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自分を好きになりたくて内省をしている人

大学に行きたくなくて、社会にも出るつもりはなくて、ぜんぜん何かやりたいことって、それは文章を書くくらいで。私の18、19はそんなもんでしたね。
なんとかでも、浪人を2年間して、大学に入学しました。
大学入学後は、もうずっと遊んでいた気がしますね。
思い返せば、ようやくその時、私は人間になったんじゃないのかね、と思います。20年かけて、人になった。
わーなんだろう。そういう、長い時間をかける必要のある人も、いるよね、って。自分を慰めるわけではないけどさ。大学に行きたいけど行かなくちゃいけないのかよくわからんし、かといって何もしないままでいるのはどうかと思っていたら、なんでしょう、その、内省を長く必要とする人も、いるんだろうなと。
内省装置としてのインタビュー、目指したいですね。
ということで無名人インタビューゴツ!!!!!
【まえがき:qbc・栗林康弘(無名人インタビュー主催)】

今回ご参加いただいたのは 塩山桃音 さんです!

年齢:20代前半
性別:女性
職業:大学生


現在:「いろんなものに不快感を覚える」という悩みについて、興味深いという意味で面白いって言って、話を聞いてくれたことですかね。

尾崎ゆき:
今何をしている人でしょうか?

塩山桃音:
今、大学3年生なんですけど、休学してて、実家にいるので。なんていうか、休学してる人です。

尾崎ゆき:
今大学3年生っておっしゃったんですけど、いつから休学されてるんですか。

塩山桃音:
3年の後期からなので、昨年の10月からです。

尾崎ゆき:
休学した理由を伺ってもいいでしょうか?

塩山桃音:
はい。中学生の頃に強迫性障害になってしまって。

それで親の助けもありつつ何とかやってたんですけど、大学が一人暮らしになって、それで全然生活が回らなくて、勉強もできなくて、このまま勉強せずに卒業するのは避けたいと思って、ちょっと1年、かな。半年かもしれないんですけど、とりあえず休学しようっていうことになって、休学してます。

尾崎ゆき:
言いにくかったら答えなくてもいいんですけど、例えばどういうときに生活が回らなくなりますか。

塩山桃音:
1日を通して、寝てる間以外ずっと何かしら気になることが出てくるんですね。例えば、私は嫌な対象が、不潔恐怖症なんで汚いもの。もっと具体的に言うと排泄物とかがすごく嫌で。

外が汚いって思う人もいるんですけど、私は自分が周りを汚してるっていう感覚がすごいあって。だから例えば、トイレ行ったときに手を洗う前にズボン触ったりしなきゃいけないと思うんですけど、そのときに触ったところが気持ち悪くて。

手を下ろしたら当たっちゃうから、ずっと手を上にしなきゃいけないとか、そういうのが最初の頃からあって。だんだんお風呂が長くなったり、トイレ行っただけでお風呂入らなきゃいけなくなったり、外出しようと思ったけど汚れた気がしたから外出できなかったり。

っていうのでバタバタバタって日常が計画通りにいかなくて、全てのことに時間がかかってしまって。

洗濯も洗剤入れたけど、入れたはずだけどわかんないからもう一回まわすかと思って回して、干そうと思ったときに、床に落としたら洗い直しで。自分の体に当たっても気持ち悪くてみたいな感じで、洗濯物を干せなくて着るものがないっていうような状態に、一番悪いときはなってしまって。

予定も予定通りにこなせないし、勉強もできないしっていう感じで。悪いときはそのくらいな感じになったので、そういう意味で生活が回らないっていう感じですかね。

尾崎ゆき:
一番悪いときのお話をされたと思うんですけど、今はどういう感じですか。

塩山桃音:
今は、実家に帰ると犬がいることもあったりして、実家は自分にとって汚い場所だと思ってるから、そこまで綺麗にする必要がなくなってて、多少楽かなとは思います。

洗濯物も私じゃなくて親がやってくれるし、ご飯も作ってくれるし。とりあえず、生活は回るっていう感じですね。

尾崎ゆき:
さっきお話の中で「計画通りに進まない」っておっしゃってたんですけど、今回のインタビューは13時からって時間が決まってて、時間通りに進めるために工夫されたことってあるんですか。

塩山桃音:
まず朝起きるのが遅い。起きれないので、朝には予定を入れないようにしようと思ったのと。

13時ぐらいなら、さすがに起きてるし、落ち着いてるかなと思ったので、まず時間はちょっと、できるだけ参加できるように選んだっていうのが一つあります。

尾崎ゆき:
他にも何かありますか。

塩山桃音:
具体的にっていうとないかもしれないですけど、予定がある、人との約束があるってなると、これはなるべく守らなきゃいけないと、当たり前ですけど、思うので。

その分ちょっとなんか、気がそれるっていうか、本当は手洗いたいけど、今は洗ったら駄目だよ、みたいな。そういうマインドになるのもあって、自動的にっていうか、強制的に守るように、何となくコントロールされてる感じはあります。

