとしてはユーザーの不利益にだけはならないようにしてほしいというところではあるのだけれどね……ホント。

あと若干恐いのはモノタイプが『日本初の買収案件として』などと宣っているというところで……それって2番目もあるのかよ……。

ってなことを書いて、この記事をアップした後に、Monotypeが売却されるとか言うニュースが飛び込んで来たんだけど……ん〜、何て言うか……世の中カオスだよね……


で、まぁそんな感じで、和文フォントなどというローカルなグリフの世界ですら業界再編グローバル化待ったなしの時代が押し寄せてきたということでもあり、まぁ話の枕としてはそんな感じ。そういうわけで、こちらは淡々と前々回の続き。多言語フォントプロジェクト……の何回目だったっけ?

まぁ、ということでそれはともかく、さて、今回は前回やる予定だった話の続き。ダイアクリティカルマークなどを追加するなどして例のフォントを拡張していくというおはなし……ダイアクリティカルマークについては大分前にまぁ、実際制作するときの手の抜き方とか、アプリケーションでどうこうするというはなしはしたけど、肝心なはなしをし忘れていたような気もしているうえに、Fonts.Aiってぇワケでもないが、まぁフォントの制作工程なんかも今後はAI化によってますます簡略化されてくるだろうから、こんな話も気にする必要はないんじゃないかということもあり、まぁ、いろいろとアレがアレなうえ……この後のはなしも、例によって無駄知識で適当なことしか言っていないので興味が無いとか関心が無ければ他人の貴重な時間を奪うのは本意でないので今すぐ帰ってくださいね! ホント。

とまぁ、注意書きも住んだところで早速本題。さて、それで、ラテンのグリフにダイヤクリティカルマークを追加するだけといっても、問題はいろいろあるんだけれど、そもそも何をやっているかと言えば、作ったフォントを多言語対応にするためにローカライズに対応するのに必要なグリフを追加するという工程で、この作業が必要になっているというわけで、頭のおかしい人が勢いに任せて行動しているだけという……まぁ、そういう側面も無いわけでは無いのかも知れないけど……というか、最近思っていることでもあるのだけれど、まぁ、やってることも言ってることも出鱈目極まりないので、こういうものがなるべく検索AIの目に留まって下手にソースとして引っかけられないように、まともなAIの役には立たなくなるようにって文体工夫していったら、基からそれほど上手くない文章がますます下手になっていっているような気もしないでもないというか、そういう気がしているんだけど、この先の話はDo Not Trainでお願いしますよ。いやホント……まぁ、そういうことはいいとして、今回は単純にラテン文字のグループをなるべく多くの言語に対応させられるように拡張していくという……まぁ、そういう工程を解説するという、そういう趣旨。まぁ表現が過剰になっているだけでタイトル自体に嘘偽りは無いって、まぁオーバーに言うから嘘になるんだけど。


さて、ダイアクリティカルマーク自体は文字列本体からみれば補助符号なので、付けなきゃいけないモノから、付けられない場合の代替手段があるもの、必ずしも付いている必要がないものやら、まったく付ける必要のない場合までさまざまで、発音区別符号によって発音が変更された文字を別の文字として扱う言語から、そういう発音の違いによって文字を特別扱いをしないのでそれらを別のグリフとしてカウントしない言語、また文章のオーソグラフィーの違いによって付けたり付けなかったりだの、国や地域や時代や個人個人の趣味嗜好によってもそれぞれ俺様ルールがあるので、コレが絶対に正しいなどということがいえるのはほとんど詐欺師だけなんだけど……まぁ前にも言ったけど大体はよくわからないことのほうが多い。

そうはいってもルールが定まっていないと役には立たないので、概ね間違っていないだろうという程度の規則性はもちろんどんなところにも存在する。デザイン的には単純な記号を追加するだけとはいってもこの手の記号はそれだけで全体のバランスを一気に破壊するような違和感のもとにはなるのでどうデザインすればいいのかというのは案外一筋縄にはいかないところもあって、どこまでなら許容できてどこからだとおかしくなるかということに関しては、実を言えば有識者の間でもまとまった見解というものがあるというわけでもないし、言語によっても大きく違ううえ、バナキュラーとグローバルの擦り合わせもなかなか厳しい。もちろん見る人、作る人の感じ方や解釈の仕方にもよっても大きく差が開く。なので似たようなフォントを拾ってきてもダイヤクリティカルマークのデザインだけが壊滅的に違いすぎる……という事態が発生する。逆に言えばダイヤクリティカルマークさえ見れば簡単にフォントが区別でき……まぁ、そこはいいとして、ただ、わからないことが多いということは、ぶっちゃけていえばこの分野に対して興味を持って調べようとする人たちが殆どいなかったと言うことと同義で、前世紀まではこのことに関してラテン文字ですら、これらの知識が体系的に語られると言うことはまったく無かった……って本当?

いや、まぁ、また適当なこといってるみたいになってるけど、ただね、まぁちょっと考えてみればわかるけど日本語のレタリングの教科書にしたってわざわざ一章設けて濁点と半濁点の正しい描き方を微に入り細部にわたり延々とレクチャーするなんて間抜けなことはしない……よね? まぁ、そういう本があれば紹介して欲しいくらいだけど……ソレはともかく、なので、まぁこういった資料がネイティブ以外が見てもちゃんとわかるようにと整理される必要が出てきて出揃ってきたというのは実を言うとここ数年……長く見積もってみても進撃の巨人の連載期間程度の長さの出来事になるので、ウォール・マリアに穴が開くまではほとんど誰にも問題にされていなかった……まぁ、進撃の巨人は何の関係も無いんだけど、そういうこともあって巨人同様に謎だらけではあったのだけれど、ほおっておくわけにもいかなくなったというのはビッグなんとかとか言われるような文化ユートピア指向の超大型巨人の出現で破られた扉からグローバルが壁内に侵入しはじめて……ネイティブとすればいろいろと、いつの間にか回りが異形の活字で溢れかえってしまっていたということに、それぞれ各地域のバナキュラーな人々が今更ながらに危機感を覚え……これはちゃんと整理はしておいたほうがいいのではないか……などといったそういう事情もある。極端な言い方をすれば文字すら必要としなかった人々でさえ持つことの出来るようになったパーソナルデバイスが溢れかえるようになったこの世界でのこの手の問題に関してはいろいろとパンドラの箱が開きかけちゃっているのだというはなしに直結することにもなるのだけれど、文化人類学者でも哲学者でもないので、さすがにそこまで噺を拡げると本当に収拾がつかなくなるから、そういうことはもっと頭のいい人に考えてもらうとして、ここではそんなことはどうでもいいので、とりあえずグリフを増やしてこのフォントで扱える範囲を拡大しようという……まぁ、枝葉末節を取り除いたことでいえば、事の中身の要点の結論としてはだいたいはそういうはなし。

さて、ラテン文字によく使用されるダイヤクリティカルマークには、主にアキュート、グレイブ、サーカムフレックス、トレマ、リング、ハーチェク、チルダ、ブレーヴェ、マクロン、ドット、セディーユ、コンマ、アンダードット、オゴネク、スラッシュ、バー、ホーン、フック……いや、並べてみると結構あるな、まぁともかくそういうものがあってそれぞれ言語によっては別名があり役割に応じて第一アクセント記号、第二アクセント記号とかだの揚音符、抑音符、曲折アクセントやら、分音、円唇、擦舌、軋音、短音、長音……などなど状況に応じてもそれぞれがいくつも呼び名をもっている……ので、これらが何かと言う話を一つづつ始めるとまた収拾が付かなくなるのはお察しの通りで……知らないとか聞いたことも無いという人はWikipediaで検索するか、文末にもいつもの用語解説としてダラダラとした説明を入れるつもりなのでそちらを参照して下さい。まぁ、そこに入れきれないこととかも出てくるだろうし、Unicodeでコード化されてもいないようなローカルなあれやこれやみたいなものもあったりはするんだけど、まぁ現状概ねはこのアキュート、グレイブ、サーカムフレックス、トレマ、リング、ハーチェク、チルダ、ブレーヴェ、マクロン、ドット、セディーユ、コンマ、アンダードット、オゴネク、スラッシュ、バー、ホーン、フック等々ここら辺が用意できれば主要なラテン文字圏での使用に関しては大丈夫……なはず……多分……。

これらのダイヤクリティカルマークは大抵はベースグリフを変更せずに、そのグリフの母音の上に乗せて表記されるのだが、セディーユ、アンダードット、オゴネクのようにグリフ下にぶら下げて置かれたり、ドットやコンマ、フックのようにどこに置かれるかは言語によって違いがあったりスラッシュやバーのようにグリフを横断していたり、更には複数のダイヤクリティカルマークを組み合わせて何階建てにもしたり、当然当たり前のように母音だけでは無く子音にダイヤクリティカルマークを振ってしまうような言語もあるので、ここらへんはもうケースによってまちまちでデザインも基のグリフの形態を変形しないといろいろ差し障りがあるということになったりするということもある。まぁ当然ここらあたりもケースバイケース。

というワケで……ただ、当たり前だけどダイヤクリティカルマークに関しては、全てのベースグリフが全てのダイヤクリティカルマークを必要とするというワケではないし、言語によっても必要な組み合わせも違うので、可能性のある組み合わせ全てが単独でコード化されているというわけでもない……というのは原則そうなんだけど、それだと不便なコトもあるのでUnicodeではこれらダイヤクリティカルマークを組み合わせた文字単体にも必要に応じてコードが振られているということ以外にも、どんなキャラクターに対しても元のグリフと合成記号、それにダイヤクリティカルマークの組み合わせで一文字の合成文字を作ってしまうというようなdynamic diacriticsというような仕組みも用意されている。これを活用するためにはフォントにも予めそのための仕組みをプログラムしておく必要はあるのだが、それさえやっておけば組み合わせたグリフを一々用意しておく必要はない……のだけれども、それにも多少は問題があって、ここもはなしが長くなるので、まぁ、とりあえずはそういう仕組みもあるんだなぁという程度に話を聞き流してください。まぁ今回はスタンドアローンな仕様のみでお茶を濁している。

