見出し画像

2024年5月11日 一発逆転は用法・用量を守って正しくお使いください

最近、ニュースで見かける事件やSNSで見かけた投稿から、
一発逆転思考の危険性について考えてみました。
 
一発逆転、一目惚れ、一発ギャグ、起死回生の策、逆転ホームラン、どんでん返し、逆転劇、敗者復活…。
子どもの頃には、物語やアニメに出てくるそれらに、なり切ったり、憧れたり、夢見たりしたものです。
いや、よく考えると一発ギャグに憧れはありませんでした…間違い間違い…。
でもまあ、それでその場の空気を自分のものに変えようとするという意味では、一発ギャグも、その中に入るのかもしれません。
「劣勢だったものが、情勢をひっくり返す」
「追い込まれていた弱者が本領を発揮して反撃する」
「価値がないと思われていた者が隠されていた価値を認められる」
という物語は、読んでいるとひどく爽快ではあります。
自分もそういう物語が好きであることは否めないし、
そういう物語を好む人も、作る人も否定する気もありません。
しかし、この物語をそのまま、現実生活でなぞろうとする、再現しようとすると大抵、ひどく「痛い」結果をもたらす、ということは広く知らしめられるべきだと思うのです。
現実世界は物語とは確実に、違う「理(ことわり)」がある、ということです。
その「理」に気づかないままでいると、先にあげた「痛い」結果が起きます。
その「理」とは、何でしょうか。
それは、おそらく「やっていないことが急にできるようにはならない」だと思います。
これは、運動や勉強のようなことでも、人間関係の関わりでも同じです。
もしやっていないことを急にできたとしたら、
類似の経験があるとか、その行動をやる前からどこかで見かけていて、コツを掴んでいたとか、何かしらの理由があるのです。
現実の世界では「やっていないことが急にできるようになる」ことは、レアイベントもしくはチートであり、
失敗しながら、繰り返し体験したことが少しずつできるようになるというのが、基本的なシステムです。
物語では、急に能力が開花したり、炸裂したり、他人に認められたりしますが、現実ではそういう「理」ではないのです。
もっとわかりやすく言えば、そのようなゲームバランスに設定されている、と考えた方が良いのだと思います。
ですから、先にあげた、一発逆転、一目惚れ起死回生の策、逆転ホームラン、どんでん返し、逆転劇、敗者復活を期待するのは非常にリスクの高い選択です。
ほとんど起きないイベントを期待して、
やるべきことをやらない、挑戦しないというのは、ゲーム放棄、試合放棄に近いのです。
そんなことをするなら、
誰かと話す、
毎日、きちんと挨拶をする、
友達にちょっとしたお土産を渡す、
通りすがりの人に親切にする、
筋トレをする、
勉強をする、
部屋の掃除をする、
健康に良いご飯を食べる、
バイトをする、
歯を磨く、などの
日常の行動をちゃんとやった方が、
この「人生」というゲームでは結果が出ます。
寝転んだまま、「いつか来るはず」の逆転劇を妄想をしていても
それが降ってくることはほとんどありません。
「少しずつ、現実的にやってみる」が最も、効果がある、のです。
この点で、現実世界は、ある意味参加しやすいゲームであるとも言えます。
チート能力がなくても、特別な血筋がなくても、コツコツ何かをやっていると、パラメータが上がってくるのです。
ただ、パラメータの上昇は、劇的なものではありません。とてもゆっくりです。
例えば、現実世界での友人関係は、物語の世界ほど劇的に始まるということはありません。
しかし、挨拶をし、一緒に行動し、体験し、話をしていく中で、高まっていく信頼があります。
また現実世界では、信頼は様々な言動によって増減します。
場面が変わったから、レベルが上がったから、新しい技を覚えたから、シリーズが変わったから、信頼が高まるわけではありません。
継続している関係性の中で、信頼パラメータは変化していくのです。何かのイベントで、好感度や親密度があがり、ハッピーエンドを迎える…なんていうことはありえないと思いましょう。
現実世界は生きている限り続くゲームです。
友情でも愛情でも、そして能力も、やるべきことをやってこそ、培われます。
また、
「現実世界の主人公は自分だけではない。数多の主人公が混在し、関係するハイパー群像劇である」という「理」も忘れてはいけません。
人生の主人公は自分ですが、
他人はまた別の人生の主人公です。
他人は、NPC、脇役やモブ、主人公の都合で動くキャラクターではありません。
他人にも、その人が主人公の人生と、好き嫌いがあります。
そして、それを一方的に変更することはできません。
「自分が〇〇したから〜になるはず」つまり、「自分がこれだけ好きだから相手も好きになるはず」とか、
「自分がこれだけ時間やお金をかけたから相手もそうしてくれるはず」と考えるのも「痛い」結果を招きます。
相手も主人公なのです。
桃太郎が、かぐや姫を無理やりお供にすることはできないですし、
魔女の宅急便のキキがハリーポッターを自分の恋人に無理やりすることはできません。
たまに、漫画で作家さん同士の同意の元、コラボ漫画・合作が描かれることがあります。
友情や恋愛はああいうものだと思います。
違う世界線の話ではあるけれども、お互いに敬意があるから
お互いの漫画の世界にお邪魔できるということです。
どちらかが拒否すれば、または、どちらかに敬意がなければ成立は難しいのです。
関係性にも一発逆転はありません。
「お金があったら?」「容姿が良かったら?」という人もいると思いますが、
そういう要素による、一発逆転で得た関係は
その要素がなくなれば
壊れる可能性が高いです。
普通のスペックの人間は、そんな要素で不安定な関係を開始するより、
地道に信頼を高めていって、地味だけれど安定した関係を作る方が
長い目で見ると、得だと思います。

相手の気持ちを想像する、
自分の身の丈を知る、
ということは、自分だけが主人公の物語を諦めるということでもあります。
物語の世界を諦め、
奇跡の展開を諦めた先に、
現実世界の素晴らしさがあるのではないか、と感じています。
願うだけでなく、行動すること、
相手も主人公であり、その物語を捻じ曲げることはできないということは、
矛盾せず両立します。

地味でつまらない?
地味でつまらなくても、じわじわと結果が出ます。
「続けていくと、面白くなってきますよ。まあ続けてみてください」と、お伝えしたいです。
それに、一発逆転の危険性に比べると、ずっと安全、
副作用が少ないのですを

一発逆転を楽しむのは、
創作物だけにすることをおすすめします。
用法・容量を守って、正しくお使いください。






気に入ったら、サポートお願いします。いただいたサポートは、書籍費に使わせていただきます。