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【感想】「イリヤの空、UFOの夏」ネタバレあり_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0013

めちゃくちゃ面白かった……
この夏何もしてないけど、これを読めただけで十分お釣りが来るなってぐらい満足してる。

「めちゃくちゃ気持ちいいぞ、と誰かが言っていた。」
印象的な一文から名作は始まる。

イリヤの空、UFOの夏」は2000年から誌面で連載が始まり、2001年から2003年にかけて文庫化された作品だ。
少年が、基地から来たという謎の少女と出会い、最終的には世界を敵に回すという内容で、いわゆるセカイ系のはしりだとも言われることもある。

まだライトノベルという言い方も広く浸透していないような時代に、こういう作品に出会えた人は幸せだったろうなあ。
ただ個人的には、この作品をセカイ系で括ってしまうのは腑に落ちていない。
「ボーイミーツガール」って言った方が、この作品に描かれている一夏の青春の切なさや儚さが伝わる気がしている。

そう、この作品には青春が詰まっている。
真夜中に忍び込んだ学校のプールで謎の少女と出会ったり、その子が転校生として同じクラスにやって来たり。
幼馴染から分かりづらい好意を向けられたり、夏休みの間、部活の先輩と裏山に泊まり込んでUFOを探したり。
基地で働く大人と持ちつ持たれつで少女の面倒を見たり、その少女と逃避行を繰り広げたり。

特に文化祭の描写は最高だった。
主人公がキャンプファイヤーで誰と手を繋ぐのかに主眼を置きながら、群像劇的に場面が切り替わっていく。
学生たちの興奮と狂乱が嵐のように伝わってくる、熱いエピソードだった。

友情、恋、成長、別れ。
そういったものをひとまとめにして青春と言えるのならば、「イリヤの空、UFOの夏」はまさに青春小説と呼ぶに相応しい、最高の作品だ。
きっと夏になるたびに、この作品を思い出しては手に取ってしまうのだろう。

あぁ、こんな青春を送ってみたかったなあ……
こんな感情に浸れる小説、何度読んだってめちゃくちゃ気持ちいいぞ。

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