尾崎ゆき:
では今、実家で過ごされてると思うんですけど、手を洗ったりする以外に好きでやっていることとかはありますか。

塩山桃音:
好きでやっているかというと、ちょっと微妙かもしれないですけど、自分の内面について考えるとか。あとは本を読むとか、そういうのは、どっちかというとやりたくてやってることですかね。

尾崎ゆき:
内面についてはどういったことを考えられるんですか。

塩山桃音:
最近、自分が不快感……。不快感っていうと言葉が強すぎるかもしれないですけど、違和感とかを感じる対象がいろいろあって。

明らかにこれは嫌でしょうがないでしょって思うものと、これ、嫌だって思うのは何だろうとか、嫌だって思うこと自体に罪悪感があるっていうようなことがあって。

当たり前に嫌なことは別にそのままでいいと思うんですけど、なんで嫌なんだろうとか、嫌だと思って申し訳ないとか、避けて申し訳ないって思うものがすごい気になって。

どういうのにまずそういう気持ちになるのかっていうのと、なんでそう思うのかっていうのをちょこちょこ考えてます。

尾崎ゆき:
違和感の対象を何でなんだろうと分析されてるみたいなことですかね。

塩山桃音:
そうですね。まあ、自分の中でですけど。

尾崎ゆき:
例えばどんなものがあって、とかって伺ってもいいですか。

塩山桃音:
例えば、ざっくり言うと本とか。私、本は価値のあるものだと思うんですけど、本にどっぷり浸かってる自分を想像するとなんか気持ち悪いと思ったり、エッセイが嫌いだったり。

そういう、好きだけど嫌いみたいなもの。例えば本とか、こぢんまりしたカフェとか、行くのが好きだけどなんか急に恥ずかしくなったりっていうのがあったり。

あとは物じゃなくて、人に対しても、なんか、この人のノリは嫌いだとか、この人と一緒にいたくないとか思うことが、誰しもあると思うんですけど。結構感じやすいのかなと自分では思ってて、そういうのを考えたりしてます。

尾崎ゆき:
エッセイが嫌いって今はっきりおっしゃったので、エッセイがどうして嫌いか教えてもらえますか。

塩山桃音:
これは難しくて。例えば私の好きなアーティストのエッセイとかだったら読んでみたいと思うんですけど。多分、自分で売り込むタイプが好きじゃないのかなって最近思って。

そんなに、アーティストとかそういうわけじゃないけど、考えをつづったものを出版するとか。多分、自分がそういうのに興味があるから僻みも絶対にあると思うんですけど。

自分の考えに出版するほどの価値があると思ってるんだっていうのがちょっと、今の私にはまだ素直に受け入れられなくて。

みんな考えてることはあるはずなのに、この人の声は本になって、こっちはならない。自分の話に価値があると思ってるのが、なんか不思議だなって、今の段階では思ってしまうのが一番の理由かなとは思ってます。

尾崎ゆき:
結構好き嫌いを感じやすいっておっしゃってたんですけど、好きに囲まれる生活をイメージしてもらって、どんなものが身近にありますか。

塩山桃音:
服とか、そういうファッション系のものとか。あとは、美味しいものとか。あと紅茶とか日本茶はすごい好きなので、そういうものに囲まれてたら、幸せではあると思うんです。

尾崎ゆき:
「幸せではあると思う」っておっしゃった言い方がちょっと気になって。幸せだけど、何か他に感じるものがあるってことですかね。

塩山桃音:
本当の本当に心の底から大好きってものが多分なくて。そもそもネガティブね、まあ、広く言うとネガティブな方向に目がいきやすいっていうのもあるんですけど、本当に大好きなものが多分ないし。

好きって思ってても、90%好きでも、10%なんか好きじゃないみたいな気持ちが入ってて、多分、どこかに。

客観的に見て、これを好んでいる私はおかしい。おかしいとは言えないけど、気持ち悪いというか好きじゃないみたいなのが、ちょっとどこかしらに入ってるので、本当の本当に居心地がいい場所があるのかっていうと、ちょっと疑問ですね、自分では。

尾崎ゆき:
白黒つけたいみたいなことは思いますか。

塩山桃音:
ああ、思います。わからないっていう状態が。わからないとか曖昧とか、どっちの要素もあるっていうのがすごい多分嫌いで。

自分のことを考え出すようになったのも、自分の二面性みたいなのがすごく嫌で。私って本当はどうなんだろうとか、こういうときにこういう態度になるのなんでだろうとか、そういうことを考え出したきっかけが二面性が嫌だっていうことだったので。

そもそも性質として、はっきりさせたいっていうのはある気がします。

尾崎ゆき:
ではちょっとお話を変えてみて、最近楽しかったことってあります?

