詩ことばの森（54）｢音の雨」

音の雨

どこかで銀の鐘の音
白い音色をくりかえし
帰らぬ時間のながれ
彼岸に浮かぶ舟はかすみ
風に散る夏の花びら
緩やかな川面にゆれて

影　寄る辺ない人影
葉ばかりになった木々
遠くでサイレンが鳴る
重なり合う時間のながれ
黙祷の灯火がみえた
緩やかな川面にゆれて

人の波の静かさにまぎれ
細い声の途切れぬ祈り
白い音の雨はやまない
くりかえし呼びつづける
彼岸の舟に
散りゆく夏の花びら

どこかで銀の鐘の音
緩やかな川面をゆらして