パーソンズ美術大学留学記シーズン2 Week11 #149

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今週から秋学期の授業登録がもう始まっています。まだ春学期は終わっていないというのに。5ヶ月近く先のことでも、もう決めていかないといけません。

Speculative Studio

「タイムズスクエアの未来を考える」という課題を継続中です。今週は一緒に課題に取り組むグループを結成し、デザインの方向性を決めていくフェーズでした。

課題と言っても、何か最終成果物の形式が指定されているわけではありません。ポスターやパンフレットを作ってもいいし、物を作ってもいいし、自分たちでパフォーマンスをしてもいい。とにかく、発表当日にタイムズスクエアで何かしらの展示をするということしか決められていません。

私が入っているグループでは、「もしも未来の人が2022年のタイムズスクエアにタイムスリップして、観光をしていたら?」という"Virtual Walking Tour"というコンセプトを思いつきました。作品のアウトプットの形はグループで方向性が決まった一方で、どんなトピックを扱うのか、どんなメッセージ性を込めるのかという中身について考えていく必要がありそうです。

ちなみに、"Virtual Walking Tour"について参考になる先例もいくつか共有してもらいました。

こちらは"Unreliable Tour Guide"というパフォーマンス。一見すると絵画の解説をしてくれているのですが、実はでたらめの解説をしています。「ないのだけれどありそう」というものを見た時のあの感覚はなぜ面白いのでしょうかね。私が思い出したのは以下の2つです。


先生からもらったフィードバックを他にもいくつか紹介します。まずは、"Don't try to find solutions"というキーワード。デザイナーというと、どうしても「今起きている問題を発見して、具体的な解決策を考える」ということを無意識のうちにしてしまいます。すぐに解決策に飛びつきたくなる衝動を抑えるようにという忠告でした。また、"Speculative Aspect"を考えることを忘れないようにとも言われました。Speculative Designが通常のデザイン思考と異なるのは、1. 問題解決ではなく、問題提起を。2. 現代ではなく、未来を。の2点です。

現代に起きていることを未来を創造するための出発点として定めて、そこから自分たちで未来を思い描くことを求められています。そのために、Signalと呼ばれる「未来を先取りした人や物」を見つける作業も同時並行で行う必要があります。これらの点をつなぎ合わせて、未来のシナリオ・ストーリーを浮かび上がらせるというプロセスも求められます。

最終発表は約1ヶ月後なので、試行錯誤する余裕はなさそうですが、Speculative Designを実際の現場で披露する機会を楽しめるように準備していきます。


Global Mental Health

今週は、先週に引き続いて産後うつについての議論から始まりました。特に教育についての話が盛り上がりました。たとえば、産後うつの症状や対策を、女性だけでなくて、パートナーにも知ってもらう必要があるのではないかという意見がありました。さらには、社会全体でも産後うつを含めた子育てにまつわる苦労を理解するように推し進めることも目指すべきだという意見もあがりました。

では、こうした「産後のメンタルヘルスケア」にまつわる教育をどこで行えばいいのでしょうか。学校で教えるのか、病院で教えるのか、それとも各家庭に任せるのか。


授業の後半では、メディアが子どもに与える影響について議論しました。主に音楽、ドラマ、SNSが取り上げられました。音楽が感情に及ぼす影響、ドラマが若者の生き方に与える影響、SNSが自己肯定感に与える影響などをテーマに議論をしました。授業で紹介されていて印象的だったCMを共有します。

現代人にとってメディアの存在は当たり前になっているので、その影響を比較できる対照群が用意しにくいということや、登場からまだ時間が経っていないことなどから、メディアが子どもに与える影響を科学的に評価することは難しいようです。

とはいえ、メディアの登場により、それまでは知るはずのなかった人たちを知れるようになったことで、自分よりも「優れている」人の存在を嫌でも見聞きするようになったことは確かです。他人と自分を比較することが精神衛生上よくないにもかかわらず、それが簡単にできてしまう社会構造になっているのかもしれません。

人類はメディアとの適切な向き合い方をどのように見つけていけばいいのでしょうか。教育なのか、法規制なのか、テクノロジーなのか。この問題にも明確な解決策はわかりません。

今回の授業で思ったのは、「ある問題について議論すると解決策が無数に思いつくけれど、何が効果的なのかわからないという『飽和点』に達して終わってしまう」という構造をもどかしく感じること。授業での議論が何かしら社会に還元される仕組みはないものかと思ったものの、こちらの解決策は浮かびませんでした。

まとめ

新入生向けの学校説明会が開催されるなど、次の学期の新入生が入学先を決める時期になってきました。自分が留学先を決めてから1年が経ったということにもなりますね。ここまで書き続けてきたnoteが誰かの留学の後押しになっていたらいいなと期待しつつ、これからも留学やデザインについて書き続けます。

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