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パーソンズ美術大学留学記シーズン2 Week7 #139

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今週は寒い日と暖かい日を繰り返していて、三寒四温という言葉がニューヨークでも当てはまるのだなぁと思いました。予報によればこれから寒くなることはなさそうなので、コートを着る季節ともお別れでしょうか。


Speculative Studio

Ytasha Womack氏をゲスト講師に招き、"Afrofuturism"について学びました。

Afrofuturismとは、テクノロジーの発展とアフリカ的な伝統を組み合わせることで未来を思い描こうという手法です。ルネサンス期に古代ギリシャや古代ローマの知識が再び注目されて現代に繋がる流れが始まったことに近い雰囲気を感じました。

「テクノロジーと日本っぽさの融合があってもいいのでは?」と思ったものの、ドラえもんやら攻殻機動隊やらAKIRAやらですでに描かれていそうです。Afrofuturismから学べることは、日本の未来を日本人が描くことも必要だということ。義務教育のおかげでほとんどの日本人が日本の歴史を知っていることは、未来を描くことにも役立ちます。AsiafuturismやJapanfuturismといった分野を日本人から発信していくことが世界的な流れになるのかなぁと思ったりしました。


Global Mental Health

今回のキーワードは"Cultural Adaptation"でした。ケアを受ける人が受け入れやすいようにメンタルヘルスケアを相手の文化に合わせようという考え方です。ここでの文化は、一般的な「文化」だけでなく、ジェンダーや性別、時代といった要素も指しています。

Cultural Adaptationを考える際に、文化におけるVisibleな部分だけでなく、Invisivleな部分まで理解できているのかを気をつけるべきだと教わりました。たとえば、異文化を理解しようとする時に、「何をしているのか」だけでなく「なぜそうしているのか」まで深掘りするといった姿勢を忘れないようにする必要があります。

また、これまではProblem Management Plus(PM+)という手法を学んできましたが、今回はSelf-Help Plus(SH+)という手法を新たに学び、もしSH+をCultural Adaptationするならというテーマでディスカッションをしました。たとえば、SH+を若者に普及させたいのならば、用意されている単調な音声ガイダンスをPodcastやTikTokのようにしたり、説明用のイラストをストーリーチックな構成にしたりと、エンタメ要素を多めにするとより受け入れられるのではないかなどというアイデアが出ました。

Cultural Adaptationの話を考えていると、ビジネスにおけるマーケティングの知見がそのまま応用できるのではないかと思います。ユーザーの特徴を理解したり、商品をローカライズしたりするのはビジネスの世界では当たり前のことです。ただ、ステレオタイプに流されることとは区別しなければいけません。そのため、Cultural Adaptationをする際には、その文化に詳しい専門家の監修が必要です。

ちなみに、SH+にも取り入れられているマインドフルネスは、もともと仏教の瞑想から宗教的な要素を取り除いて、科学的なエビデンスに基づくように改良し、西洋文化や現代社会に受け入れやすくしたものです。まさにCultural Adaptationの好例かもしれません。


デザイナーの修士論文とは?

修士2年の先輩方の修士論文の中間発表会に参加してきました。1年生が参加する必要はないのですが、自分の1年後はどうなっているのかを想像するきっかけにしたくて参加してみました。修士論文で何をテーマにするのかを決めかねているので、「どうしてこのテーマを選んだのか?」という質問を彼らにしてみました。すると、「パーソンズ美術大学での個人的な経験・思ったことから」という答えばかりが得られました。

これまで工学系の畑にいた私は、「社会的意義が」とか「先行研究が」といった理由が必要なのだと思い込んでいました。でも、社会的に「もっともな」理由から始める必要はなく、「自分が興味があるから」と答えられれば十分なのかもしれません。

自分が探求したいテーマから始めているというのは、ユーザーのニーズを重視する従来のデザイン思考とは違っているとも感じました。この辺りはTransdisciplinary Designが、アート寄りの立場にあるSpeculative Designをカリキュラムに取り入れているということもありそうです。

会場をウロウロしていると、とある先生と立ち話が始まって、「論文のテーマを決めているの?」と聞かれました。「まだ決まっていないんですけど」と答えながら私の頭に思い浮かんだのは「ミニマリズム」でした。すると、いくつか参考になりそうなウェブサイトなどを教えてくださり、「今からミニマリズムの情報や疑問を集めておくといいよ。そこから何か光るものが見つかっていくから」と言われました。

あらためて「ミニマリズム」とは何かを考えてみると、メンタルヘルスにもいいし、消費社会・資本主義へのアンチテーゼにもなるし、環境問題とも関係するし、アートの側面もあるしと、まさに"Transdisciplinary"なテーマだと思えてきました。また、東西問わずにミニマリズム的な思想は見られるので、東洋的ミニマリズムと西洋的ミニマリズムを比較・融合するというのも面白いそうだと予感します。

1年後には自分なりの「デザイン」を生み出せているのでしょうか?今はまだ「自分にそんなことができるのか」と不安しかありませんが、胸を張って人に見せられる渾身のデザインを生み出すべく、これからもデザインを学ぶます。


まとめ

Week8はSpring Breakのため授業はありません。この企画も1週間お休みします。春学期の「踊り場」で一休みをして、後半を駆け上がるエネルギーを蓄えます。

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