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習慣ではなく、儀式をつくろう。 #263

友人に半年ほど前に紹介されて今も気に入っているニュースレターがある。その名も『Lobsterr Letter』。「毎週月曜7:00am、編集チームがキュレートした記事の要約をニュースレターとしてお届け」してくれる。自分では見つけられないような英語系メディアから「イケてる」記事を紹介してくれるからオススメだ。

今回はその中から自分のデザインを考えていくうえでキーワードになりそうな記事があったので、ご紹介したい(というより自分用にまとめておきたい)。それが『In the Next Era of Social, Build Rituals, Not Habits』である。


記事では、Facebook, Instagram, Twitter, TikTokなどを総称してBig socialと呼び、こうしたテック企業がdoomscrolling(無限スクロール)を習慣化させていることを指摘している。

ところで、習慣と儀式の違いとは何だろう? 著者は意識的かどうかとユーザーの費やすエネルギー(主に注意力)の二軸で説明している。つまり、習慣は無意識的で注意力を必要とせず、儀式は意識的で注意力を要するということだ。ルーティンはこの中間にあると考えることができる。

この儀式には、以下のような特徴があると書かれている。

1. It’s intentional. You consciously engage and are present.
2. It’s participatory. You’re active rather than passive.
3. It’s meaningful. It’s valuable beyond the action itself or any utility. It’s often emotional—e.g. nostalgic, fun, celebratory, identity-forming.
4. It’s consistent. It’s reliable in timing, expectation, quality, etc.
5. It’s finite. There’s a constraint around time, effort, or action itself.

日本語にすれば意図的、参加型、意味深い、一貫性がある、有限であるという特徴である。全てを逆にしてみれば、「なんとなくダラダラとくだらなくてランダムな情報を無限に見る」という最悪なSNSが誕生するが、これはまさに現状を表しているようにも思えるから恐ろしい。

こうした儀式系アプリの例としてBeRealなどを挙げながら、以下の6つの特徴があるとしている。

Give-to-get:アクセスするには投稿が必要
Limited supply:一度にアクセスできる情報に限りがある
Scheduled or timed release:情報が更新されるタイミングが決まっている
Bounded notifications:通知が少ない
Streaks:継続を評価する
Share mechanics:他のユーザーと体験を共有できる


以上が『In the Next Era of Social, Build Rituals, Not Habits』の概要であるが、個人的にデザインしたいことのエッセンスが詰まっていると感じた。というのも、先日New York Zen Centerで坐禅を経験したこともあって、「習慣より儀式を」というメッセージに共感を覚えるからだ。

ひたすら壁に向かって座り続けるというのは、資本主義的には何も生産的ではないしSNS映えもしない。でも、自分の内面を見つめるという儀式としては言葉では言い表せない「何か」がそこにあると感じた。

習慣(habit)、消費(consumption)、生産性(productivity)が中心の現代において、儀式(ritual)、鑑賞(appreciation)、意味(meaningfulness)が軽視されているという視点でデザインを考えてみたい。思えば『Lobsterr Letter』も決まった時間に限られた情報だけが送られてくるという点で、儀式的なメディアと言えるのかもしれない。

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