TGS VR 2021に見た「VRの強み」と「リアル開催で得られていた熱気の喪失」
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TGS VR 2021に見た「VRの強み」と「リアル開催で得られていた熱気の喪失」

TOKYO GAME SHOW VR 2021(TGS VR 2021)』を体験してきたので、簡易レポートを書き残しておきます。

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はじめに筆者のバックグラウンドを補足しておきますと、東京ゲームショウ歴は1990年代からの一般参加に始まり、2014年~2019年は仕事関係やメディア枠としてビジネスデイに参加。直近10年くらいは、1日に100人以上のコンパニオンさん、コスプレイヤーさんに話しかけまくり、写真をパシャパシャ撮らせていただきながらゲームしまくっているただのオタクです。

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普段は陰キャを具現化した引きこもり体質という制約を受けているため、年に数回開催される大規模なゲーム・アニメ系イベントでのみ、すべてのコミュニケーション能力を最大限発揮できるエンペラータイムに突入します。

加速するイベントのオンライン化

前回にあたる2020年のTGSは、オンラインのみで実施されました。個人的にはネットに流れてくる情報をつまみ見るくらいで、いまいち盛り上がりにかけた印象を持っています。「ほんとにやってました…?」くらいのレベル。

そして、来たる2021年。リアル会場は小規模ながら実施されたものの、プレス・インフルエンサー向けに留まりました。会場として使用されたのは幕張メッセ第8ホールの1ホールのみということで、これまでの1/10程度に縮小化。

代わりに一般ゲームファン向けとして公開されたのが、東京ゲームショウ史上初のVRプラットフォーム会場『TGS VR 2021』です。

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奇しくも、筆者は同年7月にXR(VR/AR/MR)事業を展開する株式会社Synamonに入社しており、VR関連情報の感度も高まってた時期でした。

今回のTGSがVRで開催されるというプレスリリースが出たあと、そのプラットフォーム構築を株式会社ambrが担っていることも、いち早くキャッチアップすることができました。

「メタバース」がバズワードとして取り上げられているタイミングでのリリースは、XR事業に携わる人間として素直にインパクトの大きい戦略だと思いました。「東京ゲームショウ初のVR開催」という話題性も強く、VRプラットフォームの認知拡大にもつながる喜ばしい動きです。

リアルイベントのオンライン化が加速する昨今、VR開催イベントの大きな事例のひとつとして、後世に名を残す功績と言っても過言ではないでしょう。

で、どうだったのよ?

TGS VR 2021を体験されていない方からすれば、うんちくばかりで飽きてきた頃だと思うので、実際の様子がどんなものだったのかご紹介します。

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動画レポもあるので、長い文章を読むのが苦手な方は、こちらを見つつ適当に読み流してください。

結論から言えば「VRならではの強みを実感した」一方、「リアル開催で得られていた熱気の喪失」という両極の感想を同時に抱きました。

VRならではの強み

VRの特徴として、リアルでは得られない体験や没入感を得られるというものがあります。空想上のキャラクターを間近に感じられたり

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並んで自撮りもし放題。バーチャルな空間を活かし、好きな時間、好きな場所からイベント会場へアクセスできるというのもVRの強みです。

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現実では多額の予算がかかったり、設置が難しいオブジェクトの構築も容易く行えます。特に巨大な造形物は、制作や設置の問題だけでなく、会場までの運搬やイベント終了後の取り扱い(保管や破棄)も考慮しなければなりません。

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VRコンテンツであれば、リアルイベント会場で考慮が必要な大部分の要素が削ぎ落とされ、3Dモデルのデザインや造形に注力することができます。改変や再利用のしやすさもコスト削減につながることでしょう。

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会場空間の扱いに自由度が高いためか、ブースに企業色があらわれやすい点も面白いと感じました。

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やはりライブ、エンタメ系との相性もよく、特設ステージでキャラクターが歌っている映像を流されるとテンション上がります。今回は映像主体でしたが、できればキャラクターがその場で歌って踊る様子を鑑賞できると嬉しいですね。

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空間内に宝探し的な要素を組み込むなど、ゲーム好きにはたまらない仕様も見られました。自分が子どもの頃に参加したゲームショウのポスターを見つけた時は、当時の記憶が蘇り、思わず笑顔になりましたね。

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ゲーマー的な妄想ですが、自分が好きなゲームキャラたちがワールド内を闊歩したり、一緒に付いてきて案内してくれるなど、本当にゲームの世界にそのまま吸い込まれたかような体験が出来るようになると最高ですね。

デカァァァァァいッ説明不要!!

今回VR会場を歩いてみて実感したのは「デカさは正義」という点です。

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例えば『進撃の巨人』のように、とにかく迫力のあるクソデカい敵(獣の巨人)を街中に置いたり

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その敵と対峙する主人公たちを空中に配置したりというのは、現実世界ではなかなか再現するのが困難です。

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屋根の上に登ってリヴァイ兵長のご尊顔を間近で堪能するなど、ファン垂涎の行動がとれるのもVRならではと言えるでしょう。

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最近はリアルイベントでも等身大フィギュアが置かれていることがありますが…

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参考:冴えカノ加藤恵の等身大フィギュアはやっぱりデカかった

等身大フィギュアをマジマジと眺めるのは、どうしても周りの目を気にしてしまい気が引けます。推しは自分の好きな視点から好きなだけ眺めたいものです。

目を惹かれる造形物があっても、リアル会場で多くの人が立ち止まる場所に長時間滞在することは難しいでしょう。

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物理的な制約から開放されるというのは、バーチャル会場の大きなメリットのひとつですね。

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巨大な造形物の迫力はVR空間でも確実に感じることができます。

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画面の中で見ていたデカいやつらが目の前に現れたらテンション上がりません?