塩山桃音:
高校の友達と実家の近くのカフェとか行って、お話ししたことですかね。

尾崎ゆき:
お友達は1人で、塩山さんと2人で話した?

塩山桃音:
はい。

尾崎ゆき:
どんなところが楽しかったんですか。

塩山桃音:
そもそも、その子はかなり趣味が合うなって思ってる子で。遊んだ回数がすごい多いわけじゃないので、まだ多少の緊張とかはあるかなと思うんですけど。それでも、この空間にいて大丈夫っていう感じがするっていうか。簡単に言うと居心地がかなり良くて。

本屋さん併設のカフェに行ってお話しして、その後にまた別の古本屋さんに行ったっていう感じだったんですけど。初めて行ったお店だったので、そのお店を見つけていけたっていうことも含めて楽しかったなって思います。

尾崎ゆき:
この空間にいて大丈夫って思えたのは、なんでですかね。

塩山桃音:
まず私からその子に対する嫌悪がない。高校のときに遊んだことがあるわけじゃなくて、その後に話が合いそうって言って会うようになった子なので、ここが嫌だなって思うようなところが見つかってないっていうのはあるとは思うんですけど。

今のところ、その子の雰囲気とかがすごい私の中でふに落ちるというか、いいなって気持ちいい感じの子で。その子が私と一緒にいてくれる。しかも趣味が合うっていうことで、自分を肯定してるのか、されてるのかわからないけど、している気になるんだと思います。

尾崎ゆき:
肯定される気持ちになるっていうことは、本当に居心地が良かったんですね。

塩山桃音:
そうですね。

尾崎ゆき:
趣味が合うっておっしゃってたのは、本に関連することですか。

塩山桃音:
そうですね。本は圧倒的に友達の方が読んでるし、好き度も高いと思うんですけど。

内省するクセはお互いあって。私が考えてることにも興味を持ってくれるし、あと上手に言葉にするんですよね、その子。今日あったこととか、日常にあったことを。そういうところも、素敵だなと思うし。

私も言葉にするのは好きなので、普通はちょっと気恥ずかしく感じるんですけど、言葉にするのも、その子が言葉にしてるのを見ても別に違和感を覚えなくて。っていう共通の共通点は、そこを言葉にするっていうところもあると思います。

尾崎ゆき:
そのお友達とお話をしたり、聞いたりする中で、一番印象に残ってることって何ですか。

塩山桃音:
私が最近、さっき話した「いろんなものに不快感を覚える」という悩みについて、いい意味で面白い、興味深いという意味で面白いって言って、話を聞いてくれたことですかね。

そこまで私の考えに入り込んでくる人って、あんまりいない気がするんですけど。面白いって言って、話を聞いてくれたっていうのが印象的ですね。

過去:雑巾がけばっかりして1日終わっちゃうみたいな感じになって、さすがにこれはおかしいって、そのときに思ったんですけど。

尾崎ゆき:
子供のときって、どんな子でしたか。

塩山桃音:
子供のときは、人見知りだったと思います。今もですけど。

すごい小さい時、3歳、4歳とか。幼稚園に入る前ぐらいのときに、小さい同い年ぐらいの子が遊んでるところに行っても、1人で行くのが怖くて「ママも」ってずっと言ってたって、後から聞いた話ですけど、言われるので。

多分昔から他人の視線が気になってたのもあるし、人見知りもあるしっていう感じだと思います。

尾崎ゆき:
何か熱中していたことだったりってあります?

塩山桃音:
自ら熱中していたことは、あんまりない気がします。

一応習い事はしていて、強制的に頑張らされてたっていう感じはあるんですけど。自分から、これが好きで好きで、みたいなことは特になかったですね。

尾崎ゆき:
習い事は何をされてたんですか。

塩山桃音:
バイオリンをやってました。

尾崎ゆき:
自分からやりたいって言ったわけじゃないと思うんですけど、どういう経緯で始めたんですか。

塩山桃音:
母親が、楽器は違うんですけど、音楽の先生。学校じゃなくて、音楽教室の先生をしてて。名前に「音」が入ってるように音楽を好きになってほしいっていうのはあったみたいで。「何か楽器やらない?」って言われたときに「バイオリンをやる」って言って、バイオリンをやることになりました。

尾崎ゆき:
バイオリンを選んだ理由って覚えてます?