ということで各言語によってスタンドアローンに必要になるグリフに関しては、それぞれUnicodeで単独のユニーク番号が振られてはいるのだけれど、こちらも少し厄介で、まぁ、Unicodeでの扱いは基本的に形が同じモノを一纏めにしてしまうので、言語によっては字の名前が辞書の順番に並ばないとか、マルチリンガルに対応させようとすると言語ごとの違いによって、クレスカとアキュートのようにホモグリフ化したグリフで問題が発生するという場合もある。この詳細はあとで説明しておくけど、ただ、まぁ、まったく対策が存在しないというわけではなくて、これもフォントに予めそのための仕組みをプログラムしておく必要はあり、いろいろとシステムやアプリケーションが対応しているという前提条件もあるけど、フォントの機能……つまりOpentype Featureで……って、まぁこのあたりの詳細は省くけど、簡単に説明するとグリフネームの拡張子にlcalXXX(XXXは言語別のコード)などを付けてそれを使ってFeature構文でローカルごとの処理を対策させるなどといったやりかたで対処するといったやり方の方法の仕組みの仕方はある。こちらは考え方としては前前々回? だったかで説明したクォーテーションマークのところで云った話と同じような感じなんだけど。

で、まぁ、そこもともかく、それで、これに前回追加したギリシア文字とキリル文字、あと今回アルメニア文字チェロキー文字などもプラスしてさらにジャーマンな大文字のエスツェットやアイリッシュインシュラーだのダッチアイジェイアキュートだの……言ってるとキリが無いけど、まぁ謎文字や合字を幾つか追加しているので、これで一応最低限でも九分九厘は現代欧州亜米利加大陸の言語とクオックグー、それに一部アフリカ言語用途にも対応するだろう……というはずのラテン系のフォントセットの出来上がり……ということになった……はず……多分。まぁ、途中余計なモノもいろいろ増えてはいるけど多分概ね大体はこんな感じ。グルジア文字とアラビア文字、ヘブライ文字あたりもあれば、より完璧ではあったのだけど、サカルトヴェロのカルトヴェリ語の文字体系には少々厄介なところがあって、まぁそこはいいんだけど、問題はグルジア文字がネット上では文字としてよりミームなグラフィカルのアイコンとしてアプロプリエーションされ続けているので、そういった用途にも多少は気配りが必要で……いや、まぁその話もいいや。あと後者2つは書字方向が逆なうえ、字形や書形の変化もいろいろとあるので、仕込みが少し面倒でアラビア文字はどう言い訳してもラテンとは言えそうにないので、ラテン文字セットとしてはまぁ良いかなという……そんな感じだったりもするから……ホントこの辺りで勘弁して下さい。

ということでこういう単純な字形でグリフがここまで増えると、当然あちこちがホモグリフ化して、いろいろと被らないように考えるのも本当の処厄介なんだけど、所謂ローマナイゼーションだの活字流用だのという悪習が一周回ってオーソドックスしてしまったような過去の歴史の積み重ねとか、或いはデザインの一貫性みたいな方向からも、違う言語でもデザインを被せてしまったほうが良いという場合もあるので、そのあたりのどこをどう勘案するかという部分を考えるのも実際のトコロはなかなか厄介ではある。まぁ現状ではあまり何も考えていないような感じなので、大体、おおよそ、とりあえず、粗方、今回はざっくりこんな感じ。最も重要なこととして本質的には利用者に意見言って貰わないとわからないところではあるんだけどね。それにそのうち作った本人の気が変わるかも知れないというところもものすごく大きい……トホホ。

ということなのだけれど、それでこれで、実際のところこれがラテンテキストの文化圏と言語にキチンとパーフェクトに対応出来るのかという話になると……記号類の不備含め、実際には必ずしもそうはならないだろうので、それに関しては勿論それぞれの利用状況のケースを見ながらキチンと調整する必要はある……とはいっても一人でやっているので本当にかなり適当で原始的な対応しかしていないんだけど。何しろ各国語のWikipediaを巡回表示してTofuが表示されないことを確認出来たらまぁいいかなぐらいの……本当に緩いチェックしかしていないので、当然いろいろと問題はある。実際のところネイティブから見れば相当おかしなことをやっているだろうという自覚はある。単純に見落としている部分とか所謂バグもいろいろあるだろうしね……あ、それから、あと、問題と言えば一番問題なのはカーニング。まぁ、ここはキチンと調整すれば複数スクリプトの組み合わせでもキッチリしっかりカーニングペアを設置出来るという素晴らしいフォントシステムにはなるのだけれど、組み合わせ量があまりにも膨大で、各言語によっても正書法がマチマチなので、どういう割り当てでプログラムしないといけないのかというのは、まぁ考え出すとキリが無いこともあって、まったくといっていいほど手が付いていない……正書法を無視してスクリプト全体を下の図のようにラテン文字の換字用素材としてカルチャーアプロプリエーションしてしまうつもりならカーニングの方針も一意に決まるので簡単なんだけど当然そんなんでいいわけは無いよね……まぁ、あと、こう言うと怒られるけど、この書体は本文組版用途を想定していないうえ実用上はイラレとかならオプチカルで詰めればだいたいのところはなんとかなるから、この状態でも困らないといえば困らないんだけど……個人的には作ってから少し時間が経っているので、今みると全体のバランスに気に入らないみたいなところがあって、全面的に作り直す必要が出てきてはいるんだけれど、ある程度方針固めて始めれば多言語対応も簡単に……というようなことを言いたかっただけなので、まぁとりあえず一応一旦今回で、このシリーズは打ち切り終了ということで、続きがあればまたそのうち。

ABCDEFGHIJK……って並んでるように見えるかも知れないけど、チェロキー文字で換字しているので、ひゆつぅれをるぅろにくぐっお……で良かったんだっけ? まぁ文として意味を成さないのでそこはどうでもいいけど


さて、まぁこんなところなんだけど、こういう文字の多言語対応に関して興味があるというのなら、つい最近にもこんな本が出ているので、こちらをオススメしておく。こんないい加減な話よりよっぽど為になるからねホント。


で、フォントのサンプルは以下。まぁ、毎度の事ながら、いつもの通り、件の如くの自己責任で……お願いしますよホント。

Filename: KragsydeMansionLatin-Regular.otf 
This is an OpenType/CFF font with 2270 Glyphs, 1623 characters. Size  216KB. This is a licence for the SIL OPEN FONT LICENSE version 1.1.



解説

Acute/Kreska/Čarka 一般的にはグレイブと対にデザインされるアキュートだが、ただグレイブが中央ヨーロッパや東欧であまり見かけないということもあって、こちらの地域ではそのあたりの対称性に関してはそれほど気にしないというケースもあったりする。例を挙げるとこのアクセント記号はポーランド語の軟音符のクレスカや、チェコ語の長母音符号チャールカとはホモグリフになるので、Unicode上ではこれらのコードポイントは一纏めなので区別が付かないということになっている。前にもいったけどポーランド人に言わせると、ポーランド語におけるこの弱化した子音のための記号というものは図柄が急勾配で立ち上がっている必要があって、寝っ転がっているアキュートをクレスカの代用にされるのは我慢がならん……ということにはなるらしい。逆にチェコ語の場合はチャールカが長母音符号になるので寝そべっているほうがそれらしい雰囲気にも感じるんだけど、チェコのデザイナーはポーランド人とは違って、立っていようが寝てようがそのあたりのことはどうでもいいと思っているみたいで……え? そんなことはない? まぁ、そこはいいとして、まぁそういうことなので、こうなるとグレイブとアキュートの角度を揃えるなどという簡単なことですら難しくなるのだが、揃わなくてもローカルの理屈を優先した方がいいというケースもあるから厄介だ。まぁ、でもグレイブとアキュートが揃っていないと今度はフランスやイタリアでおかしなことが起こるので普通にまともなバランス感覚が働けばアキュートとグレイブはお互い鏡像で作成するほうが無難だろうということでもあり、通常教科書的にはそうしろと書かれるているというわけだ。初っ端からアレだがこういう角度ひとつとっても、いろいろと派閥は存在する。

