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映画【個人的発掘良品】『インナースペース』

INNERSPACE
1987年 アメリカ
監督:ジョー・ダンテ
製作:マイケル・フィネル/チップ・プローザー
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ/ピーター・グーバー/ジョン・ピーターズ/キャスリン・ケネディ/フランク・マーシャル
脚本:ジェフリー・ボーム/チップ・プローザー
原案:チップ・プローザー
撮影:アンドリュー・ラズロ
編集:ケント・ベイダ
美術:ジェームズ・H・スペンサー/ウィリアム・F・マシューズ
衣装:ロザンナ・ノートン
セット:リチャード・C・ゴダード
メイクアップ:スティーヴン・エイブラムス/ロブ・ボッティン/ジョン・リゾ
特殊効果:アル・ブルザード/マイク・パリス/デヴィッド・ウッド/マイケル・ウッド
視覚効果:ILM
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
音響編集:ウェイン・オールワイン/テレサ・エックトン/ジェームズ・マシーニー/ジョン・ポスピシル
助監督:パット・キーホー
第二班監督:グレン・ランドール・Jr
キャスティング:ジェーン・ファインバーグ/マイク・フェントン/ジュディ・テイラー
スタントコーディネーター:グレン・ランドール・Jr
出演:デニス・クエイド/マーティン・ショート/メグ・ライアン/ケヴィン・マッカーシー/フィオナ・ルイス/ヴァーノン・ウェルズ/ロバート・ピカード/ウェンディ・シャール/ハロルド・シルベスター/ヘンリー・ギブソン/ジョン・ホラ/マーク・L・テイラー/ディック・ミラー/ウィリアム・シャラート/オーソン・ビーン

 ジョー・ダンテ監督について少しだけ記してみます。大好きな監督のひとりです。ロジャー・コーマンのもとで編集マンとして映画製作に携わりながら、監督デビューすると、『ピラニア』や『ハウリング』で注目されるようになった人。低予算の映画でも、アイディアを絞り技術を振るって面白味を引き出していく人です。昔から怪奇映画やモンスター映画とかSF映画の大ファンだったようで、そういう趣向とセンスの鋭さが合わさり、スピルバーグからも認められて秀作映画を次々と発表していきました。この人が監督する、ホラーの怖さ、SFの不思議さ、コメディの可笑しさはハッキリと感覚的で、編集技師だっただけに演技と映像の活きのよさが面白いんですよね。ジャンルに熱心で、技巧的で、センスフル。出世する感性を全部持ってるような、頼もしい映画監督ですよ。ロジャー・コーマンのもとに就いてから、スピルバーグに任されたり、脚本家のジョン・セイルズ、SFXアーティストのロブ・ボッティン、視覚効果のILMといった優れたスタッフや個性的な出演者たちに恵まれたのも大きいですね。そういう才能を引き出していった監督術。お見事ですね。

 さて、この『インナースペース』ですが、1987年なので、『グレムリン』や『エクスプロラーズ』を完成させた後の、脂の乗りきっている頃の一作です。空軍の中尉さんが潜航艇ごとミクロ化してウサギの体内に入り込む実験のはずが、トラブルに巻き込まれ、どういうわけかスーパーの店員さんの体内に潜り込む羽目に。中尉と店員さんの奇妙な一蓮托生がサンフランシスコ市街で大冒険。スパイ連中の悪だくみに対抗し、酸素が尽きるまでに体内から脱出なるか。そういうお話です。映画ファン、SFファンの人ならもう可笑しくなってしまうようなストーリーですね。そうそう、人間が小さくなって人間に入り込むといえば、手塚治虫の『吸血魔団』やリチャード・フライシャー監督の『ミクロの決死圏』とか、以前からいろいろ描かれてきました。今度はそのSFアイディアをアンブリン・エンターテインメントとワーナー・ブラザースが映画化。この年のアカデミー賞ではデニス・ミューレンが視覚効果賞を受賞しました。人が人に入り込むというのは、冷静に考えるとかなり怖いことですが、それをどれだけ面白く美的でサスペンスに描いてみせるか、作家たちの腕の見せ所というわけです。

 ということで、この映画の見どころはSF美術はもちろん、小さくなったデニス・クエイドと入り込まれたマーティン・ショートの冒険と掛け合いですね。中尉が体内から、このパッとしない店員さんに交信してアドバイスしたり、指示したりしてアクションをもたらす。「いいぞ。そこだ。落ち着け。さあ行け。よくやった!」と男2人でピンチを切り抜けたり、恋人相手に2人掛かりで思いと言葉を伝えたりするシュールさ、面白さ。こういう妙なSFロマンが出てきて粋ですね。そこへ悪そうな科学者や研究員や殺し屋なんかが出てきて、ピンチとスリル。いよいよどうなっていくか。ILMによる体内潜航映像のイマジネーション。体の中で最も小さな大激闘。『ミクロの決死圏』とはまた違う映画タッチ、SF美術を造りだして見せました。これは面白い科学の冒険映画でした。

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