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噴水の池 残暑の公園は夕暮れだった だれもいない道には 猫の姿さえ見ない 古い公園の噴…
木のうえの鬼 木のうえには 鬼が棲んでいて わたしたちの話をきいていたらしい 葉擦れの音…
昭和レトロ 暑さを言い訳に 僕らは酒を酌み交わした たがいに気を遣う仲ではない ここは昭和…
ハイビスカスの家 ようやく涼しい風が 吹くようになった ハイビスカスの花弁も どこかさみし…
文机の前で 毎日 原稿用紙に向かう ということをしてみた 言葉が 自然に浮かんでくる など…
野菜の思い出 昨日 買ってきた小松菜が 今朝にはもう うなだれていた 俎板のうえに…
夕立 遠くの空が光った 街は賑やかな夏の夕暮 空のうえから 龍の髭が覗いてる 鈍く青い鱗をまとい 街を見下ろしている 龍の大きな眼が 金色に輝くたび 空が繰り返し光る (森雪拾)
青い記憶 かけらに溢れている 池の底の水は澄んでいた 夏の終わりに 僕は見たのだった 知ら…
あの光は あの光は 雨上がりの空から 静かに降りてきた 家々の屋根を明るく染めて 街は は…
庭の樫の木 庭の樫の木に 鳩が訪れた 日差しの眩しさから おのが身を避けようと 繁った枝葉に…
むかしむかし 僕は気の利いたカラスに 川沿いの道で出会ったのだ 誰もいない岸辺を睥睨しなが…
穏やかな季節の村で 守りつづけた兵士たち 穏やかな季節の村に 静かすぎる夢を 君も見ていた…
叫び 濃い緑の木々は 夏闇をまといながら さらに上へ上へと 枝葉を広げていく そのとき 木々…
列車の旅 人の匂いがする土が 私の前を流れていく 低い山並みが 私の前を流れていく 白く光るのは川だ 畑や田圃を潤しながら あざやかな筆致のまま 旅の画帳に留めておきたい 車窓からのぞいている 私の姿を 空の上からながめている 画家の視線を感じながら (森雪拾)