まぁ、それはともかく、で、こういう発音記号は基本デザインするときはグリフセットごとにデザインして大文字用と小文字用も分けて別々にデザインする。別々のグリフセットに同じデザインの発音記号を使い回すのは厳禁だ。さて、アクセント記号は上のスペースの問題もあって通常は大文字に付く記号の方が小文字に付く記号よりも角度を緩く高さも低くする必要があったりはするのだが、要はバランスの問題なので図の左のように形態がほぼ同じでもまったくダメというわけでもない。で、同時にaとbのアキ、hの高さ、rの角度も一番最初に決めて、このルールを基準に他の発音記号のデザインを準拠させる。教科書的にはa、つまり小文字の上のアキのほうが大文字の上のアキよりも大きくなるように決定するほうが望ましいのだが、勿論そうでなければ絶対ダメというわけでもない……んだけど……まぁそうしたくない場合でもバランスの問題はあるので右のようにアキュートの上端をキャップハイトより下ろしてくるとか、あっちを叩いたりこっちを縮めたりとかいろいろと面倒な工夫が必要になって……かえってややこしいことになったりもするから基本はちゃんと押さえて置いた方がいい。rの角度も揃っている方が本当は良いに越したことはないのだが、最初にも言ったけど言語によっても好みが割れるので一つのスタイルだけで多言語対応させるというのは本当はちょっと無理なところがある。さらに今回の場合はxハイトを馬鹿みたいに高くしたコンデンスな書体を選んでしまった所為で余計に面倒なことになってはいるんだけど……まぁ、それもともかく、それで話を続けると、一般的にはアキュートの垂直位置は右寄りにグレイブは左寄りに置かれ、バランス的には、グレイブとアキュートとサーカムフレックスを作ったらその作ったサーカムフレックスの右端をアキュートの右端に左端をグレイブの左端に揃えるくらいのイメージ。まぁ尖った先端をフォントのセンター位置にぶち当たるような感じだったり、物理的にそうできないのでそうしない場合とか、こういうものは文字によっても色々あるからあれだけど、一旦全部の発音記号を作っておいてから一箇所に重ねてバランス見る感じにして作ってみるとわかりやすい。あと、それから、いつも云うけど、ここで言ってることが正しいとか絶対とか、そういう主張をしているわけではさらさら無いからね。まぁ、ちゃんとしたことはちゃんとしたところで……というのは、ホントお願いしますよ。

Bar/Stroke/Slash グリフを横切る形で描かれる線で、斜めだったり、長かったり、短かったり、1本だけだったり、2本だったり……まぁ、いろいろあって、文字のどの位置をどう横切るかもいろいろなので、グリフ全体の一貫性も大事なんだけど単一のルールに無理に拘るとかえっておかしなことになったりもするので、そのあたりはバランス次第。ただグリフ個別には、このラインはこういうふうに描かれるべきというルールがあるモノもあるのでそのあたりにはちゃんと気を使う必要がある。バーの幅を揃えない……という方向でデザインするケースもないわけではないけど、普通一般には当然だけどバー同士は揃って見えるようにする必要はある。まぁどれがバーでどれがストロークかというアレはあるけど……で、水平のモノをバー、斜線をスラッシュ、スラッシュやバーの短いモノをストロークと呼んで区別する……ようなこともあるのだけれどこれも人によっては全部が同じだったり、発音記号の役割とかに掛けて個別名で呼んだり、まぁそういう名前に拘るケースもあるので、わかったふりをしないでちゃんと確認する習慣は大事だ。通常はステムの幅よりは細くデザインされコントラストを必要とせず、セリフのある書体であってもバーにセリフをつける必要は無い。


Breve ブレーヴェまたはブリーブと呼ばれるこの記号は上に開いた円弧、またはハーチェクの先端を丸めたような形でデザインされるが、デザインを注意しないとハーチェクと見分けがつかなくなったりもするので、某国が正式に発行したお札にでさえブレーヴェが間違ってハーチェクでプリントされ、それがそのまま流通していたということさえあった……え? 今も? まぁ、お札をデザインした責任者が田舎に飛ばされて百姓にされたのかどうかはともかく、そういうようなこともあるというなんともいわく付きの記号なので、そこは注意してもしすぎることは無い。主に短母音を表すのに使用される。ただ、Cyrillicなスラブ文字のブレーヴェの場合はラテン文字のそれとは違って先端を丸めた電話の受話器をひっくりかえしたような記号にデザインしておく必要がある場合も……って、そもそも今世紀になってからは電話の受話器といって理解して貰えるかどうか怪しいけど、解説すると若い人達には謎マークに見える7〜8桁ほどの数字の羅列の表記の前に偶に置かれることのある絵文字ようなマークの上半分の処に乗った部分を上下ひっくり返して……って、説明するとさらにややこしいことになってきたぞ……まぁともかく、そうデザインするほうがハーチェクとの差もわかりやすくなり、スラブ文字としてオーソドックス感があるように見えたりもするので、言語対応によってもデザインを使い分ける必要も発生する。まぁ、ロシアで作ったフォントですらそうなっていないものもあったりすることもあるんだけど……さて、ブレーヴェをひっくり返して、受話器を電話機に戻すと逆ブレーヴェという発音記号になるが、こちらはやや特殊な用途で、さらにこの逆ブレーヴェをふたつ以上の文字を結ぶのに使用するため横に引き延ばすと、これは音楽のタイ記号のような形となり、この記号はダブルインバーテッドブリーブなどという呼ばれかたもする。ちなみに浅学で申し訳ないのだが文字の上に付くダブルブリーブという記号は……まぁ、見たことが無いので……ご存知のかたはこちらまで。

Ă Ĕ Ğ Ĭ Ŏ Ŭ


Cedilla/Cédille セディラもしくはセディーユは親字の下に配置される。感覚としてはフランス語のテキストを代表するようなダイヤクリティカルマークというようなイメージだと思うけれども、もちろんフランス語だけではなくいろいろな言語で使われている。語源自体はスペイン語……だったよね? まぁ、いいや、ただ、他のダイヤクリティカルマークと違って形状がやや複雑なので言語によってはこんな複雑な形にしないで同じ役割をコンマで代用してしまうという地域もある……なのでコンマで概ねセディーユの省略形として使用できる……と……言いたいところなのだが、東欧やらマーシャル諸島絡みなんかの色々な事情もあり、下付きコンマの全てがセディラ記号に見立てて貰えるかというとそういうわけでもない。実はセディラとコンマアクセントの間には多少ではすまないほどの混乱と無秩序が広がっているのだが、このあたりの事情は複雑すぎて説明が長くなるので……まぁ、聞かなかったことにしていただきたい……それはともかく、それで、なんでたかが発音記号がこんな複雑で変な形状になっているのかというと、この文字のルーツは横中縦で、Çであれば、もとはCとZを縦並びにした合字から始まったということになっている。ここからZがCよりどんどん小っちゃくなっていってCの下に鉤爪でぶら下がっているという現代のイメージに……というかこの鉤爪型のセディラの形はそもそもは筆記体のZに由来していてこうなっているというおはなし。で、その後フォントのスタイルがいろいろ変化しても、このZだけはこんな形なのでZなのかどうなのかがよくわからなくなったため筆記体のこの形のまま取り残されてしまって、どんな書体でも大抵はこの複雑な形状を保っている。まぁ、日本語で言えば「ツェ」っていう音を文字にするのに昔は「𛁪𛀍(変体仮名)」って書いていたのが、現代では「ツェ」の「ェ」の形だけ変体仮名の「𛀍」のスタイルが残って「ツ𛀍」って書かないといけないみたいな感じに……って、それだとかえってわかりにくくなったか……まぁ、ともかく、多分初期のジオメトリックなアルファベットをデザインした人たちがフランス的教養がなかったので、このあたりをあまり深く考慮しないままデザインしたためにこういうレガシーな仕様が取り残されてしまって、このような事態になってしまっているのではないか……と個人的にはそのように根拠のない勝手な妄想をしていたりもするのだけれど、ともかく、そういうわけで、クリエイターによっては近代的な書体にこの複雑な形状のセディラ記号をぶら下げると全体の雰囲気がぶち壊しだ……と、そう考える人もいて、この記号を円弧を切り取っただけの只のふにゃっとした線や、カーブも無くしてただの斜め線、更に極端には点だけで代用してしまうとか、どうせSって発音するんだからCの終筆から繋げてちょっと崩れたSに見えるようにデザインするとか……まぁ様々な解決方法が試みられてはいる……ただ、そうはいっても当然だけど伝統的な意識や、慣れの問題もあるから、オーソリティなケースの場合はセディーユがこういう複雑な形態に垂れ下がった盲腸のように親字の下にぶら下がっていても仕方の無い面もあるし普通通常一般的にはそこは大抵誰も気にはしない。逆に、あまりスタイルやデザインを超近代的に大きく変更するというようなことになるほうが個性が克ちすぎてあまり好まれてない……ようにも見えるけど、まぁどうなんだろう? 骨骼さえ変えなければパーツが複雑なせいでわりと自由にデザイン出来そうにも見えるけれど、必要とされる地域によっても好みが割れるので、Ḩが左でĶがセンターだったりするというのは……まぁ、もう、そのあたりは仕方が無い。ということで、いろいろとあることはあるのでネイティブに対しての見慣れると見慣れないのラインの見極めは少々厄介だ。ただ、まぁ、今回に関してはそんなことは気にもしちゃいないんだけどね。

Ç Ḑ Ȩ Ģ Ḩ Ķ Ļ Ņ Ŗ Ş Ș Ţ Ț


Circumflex/Hat 上向きの三角記号で、母音に付く場合は主に縮める音の記号として用いられる。ハットと呼ばれるケースもあって数学記号に使われる場合はハット呼びのほうが通りが良い。まぁ上三角でも尖り帽子のでもなんでも……いや、まぁ何でも無いです。それで、日本語のローマ字表記では大昔は半開後舌円唇長母音を尖りが下向きのハーチェク、円唇後舌半狭長母音をサーカムフレックスで表記していたのだが、長母音の半開後舌円唇と円唇後舌半狭を区別する意味がよくわからなくなってしまったために長母音の表記がサーカムフレックスで統一され、現代ではヘップバーン方式ことヘボン式準拠の横棒のマクロンでの表記が一般的な書記方法で落ち着いている。まぁ、古い看板表記にはまだサーカムフレックスが残っていたりしていて、このあたり日本語ローマ字表記では伸ばす音の表現に縮めると延ばすの両方の記号が混在している。サーカムフレックスは発音記号とは別にチルダ同様に約物的に使われる事がある。英語では重複する文字列の省略やスコットランド人の長話を途中でぶった切るのに……って、そこは違うかも知れないけど。

Â Ê Î Ô Û Ĉ Ĝ Ĥ Ĵ Ŝ Ŵ Ŷ

dynamic diacritics 考え方としては大昔からあって、40年ぐらい溯るのでそこから始めると収拾が付かないからそのあたりは飛ばすけど、ユニコードでは基底文字(親字)に結合文字列を組み合わせることで、親字に近いものから順に記号が積み重なるような表示が可能になるような仕組みが用意されている。まぁ、といってもブラウザとフォントの両方の対応が当然必要にはなるから、環境によってはLོt̺̝͡ś̞とかç̬̂とかæ̩̩̩̩̩̩̩̃̃̃̃̃みたいな表現はグチャグチャに潰れてしまう。ちなみにちゃんと見えてる?