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デカァァァァァいッ説明不要!!

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リアル開催で得られていた熱気の喪失

VRならではの強みを感じた反面、リアル開催特有である人混みの熱狂感や、多くの人と参加している一体感などは、残念ながら今回のVRイベントでは体験できませんでした。

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イベントスタッフさんやコンパニオンさん、コスプレイヤーさんにゲーム仲間とのコミュニケーション。開発者さんや声優さんのトークショー。物販を見て回ったり、まだ見ぬインディーズゲームを発掘したり…

リアル開催時には得られていたはずの「生の人間がたくさん居る場の熱気」「同じ趣味を持つ人たちと共に居る高揚感」「偶発的な出会い」が、そこにはありませんでした。

参考までに、TGS2019の総来場者数は約26万人です。

さすがに同じ状況の再現を期待していたわけではありませんが、最終日の日曜昼間に1時間歩き回っても、観測できた他アバターは数十名程度かと思います。自分でも驚くほどの喪失感があり、下手したらVR体験のワクワク感すら相殺されてしまうほどでした。

ゲーム仲間と一緒に同じワールドIDに入るなどすれば、また違った感想になったのかもしれませんが、今回は調整がつかず残念な結果となりました。

VRプラットフォームの性質上、諸々の負荷軽減のためワールド内でのチャンネル自動振り分けにより、アクセスユーザーの分散処理が施されているでしょうから、同一チャンネルへの同時接続人数にも一定の制限があるはずです。素人が見ても「グラフィック負荷が高そう」ということは想像に難くないでしょう。

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このようなイベントで大人数のユーザーが参加してる賑わい感を演出するには「めちゃバース」のようなプロダクトが有用なのかもしれませんね。

また、各ブース会場内に行っても展示パネルの閲覧やPVが見られる程度で、実際のゲーム試遊ができなかったというのも、リアル開催で得られていたはずの体験の損失のひとつだと言えるでしょう。

購買意欲がまったく沸かない

それからリアルな物販コーナーに立ち寄る体験ができないことが、購買意欲を大きく削がれるような感触も持ちました。

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TGS公式Tシャツが空間内に掲げられていたり、別プラットフォームで3Dアバターの衣装販売などが行われていたようですが、VR機器でアクセスしていた場合は販売の導線がブラウザ遷移先であるなど、ワンクッション挟まれるので「めんどくさいなぁ…じゃ、いいか」となる人も多そうです。

会場にスタッフさんが居て話しかけてくれるなどもなかったので、それこそバーチャル接客のような仕組みが導入できれば「買ってみよう」という思いも強まる気がしました。

例えばGameVketのように、製品の3Dオブジェクトを手にとってじっくり鑑賞するようなアクションがとれると、購買意欲はさらに高まるのではないでしょうか。

とはいえリアル会場における熱気含め、これらの要素をVRイベントで埋め合わせるのは相当骨が折れるでしょうし、すべてを置き換えるというのも現実的ではありません。今回のように、あくまでリアルイベントと併用しつつ「お互いの長所を伸ばしていく」のが妥当かと思います。

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リアルとVRのイベントを両立するにはリソースや時間的な制約もあり…ゲーマー目線でもXR事業者としても、バランスの難しさに悩まされるところです。

次へ期待したい点もありつつ、未来を感じた体験

今回Windows PCアプリとOculus Quest向けアプリの両方を体験しましたが、いずれもめちゃくちゃVR酔いしました。筆者は元々VR酔い、3D酔いが酷く、相性の悪いコンテンツは長時間体験することが困難です。

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特に本アプリはスライド移動での酔いが酷く、操作数秒で無理だと断念しました。視覚的な情報量の多さやライティング、移動時の感覚不一致など、リアルイベントとはまた違ったVR特有の疲れや体調不良を感じる方も居たかと思います。このあたりはUXの改善により、ある程度緩和されるはずなので、さらなるアップデートに期待したいところです。

移動に関して言えばダッシュやジャンプはできず、任意の企業ブースに飛ぶ機能がない点にも不憫さを感じました。TGSは主にゲーマーが参加するイベントですから、体験すればすぐに「バーチャルなのに何でできないの?」といった要望が出るだろうと感じました。

今後ユーザー同士のコミュニケーション手段や、出展企業との双方向性が強化されれば、VRイベントとしての体験はさらに向上していくでしょう。「VRだからこそできる体験」を提供し、興味を持ってくれるユーザーが増えていけば、熱気や一体感というものも徐々に得られるかもしれません。

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巷では「"VR2年"に突入した」なんて言われるVR市場ですが、リアル開催と比較した際の課題が浮き出た一方、未来への可能性も大いに感じたイベントでした。

國光氏がメディアやイベントなどで“VR元年”と語ったのは2015年頃のこと。そこからすでに6年が経った。だが、同氏は6年を経たタイミングであらためて「“VR2年”に突入した」と語る。

その根拠としているのが、2020年10月にFacebookが発売開始したVRヘッドセット「Oculus Quest 2」の売れ行きだ。カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチが調査した結果によれば、2021年第1四半期までにOculus Quest 2の累計販売台数は世界で460万台に到達したという。

「今後、数年で本格的にVR市場が立ち上がってくると思います。だからこそ、いまVRに全振りすべきなんです」(國光氏)

XR事業に携わるものとして、そしていちゲーマーとして、来年のTGSや他イベントでの導入を楽しみにしています!

現場からは以上です。

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やったぜ
マルチポテンシャライト/NewsPicks Expert/最近はXRスタートアップでエンジニアリングマネージャーやってます。