塩山桃音:
母親がチェロなんですね。チェロをやったら喧嘩になるから、チェロはやりたくないと思って。多分次に、フルートって言ったらしいんですけど。「フルートはちょっとまだできないんじゃない?」って母に言われて、じゃあ、多分チェロが弦楽器だから何となく連想したのがバイオリンで、第2希望でバイオリンって感じですね。

尾崎ゆき:
何年くらいされてたんです?

塩山桃音:
レッスンに通ってたのは中学2年ぐらいまでなので、10年ぐらいですかね。その後は弾けるときに弾くっていうような感じで続けてます。

尾崎ゆき:
弾けるときに弾くっていうのは、塩山さんの気分で「弾きたいな」というときに弾くってことですか?

塩山桃音:
そうですね。でも、それだとあんまり私、弾かないので。一応大学では、オーケストラ。部活に入って、その定期演奏会に向けて練習するっていう感じで強制的に弾かせる機会を与えたりもしてました。

尾崎ゆき:
自分でやりたいわけじゃなくて、あんまり好きではないのかなって、私は受け取ったんですけど、辞めることもできるわけじゃないですか。

塩山桃音:
はい。

尾崎ゆき:
でも続けるっていうのは、何か理由があるんですか。

塩山桃音:
多分レッスンに通い続けたのは、割と最初の出だしは、そつなくこなせて、うまいこと弾けてたので、先生にも褒められるし、コンクールに出ても成績残せるし、みたいな感じで多分続けてて。

それで、バイオリンが弾けるっていうのが、特技とか趣味を聞かれたときに「バイオリン」っていうのはやっぱ言いやすくて。それで何となく、自分のアイデンティティとまでは言わないけど、自分はバイオリンを弾く人みたいな感じになっていって。

それで結局、練習とかがめっちゃ好きってわけじゃないんですけど、本番は楽しいなって思うので。バイオリンに関する人間関係も好きだし。そういうのもあって。

すごい弾きたくてたまらないっていうのが性質的にもそうではないけど、楽しい瞬間もあるし、せっかく弾けるから続けてるっていう感じですかね。

尾崎ゆき:
本番が楽しいっておっしゃってて。本番っていうと、1人で舞台で弾くってことですか。

塩山桃音:
そういうこともありますけど、最近だと、もっぱらオーケストラとか、数人でアンサンブルとかばっかりですね。ソロはほぼしてないです、最近は。

尾崎ゆき:
オーケストラは何種類も楽器があって、みんなでやるってことですよね。

塩山桃音:
そうですね。

尾崎ゆき:
アンサンブルは5人くらいの少人数でやるってことですか。

塩山桃音:
そうですね。人数は問わずって感じですけど。もっと大人数もあれば、少人数もあるんですけど、私が弾くのは4人とか、多くても10人とかぐらいでしたかね。

尾崎ゆき:
本番で弾くときに一番楽しいなって思う瞬間って、いつなんですか。

塩山桃音:
友達と目が合うとき。みんなやっぱりテンション上がってるし、楽しそうに弾いてて。なんとなくアイコンタクトを取ったりするんですよね。そのときに目が合うと嬉しいなって思います。

尾崎ゆき:
弾きながら目が合うってことですか。

塩山桃音:
そうですね。

尾崎ゆき:
弾きながら目があって、楽しい。そこにあまり魅力を感じずに、拍手されて称賛を浴びるのが嬉しいみたいな人もいると思うんですけど、なんで塩山さんは、友達と目が合ったときに楽しいって思うのかなと思って。どうしてなんですかね。

塩山桃音:
なんでだろう。目が合わなくても、本番では一体感があって。同じ方向に向かってる感じがあって、目が合うとさらにお互いを気にして、楽しいねっていう感じが共通理解というか、意思疎通できる感じが多分楽しいんだと思います。

尾崎ゆき:
意思疎通。ソロで舞台で演奏するのはあんまり好きじゃないんですかね。

塩山桃音:
そうですね。その場合は緊張が勝っちゃう気がします。

尾崎ゆき:
強迫性障害になったのが中学校っておっしゃってましたよね。何かきっかけがあったんですか。

塩山桃音:
きっかけは特に、今でもわからず。あからさまに誰かが死んでしまってとか、そういうのは全然なくて。人並みにあれが嫌だったとか、これが嫌だったとかはあると思うんですけど、はっきりした原因はわかんないですね。

尾崎ゆき:
急に気になりだしたみたいなことではなく?