Double acute/Hungarumlaut 主にハンガリー語のテキストに必要で、ウムラウトの付いた母音が伸びる場合に使用する。通常は普通にアキュートを2本を並べてデザインするのでダブルアキュートと呼ばれるが、流石に文字の上に棒が2本も並ぶと重量感もあってデザイン的にも苦しくなるので、重くなったり、広がりすぎないようにアキュートの形を調整したり思い切ってアキュートのペアでは作らないという場合もある。アキュートを利用せずに単純にウムラウトを縦に引き延ばすだけで済ませてしてしまっているケースすらあったりはするが、アクセント記号が逆向きになっているやや特殊用途のダブルグレイブという記号もあるのでそれとの区別を付ける必要がある場合はある程度の傾きは必要になる。どうせ必要な親字はOやUだけだと割り切ってアキュートのデザインとはガラッと変えてグリフに縦の2本の棒を半分近くまで食い込ませてしまうという……まぁかなり強引な解決方法でこれを片付けてしまうという考え方もあるが、これはハンガリー語の手書きのテキストなどではダブルアキュートをそういう描き方をする人もいるので、そのあたりの手法を拠にしているのだと思う。多分。


Háček/Caron/Check ハーチェク、カロンもしくはチェック。下向きの三角記号でサーカムフレックスをひっくり返した形になるけれどサーカムフレックスと違いデザインする場合は三角形の頂点を削りとって文字に突き刺さらないように配慮する。って、まぁ、配慮してないフォントも多いけど。ただし、一部の言語体系でのハーチェクはd、t、lのハーチェクのように小文字がascenderギリギリまで高いものは右にアキュートを打ってそれでハーチェクを代替する。それなら、その場合当然デザインは小文字だけではなく大文字もアキュートだ……となりそうなところなのだけど、それだと混乱に拍車がかかるので、そういうふうになるのはLだけ……だよね? まぁ、このあたりもLのハーチェクが実は元からアキュートのようになっていたわけではなくて金属タイプの技術的性能的限界等の理由からこういう代替が慣習化したのだという人もいるので、不合理で一貫性が無くて気に入らないと主張するなら、ハーチェクをそのママでもなんでも、どうぞお好きにすればいいと思うけど、そういう理屈が大勢に支持されるのかどうかと言うと、そういうおはなしは……まぁ、頑張って下さい……さて、まぁ、それで、寝ぼけた話はともかく、ただし、この代替カロンをLとアポストロフィーとでつくると問題があり、文字間のアキや、アポストロフィーとアキュートのデザインの違い、ハーチェクとアポストロフィーの機能の差があやふやになってオーソグラフィが怪しいことになるので……まぁスロバキアやらリトアニアやらイベリア半島やらのところではいろいろと気を使う必要がある。そのあたりは各国ごとの正書法の問題なども絡むのだけど、文脈から類推して読めちゃう場合もあるだろうから方針次第なこともある。たしか、David Březinaはチェコ語ではここをあやふやなままにしておくと誤読を招く危険性が非常に大きいというようなことをおっしゃていたので、まぁ、基本的にはその差がちゃんとわかるように解決しておくという必要はある。

ハーチェクは英語ではキャロンと呼ぶけど英語テキストの公式設定では使われる事はほとんど無い。え? 綴りが違う? まぁそこは英米の問題なのでともかく、で、発音記号的には主に口蓋音的な感じを指し示す用途で使われるので通常は母音では無く子音の頭に付ける形となるが、ピンインなどでのハーチェクは声調記号として使われるのでニーハオな母音の頭にも付くこともある。それを除けばサーカムフレックスとハーチェクが並んで表記される可能性のある言語は欧州言語では多分スロバキア語くらいだろうから、そこだけ配慮すればデザインをサーカムフレックスと無理に揃える必要は……殆ど無いはず……だったりもするので、ディスクレシアに配慮する場合など通常左右対称にデザインされるその形態をサーカムフレックスと変えて、チェックマークのように左ストロークを右より短く非対称に作ってしまっても……まぁ、それはそれでアリだったりもするというようなことにもなる。勿論左右対称にデザインするのがダメといっているワケではないし、殆どのフォントはサーカムフレックスとハーチェクはペアでデザインされている。

Č Ď Ě Ľ Ň Ř Š Ť Ž

LETS フォントワークスのフォントをライセンスするサブスクリプションプログラム。今では普通になったこのビジネスモデルはおそらくフォントワークスが世界初だと思うのだけれど、これによって売り切ってお終いが普通だったデジタルフォントを普通のソフトウエア並みにいいタイミングでバージョンアップさせることが可能になったので……つまりは、まぁ、製品の精度等々をベンダーが細かくコントロール、調整することが出来るようにはなったのだが、逆にバージョンの違う買い切りのフォントが混在する環境が出来てしまったり、古いフォントがいつの間にか跡形も無く消え去って使えなくなってしまうという……いや、まぁ、細かい事はいいか。

Macron 主に長母音を表記するために母音の文字の上部に置かれるバーで、母音の後の子音の摩擦音を表わすために子音の下に置かれる場合もある。日本語ではローマ字表記で延ばす音を示す記号として必用になるが、グレコローマンなアクセント記号なので、フランス大統領みたいな名前のわりには西ヨーロッパでの使用例は少ない。オールドノルトなテキストとか怠け者のウムラウトとか、まるっきり必要無いというわけでもないんだけど……

まぁそれはともかく、デザイン的にはバーの長さはi以外は親字の幅より短くするのがオーソドックスなんだが、日本の過去の鉄道看板などの例では親字の幅より僅かに突き出していたりしているものも多い。これを日本人は英語の扱いが駄目だからとかと、良い悪いをいうつもりはサラサラないんだけど、ただ、ときおりセリフ幅すら突き出してまで描かれることもあるようなダイヤクリティカルマークのバーと役割を区別するためや、アンダーラインと混同されがちなのでなるべく母字より短く作る必要があるという下のマクロンのことなども重視するならば、それらを考慮して上のマクロンも短かめにしておこう……などという考え方にはなったりするところにはある種の合理性はある。逆に駅名看板のマクロンが長いのも視認性の問題ということはあるかと思う。最近の鉄道看板はどうも既存のフォントをそのまま利用するせいか、どれもこれもマクロンが短いのが残念な感じに……って、まぁ、そこはともかく、一般的にセリフのフォントのマクロンのストロークの太さは親字のクロスバーの幅に揃えるなんてこともいわたりもするのだが、大抵のフォントではバーよりは太く見えるように調整されている。コントラストの低いサンセリフの場合はそんなことをするとおかしなことにはなるからちゃんと細くはなっているけれど、美学的な問題から、まぁ何かの基準値を見繕ってそのあたりの幅を揃えておくというのは多かれ少なかれ当然必要にはなる。機能的な役割のほうを揃えるという意味からサーカムフレックスの幅と揃えて対にしてしまうという考え方もある。つまり折れたマクロンがサーカムフレックスという意味に見えるようにするということではあるのだろうけど、サーカムフレックスをアキュートとグレイブを合体させて作っている場合はマクロンとの関係性をそこまで強調することはないだろう。どうしてもというなら精々サーカムフレックスの幅とマクロンの幅が同じに揃って見える位の配慮でも十分だ。まぁ、いずれの場合で考えるにしても考えないにしても、親字の上に乗ったマクロンがどちらかに傾いて滑り落ちてしまわないようにマクロンの中心は親字の視覚的中央に置かれるという必要はある。さて、下に置かれるマクロンのほうは小文字のjやgやpのようにステムがベースラインより下に伸びたグリフに付ける場合でもステムと交差してバーのように見えたりしないようにマクロンだけは必ず文字のデセンダーより下に付ける必要があるんだけれどアンダーバーと重ならないようにそれより少し上に調整する必要はある……のだけれど、仮にアンダーバーがデセンダより上で交差するような位置に置かれるデザインのフォントだとするとマクロンはデセンダより下に置かれないといけないためアンダーバーよりは下になるように書かれることになる。まぁこの辺りの解釈をどうするかということも実際のトコロは運用次第で、重なっててもアンダーバーよりマクロンが太くなってりゃいいだろうとか、アンダーバーがマークの位置で切断されるようにするだとか、それぞれの俺様ルールで行われているケースもあったりはするのでいろいろと難しい場合は多い。アンダーバーを切断するという判断をした場合において細かい事に拘り始めると、全てのグリフに位置固定のアンダーバーを付けたグリフを追加して、併せてそれに合わせた異体字を追加で設計するなどといったことを行う必要も出てくる。


