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こないだ渋谷でやってたマリー・クワント展見に行ったんです。マリー・クワント誰? ていう人もいるかもしれませんね。男性の方は知らんかもしれないですね。アパレルブランドの名前です。デイジーのロゴ見たら分かると思います。コスメのところでめちゃ見かけますね。
そうマリー・クワント。
マリー・クワントってもう、名前からかっこいいですよね。デザイナーの名前でありブランドの名前でもある。本名なのかしら? ジル・スチュアートもアレクサンダー・マックイーンもそうだよね、名前とブランド名が同じで。これも本名。というか、その、本名かどうか以前に、もう、人の名前からしてかっこいい。音からかっこいい。こういう響きの名前だったら、きっと自分が特別だなって思えて人生はりきってがんばりまっしょいっていけるのではないかしら? そう、思ったりします。大事なことだね。
と、いうことで! 無名人インタビュー本日もよろしくお願いいたします!!!(主催:qbc)

今回ご参加いただいたのは 七緒(なお) さんです!

HP:

 インスタ:

現在:奇跡的に自分がいいと思える写真があったんです。ずっと自分の容姿を好きになれなかったけど、1枚の写真で自分をちょっと受け入れられた感覚があって。

toki:今、何をしていらっしゃる方ですか?

七緒:今は、写真を撮ることと文を書くことを仕事にしていて。
具体的に何をしてるのかっていうと、例えばライフワークとして女優の前田敦子さんに密着して、2年間毎月撮影をしていたりとか、この間は『ことりっぷ』って雑誌に写真と文を寄稿したりとか。あとは何だろうな、暮らしまわりの媒体で撮影と執筆をしたりとか。
写真と文にまつわるあれこれを仕事にしているって感じです。

toki:そのお仕事を始められたのはいつ頃ですか?

七緒:2017年の1月です。

toki:なるほど。フリーランスになるんですかね?

七緒:はい。そうです。

toki:最近お仕事の調子といいますか、状況としてはいかがですか?

七緒:なんか、何とも言えなくて。
私、2021年の8月に出産をして、そこで一旦おおよその仕事はストップしたんですよね。そこから産後3ヶ月ぐらいで復帰して、今、自分のペースで仕事はできていて、本当にやりたい仕事しかしてないので、精神的にはすごくやりやすくて、やりがいもあるんですけど。少し欲を言えば、もうちょっとお仕事の件数を増やしたいなって気持ちです。

toki:「やりたいお仕事」というお話が出てきましたが、七緒さんは、どんなお仕事を楽しいな、やりたいなと感じますか?

七緒:写真撮る人はいろんな人がいると思いますが、私は人物の写真、特に女性のポートレートを撮ることが大好き。それがきっかけで、前田敦子さんの写真をずっと撮ってたりもします。
本当は、例えばアイドルとか女優さんとかの写真集を、1冊丸ごと撮り下ろすみたいなことがしたいです。だけど、そういう仕事ができるフォトグラファーって限られていて。その枠に入りたいなって思ってるんですけど、なかなか狭き門。
フォトグラファーって、引退とかないじゃないですか。篠山紀信さんとか、何歳かわかんないけどずっと撮ってるし。なかなか枠があかなくて。
そこは自分の中の課題。やりたいけどやれてないなってところです。

toki:なるほど。

七緒:一方で、女性のポートレートが撮れれば何でもいいのかっていうとそういうわけでもなくて。もう1つの私の特徴としては、「健やかに仕事をする」っていうことをすごく大事にしているんです。
なので、女性のポートレートを撮れるなら徹夜で作業をしても大丈夫とか、そういうことではなく、丁寧にお仕事に向き合える状況をちゃんと作って、いい表現をしていく。そのために、生活とか睡眠とか食事とかも、整っている状況であることを大事にしていて。

toki:女性のポートレートがお好きというお話でしたが、どうして「女性」を「撮る」ことがお好きなのでしょう?

