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ローマンキャピタルのプロポーションと黄金分割

さて、今回は前回の続きで、ローマの時代風のローマン体を作るおはなし。と、いうか前回のフォントに足をつけていくのだけど、これをどういう風にするかというおはなしになる。その前に基礎的な知識として、ローマン体とはどういうフォントかということは……まぁ、他でいろいろちゃんとした解説をしてくれている人が大勢いるので、詳細はそちらに譲るとして、一般に、広い意味ではJensonやGramondやPalatinoやAldusのようなルネッサンス時代のイタリアンフレーバーなフォントやTraja

    • ローマ数字とローマン体

      数字の79を「七十」「九」のように比較的合理的に数えられる日本語という言語から見ると、79に「六十たす十たす九」とか、「四」と「五と十」と「三倍の二十」とか、「四倍の二十より一少ない」などという79のためだけにあるような単語が存在する言語は頭がおかしいとしか思えないかも知れないけれど、まぁ、こういうものもいろいろな歴史と伝統と事情によってこうなっているということはあるので、こういうエスニックジョーク的な軽口を偉い人があまり公の場で言ったりするのはちょっと昔ですら国際問題になっ

      • FontLab 8:手書き風フォントの作り方

        何かをデザインするにあたって、その作業においてコンセプトや雰囲気、スタイルなどなど、そういったものに一貫性があるかどうかということは、ある意味デザインという作業における基本のキなので、そのことについてとりたててなにか特別に重要なことでもあるかのようにあえて特筆して云うようなおはなしでも無いような気もするのだけれど、最近では「デザインでスタイル、ユーザーインターフェイス等々に一貫性を持たせるルール」というような意味で「トンマナ」というどうにも間抜けな語感の略語がビジネス用語とし

        • 世界で一番利用されているフォント

          世界で最も使用されているとか、世界で最も頻繁に利用されているフォントは何かという質問には、よっぽど気の狂ったへそ曲がりでもなければ誰に聞いてもたいていは、まぁ概ねヘルベチカという答えが返ってくるはずだ。多少気の利いた人か詳しい人にでも尋ねれば、Helvetica以外にもArial、Avenir、Baskerville、Bodoni、Calibri、Cambria、Courier、Didot、DIN、Franklin Gothic、Frutiger、Futura、Garamon

        ローマンキャピタルのプロポーションと黄金分割

          あまりにもやっかいなOpenType Features

          さて、まぁ、前回、実はこの本の話をしようと思っていて、パンクチュエーションなネタを引っ張ってきてはいたんだけど、また、いつものごとく書いてるうちにそのことをすっかり失念していて……まぁ、今更感想文書いても仕方が無いので、今回はまず先に、そのときご披露しそびれていたその本の紹介だけをしておくのだけれど、こういうヤツ。 ネット上にはもうだいぶ感想文が出そろってきてしまっているので、今更ここで追加することは何も無いんだけど、ただ、まぁ、著者も訳者も立派な先生だからといって……セミ

          あまりにもやっかいなOpenType Features

          colon:semicolon;comma,period.

          コロン、セミコロン、カンマ、ピリオドはまぁ、欧文用の記号で日本語では点、丸。(括弧)と一緒に括って約物という種類に分類される所謂パンクチュエーションマークというもののお仲間というやつになるんだけど、欧文専用記号というわけでもないので、この意味や形が和文のテキストでも利用されていないわけではないというのはご承知の通り。 まぁ、ただ、利用されるといっても約物の正書法は現代でもまだフラフラしている部分が多いのと、こちらもご承知とは思いますが、コロンやセミコロンは和文と英文では使わ

          colon:semicolon;comma,period.

          多言語対応

          業界のファウンダリーを片っ端から買いまくっているフィラデルフィアのLanston Monotype Machine Company改めMonotype Corporation改めAgfa Monotype Corporation改めるところのMonotype Imaging Holdingsことモノタイプが、欧文だけでは飽き足らずということになったのか、TDCWinnerの某日本人ディレクターに唆されたのかどうか、そこのところはまったく知らんけど、とうとう日本企業の知財買収に

          多言語対応

          生成AI?っぽい立体感のあるフォントを作る

          AdobeのCreative Cloudがプチバージョンアップして、いよいよ本格的にAI化の波が押し寄せてきたというかんじなので、今回は予定していた話と差し替えてこの話題から。 その昔、前世紀にSF作家のIsaac AsimovはThree Laws of Roboticsという……日本ではロボット工学3原則で知られる架空のロボット安全装置を考案し、これが現在の人工知能の倫理問題にも大きな影響を及ぼしているとも言われていたりもするのだが、この「①ヒトに危害を与えないこと。②

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          生成AI?っぽい立体感のあるフォントを作る

          Multilingual support, Greek letters? Πολυγλωσσική υποστήριξη, ελληνικά γράμματα;