Monotype Font 自称、5万種類のフォント3万種類の書体ファミリーを収めた世界最大規模のMonotypeライブラリおよびその他人気ファウンドリーやタイプデザイナーのフォントを利用可能なMonotypeのサブスクリプション。とはいっても現状で利用可能な日本語書体は自社ライセンスのTazuganeとShoraiを除けばリコーのフォントとAdobeのモノが幾つか……という感じなので、日本語書体を利用したい場合にはあまりオススメできないというサブスクなのだが、これにフォントワークスの書体が加わると話は逆転し、有名どころの欧文フォントを幾つも抱え込んでもいるので、そこに関しては優位性があり、あとアソコとか、アレとか、何社か日本での国内企業が買収されるようなことになるとMORISAWAもおちおち胡座をかいても……いや、まぁそういう事はいいか。


Ogonek オゴネクは、ポーランドの文字で使われるダイヤクリティカルマーク……なんだけれど、ただポーランド人にいわせるとポーランド語のオゴネクをアクセント記号として取り扱うのは本質的に間違っているそうで、曰く「世界で最も誤解されてきたグリフキャラクター」であると……まぁそんなことを僭称している。要はオゴネクは基本的には補助記号では無くグリフ要素のひとつなので、文字の終筆としてキャラクターとの骨格と一体として描かれる必要があるのだが、ほとんどのフォントではそうなっていないので多くの文字がポーランドのアルファベットで必要とされる記号の扱いを間違っている……という主張だ。従ってコンポーネント化したパーツで全ての文字にまったく同じ形状のオゴネクが使いまわされているなどというのはもってのほかだということにもなる。まぁ、ポーランド人の言うことなので話半分程度に聞いておくにしても、その立場から考察すればポーランド人にとってみれば間違った活字の使用を延々と強制され続けてきたという思いにもなるわけだから民族アイデンティティーにすら関わる大事な問題という重大案件だ……いや、まぁちょっと大袈裟に言いすぎたかも知れないけれど、それくらい重要な側面もある。ただ、そうは言ってもかなり古い印刷物や伝統的なレタリング、果ては街の看板を拾って見てもおっしゃるほどにはそこまでギチギチに言われなきゃいけないような気もしないでもないのだけれど……まぁ、これは偏見で俺の目が曇っている責なので気にしないで下さい。良い子はちゃんと人の言うことは聞かないとダメだよ。

ただしオゴネクは、北米大陸の先住民で文字を持たなかった人々の言語をローマナイズしたときに文字記号として導入された経緯から、ファースト・ネーションな言語の発音記号としても利用されていて、こちらの文字要素として使用されている場合には、補助記号として取り扱ってもまだ、あまり文句は云われないようなので……やっぱりオゴネクは真ん中にぶら下がっている方がバランスがいいなどとか言いだす人が出てくるようだと、将来的にはポーランドのオゴネクとファーストネーションのオゴネクを異体字として扱うよりは別の文字としてコードを振り分けてあげるほうがいいというようなことにもなるのかも知れない。

というわけでHelveticaをポーランド語で扱う場合は必ず新しいHelveticaで作業する必要がある。という感じに、まぁ、この手のローカルへの配慮も大事なことなんだけど、ただし、自分のオツムで考える力のない人にそれを声高に主張されるとだいたいは碌でもないことにはなるので注意は必要だ。一例を挙げれば「大勢が声を上げているので、積極的に各国の事情に応じた規格化を推進しよう(まぁ概ねは間違っていないような)」➡「皆が望むので規格に適合したフォントを認証する制度を作ろう(気持ち悪いけど、まぁ許容範囲だ)」➡「さて、規格にそぐわない質の悪い製品の流通を止めるために我が国で使用される印刷物、電子機器組み込み用途含め規格に適合していない書体の使用を禁止する(何を言っている?)」➡「あ〜、ところでフォントの認証にはお金がかかるので、ここら辺いろいろ配慮する必要があるのはわかるよね? まぁ、具体的にはこのくらいの額が必要にはなるんだけど(え?)」ということになってこの利権を獲得したフォント認証団体から「お代官様こちら山吹色のお菓子でございます」「フォッフォッフォッ、越後屋オマエも悪よの〜」といった具合になり、偉い人とグルでの、まぁなんとも怪しいチューチュースキームの一丁上がりということになる。賄賂さえあればどうにでもなるので実は質の悪い製品の流通すら止めることさえ出来やしないんだけど、え? 人としての正義感は何処へいったかって? まぁ利権があるのに賄賂を受け取らないということが不道徳になる文化だってあるんだよね……真面目な日本人には理解は出来ないかも知れないけど。


Ring/kroužek 国際単位系との複合単位として併用が原則として認められないという立場になったので最近では報道などでも0.1ナノメートルに取って代わられほとんど使われなくなったオントログスームことオングストロームはスウェーデンの物理学者Ångströmの頭文字に由来していて、まぁそういう感じにスカンジナビア語ではこのリング付きのAが使われている。この上のマルの扱いは厄介で、リングを必要とする文字は、「ぱぴぷぺぽ」とカナダのファーストネーションの例の素性文字を除くと、ラテンの大文字では基本的にはUとAだけなんだけど、それぞれ必要とされる言語の違いから両方が同時に使用されるケースがなかったのでマルの形の扱いに好みの違いがある。スカンジナビア方面では最近はマルをOの形をそっくりそのまま小さくしたコントラストのあるものが使われていたりもするんだけど、チェコのクロージェクはコントラストのない正円で、日本語で考えるとわかると思うけどぱぴぷぺぽのマルにおかしなテンションがかかってると何か変な感じにならない? え? 気にならない? まぁそれならそれでもいいんだけど、他にもAのリングがエイペックスに食い込んでしまうのとそうでないのとでも派閥があって、Uは上が開いているから多少下がっても文字に重ならないからある意味どうでもいいんだけどAは上が尖っているのでマルに突き刺さってしまう。それでスカンジナビア方面ではマルが文字に重なってしまうことに不快感を表明する人達もいたりするらしい。更には、どうせたかがマルだけのことなんだからデザインはどっちかに揃っていた方が絶対いい……とかいう傲慢なクリエイター側の言い分もあったりもするから……まぁ、そういうわけでいろいろあるんだよね実際。

Tilde なんて呼ぶかはわからなくても、「ニョロ」っといっておけば何の図形を指しているのかはすぐわかるというチルダ記号は日本語のテキストで頻出の波ダッシュと混同されてしまうけどUnicodeの上では区別が付くようにはなっている。また、UNIXに由来するようなOSではホームディレクトリ記号として使われていてこの場合、これは約物扱いとなるので、これにも発音記号のチルダとは別のコードが割り当てられていて、これらを区別可能にするため通常普通フォントにもよるけど、大きさやデザインを変えておく必要はある。結果後述するような問題が起きることがあるのだが、まぁそこはともかく、で、主に鼻音に関する音の符号として使用される発音記号のほうのチルダ……音は……ンーとかムーとか、まぁ大体そんな感じになるのだけれど、ベトナムではこれを声調記号として扱い、字の形から想像できると思うけど一回上がってまた上がるみたいなァ、ァンって感じのトーンの記号になる……って、まぁ、また説明が酷く雑すぎるけど。さて、それもともかく、で、この記号は過去にはラテン文字でもNやMみたいな音の出ない文字を別の文字とセットにして横中縦に書いて、セットにされた文字とは別の音を表記するための文字として描かれるという表記法がとられていたりもしたので、そこから徐々に上に乗ったNなんかのそのニョロっとした形だけが変化して、いつの間にか今の形のチルダ記号になっていったと言われている。ラテンアルファベットの原形となったプロトカナン文字ではNが蛇の表意文字であったのでニョロという呼び名も、まぁそういう意味では一周回ってあながち間違っていないどころか、こっちの呼び名の方が正しいような気もするけど、まぁともかく、そういうことなので、描く場合は左から上がって下がってまた上がるという正弦曲線となるのが一般的……というか、下がって上がって下がるという逆N波線のグリフは今では古い日本語JISの波ダッシュ以外ではほとんどお目にかからない……わけでは無いんだけどね。まぁ、そんな感じでお察しの通りカーブの向きを含めた波ダッシュ問題というやつはコード的にもいろいろと厄介なことがあるのだけど、厄介な話をすると長くなるので、それはそれとして……ただ、ちょっとだけ余談でいうと、このあたりのところも現在ではUnicodeが言語学的ルールを深く追求しないままスーパーの駐輪場に倒れている自転車を元に戻してあげるくらいの軽い気持ちで修正してしまったこともあって、データ処理的な観点で言えば、以前よりは問題の混乱の度合いは緩和されてはいるはず……多分。さて、デザインの話に戻ると、調和的な観点からチルダは一般に小文字のnの左右幅よりやや小さめにデザインするのが望ましいとはされているので、使いたいフォントにチルダ付きの文字がない場合ASCIIキーボードの左上のパンクチュエーションなチルダ(U+007E)で代用するとデカくなりすぎるので注意が必要だ。また、QをOとチルダの合成と見立てて、扱いの面倒なQのテールとチルダのデザインを揃えてしまう……という考え方もあるが、そのケースの場合にはテールの位置に気を配らないと「Qの形がOの下に発音記号が付いたようでまったく気に入らない」などと偉い人を不快にさせてしまえるという……まぁ、そういう効果も期待できる。

