見出し画像

2024年3月20日 ご進物とシスターフッド


X(Twitter)のほうで、謝罪に持参する菓子折りについての投稿が流れてきました。
これまで、謝罪に菓子折りを持参したことは、実のところまだないのですが、
他者にお菓子を渡すこと、ご進物、お遣い物といわれるものについては、自分なりに考えていることがいくつかあったので、投稿しました。
それの件について、もう少し掘り下げてみたいと思います。
以前もこの記事で、ちょっとしたお菓子を渡すことについて書いています↓。

そもそも、読書さえしていれば、楽しい子どもだったものですから、親が菓子折りを持って謝りに行くような事態を起こしたことがなかったのです。
ですから、漫画やアニメでそういうこともあるらしいと知っていただけでした。
その上、本の世界にしか興味がありませんでしたから、
謝罪の菓子折りだけでなく、家にお呼ばれしたらお菓子を持参するとか、お礼やご挨拶の際にちょっとしたお菓子を渡した方が良いというのにも縁が薄く、「無駄な文化だな」としか思っていなかったのです。
誰かとの関係において、特別なことがなくとも、そっとお菓子を渡す、そういう文化があるのはわかっていましたが、
「何でそんな無駄なこと(お金もお菓子も)をする必要があるのだろう…。大人ってバカみたい」と考えていた気がします。
一方、うちの母は、そう言った文化を気にするタイプでした。
よく口を酸っぱくして、「気をつけなさい」と言われ、「気が利かない」ということで、小言を言われたものでした。
気をつけろと言われても、何のことだかわからないし、何をどうしたら気を利かせたことになるのかもわからず、「本が読みたい…」と思っていたことを思い出します。
(今、考えると、五感が人一倍敏感なので、子どもの頃は、生身の人間相手は情報量が多すぎて、気を利かすとか、相手の立場に立つ余裕がなかったのだと思います。)
このように、子どもの頃から、暗黙の了解に納得がいかないタイプでしたから、
「男女差別的だ」「女性ばっかり気をきかさないといけない文化なんて…」と憤っていました。

学生の頃まではその調子でやっていました。今考えると、浮いてはいたでしょうが、それでも何とかやれていたのです。
周りも学生ばかりだし、たまにいる大人は先生からバイトの社員さん、という世界では、ちょっとした気をつかうということはさほど必要ではなかったからです。
問題は社会に出てからです。

初めて海外旅行に行った際、お金を払いこんで以降、誰も途中で止めてくれなかったことに驚愕したことがあります。
今考えると、恥ずかしいことですが、「あなたは海外に出ていけるレベルの人間ですよ」とか「海外に行けるレベルではまだないですよ」ということを誰からも判定されないということが、妙に不安になったのです。
海外旅行は自己責任であり、またある意味、不文律の世界(海外に行くのだから当然知っているよね!)であるということが衝撃でした。

社会に出る際も同じことを感じました。
誰も社会的なルールを明確には教えてくれないが
仕事をするようになると自動的に、そう言ったことを理解している「大人」もしくはそれを理解しようとしている「若者」とみなされるということです。
ここで社会的な不文律を無視することは可能ですが、
それに伴う面倒臭さを引き受け、対応するミッションが自動的に付与されます。
それと戦う気概があるものはそれでよろしいわけですが、
毎度毎度そんなのは面倒臭いと思うなら、社会的不文律を取り入れた方が断然、楽です。

というわけで、母が口うるさく「気をつかいなさい」と言っていたのはこういうことなのかということが、
社会人になってようやくわかりました。
社会的不文律をある程度、模倣しておけば、避けられるトラブルというものがあります。
もしくは、その社会的不文律を模倣することで、審査無しで通過出来る人間関係の関門のようなものがあるのです。
雑多な人が集まって仕事をするのですから、その中で、社会的不文律を全く守る気のない個体というのは厄介な個体、理解不可能な個体と判断される可能性が高くなるということです。
反対に、詳細が間違っていたとしても、社会的不文律を模倣しようとする個体には、
わりと皆さん、やさしいものです。
こういうことは、自分より少しだけ年上の「お姉さん」たちと交流する中で、少しずつわかってきました。
ここでいう「お姉さん」とはもちろん、血縁上の姉ではなく、自分より年齢が上の女性の総称です。年齢差は1才上でも10才上でも、30才上でも、50才上でも「お姉さん」です。
「お姉さん」たちの振る舞いや言動から学ぶことはたくさんありました。

・基本的に人に渡す菓子は、個包装で、賞味期限が長く、さらに言えば軽いもか小さいものが良い。
・謝罪の場、地位の高い人に渡す場合、改まった場合は、箱入りがよくデパートの地下や和菓子屋などちゃんとした店のものが良い。(代表格はとらやの羊羹なのだろうが、これは地域差もあると思う。その地域にあったものが良い。)
・わからない場合は、ちゃんとした店のちゃんとした店員に、どう言った進物なのかを伝えて、助言を頼む。
・のしが必要な場合はつける。
・親しい場合は洋菓子でも良いがやや砕けた感じになる。
・生菓子はよほど親しい間柄かお茶会などでなければ避ける。
・お土産や職場全体へのばらまきおやつは数が大事。人数分より少し多いくらいを準備した方が安心。
・ちょっとしたプレゼントは、お茶とお菓子のセットが無難。(消費できて手元に残らない。)
・より親しい仲のプレゼントなら、入浴剤やハンカチタオル、調味料なども可能。通常づかいより少し良いが高すぎないものがいい。
・ちょっとしたプレゼントは、「あなたのことを気遣っています」「いつもありがとう」を示すものであって、見返りなどを考えるものではない。

こんなところでしょうか。
これらは不文律ですから、言葉で教わったものではなくて
「お姉さん」たちがしてくれたことから、そっと学んだことです。
マナーの本やネットの情報より、近くにいる「お姉さん」の様子を観察するか、
思い切って相談してみた方が、
地域ごとの不文律がよくわかると思います。
多分、これは生身の人から教わる方が間違いが少ないのでは、と思います。
なんせ、法律や条例などとは違う、生活の知恵ですから。

あまりの気の効かなさや雑さ、無知さに驚かれ呆れられていたと思うのですが
どの「お姉さん」とても良くしてくださり、
不文律をその背中や行動で教えてくださいました。

そろそろ、自分が「お姉さん」側としてやっていかねばと思っています。
そもそものスタートが遅いので、あまり自信はないのですが、
それでもこれまでよくしてくださった「お姉さん」たちの気遣いを
そういう形で返していかねば、と思うのです。
「お姉さん」たちはしっかり、心の中に蓄積されていて
冠婚葬祭のピンチの時に、立ち上がってきます。
「こんな時、「お姉さんたち」ならどういう振る舞いやどういう手配をするだろう」そう考えるだけで、
かなりそれらしい振る舞いができるのです。
「お姉さん」たちなら、きっとこうする、そう思うだけでずいぶん心強く、慰めになります。
今流行りの言葉でいうと、シスターフッドということでしょうか。
面倒見が良くて、でもベタベタしていなくて、
美味しいものを知っていて、弱った時に美味しいものをさっと差し出し、
すっと手助けをしてくれる
そういう「お姉さん」になりたい、と改めて思いました。

気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。