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何もしない部活

漫画やアニメなどで、先輩も後輩もいない。自分たちの代しかいないような弱小の部活が出てくることがあります。
大学生以上の人からすると、そういった部活なんていうのはほとんどないと思うでしょう。

私は高校時代に放送部に入っていました。入ったというより、休部状態だったのを乗っ取りました。高校入学当時、部員がいなかった放送部があって、その顧問が偶然自分の担任だったということもあり、仲の良い友人を集めて放送部に入りました。部活としてなりたつ最低人数の5人しかいない、最弱の放送部です。

やっていることは朝会のマイク設定と、昼に曲を流すことくらい。体育祭の時には一応結果速報なんかもやっていました。
それ以外の時間は本当に何もしなかったです。部員を含め、クラスメイトと放送室に陣取って、昼は弁当を食べ、放課後は駄弁り、ポットを持ち込んでお茶を飲んだりしていました。

学園祭で出し物をすることはなく、時々迷子や落とし物の案内をするくらい。それ以外は部室にこもってギリシャの港町のジグソーパズルをしていました。

驚くぐらい何も為さず、青春の1ページとも言えない空気感の中、私は3年間放送部であり続けました。
よく高校生活の思い出という話で、「涙を流して抱き合った」「夜遅くまで準備をした」「合宿をした」という話が上がりますが、そういったことは一切ありませんでした。
最長で19時くらいまで部室に勝手に持ち込んだゲームをやったくらいです。

それでも、ただひたすら楽しかったです。好きな友人達と、好きに時間を過ごす。思い出なんてほとんどないけど、勉強の片手間に暇つぶしをひたすらやっていました。

今、当時の部員のみんなと会うことは殆どありません。他のメンバーは会っているのかもしれませんが、私は全然です。
仲が悪くなったわけではなく、ただ、今は一緒にいないだけです。あの時は週5,6で集まっていたとしても、今は違うだけ。

私が思うに、部活なんてのはそんなものでもいいわけで。強い思い出があったらそれはそれで立派だとは思いますが、その人がその人らしく、その人としていられる場所があれば、十分だと思うのです。
あの時、私の居場所はあそこでした。
何か為したわけでも、何か挑戦したわけでもなく、ただ自分たちの場所として、居ることが許されていた場所。あの時の無為に過ごしていた時間や、過ごしてていいと思わせてくれたあの場所は、私の心の拠り所の一つであり、誇りです。

今、部活に行けない人もいると思います。そもそも部活に入っていない人もいると思います。
それでも、学生時代を振り返って、あの時あの場所はかけがえのない私の居場所だった。と思えるような学生生活を送っていただけたらと思います。

P.S.
卒業時壁に部員全員で名前を落書きしましたが、校舎が改築されきれいさっぱりなくなっていました。ここにその供養を致します。

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