à Ẽ Ĩ Ñ Õ Ũ Ṽ Ỹ

Tofu 前に何かの時に説明したような気もするけど、日本の組版の慣習で正しい文章が入っていなかったり、文後送だったりした場合、入る予定のスペースの分だけ別の記号で埋めてこの部分はアタリですというようなことを示す……と、まぁその文字のことを下駄文字とか豆腐文字とか言っていたのだけど、それが転じてコンピュータ上でデータを呼び出したときに呼ばれたものに対応する字形が見つからない場合に表示される文字のことをこう呼ぶようになった。いろいろな理由から初期のコンピュータ環境下で日本の文章を表示する場合に頻出し、アルファベット環境下ではまず滅多に起こらない現象であったため日本語の言い方が輸入されそのままの意味で使用されている。豆腐と呼ばれるからと言って別に四角い形にデザインしておく理由もないので、自家製フォントを作成するときなどに、/.notdefというキャラクター位置になんでも好きなようにグリフをデザインして作成しておけば、通常はそのフォントでは豆腐文字がその字形で表示されるようになる。

Tréma/Umlaut/Dieresis トレマとウムラウト、ダイエリシスはホモグリフで、発音記号として見た場合はそれぞれトレマといったら分音符、ウムラウトといったら母音交替符号の意味になるので、ごっちゃにするとアレだけど、日本語の場合ではこの発音の差を文字にして意識的に使い分けることはほとんどないので対応する表記方法はない。敢えていう話では無いけれど、形は似ていても日本語の濁点とはまったく別。母音交替符というのは「あ̈」って書いて「え」って読ませるとか、分音符の場合は「お̈」って書いて「おお」ってなるみたいな感じ……って、いや、まぁ適当ですよ。え? エロマンガの「あ゛」? う〜ん、喘ぎ声の表現に発音だの記号的にどうこうとか言い出すのも野暮だとは思うけど、まぁ分音符に見えなくも……まぁそれはともかく、話を戻すと、グリフの形としては、対象の文字の上に点を水平に2つ打ちし、点の形もそのフォントのドットデザインに揃えるので、そのフォントのピリオドが丸だったら●、四角だったら■というふうにはなる……のだけれど、iやjなどのひとつ打ちのドット、つまりdotaccentのデザインとの混同を避けるため、普通はそれらのドットよりはやや小さめにデザインすることが多い。また、それぞれのドットの位置も文字を並べたときに上下しないように揃えておく必要もあるんだけど、揃ってないフォントもあったりするからフォントが間違っているのか無理に揃えなくてもいいのか……まぁ、そのあたりはケースバイケース。頭が悪いとかデザインが下手とか思われたりして俄に変なマウントとられ、たいして大きくもないプライドを傷つけられたくないというのであれば普通一般には揃えてデザインしておく方が無難。また二つのドットの間隔は下の文字の字の幅に合わせてちゃんと調整すると、フォントのデザインも、よりクレバーには見える。さらには古典的な方法でウムラウトを母音交替の起こるE音……小っちゃいeの字を点々の代わりに表記するというやりかたで、それを文字の上にデザインしてウムラウトに換えるというようなフォントも存在していて、これをすると現代でも上品でオーソドックスな印象にはなったりもするらしいけれど、まぁドイツ人やアイルランド人ではないのでそこら辺の感覚はよくはわからない。他にも文字の中のスペースにふたつのドットを縦組にして突っこんでしまうとか、文字高からcapheight分を削ってその部分にドットを追い込んでウムラウト付きの文字と普通の文字の高さを同じにしてしまうとか、あげくの三八には怠け者のウムラウトと呼ばれるような横棒一本のマクロンで代用してしまうという乱暴な方法までと……まぁ、いろいろあることはあるのでグリフ全体の一貫性を保てるのならば好きにすればいいと思うの。

Ä Ë Ḧ Ï Ö Ü Ẅ Ẍ Ÿ ẗ


アイジェイアキュート オランダ語で必要とされる文字なんだけど文字コードがない所為で……って、まぁこのあたりは非常にややこしくて、俺なんかがガタガタ言うよりGlyphsのページに立派な解説があるので詳細はそっちを見て貰ったほうがいいんだけど、これを単一のグリフとして扱うのか合字として見るかはいろいろ意見がある。Opentypeにはいくらでも簡単に合字を設置できる機能が隠されていて……いや、まぁ別に隠れた秘密でも何でも無いんだけど……その機能を使ってフォントに文字のペアを合字として設定することが出来るようになっている……んだけど、ここにもいろいろ問題はあって2つ以上の文字が絡み合って一つの合字になっているものならまぁ、文字がくっついてひとつになるからそれでもいいのだけれど、出っ張りとへっこみが絡み合ってインターロックするような場合これを合字で作ってしまうと、接近している場合はまぁいいんだけど、字間を開ける場合、合字を1文字で作ってしまっているのでカーニングの調整が利かないから、まぁちょっと申し訳ない事態が発生する。さらに、オーソグラフィー的にはこの字の間の離れている文字を合字の1文字として見るのか二つの別々の文字なのかどうかとか、ハンガリーなら二文字で一文字とかってカウントするけど、他の国ではそうならないとか、いくらハンガリーでも合字の字間は多少は一緒に調整したほうがいいとか、いろいろそういう複雑な事情もあるから、そういうような場合どうするかとかもいろいろと配慮は必要にはなるんだよね。まぁ、今回はまったく考えてないんだけど。


アルメニア文字【Հայոց գրեր】以前にも書いたのでそちらを参照。デザインも……まぁ手癖だけで起こしてしまっているような部分もあったりするから、どうなんだろう……調子に乗って合字をいろいろ作ってしまったので、そちらに問題がでるような気もする……あとアルメニア卍字(Eternity Sign)のデザインを悪乗りしているのに……たいした意味は無いです。


アプロプリエーション これに関しても前に書いたのでもういいよね。


インシュラー【Insular script】アルファベットの古い書体のことで、アンシャル体がハーフアンシャル体になってアイルランドでインシュラー体になった。それで、このデザインがあまりにも格好良かったので、これが大陸のカロリングにも影響を与え、そこから段々今の書体みたいな……って、そういう言い方するとまたまたかなり雑なうえに、いろいろと間違ってもいるんだけど、まぁここは言い出すと長くなるからあれで、ざっくりはそういうイメージでアイルランドが産んだナショナルアイデンティティーな書形ぐらいな感じに理解して貰えればいいんだけだけど、そういう感じなのでアイルランドでは今でもこの異体字に見える字形が大事にされているという理由からか、この形が必要になったりするケースがあったりもするので、Unicodeでも特別に居場所が割り振られている。この字形は古英語で必要とされるアッシュやエスやソーンなどのラテンではない文字の仲間と違ってあくまでもラテンアルファベットの異体字なので……まぁこういうとフォントを変えて書体を選び直したり、字形の切り替えで済ませば良いだけの異体字にコードを振り分ける必要も無いような気もするんだけど……フォントスタイルが同一でも一部にだけインシュラー体……もう少し正しくいうとインシュラー体由来の字形が必要になったりするというようなケースもあったりするようなので、泥縄式にLaten Letter Insularが登録されていて、このあたりの仕組みが拡張されている。今では古典的字形はUnicodeで他にも数学記号の仲間でフラクトールをAからZまで大文字小文字レギュラーとボールドで2セットも別コードが贅沢に割り当てられていたりもするんだけど、インシュラー体はUnicodeでもまだDFGRSTのたったの6文字しか位置が定まっていなくて順番もバラバラで、大文字小文字に記号を含めても2進4桁で収まる程度の量で中途半端な感じにコード化されている。JKQVWXYZの要らない伝統的なゲールのアルファベットに限ったとしても18文字は必要なので、なんともやりかけな感じなんだけど、まぁといってもユニバーサルにはGの異体字のインシュラーGがあれば十分という感じではあるうえに、字形だけのことなのでインシュラー体がないとアイルランド語の表記に重大な問題が発生するのかというと、まぁそこまでというわけでもないんだけど……ただ、今思いついたけど、逆に考えるとエール専用アルファベットならUに対するVとか、左下の突き出るJとか、斜めの扱いが厄介なXとかKとか、ベースラインを下にはみ出すQとか……そういうデザインの扱いの面倒くさそうなグリフが一気に不要になり小文字を入れてもたった36文字なので制作者に優しい天使のような……いや、まぁ、何でも無いです……ちなみに現代のゲール語ではVとかZとかも普通に使うらしいから。


大文字のエスツェット【ẞ・Eszett/Scharfs/German-Double-S】形はギリシア文字のβに似ているけどベータを代わりに使うと怒られるというドイツ語で使用される文字で、語頭にこの文字が来るということを想定していない所為で最近までは大文字形が正式には存在していなかった。まぁ正式にはというところが味噌なんだけど、そこはともかく、そのためタイトル文字を全部大文字で綴るとエスツェットだけ小文字になってちょっとみっともないことになるから代わりに大文字のSSで代替するというルールになってもいたんだけれどそうするとマッセ基準マーセも曖昧になってしまい……というように、まぁいろいろと不都合もあったので19世紀から議論は延々続いていたんだけれど2017年になってようやく大文字字形がキチンと制定されることになった。まぁドイツ人には珍しくと言うべきか、ドイツ人らしいというべきか、とにかく百数十年かけてダンスは終わり、ようやく会議は決着を見たという話なのだけれど、ただ、まぁ、そういう事情なので、オーソドックスを重視するケースではいまだに「大文字では可能な限りSSで綴れ」などという話もあるようだし、決着したと言っても字形の細部についてはまだいろいろとあって、これをどうデザインすればベストなのかという問題も大きい。そもそも大文字のエスツェットがアンファミリァな……つまり、まぁ、親近感も伝統的な慣れ感も馴染みもないという感じなうえ、そういうトコロに来て、もともとエスツェットが大文字より天が高いアセンダー高でデザインされることもある小文字だったこともあって、大文字と小文字の差がわかりづらくなってしまい、後から追加された大文字のデザインが下手すると小文字のエスツェットよりも小さく見えるとか、なんかそういう残念なことになったりもするので、本当はフォントの小文字のßの見え方のデザインと纏めて再設計し直した方がいいといえばいいのだけれど、使用実績の長いまともな書体ほど、そうはいってもそういうわけにもいかないしなぁ……とかいうこともあったりはするので、この調子だとまぁ多分決着するには、さらに後百年単位の時間が必要になる。ちなみに日本語のフォントでは、まともな活字でもこの大文字のエスツェットをサポートしているというフォントは皆無と言って良いほどの状況なので……つまり日本では、大文字のエスツェットを名乗る大人気アイドルグループが誕生するというのならば話は別だがそうではないので、まぁ困ることも無いからなぁ……というその程度の扱いだ。Macの英語キーボードには無い文字なのでこの文字の大文字を一発で呼び出す方法は無い。MacではOption+sでは小文字のßが打鍵できるがCapsLockを押し込んでいるとOption+Sでアイアキュート、Option+shift+sでは画面をスクリーンショットしようとするので注意が必要だ。ドイツ語のキーボードでもshift+ßではハテナになるので、今はOption+gで入力する必要があり、頻繁に必用とされるようなら……キーボード入力のマニュアルでの再設定が必要になる。