塩山桃音:
いつの間にかじわじわ気になりだしてて。明らかにおかしいと思ったのは、中学2年の秋なんですけど。

犬が家にいて、トイレをするから、そこで足が多少汚れるんですけど、そのままペタペタペタペタ歩き回るっていうのがもうすごく嫌で。前からそうだったはずなんですけど、すごく嫌で、ずっと雑巾がけみたいな。

雑巾がけばっかりしてて1日終わっちゃうみたいな感じになって、さすがにこれはおかしいって、そのときに思ったんですけど。前から気になることは、ちょこちょこ増えてたはずで。

私の記憶に残ってるのは一つしかないんですけど。おかしいなって思う年の春頃に、スリッパの裏が汚いんじゃないかって思って。何をしたかは覚えてないんですけど、おじいちゃんとおばあちゃんが家に来てくれたときに、スリッパの汚さがすごい気になったっていうのは覚えてて。

そういうちょこちょこっとした気になることは、多分ちょっとずつ増えてたんだと思うんですけど、それがおかしいと思ったのは秋ですね。

尾崎ゆき:
強迫性障害って、病院で診断を受けたってことですよね?

塩山桃音:
そうです。

尾崎ゆき:
ご自分で、それについて何か思ってることとかあります?

塩山桃音:
毎日大変なので、自分が強迫性障害っていうのは全く疑いないんですけど。障害者手帳、今は有効期限切れちゃってるんですけど、出てたこともあって。でも、世間一般で言う障害者っていう枠に入るっていう実感がなかなか持てなくて。

自分で強迫性障害ってことわかってるんだけど、多分受け入れきれてない部分はあって。でもそれって、他の障害者の人も受け入れないってことに多分なっちゃうから、受け入れられるようになりたいなと思ってるところなんですけど。

普通に生きたいっていう思いが多分強いタイプだし、普通から逸脱してしまってるっていうのは、なかなか自分では受け入れにくいところはありますね。

尾崎ゆき:
受け入れたら、どうなるんですかね。何か変化があると思いますか?

塩山桃音:
今は、強迫性障害じゃなかったらこうだったのにとか、強迫性障害のせいで、これができないとか、あれができないとか、そういうのをすごい思うんですけど。

強迫性障害だけど、これができてるみたいな見方ができるようになるかもしれないって、ちょっと思うのと。

あとはやっぱりさっきも言ったように、私以外の病気とかで困ってる人に対してもうちょっと優しい目が向けられるかなっていう気はします。

尾崎ゆき:
塩山さんは誰かとの繋がりが好きだったり、誰かと共通とか、共有できることが嬉しいって思うのかなって思ったんですけど、強迫性障害のことを打ち明けたりはされてるんですか。

塩山桃音:
そうですね。中学のときに吹奏楽部に入ってたんですけど、普通になかなか行けなくなったり、学校も週1しか行けないみたいな時期もあったりしたので、仲いい子には言ってて。

「強迫性障害というのになってしまって、汚いものが気になって大変なんだ」ぐらいな説明はして。だからその子たちが、何人か知ってるんですよね、桃音ちゃん病気なんだっていうのは。

高校では直接的に言った人は誰もいなくて。大学では、メンタル的にしんどいタイプなんだって言ってくれた子には、私もこうなんだって言ったり。あとは彼氏には言ってて。

あと直接的に言ったわけじゃないですけど、こないだ佐藤二朗さんがTwitterで強迫性障害がしんどくてみたいなのを言ってた。それに乗っかってnoteに書いた文をインスタグラムのストーリーズの親しい人機能で、一応共有はしました。

だから読んでるかはわからないけど、みんな。ちらほら「そうなんだ」って思った子はいると思います。

尾崎ゆき:
「高校では誰にも言ってなかった」っておっしゃってて、何か理由があるのかなって思ったんですけど、いかがですか。

塩山桃音:
高校は部活もやってなかったので、特段言う必要がなかったっていうのが大きいと思うんですけど。あと最初、先生に相談したときに、中学んときは強迫性障害という病名は出さないようにしてもらったんですけど「塩山さん、ちょっと最近しんどくて」っていうのをクラスの子には先生から周知してもらったんですね。

高校のときは言わなくても大丈夫だと思うっていうことになって、そんなわんぱくな子がいるタイプの高校でもなかったんで、言わないことにしたっていう流れで、そのまま特に言うきっかけもなく過ぎていったっていう感じですかね。

尾崎ゆき:
これまで彼氏さんだったり、仲のいい子だったり、同じようにちょっとしんどいっていうことを話してくれた子に打ち明けたりってあったと思うんですけど、強迫性障害なんだよねって言ったときの相手の反応ってどういう感じだったんですか。

塩山桃音:
やっぱり病気に関して詳しい子はあまりいないので、普通の精神疾患なんだ、大変なんだねっていう感じで「そうなんだ」ぐらいですね。「それは大変だね」って(大袈裟に)言うでもなく、さらっと流すでもなく「そうなんだ。それ、どういう感じなの?」みたいな。割と平常と言えば平常。平常運転な感じの返答が返ってきます、大体。

