うんちがくっつかない便器を追究する
もし、うんちが絶対にくっつかない便器が発明されて、しかもメンテナンスフリーであれば、メガヒット間違いないと思います。掃除しなくても、いつまでもきれいな便器なんて最高ですよね。
メンテナンスフリー、うんち汚れフリーの便器の完成までには、まだ道のりは長いと思いますが、現時点での便器の最先端の汚れ対策について、TOTO株式会社広報部の方にお話を伺ってきました。
汚れ対策の話に入る前に、そもそも便器求められる機能について、簡単に説明します。
便器に必ず必要な機能は「便器の内側をきれいに洗う機能」「うんちを便器の外に排出する機能」「うんちを配管をとおしてしっかり運ぶ機能」です。
そして、この3つの機能に欠かせないのが「水」です。水を使って便器を洗い、うんちを下水道や浄化槽に送り出すことが必要になります。
つまり、優れた便器を開発するためには、水を上手に使うことが不可欠であり、汚れ対策にも大きく影響します。一方で、環境問題を考えると、たくさんの水をジャバーっと流すわけにもいきません。環境的にも経済的にも、できるだけ節水したいですよね。
世界的にも節水の動きは活発で、アメリカでは、エネルギー政策法(Energy Policy Act、通称EPACT)により便器に流す水の量は1回6L以下にすることが決められています。メキシコ、ブラジル、カナダ、英国、サウジアラビアも同様に6L 規制があります。
ところが、日本においては規制がなく、自治体や企業等の自主的な努力で節水化が進められているのです。ちなみに、TOTO社で洗浄水量が1番少ない便器は3.8Lで、国内で最も節水効果が高い便器です。1950年代は20Lでしたので、その頃と比べると5分の1ですね。
では、本題の汚れ対策について説明します。
少ない水しか使わずに、便器にうんちがくっつかないようにするためには、便器の表面をツルッツルにするしかありません。どれぐらいツルッツルにしたらよいかというと、汚れよりきめ細かければいいのです。
例えば、カビの胞子は3~40ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)、チリの粒子は0.2~1ミクロン、腸内細菌は大雑把にいうと1ミクロンくらいなので、これらが隙間に入れないくらいきめ細かくすることが必要です。
そこで、TOTO社が考えたのは、便器の表面に純度の高いガラス層となる成分を吹きつけてから焼くことでツルッツルにする仕上げる技術です。1200度で焼くため、ガラス層が一旦溶けて便器の表面になじみながら張り付くのです。どのくらいツルッツルかというと、平滑さは100万分の1ミリメートル、ナノレベルです!
しかも、このガラス層は親水性があるため、汚れと便器表面の間に水が入りやすく、その効果で汚れを洗い流しやすいのです。
この表面処理技術のことをTOTO社は「セフィオンテクト」と呼んでいます。
https://jp.toto.com/campaign/neorest2017/index.htm
そしてもう1つ、付け加えたいことがあります。
それは、プレミストです。
便座に座った瞬間に、シュッとミストが出て、便器の内側の乾燥面をなくすのです。
そうすることで、先ほどの親水性という能力がより生きるわけです。
また、うんちを流し終えて、便器の中に水を溜めたあと、便器内に除菌効果のある次亜塩素酸を含む水(水に含まれる塩化物イオンを電気分解してつくる)を自動で吹きかける機能も搭載しています。これは、目に向けない菌の繁殖を抑制することが狙いだそうで、言うなれば、フォローミストですね。
https://jp.toto.com/products/toilet/point/01.htm
少ない水を効果的に使って、うんちを受け止め、汚れを残さずサッと流し去るって、すごいですね。素材加工と水力学を組み合わせた技術の集大成こそが、日本の便器だと思います。
世界には、衛生的なトイレを使えない人が23億人、このうち8億9,200万人以上が、道ばたや草むらなどで野外排泄をしていると言われています。これらが原因で周辺環境が汚染され、毎年、多くの5歳未満の子どもたちが命を落としています。
世界中の人々が安心してトイレを利用できるようにすることは国際的なイシューであり、貧困改善や世界平和に向けた大切な一歩だと思います。その一歩をすすめるために、日本のトイレ技術が貢献できると信じています。
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