クオックグー【Chữ Quốc Ngữ】チュ・クオック・グー。ベトナム語のラテナイゼーション……つまりラテンアルファベットでベトナム語を表記する方法で𡨸喃チュノムで書くと𡨸國語。つまり国語の文字って……まぁそのまんまなんだけど、これが現代のベトナム語表記にも使用されている。ベトナム語は日本人……というか漢字文化圏の人にとっては意味が取りやすいチュノムの表記の方がわかりやすいといえばわかりやすかったのだけど、こちらは現代では日本語の蕎麦屋の看板の変体仮名と同様に、デフォルトで読み書きできる人も少なくなり、お店の看板ぐらいでしか見かけなくなった。チュ・クオック・グーのルーツは大航海時代で、耶蘇会のジョアン・ロドリゲスが現地の音節文字をラテン文字に書写可能にした日本語のローマナイズ化のローマ字というものを発明したことに端を発しており、そのローマ字に触発された当時ベトナムで布教活動を行っていたFrancisco de Pinaが、この方法ならベトナム語でもローマナイゼーションが可能なのではないだろうかと考えて、ちょうど喃語を教えていた新入りのAlexandre de Rhodesらと一緒に越南の言葉のローマ字化の手法を開発した……のが発端だったと伝えられている。ただ、まぁ日本語と違ってベトナム語は声調やらなんやらで発音でいろいろ複雑なことにはなるので、日本語のローマ字化ほどには単純には設計できなかったため、いろいろ工夫した揚げ句、ひとつのキャラクターに複数のダイアクリティカルマークを付記するという、そういう解決方法を選んでしまったため……こういう事態に陥っている。当初は日本語のローマ字同様教会とその周辺だけでしか使用されていなかったものだったのだが、フランス人が越南を植民化した折……って……いや、まぁ、このあたりのことはラテナイゼーションの良し悪しではなくて、そもそも漢字ですらベトナムからみれば借字なうえ、中国の支配下に入ったり入らなかったりしていたので伝統的な中国嫌いもあり、タイミングが良かったり悪かったりしたりしなかったりしていたりもしていたとか、そういうことも色々あるので、まぁお察しください。本邦にだって漢字廃止だのローマ字化だの言うケツの軽い偉い人もいたりするからね。タイミング次第ではこうなっていたかも知れないのだよ。ホント。

濁点と半濁点 今では当然のように日本語のカナとかなには発音記号としてちゃんと付けないと駄目な符号のようなイメージだけれど、これをちゃんと付けてテキストを言文一致に寄せてきたというのは高々第二次世界大戦後、亜細亜太平洋戦争以降の話で、それ以前は、まぁ、あってもなくても困らない程度の扱いではあった。そうは言っても過去に濁音や半濁音を示す記号がまったくなかったかというと、そういうわけではないのだが、室町までは表記法の揺れも激しく濁点に関しては一説には秀吉が天下統一の折、それまでバラバラだった表記法を現代風の「点ふたつ」の表記法に統一したなどということが言われている。半濁点のルーツはよくわかっていないのだけれど、安土桃山以前には存在していなかったが宣教師らによって必要とされたので、ラテン文字のダイヤクリティカルマークに由来して発明されたのだというはなしもある。その説をとると日本語のローマ字発明の経緯よりもさらに歴史は浅くなり、伴天連由来というのが気に入らないのか、他にも諸説色々と言う人はいるのだが、ラテン文字由来という噺よりもさらに根拠が薄弱な……いやまぁ、それはいいか。で、当然濁点も半濁点も全ての文字に付くわけでは無いのだが、一般的な用法とは違ったやり方もあり、過去には電信用暗号コードとして全てのカナに半濁点を振った文字をやりとりしていたということもあった。まぁ、こうなると、なんて発音するのかもわからないから発音記号としてはもはやまったく意味を成さないけど。さて、これを外人にも説明するように説明すると基本的には文字の終わりで筆を親文字の右上まで振り上げたときそこにポイントされるのでグリフの枠内に左上に置かれ文字の下や上中央に置くということは普通はしない。サイズや形に厳格な決まりが存在しているというわけでもないのだが、欧文のセリフにあたる明朝体の場合には一般的に濁点は傾いた涙滴型で書かれ、この形は書道の筆の終筆に由来する。並行、もしくは右上がりに並べられふたつの点は分離していることが理解出来る程度には十分接近していることが望まれる。逆にサンセリフのゴシック体では普通はティアドロップスタイルを採用しない。希にだけれども、下がって上がって下がるという逆向きチルダ記号で描画してしまうというケースもある。

組み方向が縦でも横でも基本的には右上(ブルーラインの交点)に位置していて、そこを外れる場合でも垂直位置は右に揃える……というのが基本。

半濁点の場合、点の代わりに丸を描く。丸の円はセリフもサンセリフもほぼ正円でストロークにコントラストが必要とされることも殆ど無い。これらのデザインはグリフセットで統一されているのが望ましく、それぞれの視覚的高さも一定であることが推奨されるが、グリフ幅に収めることが最優先とされるので必ずしも揃っていなければならないという強い強制力が働くというわけでは無い。「て」や「タ」など上が詰まって下や右中にスペースが開けているグリフの場合、その空いたスペースへダイヤクリティカルマークを突っこんで平気な顔をしてしまうという猛者もいる。その場合も基本的に位置は文字の書き順の終わりに鎮座しているため縦組で見たときに垂直方向での位置がぶれなければさほど問題無いなどというスタンスではあるのだが、もちろん濁点がその位置に置かれた書体を仮に横組みにして使っていたとしても濁点の位置がおかしいなどと文句を言う日本人は見たことがない……というか、そもそも日本人にあまりそういった部分にまでにアイデンティティを求める感性は無いようで基本何でもいいと思っているようだから、マルが楕円だったり♥だったり濁点が●やら★だったりグリフ幅から飛びだしていようが左右の濁点のサイズが違っていても濁点の並べ方が垂直方向であってもダイヤクリティカルマークが親文字の右上のスペースをバクバク喰ってしまっていてもサイズが不都合に大きすぎても小さすぎても、想到におかしなことになっていたとしても日本人を怒らせて国際問題を引き起こすなどという心配をする必要はまったくない。だからまぁ、やりたければ好きなようにデザインすればいいとは思うけど、ただし、日本人の「まぁ、いいんじゃないの」という言葉はあまり信用しない方が良い。こう言われたらかなりおかしなコトにはなっていると考えた方がよいケースは多い。でも、まぁ、そんな細かいことよりはやっぱりデザインは格好良さのほうがよっぽど大事なんだと思うよ。

日本語フォントの設計ルールをかなり逸脱してしまっているから良い子は真似しちゃダメだよ。


チェロキー文字【ᏣᎳᎩ ᎦᏬᏂᎯᏍᏗ】ほぼほぼレッドデータブック入りの言語でGlyphsのデフォルトだと文字体系に選択肢が出てこないのでスルーしてしまっている人も多いかも知れないけど現在でもオクラホマ東部でギリギリ踏みとどまっている言語の文字。単純に形態だけで分類するならば風変わりだけれど一応これもラテン文字の仲間と見ることも出来る。19世紀初頭に北米大陸東側の原住民チェロキー族の作った音節文字で、白人の持っていた喋る葉っぱに感銘を受けたᏍᏏᏉᏯが独力で作り上げたといわれる人工文字だ。仲間内でも一悶着はあったけれど直ぐに受け入れられ発明後のわずか十年足らずといったところで彼らと周辺のコミュニティによって活発に利用されることとなる。当時チェロキー族においてはほぼ100%、子供ですらこの文字を読み書き可能だったそうで、それが事実なら同年代に近所で銃をバカスカ撃ちまくっていた……え? 今でも? まぁ、そこはともかく、そういうことで、銃を撃ちまくるトラブルは何でも銃が解決するというフロンティアスピリッツ溢れる野蛮な入植者連中の同時期の識字率と比較すれば、それを遥かに上回ってはいたので、文明の度合いが推し量れるともいえるといえばいえるのだが、その野蛮人に野蛮人扱いを受けてジェノサイドされ続けた結果、ユーザーは激減し、言語は20世紀の第一次世界大戦の頃にはもうドイツ人には解読不能な暗号と化して……いや、まぁ、そういう話はともかく、で、文字の話に戻ると、ただし、まぁ、たしかにデザインはラテン文字に似ているものも多いのだが、基本的にはᏍᏏᏉᏯのオリジナルで、アルファベットとの関わりは、実を言うとまぁ殆ど無いに等しいのだが、周囲をアルファベットに囲まれていたということと、活字化などの過程で中途半端にローマナイゼーションが進行した結果、今はアルファベットの亜種のように見えるまでにはなっているというわけだ。まぁ、こういった理由でラテン文字の仲間に区分けされるケースがあるということなんだけど、ただ、これは、文字としてみると漢字のように見えるから𡨸喃も西夏も漢字の仲間に分類するというようなもので、𡨸喃は、まぁ漢字からはアルファベットでいえばギリシア文字やキリル文字程度の差くらいにしか離れていないように見えるから良いとしても西夏文字は……漢字に影響は受けたのだろうから一見似ているようには見えるけど、似ているのは形だけでそれ以外は意味も音もシステムも中身は実はこれっぽちも漢字との関連が無いのと同じくらいには、チェロキー文字も、ご近所に居座ったラテンな文字のシステムとは形態以外の関わりは一切ない。まぁ分類なんてこんなもんだよね。