尾崎ゆき:
それは塩山さん的には、どうだったんですか。

塩山桃音:
少なくとも嫌な気分にはならない。別にいい気分になる場面ではないから、感情としてはフラットだし、拒絶されないで良かったなっていうのはあるかなっていう感じです。

未来:願わくば病気を克服とまでは言わなくても、ましになって、人と話す時間が増えたらいいなって今思ってます。

尾崎ゆき:5年後10年後、あるいは死ぬまでを想像して未来について、どういったイメージをお持ちですか。

塩山桃音:
未来について。やりたいことはいろいろあると言えば、あるんですけど。病気のこともあるし、あんまり期待しない方がいいのかなとは思ってて。あんまり長生きしたくもないし、そこそこの年で死ねたらと思ってるんですけど。

でも、願わくば病気を克服とまでは言わなくても、ましになって、人と話す時間が増えたらいいなって今思ってます。

尾崎ゆき:
例えば、やりたいことは何がありますか。

塩山桃音:
まず普通に就職したい。普通に就職して、今興味があるのは出版とかなんですけど。普通に就職できたらいいなっていうのがまず一つと。

あと自分の家が欲しくて。一軒家を建てたり、マイホーム欲しいっていうのは昔からずっと思ってて。それは大きな夢ではありますね。

尾崎ゆき:
マイホームが欲しいのは、なんでですか。

塩山桃音:
親が転勤するタイプの人だったので、ずっと借家なので、自分の好きなように配置してこだわりを詰めて、自分の居場所的なものを作りたい。あと、実家的な場所が欲しいっていうのがありますね。

尾崎ゆき:
今はまだ具体的にイメージできてないかもしれないんですけど、どういうこだわりで家を建てたいですか。

塩山桃音:
細かいところで言うと、私はお茶が好きだから、茶葉を置く棚が欲しいとか。あとは一応、音楽も続けるつもりだから、音楽ができる防音室が欲しいとか。あとは、家事の動線が便利な造りにしたいとか。お風呂は、お風呂の床まで温かくするとかって思ってます。

尾崎ゆき:
いいですね。自分の居場所になる空間を作りたいってことなんですかね。

塩山桃音:
そうですね。

尾崎ゆき:
そのために、とことん心地よさを追求したいってことですかね。

塩山桃音:
そうですね。1回建てるだけじゃ、どうできるかわかんないですけど。

尾崎ゆき:
家を建てた後の話になるんですけど、どんなふうに塩山さんが暮らしているのかなって勝手に想像したくて。何かイメージあります?

塩山桃音:
いわゆる丁寧な暮らしに憧れますね。そういうタイプじゃないと思うんですけど。ゆっくりお茶飲んで、美味しいお菓子食べて。結婚してるなら、旦那さんとお話しして、ゆっくり時間が流れてる感じの生活をしたいですね、休日は。

尾崎ゆき:
お休みじゃない日、お仕事のある日はどんな感じですか。

塩山桃音:
お仕事のある日は、なかなか今の状況から週5で働くっていうのは全然想像できないんですけど。仮に働いていたとしたら、なるべく定時に上がって、美味しいご飯を作るっていうところは、こなしたいですね、そのくらいは。。。
(※後日追記:本当はもっといろんなことしたいけど・・・という気持ちから「そのくらいは」と言ってしまいましたが、週5で働くということが今の私からしたらすごすぎることだし、ご飯も作れる自信がありません。一生懸命働いてご飯を作って1日が終わる方もいるだろうと想像します、すみません....。)

尾崎ゆき:
働くって、どこかに勤めるみたいなイメージなんですかね。私、家で仕事できるものを選んだんですよ。それもありなのかな、なんて、お話聞いて勝手に思っちゃいました。

塩山桃音:
理想的ではありますよね。私のコンディションからすると、母親にも「普通に会社で働くのは無理じゃない?」みたいに言われるし、家で働けるなら、それに越したことはないなとは思うんですけど。

あわよくば自営業とかも興味はあるんですけど、まず資金貯めないとなとか思うので。

尾崎ゆき:
ちなみに今は出版社みたいな感じのところで働きたいって思ってるんですっけ?

