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トイレの混雑解消に使われる3つの心理的効果とは?

駅や商業施設、観光地などで、男性用トイレは比較的空いているのに、女性用トイレがものすごく混んでる、という光景を見たことありますよね。

では、女性用トイレが混雑する理由は何なのでしょうか?

最大の理由は、数が少ないからです。

そりゃそうですよね。需要と供給のバランスがあっていないのです。

事務所のデータをみると男性の小便は平均30秒で、女性は平均90秒です。詳細は「オフィスの便器の数はどう決めるのか」を見てください。

つまり、単純計算すると女性のトイレは男性より3倍多く必要になります。

ですが、従来の公共トイレの多くは男女で同じ面積となっているため、結果的にトイレ不足が生じるのです。

そんななか女性用トイレが混まないように徹底的に取り組んでいる企業があります。

それは、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア(以下、SA・PA)のトイレを担っている中日本高速道路株式会社東京支社です。

そういえば、最近のSA・PAは、それ自体が目的地になるほど、魅力的になっていると思いませんか?この魅力を支える設備として、快適なトイレがあったのです。

まず、トイレの数については、「2分以上待つ状態が発生する確率を0.1%未満に抑える」ための計算方法を開発し、それをもとにトイレ数を算出しています。

もちろん、それだけではありません。

量的対策の次は、質です。

ここでいう質とは、行動の質です。

どういうことかと言うと、空いているトイレの個室にスムーズにアクセスしてもらうことでトイレの個室全体の稼働率を上げ、トイレ待ち行列をできるだけつくらせないようにしているのです。

というのは、トイレの個室がたくさんあると、どのトイレが空いているのかが分かりにくくなって、奥の方は空いていることに気づかずに並んでしまう状態が生まれます。

このような利用の偏りの改善に向けて、中日本高速道路株式会社東京支社は、心理的な効果を活用して奥のトイレに人を誘導する取り組みを行っています。

トイレで使われる3つの心理効果

それは、サバンナ効果、色彩効果、遠近法効果という3つの効果です。

1つ目は、サバンナ効果です。

人は森の中で迷ったとき、明るい光が差し込む草原を見つけるとそこに向かって歩いていく傾向があります。明るい場所に注目が集まり、人の動きが誘導されることを「サバンナ効果」と呼び、店舗設計などでも活用されています。

一般的にトイレの奥の方は暗くなりがちですので、そこに照明をあてることで、人が奥まで自然と進むように促すのです。

出典:美化ピカトイレの秘密(中日本高速道路株式会社東京支社)

2つ目は、色彩効果です。

同じ明るさで照らした場合、暖色の方が心理的に近くに感じる傾向があるので、暖色系の照明で照らしています。

3つ目は、遠近法効果です。

例えば下の写真では、連続する魚の群れのイラストに遠近効果を取り入れています。トイレの入口側は魚を少なめにして、奥に行くほど多くなっていくデザインすることで、視線が誘導され、足も奥へと進むようになります。

(写真提供:中日本高速道路株式会社東京支社)

中日本高速道路株式会社東京支社のデータによれば、以上の3つの心理的効果によって、手前のトイレ個室を利用していた人の約8%を奥の個室へと誘導することができました。

言い換えると、奥が空いているのに待ってしまうことを回避することにつながったのです。

空いているのに使われていないというのはとても残念なことです。せっかく頑張ってトイレ設備に投資しても効果ダウンですからね。

このトイレを実際に体験したい方は、EXPASA富士川(下り)、愛鷹PA(上下)にぜひ行ってみてください!

参考論文1)山本浩司,青木一也,貝戸清之,小林清司:高速道路のサービス施設を対象とした最適窓口数決定モデル,建設マネジメント研究論文集,巻:16,pp.13-22,2009.122)伊藤佑治,山本浩司,添田昌志,諫川輝之,大野隆造:高速道路休憩施設のトイレにおける待ち位置選択に影響を及ぼす空間的要因,日本建築学会計画系論文集,第80巻 第713号,pp.1547-1555,2015.73)伊藤佑治,山本浩司,添田昌志,大野隆造:ログセンサーを用いた高速道路休憩施設のお手洗いの利用実態把握,日本建築学会技術報告集,第20巻 第44号,pp.203-206,2014.2


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