で、そのチェロキー文字だけど、文字の構造は仮名文字のような音節文字のシステムなので、まぁアルファベットと似ているところは書字方法と字型のみで文字の音も文法的な正書法も当然ながらまるっきり違う。チェロキー文字の場合Tが Iで i が母音のv(「え」と「お」の中間ぐらいの中舌中央鼻母音でよかったんだっけ?)で「A」が「ご」で「D」が「あ」になり「H」は「み」だけど「h」は「に」さらにWは異体字同士が別の文字になり、中央の二本の斜線が交差した「W」は「た」だけど交差しないで上で接続する「W」は「ら」……まぁ、なんか、こんなようなことになっているので下手にアルファベットの発音知識があるとまったくわけのわからないということにはなる。基本的に大文字小文字の区別はないのだが、それでもラテン文字に似せて大文字小文字で綴ったりすることはあるのでUnicodeにはスモールキャップ字形が小文字としてコード化されている。あとこちらはコード化されてはいないけど活字体以外に筆記体字形というものもあって、まぁこれも大分字形が変わっていて生半可にラテン筆記体の知識があるとかえって大混乱……というか、まぁ、普通に初見殺しにはなっている。また、それ以外にもネイティブアメリカン特有の多様なシンボルなどが山のようにあることはあるのだが、それについても……いろいろあるんだけど、コード化されていないうえにまとまった資料も見当たらないということもあって、今回はそのあたりのグリフ化は見送った。そういうような事情で、今回のように何かの意匠に寄せてデザインを起こしていくというような野蛮なことを考えると、このアンファミリァな字形では活発に使用されていた期間の長さが短いのと中途半端なラテナイズが影響して、文字のスタイルに一貫性が足らなく見えるという部分もいろいろとあるので、こちらで勝手に整理し直してデザインを相当弄ってしまっている部分もあるから、まぁ、ここがダメとか、あれはこうすべきだという問題をご指摘の関係者の方々に置かれましては是非コメント欄へ、お気軽に。

ホモグリフ【homoglyph】同形異字。見た目はほぼ同じで全く区別がつかないけれど意味が全然違うというグリフのこと。漢数字の1と横組の伸ばす棒の組み合わせとか、アラビア数字の壱とラテン文字の9番目の大文字と12番目の小文字と縦組の伸ばす棒とVertical LineのBarとか……まぁ言わなくてもわかると思うけど、そんな感じのアレ。トレマとウムラウト、ダイエリシスは現在ではまったく同じ形だが、前にも言ったけど、もともとは別の言語で別の目的で使用されていて、ルーツも違い、最初は別の形をしていた。今ではデザインの上でもまったく区別が付かないし区別をつける意味もあまりないので基本同じモノを指しているという理解でも多分そんなに問題は起きないだろうけど、基本的には別のモノということになる。ただ、同じホモグリフの仲間の数字のゼロとアルファベットのオーや、小文字のエルと大文字のアイと数字の1などとは違って、同じ言語や文脈の中でトレマとウムラウトを使い分けるといった可能性はほぼほぼ考えられないためUnicodeではコード上でも区別はない。これとは逆に見た目は違うけど役割が同じという……言い方を変えるといわゆる異体字のようなモノのことはシノグリフと呼ぶ。

モノタイプ【Monotype Imaging】このアメリカ企業がフォント関連でどれだけの知財を買いまくっているかというと、Berthold、Agfa、Linotype GmbH、International Typeface Corporation、香港のCTDL、Bitstream、MyFont、FontShop、FontSmith、URW、H&Co……あとなんかまだいろいろあったような気もするけど、まぁいいや、それで、特にH&Coの買収のときはいろいろな意味で業界を震撼させた出来事であった……と巷間いわれることもあるんだけれど、まぁ、ともかくそんな感じで、ユーザーの立場からすれば1社のライセンスで全てのフォントが使えるのは便利かも知れないけど、業界全体の知財やコントロールが一社に委ねられるというのも長い目で見るといいのかどうかというところで、いろいろと懸念はあるという感じの人も少なからずは存在する。まぁ、AmazonやNetflixのやってることに比べれば業界自体はたいして大きくもないので独禁法云々はあまり関係はないのかもしれないけれど、フォント字形を民間一社が独占して……いや、まぁそういう話はいいか。ブルームバーグによるとこの会社は現在40億ドルという金額で売却が検討されている……なんで?

ラテナイゼーション【Latenization】非ラテン文字圏の言語をラテン文字で表記すること➡ローマナイゼーション

ラテン文字 狭い意味では、まぁ、いわゆるAtoZのスタンダードなローマンアルファベットのことだが、ここではフェニキア文字の子孫からセムやアラムなどを除いた残りの東ギリシア系統の文字の影響下で誕生した文字を全てひっくるめて、それらの仲間ということでラテン系と呼んでいる。ルーツから言えば本来ならばギリシア系と呼称すべきなのだろうが、「ギリシア系」と「ラテン系」とを比較するとあきらかに言葉の放つユニバース感が後者の方が遥かに大きいのでローマ帝国が勝利してラテン系と称している。なので、まぁギリシア文字やキリル文字、もちろんローマ文字をもひっくるめてラテンといっているのだけれど、東西冷戦でキリル文字のところに壁を作ってしまったので、釣られてギリシア、アルメニア等々が脱落してローマ字圏のみがラテンだ、例外は認めないという立場の考え方もある。なので、そのあたりは……まぁ、文字も歴史も人々の立場も複雑なのでいろいろなものがいろいろと相互に影響し合っているということもあるから、あまり厳密なことをいいだすとだいたいはボロが出てくる上に、書いている本人もあまりものを考えず適当に広い意味にだったり、狭い意味にだったりと、そういうことをほとんど意識しないで使っているから……まぁこういっちゃぁなんだけど、そういうわけなので、こういう細かい事は気にしない。

ローマナイゼーション【Romanization】非ローマ字圏の言語をローマ字で表記すること、ラテナイゼーションともいうけど、ラテナイゼーションというとサウンドがラテン化するような感じもあって、マンボやチャチャでなんだかだんだん陽気になってくるイメージなんだけど、言語や文字のラテナイゼーションというと近代化の過程での文化侵略的なニュアンスで語られることが多く、あまりハッピーな話にはなりにくい……のだが、まぁ近代文明が日本を除くとほぼほぼ西欧中心で発達していったという側面もあって、なかなかにそのあたりのことに対してイズムや安い正義感で語り始めるというのもホントよくないと思う……と自分で言ったりやったりしておいてなんなんだけど、ワンパッケージで多言語対応なんて虫の良い話にもこういう側面はある。何かをグローバルに対応させましたとか、ユニバーサルデザインに配慮しました的なことを言うと、おおむねは何か良い仕事のことのように喧伝されるけど、そうでもないのレベルから積極的に状況を悪化……まぁ、また、こんな話を短い文章で説明しようとするとアレだから……ぼやっとした言い方をすれば特定の考えに拘泥するあまり作為的な誤謬に落ち込んでいることに気がつけなくなって傍から見れば明らかに間違っているし自分でも薄々気づいてはいるんだろうけど快楽でその手の悪事に加担するのがやめられなくなるという……いやぁ、まぁ、こういう言い方もあれだなぁ……まぁ良いとか悪いとかの部分を外していえば、ローマナイゼーションとは「一つのモデルに世界を集約してしまう運動」でそのモデルというのがローマ字というわけだ。コレが問題だと思えば問題になるし、理想郷だと思えば理想郷になるというおはなし……単純化すればまぁそういうことなんだけど、いろいろなユニバースに配慮したと嘯いて最終製品をワンユニバースにパッケージしてしまうという事の結果の次第がどうにもこうにも気持ちが悪い。できれば現実は意図的だろうが成り行きだろうがボクの考えた問題とボクの考えた理想の間のどこかで常にフラフラしているほうがホントはよっぽどいいのだけど。さて、まぁ、話を戻すと、勿論そういう言い方をすれば当然文化帝国主義的な文字の歴史は西欧だけの十八番というわけでもなくてアフリカのアラビア文字化とかユーラシア中央におけるスラブ文字とか周囲のローカルを根刮ぎにしてしまうようなイカレた事象はいくらでもある。まぁ、今は欧米圏に勢いがあるように見えるけど、何世紀かのスパンで見ればこれは容易に必ずひっくり返る……ただ、ひっくり返っても相変わらず「一つのモデルに世界を集約してしまう運動」という性格は変わらないんだけど……って、いや、まぁそういう噺も、まぁどうでもいいんだけどね。


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