塩山桃音:
そうですね。まだ本格的に就職活動できてないので全然わかんないんですけど、わからないなりに興味があるのは出版系ですかね。

尾崎ゆき:
本がお好きっておっしゃってたからかもしれないんですけど、どうして出版社なんですか。

塩山桃音:
雑誌が好き、、、って言っても、最近そんな読んでないんですけど。雑誌見るとワクワクするし、構成を考えるのも好きだし。っていうのがあって、ざっくり雑誌編集に興味がある。

元々出版社に興味があって、その後付けではあるんですけど、別に有名でもないけど人の話聞くと、そっから得られるものってあるなって、そう思って。私が人の話を聞いて自分の考えがはっきりするっていうことがあったりして、声を拾える仕事かなと思ったりして、出版社が。そういうのもあっていいかなと、今のところは思ってます。

尾崎ゆき:
自分の学びになることも多そうだから、っていう意味ですかね。

塩山桃音:
直接的にその仕事が自分の学びになるというよりは、拾わなかったら別に誰にも届かない声を拾って、誰か他の人が読んで、何か気づきが得られるかもしれないっていう方向ですかね、自分っていうより。

尾崎ゆき:
今、拾いたい声とかってあります?

塩山桃音:
特定の誰かの声を拾いたいってことはないんですけど。今だったら、同い年ぐらいの子の考えを聞きたいかなって思います。

普段そんなに遊んだとしても、普通の話しかしないんですけど、本当はこういうことに違和感を覚えてるとか、私はこういう性質があるとか、なかなか聞かないけど本当は考えてることってあると思うので。

そういう同い年の子たちが、近い境遇にいる子たちがどういうことを考えているのかっていうのは個人的に今、聞いてみたいことではあります。

尾崎ゆき:
例えば、世の中に貢献するような人の声を聞きたいという方もいると思うんですけど、塩山さんは自分と近い方の声を拾いたいっていうのって、なんで同い年くらいの子の話を聞きたいのかなって思ったんですけど、いかがですか。

塩山桃音:
有名な人の話だったら私じゃなくても誰かが聞くなっていうのがあって。誰かが聞くし、聞かなくても声として伝わる。その人が自分で何か喋るとか、SNSで発信すれば伝わると思うんですけど。

そうじゃなくて、普通の人の。普通の人も意外と考えてるんだよっていうのを、自分でも思うし、多分周りもそうだろうと思うから、そっちを拾いたいっていう感じですかね。

尾崎ゆき:
塩山さんの声を拾ってほしいっていう気持ちはありますか。

塩山桃音:
それもあります。それもありますね。多分話すのは苦手だから聞くに回ってるけど、本当は興味を持ってほしいって思ってると思います。だからこれにも応募しちゃって。

尾崎ゆき:
無名人インタビューを読んでくださる方に、何か伝えたいこととかってあります?

塩山桃音:
伝えたいこと。伝えたいことっていうほどの強い思想は何もないんですけど。

多分、読んでる方はみんな普通の人の考えの中で何か面白さを見いだしてる方々だと思うので、それには強く共感しますっていう。それぐらいですかね。あんまり私は伝えられるほどのことは何もない気がするんですけど。

尾崎ゆき:
塩山さんは、無名人インタビューの記事は読まれましたか。

塩山桃音:
いや、それがインタビューを募集しますっていうので最初に知って。なので、こないだ知ったばっかりで、まだそんな深読みはできてなくて。フォローしたので、これから読めるかなっていう感じです。

尾崎ゆき:
いくつかは読んでみられたってことですか?

塩山桃音:
いや、まださらっと何個かタイトル見たぐらいで。しっかり読んでない気がします。

尾崎ゆき:
もし、強迫性障害になってなかったら、どんな人生になってたと思いますか。

塩山桃音:
少なくとも今よりはいいと思います。今よりは、楽? 楽しい。死にたいとか思うこともなかったかもしれないので、少なくともならない方が良かったとは思うんですけど。

でももしかしたら、ここまで内省的になってないかもしれないとも思います。

尾崎ゆき:
それはどうしてですか。

塩山桃音:
私の持ってる症状から考えるきっかけが得られることもあるし。どうしても、ああ、つらい、ああ、つらい。ネガティブネガティブみたいな感じで、思考がネガティブになりがちなので、ネガティブになった挙句に考えるみたいなのがあるから。その考えるっていうことに至る確率が、多分病気になった方が高かった、かなって思いますね。

尾崎ゆき:
内省すると、何かいいことってあります?

