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パーソンズ美術大学留学記シーズン2 Week10 #145

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公園の噴水を見ると、icicles(つらら)があったほど寒かった今週。ニューヨークの春はいつ来るのでしょうか?

Speculative Studio

春学期の後半は「Times Squareの未来を考える」という課題に取り組んでいきます。未来を想像する前に、まずはTimes Squareの歴史を簡単に教わりました。1600年より前は開発がまったくされていなかったこと。Times Squareの由来は、New York Timesの本社があったからということ。1960-80年代は治安が悪いエリアだったこと。そんな歴史がありながら、New Yorkのシンボルと言える場所になりました。また、Times Square Allianceという、Times Squareの開発に携わる団体の方の話を聞いたりもしました。

今週はTimes Squareを実際に訪れて、「20年後には変わっていそうなこと」と「20年経っても変わっていなさそうなこと」を見つけるという課題に取り組みました。

やはり目を引くのは、建物一面の広告。その広告を見て「未来ではもっと派手な広告になっているはずだ」と予想する人もいれば、「広告は衰退しているだろう」と予想する人もいました。同じ場所にいて同じ物を見ていても、人によって受け取ることや考えることが違うのが面白いと感じました。

Speculative Designでは、誰が想像する未来が正しいとか間違っているという議論はしません。なぜなら、「未来」はまだ存在しないからです。説得力のある未来予想はあるかもしれませんが、あくまでもそれは今から見て妥当性があるというだけです。むしろ、Speculative Designでは、誰も想像したことのなかった視点をもたらす方が良いとされているので、一見するとありえない未来像の方が価値があるのかもしれません。

ちなみに、私が撮影したのはこちら。

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クラスメートの一人が観光客の記念撮影を手伝ってあげているというシーンです。この光景を見た時に思ったのは、「きっと観光客が思い出を保存する手段は変わるけれど、その行為自体はなくならないだろうし、それを誰かに頼んだりすることも変わらないのではないか」ということ。どんなデザインをすればいいのかというアイデアにまでは結びついていませんが、微笑ましい光景でした。

東京で同じような課題を考えるとしたら、「渋谷のスクランブル交差点の未来はどうなっているのか」とかでしょうか。観光名所でありながら市民の日常風景でもあるエリアを題材にしたSpeculative Designは面白そうですね。


また、「Speculative Designとは何か?」についての議論を授業内でする時間もありました。詳細は以下の記事にまとめてありますので、参照ください。


Global Mental Health

Tony V Pham氏をゲストに招き、ネパールのメンタルヘルスケアにおけるスピリチュアルの意義について考えました。これだけを聞くと、「ネパールは医療が遅れているのか」と思ってしまいそうですが、日本で言えば神社が似たような役割を担っていると思いました。

たとえば、科学的に言えば、試験に合格するかどうかはお守りで保証されるとは限らない。それでも、毎年多くの受験生が神社でお守りを買っています。「ストレスや不安がある時、日本人は精神科の代わりに神社に行く」というのは、日本以外の国から見たらスピリチュアルに映るはずです。他にも、健康祈願、無病息災、商売繁盛、恋愛成就、安産祈願、家内安全などのお守りがあるように、「不安な時の神頼み」という考え方は日本に根付いています。

不確定な未来を考えると不安になる。けれど、どれだけ科学が発展しても、未来がどうなるのかまでは予想できない。そんな時、自分の望む未来が実現するのだという思いを(幻想だとしても)抱かせてくれて、精神を落ち着かせる助けになる。そんな役割を担うのが、スピリチュアルです。

日本に住んでいれば当たり前のことだけど、海外から見れば「スピリチュアル」で宗教的で非科学的に映るかもしれない。こうした多くの日本人が共有する「スピリチュアル」な部分は大切にしたいと思いました。


また、産後うつについても扱いました。なぜ産後うつになるのかは、進化心理学的に考えれば「赤ちゃんを育てるうえで仲間の協力を求めるように促す感情だから」という説明で納得がいきます。では、なぜ産後うつが現代で問題になっているのか。

産業革命以降、地元を離れて都市で暮らす人が増え、核家族化が進んだ結果、兄弟や親、親戚に育児を頼りにくい環境が生まれました。これにより、育児で家族や親戚を頼りたいという本能と都市化した社会構造とのミスマッチが起きているのではないかという仮説が立てられます。

この仮説が正しいとすれば、どのような対策が考えられるでしょうか。3世代で暮らす時代に戻るべきか、それとも育児休暇や保育園を充実させる方がいいのか。きっと様々なアイデアが浮かび上がってくるはずです。


おまけ

Times Squareの近くに「紀伊国屋書店」があったので立ち寄りました。日本語の本が並んでいて、まるで日本に帰ってきたような錯覚に陥る場所でした。ただ、本を手に取り裏表紙を見てみると、日本の2倍の値段(漫画1冊1000円等)なのに気づき、アメリカにいる現実に引き戻されました。

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