詩ことばの森(219)「噴水の池」
噴水の池
残暑の公園は夕暮れだった
だれもいない道には 猫の姿さえ見ない
古い公園の噴水は止まっている
水の出口が赤錆びているが
子どもの頃は勢いよく噴き出していて
たくさんの人たちの憩いの場所だった
小さな子どもが水浸しになって
大きな声ではしゃいでいた
水が出はじめると 父親は子どもを抱えて池の外に出た
水が止まると ふたたび子どもといっしょに池に入った
池の水が 夏の光を漂わせて輝いている
大きな光と 小さな光が
水面に浮かんでいる
幻のように
(森雪拾)
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