インタビュー2

うんちとは最高のコミュニケーションツールである

書籍『うんちはすごい』の担当編集の高部です。前回からスタートした『うんちはすごい』刊行記念特別インタビュー。ここでは本には書けなかった「うんちこぼれ話」をたくさんお伝えしたいと思っていますが、第2回の今回は現在の学校のトイレ事情からお話はスタートします。

高部:本の中でトイレが子どもの人格形成と関わっているお話が出てきます。そこで、個人的な話で恐縮なんですが、子どものころ、学校でうんちするのってすごく抵抗感があって、お腹が痛くても、ぎりぎりまで我慢して、休み時間とかに人の目が少ない校舎の端っこのトイレに行ってするみたいなのがあったんです。そういうのって今もあるんでしょうか。

加藤:今でもあります。子どものうんちをすることへの恥ずかしさは脈々と伝わっています。

高部:海外とかでもそうなんですかね?

加藤:高部さんは中国のトイレご存知ですか?

高部:たしか個室ではなく、かなり低い仕切りだけで区切られたトイレで、なんなら隣の人と会話ができてしまうほどの開放感があるトイレのことですよね。

加藤:そうです。でも、いまや中国は経済発展に伴い個室のトイレが普及しています。今年、中国の小学校に行ったとき、うんちを「恥ずかしい」「我慢する」という子どもたちが増えてきていると言っていました。

高部:そうなんですね。

加藤:でもよく考えると、個室が優れていて、オープンが悪いかというと、そうではなくて文化や慣習の違いだと思うんです。

うんちは分からないことだらけ

高部:そういう国際調査というのはないんですか?

加藤:ほとんどないと思います。そもそも、そういうことを調べようとしている人が少ないのだと思います。
だから、データもないんです。

高部:そうなんですね。ちょっと意外です。どうして調べないんですかね。

加藤:うんちをバカにしてるのかもしれませんね。

高部:怒ってらっしゃいますね……。

加藤:はい。調査の話で言うと、災害時に被災地に行っていろんな人に話を聞くと、避難所に応急的に設置されるトイレは「汚れている」「寒い・暑い」「暗くて怖い」「遠い」「混雑する」といった理由で避けられがちです。すると、出来るだけトイレに行かないように水を飲むのを控えるようになってしまいます。、そのせいで脳梗塞や心筋梗塞、エコノミークラス症候群等になるといったことが起こっているんじゃないかと思うんです。

高部:そうなんですか?

加藤:ええ、でもこの場合、避難所で亡くなった際の死因というデータはあるんですが、それをトイレの状態と関連づけるデータや、調査がないのです。

高部:でもそれだと原因がわからないですよね。

加藤:そうです。避難所でエコノミークラス症候群になった方がいて、その人は水分を取っていなかったというところまでは記録があっても、それがなぜなのかというデータがない。
最近、避難所では脱水症状や誤嚥性肺炎に気を付けるようにといったことが言われていますが、その背後にあるトイレについては、ほとんど言及されません。
よってトイレ問題が深刻なことだと伝わらないのです。

高部:トイレやうんちってこれほど身近なのによくわかっていなかったり、伝わっていないことが多いんですね。

加藤:そうですね。本の中には書いていないことなんですが、東北の小学校で、給食を一口も食べない子がいたんです。その子は、学校のトイレでうんちをするときに、一度失敗をしたことがあったみたいなんです。

高部:ほう。

加藤:二度と失敗をしたくない彼の頭に浮かんだのは「学校に行くのをやめるか」、「給食を食べるのをやめるか」という2択だったのです。彼が選んだのは「給食を食べるのをやめる」でした。学校が好きだったんでしょうね。

高部:なかなかつらい選択ですね。

加藤:そんな中、企業とのプロジェクトで、その学校のトイレを明るく清潔にして、一部のトイレは洋式に変更したところ、なんと、その子がまた給食を食べるようになったんです!このことを校長先生から聞いたとき、めちゃくちゃうれしかったです。
これってすごい大事なことだと思うんです。あたりまえですが、食べると出すはセットなんです。

高部:前回のインタビューで出た「うんちをするのは、食事をすることと同じくらい大事」というお話と重なるところがありますね。

加藤:校舎の老朽化などでトイレが不快だと、そこが子どもにとって嫌な空間になってしまい、排泄がネガティブなものになると思います。

高部:確かに。

加藤:本の中にも書きましたが、トイレやうんちは子どもの心身の健康だけでなく、人格形成に与える影響はとても大きいです。だからこそ、学校のトイレの環境改善と前回お話しした排泄についての教育は、今後も取り組んでいきたいですし、みんなで力を合わせて取り組むべきことだと思います。

トイレに選べる幸せを

高部:先ほどトイレを洋式に変えた話が出ましたが、僕が子どものころは、学校のトイレってほとんど和式だった印象なんですが、今ってどうなんですか?

加藤:これは2年前のデータですが、文科省が公立小中学校のトイレの様式、つまり和便器と洋便器の割合について初めて調査したんです。そのデータでは和式の割合が56.7%でした。自治体間の予算の差もあって、洋式がまったくないという学校も結構あると思います。

高部:一般家庭なんかは、今はほとんど洋式ですよね。

加藤:そうだと思います。学校に洋式トイレがないから、休み時間に家に帰ってトイレをする子もいるんです。

高部:わかる気がする。

加藤:私は、その状況が改善されないのはおかしいと思っています。時代によってニーズは変わってくるでしょうが、洋式はもっともっと増やした方がいい。

高部:ですね。

加藤:ただ誤解しないでいただきたいのは、和式が悪いわけじゃないんです。選べるっていうことも大事です。

高部:と言いますと?

加藤:洋式便器に対して「他人が触れたところに肌が触れるので嫌」という人もいますし、「家庭では洋式がいいけど、パブリックな場所では和式がいい」という人もいます。だから、和式を排除してしまうと、その人たちのニーズを無視することになってしまう。

高部:なるほど

加藤:一番いいのは選べること。選べるって豊かだと思いませんか。そういうことは丁寧に言わなきゃと思っています。とはいえ現状では、洋式便器が少なすぎます。

うんちはあたらしい挨拶になる

加藤:日本トイレ研究所は、うんち・トイレについての勉強会やアンケート、インタビューなどをします。子どもや障がい者、LGBTなどいろんな方にお話を伺うんですけど、その中で、ひとつ気づいたことがあるんです。
高部さんもこれまで私と話してみて気づきませんか?

高部:なんだろう?

加藤:うんちやトイレの話をすると、急にその人との距離が近くなる、親近感を感じるようになるってことです。

高部:あ、確かに!

加藤:私たちの活動では、どなたとお話しをするときでも、いきなりうんちやトイレの話なわけです(笑)
言い換えると、最初っから腹を割って話しをしている感じです。

高部:なるほど。

加藤:うんちによるコミュニケーションの円滑化。人と人の距離がいきなり近くなる。これって貴重なことだと思います。

高部:うんちがいい意味でのコミュニケーションツールになっているんですね。

加藤:そうです。

高部:下ネタになるとあれですけど、これを利用した、何かいい挨拶とかを考えたいですね。

加藤:いいですね。たとえば「今日何食べた?」に換えて、「今日ちゃんと出た?」みたいなことが出来たら、かなり新しいですよね!

高部:食べて出すのが普通なんだとしたら、「今日のうんちどうだった?」って聞くのもアリかもですよね。

加藤:スマートなうんちの切り出し方を募集したいですね!
これを読んでいる読者の方、いい案があったらぜひ教えてくださいー。

<次回に続く>


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