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【イベントレポート】2045年のパースペクティブin小浜(1日目の1)

 こんにちは!UNNYAライターのコケです。ムシムシする季節になりましたね〜。本格的な夏が来る前にバテがちなんですが、みなさんいかがお過ごしですか?

 さてさて。2045年を見越したまちづくりを考える合宿が6月13、14両日、長崎県雲仙市小浜町で開かれました。
 なぜ今から25年後の2045年に設定しているかというと、戦後100年目の節目なのです!そして、今の20〜30代は、25年後は大ベテランな世代になるのです!(ちなみに私はアラフィフに…ヒョエー)

 25年先の長崎を想像してみて、長崎はどうなりたいのだろう、どうなっているのだろう。そんな視点で考えながら長崎の現状とビジョンを共有するため、今回の合宿が組まれたわけです。
 参加者は、文化、観光、斜面地などさまざまなフィールドで活動する20〜30代の約20人。激アツな議論が繰り広げられました。参加したUNNYAライターのコケと、hoNikaが3回に分けてレポートします。それではどうぞー。

 「2045年、長崎はどうなっていますか」

 冒頭、イベントの首謀者・平山広孝さん(長崎市景観推進室)が、そう質問を参加者に投げかけた。
 貿易、観光、工業で発展を遂げた長崎だが、産業の中心である三菱重工のビジネスが今や危機を迎えたり、長崎市の転出超過数が2年連続で全国市町村別ワースト1位となったりするなど、長崎が抱える課題は山積している。
 平山さんは「いまは時代の転換点。地理や自然、人など長崎が持つリソースを客観的に評価し、世界に何が提供できるか考えるべき」と指摘した。
 

 1日目は、休憩や昼食を挟みながら、午前10時半から午後4時半ごろまで、活動紹介やディスカッションが繰り広げられた。行程は次の通り。

▼10時半〜11時 ゲスト講演 
▼11時〜正午  斜面市街地の再生
―みんなの公民館クレイン
―女子大生が空き家に住んだ話
―斜面地の未来 
―発表者のディスカッション
▼正午〜午後1時半 昼食
▼午後1時半〜午後3時 まちなかの賑わいづくり
―歴史的建造物の保存・活用
―歴史的資産と中心市街地再生
―ウオーカブルシティの魅力
―発表者のディスカッション
▼午後3時〜午後4時半 交流人口の拡大
―観光まちづくり
―ウィズコロナとアフターコロナのインバウンド
―茂木まちごとホテル
―発表者のディスカッション

 お分かりのように内容は盛り沢山!
   今回は<ゲスト講演>と<斜面市街地の再生>について紹介する。

<<ゲスト講演>>

  ゲスト講師は、小浜市在住のデザイナー、古庄悠泰さん。「デザインをすることは景色を作ること」と題して講演した。
 福岡県糸島市生まれ。初めて小浜と関わったのは、九州大芸術工学部に在学中の2012年。小浜市・刈水地区で1週間のデザインワークショップ(Studio Shirotani主催)に参加し、魅力ある町にしようと、環境やデザインの面から空き家や環境などを調査した。
 空き家を食堂にしたり、路地に休憩するベンチを作ったり…。そんな「エコビレッジ」構想を、市や住民に提案。その発表を見た住民から空き家の提供を受け、ショップとカフェを兼ね備える「刈水庵」を2013年にオープンさせた。古庄さんは大学卒業後、Studio Shirotaniに入社。同社に勤める傍ら、刈水庵の店長を3年間勤めた。
 これまでの経験から2016年、デザイン事務所「景色デザイン室」を小浜で立ち上げた。デザインマーケットなどを開催して観光客が増えると、住民が路地に花を植えるように。町の人たちにも変化が現れた。
 古庄さんは行動する際、「こうなったらいいな、をまず想像してみる」ことを大切にしているという。そしてこう言葉を続けた。「玄関先を掃除することも、窓辺に一輪の花を生けることも、自分のまちをきれいに、美しく、気持ちよく、豊かにしているという視点で見ると、いろんなものが変わってくる。誰もがその街の景色をデザインしている」

<<斜面市街地の再生>>

 斜面市街地の再生のセッションで発表したのは、「みんなの公民館クレイン」、「女子大生が空き家に住んだ話」、「斜面地の未来」の3テーマ。どれも濃い内容だった。

 まず、「みんなの公民館クレイン」と題して話したのは、長崎市坂本2丁目で空き家を改修し、共有の場を作っている大分市出身の藤崎大河さん=長崎大工学部構造工学コース大学院1年=。
 CRANEは2018年、地域活性化と空き家問題を解決するため築60年の木造平屋の空き家の改修に取り掛かった。2019年11月に完成。坂本町は、長崎大医学部が隣接し、学生や留学生も多いことや、被爆遺構が点在することが特徴。
 藤崎さんは今年4月から先輩の活動を引継ぎ、コミュニティーの場だけではなく、レンタルスペース(3時間500円)として貸し出している。
 藤崎さんは「2045年には、アドレスホッパーの人たちの拠点や大学の研究の場といった用途で空き家の改修が進んでいく。技術の発展に伴い、斜面地への交通手段も画期的なものになるだろう」と期待を込めた。