塩山桃音:
一応、自分を認めたくてやってるんですけど。自分を認めるというか、悪いところは変えて、いいところは認めて、自分を好きになりたくてやってはいるんですけど。まだそこまで行ってなくて。そのために自分を分析する段階でしかないので、今。

自分のことは深く知らなきゃいけないと思ってるから、そのための作業ができてるのはいいことかもしれないけど、まだいいところに到達する過程の中って感じですかね。

尾崎ゆき:
それが達成できたら、どんなふうになるんですか。

塩山桃音:
多分もうちょっと生きやすくなると思います。自分にも優しく、人にも優しくできるっていうところを目指してます。

尾崎ゆき:
個人的に気になった質問なんですけど、本をよく読むとおっしゃったじゃないですか。

塩山桃音:
そうですね、なるべく読むようにしてますね。
(※後日追記:読まなきゃいけない!と思い、苦手なりに頑張って読んでいるくらいで本好きの方ほどは読んでないです。なんとか読んでる....という感じです。)

尾崎ゆき:
どういうものを読んでいるんですか。

塩山桃音:
今は休学中に勉強に追いつきたいっていうのもあって、卒論。何を書くかは決めてないですけど、自分の勉強したいことに関する本とか。

あとは勉強したいことと関連してもいるんですけど、最近、嫌悪感とか不快感とか、そういう感情が気になるので、感情に関する本とかを一応、読むっていうほどでもないのかもしれないけど、買い揃えてちょこちょこ読んでます。

尾崎ゆき:
ちなみに、勉強したいことは何なんですか。

塩山桃音:
勉強したいことは、ざっくり言うと哲学なんですけど。哲学の中で、元々は心の哲学に興味があったんですけど、最近の考えようから感情の哲学っていう分野もあるので、そっちの方がいいんじゃないかと思って、ちょっと足を踏み入れようかなっていうところです。

尾崎ゆき:
そもそも、なんで哲学だったんですか。

塩山桃音:
高校の倫理の授業が面白くて。他にも、社会科の科目とか興味あるのはあったんですけど、なんか気づいたら哲学にいましたね。

多分自分で「何、勉強するの?」って言われたときに、何となく、どれが一番興味があるかと言われたら哲学かな、ぐらいの気持ちで「哲学やります」って言ってたら、なんかそのまま哲学の学科に来ちゃったみたいな感じだと思います。

尾崎ゆき:
内省するときも哲学って結構近しいものがあるというか、大事なのかなって思ったんですけど、どうですか。

塩山桃音:
あの人の思想を用いて、と思えるほどは私も理解してないんですけど、哲学の授業とか出てると、そういう考えもあるのかとか。私が思ってた感情を綺麗に言葉にされてたり。っていうこともあったので。ぱっと思いつかないんですけど。その辺は、面白いし、似てるところもありますね。

哲学だと個人の感情には根ざしてないから、普遍的に語られてるとは思うんですけど、参考にできるところもあるし、いろいろ見てるだけでも面白いなっていうところではあります。

尾崎ゆき:
最後に言い残したことはありますか。

塩山桃音:
言い残したことは、あるかな。多分ないです。

尾崎ゆき:
例えば、読者向けだったり独り言だったり、感想だったり、ですね。

塩山桃音:
なんだろな。なんか、自分の考えを話すのって苦手なんですけど、聞いてもらったら話せるなって思うので、それぞれがみんなバランスよく人の話を聞いたり、話したりできる環境になったらいいなって思いました。

あとがき

インタビューを担当しました、尾崎です。

わたしはフリーライターとして、書く仕事をしています。

「書く」って、誰でもできること。分かりやすく書ければ、仕事が途切れなくなると大先輩のライターさんから聞きました。

ライター界隈では、分かりやすく書くための講座が数え切れないほどたくさんあります。「分かりやすく書く」ライターがいないということなのか、ライターを志す人が増えているということなのか……。

かくいう私も、20万円以上の資金を払って、ライティングゼミに所属しています。

そのゼミは20人という定員があって、合格した人しか入れません。応募したのは80人以上で、結局20人2クラスの40人という枠になったのですが、それでも倍率は2倍以上でした。

無事合格し、1月から3月まで講師である佐藤友美(さとゆみ)さんの下で、書くことについて学んでいます。

その過程で、私はさとゆみさんにメッセージを送りました。

「私は話すことに苦手意識があります。話しながら、口から出される言葉が適切かどうか判断しているっぽくて、どうしてもテンポがゆっくりになってしまうんです。でも、書くことと向き合っていくうちに、使う言葉が安定してきて、話すペースも速くなるのかも? と思いました。いや、むしろ考え過ぎてしまって、あまり変化しないのか…? そんなことも考えました」。

さとゆみさんからのお返事は――。

「話しながら、言葉が適切かどうか考える人は、書くのが速くうまくなる傾向がありますね。日頃から吟味をして言葉を使っているので。たいていの人は、話すときに吟味していないから、書くときに吟味できないんです。良い特徴だと思うよ」。

桃音さんのお話を聞きながら、さとゆみさんとのやり取りを思い出したので、あとがきとさせていただきます。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
桃音さん、ご参加くださりありがとうございました!

またお会いしましょう。

【インタビュー・編集・あとがき:尾崎ゆき】

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