「オマケ付きで好き」短編小説
恋にも愛にも、オマケが付くのだと気が付いた。
思えば幼い頃から。足が速いからとか、優しくしてくれるからとか、大事な娘だからとか。
とにかく、人はオマケが付くから好きなのだ。
私もそうだったけれど、気が付いてみれば馬鹿馬鹿しくて、もう止めようと思っている。
それに気が付かせてくれた事実だけは高樹に感謝しよう。
――いや、やっぱり無理。
思い至る事ができた切っ掛けと、今、胸の裡にあるごちゃごちゃとした嫌悪感は、やっぱり別だ。
だから私は、毛布に包まって何度も打ち直したメッセージをもう一度打ち込んで、高樹に送信した。
『ずっと考えたけど、変わりません。別れたいです』
画面に私の言葉が表れて、そのメッセージの脇に小さく『既読』と付いた時、体には重たい後悔や乾いた汗みたいな後ろめたさは一つも無くて、そっと息を吐く。
同時に高樹とやり取りをしていたアプリを閉じて、スマートフォンを毛布の外へ放り投げた。
手の平大の光源が消えて真っ暗な温かさだけが残る。
心が疲れ切っていて、予感も無いまま眠りにつけた。
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