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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2024年7月の記事一覧

禍話リライト「猫仙人」【怪談手帖】

つい先ごろまで、高齢者の見守りや支援の仕事に携わっていたというBさんは、いろいろと奇妙な体験をしている。 その中でもとりわけ特異で、できれば思い出したくない一件があるという。 近隣の住民からの相談で、とある男性の一人住まいが俎上に載せられた。 「俗にいう『猫屋敷』ですね、ご本人も軽度の認知症を患っていて、管理できているとは言えない状況だったようです」 少なく見積もっても、30匹程度の猫が出入りしているとのことで、鳴き声や糞尿への苦情が上がっていた。 「高齢化社会の流れ

【禍話リライト】『怪談手帖』より「魑(すだま)」

「ホントは私の頭がおかしかったということにしてしまえばいいんです」 投資家だという50代の男性Bさんは、そのように切り出した。 それを見たことを証明出来るものが、自分以外にいないのだからと。 「もう随分昔、息子がまだ小学校に通っていた頃。妻が趣味の登山中に亡くなりまして」 余りに突然のことで虚脱感、無力感もひとかたならず、更には詳細は伏せるが、非常に無為なことで妻の側の親族と揉め、絶縁したこともあって、鬱に近い状態になってしまった。 Bさん自身母子家庭で、老母は長年の無理

禍話リライト 怪談手帖『とっくに……』

以前、とある集まりで怖い話が話題となったことがある。 突発的だったこともあってタネはすぐに尽き、いわゆるブラック企業の怖い話が主役となってしまった。 僕(怪談手帖の収集者、余寒さん)は聞き役に徹していたのだが、座の終わり頃になってお鉢が回ってきた。 結局、自分の知るその系統での怖い話。『つ』というひらがな一文字にまつわる怖い話を語ってみたものの、そこは語り慣れない素人の悲しさ。怖がってもらうどころか話の要点すら上手く伝わらず、何とも今一つな反応で終わってしまった。 (※禍話

禍話リライト「ボウコ」【怪談手帖】

20代のAさんが、社会人になってから何年かぶりで実家に帰省した時の話。 「仕事でいろいろあって…ちょっとだけ逃げたくなったんです……」 両親との会話もほどほどに、シャワーだけを済ませ自分の部屋のベッドへと倒れこんだ。 ずっと拭えない全身の倦怠感と、頭に纏わりつくモヤモヤとした感覚。 「体力には自信あったんですけどね、ずっと運動部だったし」 社会で必要なのは、体力だけではなかった。 同僚や上司とのちょっとした衝突や行き違いの会話が、いつまでも頭の中をぐるぐると巡る。

禍話リライト 怪談手帳【あみだかぶり】

Dさんのお父さんが、お爺さんから聞かされたという体験談。  「うちの親父がね、小さいころに聞かされてトラウマになった、っていうんですよ。 で、俺も親父から繰り返し聞かされているうちに話をすっかり覚えちゃって。 そんなもの受け継がないでほしいんですけどねぇ。 ま、実際なんていうのかな。 お化けなのかな、何だろう、って感じでよくわかんないんだけど……。 でも、やっぱり俺もめちゃくちゃ怖かったから、話しますね」  それはDさんのお爺さんが学生だった頃、地元で目撃された子供につい