 長崎大経済学部3年の阿多美咲さん=北九州市出身=は、昨年夏から1年間、長崎市中新町の斜面地にある空き家に住んだ体験談を語った。
 大学で五島市の空き家再生に携わり、長崎でも実際に空き家に住んでみようと「軽いノリで空き家に引っ越した」という阿多さん。空き家情報をネットで探し、長崎市中新町の斜面地の空き家に住むことになった。
 ところが。空き家にあった大量のタンスを解体することになったり、エアコンなどを取り付けしたり、トイレが壊れたり…。あまりの辛さに、地元から長崎に帰りたくないこともあったという。
 現在は、空き家から引っ越したものの、住んでいた家の近くにある空き地を活用し、農園を開いている。阿多さんは「たくさん辛いことはあったけれど、学びはたくさんあった」と振り返った。

 「斜面地の未来」と題して話したのは、つくるのわデザインの岩本諭さん=大分県出身=。自身が暮らしている、斜面地(浪の平地区)について魅力を伝えた。
 これまでの体験から▽家賃が安い▽眺めがいい▽庭でBBQや農園を楽しめる▽静かな環境で生活できる▽エレベーターやバイクを使って移動できる▽地域の人々のコミュニティの中で豊かに暮らすことができる―ことが魅力だと強調。
 2045年の斜面地(特に浪の平)に人を呼び込むためには、魅力をよりブランディングしたり、見える化したりすることが重要という。エレベーターやカーシェアリングの活用で斜面地へのアクセスを向上させることや、空き地を農園として活用することを提案した。
 長崎市の住宅や施設を集約する「コンパクトシティー」づくりの政策について「杓子定規で決めるのではなく、各斜面エリアの暮らしのどこが魅力なのかを分析し、斜面地を生かすか閉じるか考えていくことが重要」と話し、「地域のつながりやコミュニティを大切にできる浪の平地区を、斜面地暮らしのモデルにしたい」と意欲を語った。

<<ディスカッション>>
 平山さんがファシリテーターとなり、発表者3人の議論する場が設けられた。

岩本・阿多ちゃんのブログを見て思ったが、もうちょっと手伝えたらよかった。本人も言っていたけれど、空き家の見極めは大事だと思う。

平山・最近、空き家再生の取り組みで事業者は増えている。学生がチャレンジする時、学生のケアはあまりない。

岩本・藤崎くんは、ゼミで空き家活用に取り組んでいる。あまり学生にリスクはなくて、実践できる環境があるのはいい。

平山・サポートの体制は大事。阿多ちゃんはすごい行動力がある。空き家にダイブしちゃった。勢いとしてはよかった。たぶんこういう人はたくさんいると思う。その勢いを僕らが分かっていたら、もっといいつなぎ方ができたと思う。

阿多・今だったら、相談していた。知らなかった。

岩本・(事業者は)空き家が埋まればいい、という感覚。空き家に住んで何をするのか、なぜその空き家に人がいた方がいいのか、という住ませる目的がない。

平山・空き家を活用するだけだったら、そうなっちゃう。空き家をどう使うかという話がないと、周りに悪影響を与えるかも。

藤崎・まさに今、空き家を探していて、住もうとしている研究室の人がいる。何を基準に住めばいいのか。その子は、安さ重視で物件を探している。

平山・安さだけではないところで見極めないといけないし、安いだけだったらたくさんある。良心的な不動産が必要なのでは、斜面地不動産みたいな。
 ちなみに、エレベーターがない状態で斜面地に住んでみたい人挙手。(会場に呼びかける)2人。バイクが通れる。4〜5人。エレベーターがあれば住んでもいいという人。10人くらい。やっぱり斜面地が無理という人。少数。道路付きの斜面地だったらいいという人。大多数。あ〜こういう結果が出るから、長崎市は斜面市街地再生事業をやってきたわけね。

森・阿多ちゃんの話はすごくよかった。空き家活用がクローズアップされて、きれいな面しか知らないから、そこに憧れで入る人がいる。ノウハウとなるような、柱の磨き方など実際に空き家に住んでいる先行事例を知れるガイドブックがあればいい。

岩本・最後時間がなくて言えなかったが、居留地スタイルというウェブサイトを作りたい。観光だけではなくて、暮らしの情報、空き家の情報、空き家を改修して住んでいる先輩たちのコラムなど。観光と暮らしと、居住までカバーできるものをつくって、斜面地に人を呼びこみたい。

1日目の2に続く。

写真・さおりん

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