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平成30年7月豪雨、野村病院での「オムツトイレ」対応

次から次に起こる災害によって、過去の災害が上書きされていくことに恐ろしさを感じています。現場からの学びを備えに変えていくことが必要です。

今回は、平成30年(2018年)7月豪雨による被害のあった愛媛県にある西予市立野村病院でのトイレ対応について、山本静子(看護部長)さんにお聞きした話をまとめました。

写真:山本静子氏(野村病院看護部長)

出典:西日本豪雨を経験して 今後起こりうる災害への備え/愛媛大学附属病院看護部災害研修
(西予市立野村病院 看護部長 山本静子)

今回の結論を一言でいうと「日頃の本気の取り組みが、いざというときに役立つ!」です。
ぜひ、読んで頂ければ幸いです。

停電で、トイレが頭をよぎる

2018年7月7日(土)降り続く大雨と河川の氾濫によりAM6時30分に野村病院は停電しました。すぐに病院に備えてある自家発電機を動かして電気を供給し、16時30分には西予市の手配で電力供給車が到着したため、電力が途絶えることはありませんでした。

病院が停電したとき、当直スタッフの頭をよぎったのはトイレのことでした。というのは、野村病院は災害時にトイレが使えなくなることを想定し、日頃の訓練でトイレ対応を実施していたからです。

当直スタッフは、すぐに水洗トイレの洗浄水が流れるかどうかを確認しました。予想どおりトイレはいつものように水が流れます。
普通であれば「水が出て、よかったー」ですよね。
ですが、そうは思わなかったのです。

「オムツトイレ」の使用を決断

当直スタッフは、その現場にいた事務長や他のスタッフとともに、「屋上に設置してある高置水槽の水だから、自由に使っちゃダメ。上手く使えば3日間はもつ。停電しているということは、下水道のポンプ施設が停止しているから、汚水を流してしまうと溢れてしまう!」と考えました。
そして、水洗トイレを使うのではなく、日頃から練習しているオムツトイレを使用することを決断しました。

病院の給排水設備のことだけでなく、地域の下水道のことまでイメージできるって、すごいと思います。
ところで、「オムツトイレ」ってなに???ですよね。

「オムツトイレ」というのは、野村病院が日頃の防災訓練で取り入れている災害時のトイレ対応としてのアイテムです。どういうものかというと、簡単に言うと「手作り携帯トイレ」です。

水洗トイレに取りつけられたオムツトイレ
写真:山本静子氏(野村病院看護部長)

二重にしたビニール袋の中に平オムツを敷いて、袋ごと洋式トイレに取りつけて使います。洋式便器の底には、封水と呼ばれる水が溜まっているので、まずは黒色のビニール袋を取りつけ、その上から「オムツトイレ」を取りつけて使用します。こうすれば、「オムツトイレ」を交換する際に水がしたたることはありません。
使用後は袋の口をしっかりと縛り、トイレ内のごみ箱に捨てます。必要に応じて消臭剤も使います。もちろん「オムツトイレ」は1回使用するごとに交換します。
そして、使用後はつぎの人のために「オムツトイレ」を取りつけてからトイレを出ます。

ごみ箱にある程度溜まったら、看護師や看護助手がフタをしてすぐに1階のごみ置き場に移動させます。病院内で感染症が発生したら大変ですから、早目の移動を心がけていました。
1階のごみ置き場に溜まった使用済みの「オムツトイレ」は、施設管理の職員がトラックで処理場に運びました。今回はノロウィルスやクロストリジウム・ディフィシル等に感染した患者はいませんでしたが、もしそのような人がいた場合は、感染性の医療廃棄物として対応する予定だったとのことです。
ちなみにトイレ掃除は、環境クロスやバケツに消毒液をつくり、毎日、手すりやドアノブなどを中心に消毒しながら掃除をしました。

この仕組みを、7日から13日までの7日間、病院の職員(147人)はもちろんのこと、外来患者も含めて全員で実施しました!

すごい!!!!!

オムツトイレ説明スタッフの常駐

ですが、患者は「オムツトイレ」のことなんて全く知らないので、水を流してしまう人もいました。
そこで、山本さんは、患者が使用するトイレにスタッフを常駐させ、トイレを使いに来た人に対して、無理に水洗トイレを使うと詰まってあふれてしまうことを説明したうえで、「オムツトイレ」を使うことへの協力をお願いしました。

オムツトイレの使い方を説明するスタッフ
写真:山本静子氏(野村病院看護部長)

協力をしてもらうためには、なぜそうしなければならないかという理由を丁寧に伝えることが大切と山本さんは言います。

これだけ多くの方が「オムツトイレ」を実践するには、かなりの量の平オムツが必要になります。病院なので、たくさんのストックがあったのかなと思ったのですが、そうではありませんでした。
7月8日、病院のアメニティを取り扱っている業者の方から病院あてに「何か必要なものはありませんか?」という電話がありました。日頃からよくやりとりをしている方です。山本さんはすぐに平オムツをはじめ、歯磨きティッシュ、使い捨て濡れタオル、などのアメニティ用品をお願いしました。こういう関係って大事ですね。

まとめ

山本さんに話をお聞きすることで、あらためて訓練の重要性を痛感しました。
日頃からやっているからこそ、いざというときに実践できます。
今回の野村病院での取り組みを参考に、ぜひ病院の方々には以下のことを実践してもらえたら大変ありがたいです。

□病院における給排水設備の把握
□職員全体での災害時のトイレ対応訓練の実施
□患者に対する災害時のトイレ対応の啓発
□関係機関や業者とのよりよい関係の構築
□災害用トイレの配置と運用計画の作成


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