うんちとはDON’T THINK,FEEL! そしてWATCH!
書籍『うんちはすごい』の担当編集の高部です。今回で第3回を迎える『うんちはすごい』刊行記念特別インタビュー。ここでは本には書けなかった「うんちこぼれ話」をたくさんお伝えしたいと思っています。
今回は排泄についての調査の少なさの話から始まります。
うんちは最高のアウトプット
高部:前回のお話の中で、うんちやトイレといった排泄にまつわる調査というのが少ないというお話がありましたけど、そもそも研究者が少ないということですか?
加藤:病気としての大腸がんや腸内細菌などは注目を集めていて、研究や調査も進んでいます。でもうんちそのものと人間に関わりの研究は少ないんです。
高部:と言いますと?
加藤:例えば、公衆トイレの汚れと治安の関係とか、うんちと精神疾患の関係とか、快便と学力の関係など、そういう研究は少ないんです。きっと関係があると思うんですよね。
高部:なるほど。
加藤:うんちというのは最高のアウトプットなんです。
高部:おお!また気になるワードが。どういうことですか?
加藤:だって、あんな大きなものが毎日身体から出てくるって他にないじゃないですか。それも、自然に出てくるわけですから。血液検査は痛い思いをして、針を刺して採血しないと取れませんよね。そういう意味でも、うんちにもっと注目すべきですし、活用するべきなんです。
自分のうんち、ちゃんと見てますか?
高部:加藤さんはご自分のうんち見ますか?
加藤:めっちゃ見ます(ドヤ顔で)! でも最近はセンサーで自動的に流れてしまう便器なんかもあって、そういうトイレのときは、ものすごく焦ります。
高部:(笑)
加藤:いや、笑いごとじゃないですよ。
高部:すいません。
加藤:うんちの出心地は、どなたも感覚で分かると思うんですが、排泄感と実際のうんちの形状にズレがあることってありませんか?
高部:いや、あんまりちゃんと見ていないので……。
加藤:いやー、もう、信じられない。ほんとそれは駄目ですね。まずは見ることから始めてください。
高部:すいません。
加藤:まずはうんちをした時の感覚と、うんちの状態をあわせていくことが大事です。
高部:いいうんちというのはどんな感じですか。
加藤:いいうんちは、ペーパーもほとんど汚れません。
高部:確かに全然汚れないときってありますね。
加藤:本にも書きましたが、ブリストル便形状スケール(図参照)というかっこいい名前のうんちの形状を分類したものがありまして、この中の4番がいちばんいいうんちなんです。
高部:いわゆるバナナうんちってやつですね!
加藤:うんちそのもののことで言えば、便器の中でズーンと沈んで、便器の奥の方に行ってしまって、見づらいようなうんちはダメなんです。いいうんちはちゃんと見えるんです。そして、すっきり感があることが大切です。
あと、感覚として、残便感はもちろんよくないですし、強くいきむようなうんちもよくないですね。そこを調整していくのが健康管理だと思います。
高部:なるほど。
加藤:まずは、うんちの状態を基準に、食事の内容を考えていくとよいと思います。いいうんちが出た時は、食べ物とかも一番自分に合っている筈ですですからね。うんちには嘘がない。
高部:確かに。
加藤:そのためになにをするかというと、考えるよりも、まずはうんちを感じるということです。Don’t think, Feel! そして、Watch!ですよ。
高部:なんかカッコいいですね!
加藤:うんちをきちんと見て、感覚と形状がきちんと合っているかを確かめる。考えるのはそれからです。うんちがすっきり出て、でたうんちが、ブリストル便形状スケールの4番であれば最高ですね!
排泄の究極の形はリラックス
高部:本の中に、ほとんどの人は、他の人がどのようにうんちをしているのか見たことがないという話が出てきますが、よく考えたらそうだなと。
加藤:男性は、おしっこの仕方は公衆トイレなどで共有しますから、ある程度は補正されると思うんですよ。でもうんちは違いますよね。個室ですから。もしかしたら、とんでもない方法でうんちをしている人もいるかもしれませんね(笑)
高部:便座の上にしゃがむ人とか、逆向きに座る人とか、全部脱いでする人とかいろいろバリエーションがありそうですね。これが正しいというのはあるんですか?
加藤:とても大切なことなので、まじめに回答しますと、一番いい方法はその人にとって安心できる方法でするということです。
高部:じゃあ極端な話、全裸になるのが安心できるならば、それがいいということですか?
加藤:そうです。排泄に必要なのはリラックスなんです。本の中にも書きましたが、うんちは副交感神経が優位のときに出ます。副交感神経には心を緩める信号を出す役割もあって、人間の社会的コミュニケーションにも関わる部分なんです。
高部:そうなんですね。
加藤:だから、逆に言えば心を緩めることができないと、排泄もうまくできないんです。超緊張した状態ではうんちはできない。つまり安心することが必要。そういう意味でも、その人にとっての安心をどう確保するかが大事なんです。
高部:このやり方が正しいみたいなことを考えがちですけど、もっと幅があるということですね。
加藤:そうです。食だっていろいろあるじゃないですか。アレルギーもあれば、野菜しか食べないという人もいますよね。同じように排泄も多様なんですよ。
高部:何よりも、まずはリラックスという話ですね。
加藤:高部さんは、トイレで仕事のアイデアが浮かんだりすることってありますか?
高部:ときどき、あります。
加藤:中国の北宋時代の政治家で欧陽脩という人がいるんですが、その人が遺した言葉で「三上」という言葉があるんです。欧陽脩が言うには、ひらめきやすいのは「馬上」「枕上」「厠上」と言っていて、この三つの上にいる時がアイデアが浮かびやすいということなんです。
高部:「枕上」という点では、ミュージシャンが寝ているときに曲が下りてきたみたいな話は聞いたことがあります。
加藤:この三つはいずれも副交感神経と関わっていて、無心でいるときにアイデアが湧きやすいということかもしれません。だから会社のトイレをきれいにしてリラックスできるようにすると、仕事がはかどると思いますよ。
高部:よくIT企業がオフィスにお昼寝スペースを作ったりするのと近いかもしれませんね。それにしても、うんちとひと言に言っても見えてくるものが、社会、健康、災害など本当に幅広いですよね。
加藤:そうですね。見過ごしているのは、もったいないですよね。
<次回に続く>
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