          さて、今回は前回の続きから。前回のホーンテッドなフォントにいろいろ追加していって多言語に拡張していこうというおはなし。どこまで拡張するかというのはやっていくとキリが無いけど、Statistaの調べによれば今年の1月時点でのWebコンテンツで最もよく使われる言語は58.8%が英語、次いで5.3%のロシア語、4.3%スパニッシュ、次に同率3.7%のフレンチ、ジャーマンでジャパニーズが第6位の3%、次にトルコの2.8%となるので、文字としてはほぼほぼアルファベットに支配されている。

          Multilingual support, Greek letters? Πολυγλωσσική υποστήριξη, ελληνικά γράμματα;

          ChatGPTとOpenType FeatureでCultural Appropriationする話

          芸術的な定義としてAppropriationと呼ばれているある種、サンプリング行為というものは、マルセル・デュシャンが便器に署名して悦に入っていた頃の時代ならばともかく、21世紀にもなるともうかなりこのあたりの解釈はかなり複雑化して、今ではいろいろと面倒くさいからクリエイターにやらせるなら全部AIに描かせたほうが遥かにマシで問題も起こりにくいのではないだろうか……などという話すらある。まぁいくらAIに普通の常識が通用しないからと言って、じゃあ連中はどこからどういうふうにアプロ

          ChatGPTとOpenType FeatureでCultural Appropriationする話

          FontLab 8 解説の多分第11回目…LINE Seed Variable を作ってみた

          今回でいよいよLINE Seedのバリアブルフォントが完成する。さて、まぁ他人の褌で相撲を取りにいっているというこのおはなしの前回までの工程を、通常一般普通に保存するのであればSaveだけで必要十分なのだけれど、それだと保存されるデータはソースのファイルのままなので、このデータをフォントとして利用するためにはこれをきちんとパッケージに変換する必要がある。つまり、作ったモノを使えるようにするためには、アプリやオペレーティングシステムでサポートされるいずれかの形式に変換してフォン

          FontLab 8 解説の多分第11回目…LINE Seed Variable を作ってみた

          今年最後の……FontLab 8 解説 

          さて、来年辺りにもうそろそろ技術的特異点を突破しそうな勢いでAIの爆発的進化が止まらないので、もはやシンギュラリティしてもクリエイティブな仕事はAIに取って代わられにくいから大丈夫などというような暢気なことは言ってられなくなってきて、なんだったら今ならアートやデザインの分野なんてクリスマスセールの割引期間中で、それを過ぎたらすぐにでもAI使った金儲けの稼ぎ頭になるほどの勢いなんだけど、多くの社会学者なんかが読み間違っていたこのヒトのクリエイティブは機械にわからないはずだという

          今年最後の……FontLab 8 解説 

          FontLab 8 解説

          門松は冥途の旅の一里塚目出たくもあり目出たくもなし 癸卯正月……ということで、タイトル画像は、まぁ少し気が早いけど年賀状。よそ様の墓石にストリートアートしたような……え? 只の落書きにしか見えない? まぁ、そこはともかくそういうことで、FontLab8でLINESeedを改造しようというシリーズの何回目だっけ? まぁ、いいか。もう、ナンバリングするのも面倒になってきた。前回フォントファイルをオープンするだけのところでも、そういう面倒くさいことになっていたのだけれども、それだけ

          FontLab 8 解説

          FontLab 8 解説その7

          さて、まぁ、今回は前回予告した内容なんだけど、まぁその前に雑談というか、前回言おうと思ってて忘れてたことで、少し話しそびれたFontLab8のカラーパレットについてメモしておく。新しいFontLabではフォントウインドウで選択したグリフのカレントレイヤー上の全ての要素にカラーパレットの右下からApplyすれば一遍に同じ要素を適用出来るようにはなったのだけれど、同一レイヤー上の別エレメントに別のカラーを設定してある場合、要素をロックしておこうが不可視にしておこうがそれもお構いな

          FontLab 8 解説その7

          FontLab 8 解説その6…カラーフォント…と次回予告

          世界中で何カ月もこれだけ大騒ぎしているにも関わらず、これで検索しても日本語での情報は何も一切引っかからないというそのマジックワードなメッセージは何だと思う人もいるかも知れないけど、まぁ赤でも黒でも緑でもない色なので、ちょうどいいからコレにした。ムアドデイブの神権政治よりハルコンネンによる独裁のほうが遥かにまともだったということになると都合の悪い人たちは大勢いるようだけど、だからと言って単純な話なのにクソなものにクソと声を上げないっていうのはホント駄目だと思うよ、日当貰って座り

          FontLab 8 解説その6…カラーフォント…と次回予告

          FontLab 8 解説その6

          さて、前回の続き。なのだけれど、下の記事を読んで、途中で余計な事を思いついてしまったため、文章構成を大幅に変えたり……まぁ、いろいろとしてしまったため、時間も開いて話が全然旬ではなくなってしまったような気もするのだけれど、仕掛かりでもあるので、続きを淡々とすすめます。 さて、今回の話はバリアブルフォントの話がメインになるので、数学的……といってもたいしたはなしはしていないのだけれど、一応用語について先に注意しておくと、本文中で頻出する可能性が……多分高くなるであろう補間、外

          FontLab 8 解説その6