七緒:2つきっかけがあって。
1つ目は、AKB4813年前から好きで。当時センターで前田敦子さんが踊ったり歌ったりしていて、それを見た瞬間に、もうめっちゃかわいいし、なんか女の子って最高!って思ったんですね。それは、言葉にするとそれだけなんですけど、内から湧き上がるパッションみたいな感じ。
そういう女の子を自分が撮れたら楽しいなと思って、7、8年前ぐらいに友人の女の子を撮らせてもらって、とてつもなく楽しかったんですよ。初めて女の子を撮ったんですけど。言葉にすると「楽しかった」だけなんですけど、もうなんか「私、これだ!」っていう実感があって。
そういう楽しさが、女性のポートレートを撮る楽しさ。もうあんまり説明できなくて、「かわいい女の子を撮るって最高!」って、ただそれだけなんです。

2つ目の理由としては、私、元々容姿に自信がなくて。スクールカーストみたいな話だったりとか、私が学生だった頃、結構見た目で比較される経験が多くて。
それで自信を持てずにいたんですけど、結婚式の前撮りでウェディングドレスを着てプロのカメラマンさんに撮ってもらったときに、奇跡的に自分がいいと思える写真があったんです。それを見たときに、ずっと自分の容姿を好きになれなかったけど、1枚の写真で自分をちょっと受け入れられた感覚があって。それは原体験。女性のポートレートを撮るときは、そういう気持ちになってもらえたらなっていう想いもあります。
なので、衝動とか本能で撮ってる部分と、私が写真を撮ることで、その人が自分を受け入れられるきっかけになれたらなっていう気持ちで撮ってる部分があります。

toki:なるほど、ありがとうございます。
ちょっと話が変わるのですが、趣味はありますか?

七緒:趣味、改めて聞かれると意外と難しいですね。なんだろうな、趣味ってなんですかね。趣味ってなんなんだろう。
例えば、好きなことでいうと、本を読むことは幼い頃からずっと大好きで、今も仕事が終わって夕飯食べた後に1冊とか、必ず何か読んでますね。それは趣味なのかな。
あとは趣味とは違うかもしれないですけど、自分の体や心を健やかな状態にしておくことがすごく大事だと思っていて。ハーブティーや精油を活用して調子を整えることも、趣味なのかわかんないですけど、やってます。

toki:なるほど。ちなみに、お仕事とプライベートの割合って、全体を10とすると、大体何対何くらいになりますか?

七緒:あ、そういえばめっちゃ大きい趣味がありました。アイドルの動画を見ること。それが一番大きいかも。日々、かわいい女の子に癒やしと希望をもらってます。

で、プライベートと仕事の割合でいうと、なんかもう混ざり合ってて。
例えば、プライベートで好きなアイドルの撮影をすることもありますし、仕事で撮影した誰かのことが気になって、その人の著書を読むことも多いので。もう正直、あんまり区分けができないんです。やりがいがある仕事ができているというありがたさもありつつ、きっぱり分けられる、プライベートの趣味があればいいなとも思います。
プライベートとしてきっぱり分けられるのは子供ですね。今1歳の息子がいるので、一緒に遊んでるときは仕事のことはあんまり考えないかもしれないです。

toki:先ほどは趣味や好きなものについてお伺いしましたが、逆に嫌いなものやことは何かありますか?

七緒:面白い質問ですね。嫌いなこと、嫌いなもの。
色々ありそうなんですけど、苦手なことは、大勢の人がいる飲み会とか、大勢の人の中で自分を開示していくことは、苦手です。あとうるさい場所。
心地良くない場所は苦手です。苦手で好きじゃないです。

toki:反対に、七緒さんにとって心地良い場所ってどんな場所ですか?

七緒:ね、どういう場所なんでしょうね。でもなんか良い質問ですね、本当に。
心地よい場所、今いる自分の部屋だったりとか。
私、東京の清澄白河っていう、コーヒーやアートを楽しめる街に住んでいて、、そこはすごく心地よいです。ガヤガヤしていなくて、、本屋とか美術館とか雑貨屋とか文化的なものがたくさんあって。たとえば着てる服も、できるだけ化繊じゃなくて、綿とか麻とか絹とか。なんかそういう、五感が喜ぶようなものを選びたいなと思っています。あと、気心の知れている、信頼できる人がいる場所。例えば、今だったら息子とか夫とか​​仲の良い友人とか。そんな感じです。

toki:ありがとうございます。
七緒さんは周りの人から、どういう人と言われることが多いですか?

七緒:自分ではあんまりそう思ってないんですけど、行動力があるってよく言われます。
例えば前田敦子さんの撮影も、私が元々ファンで、彼女が事務所から独立するってニュースを見た瞬間にインスタでDMを送って、そこから始まってるんですね。
思い立ったらあんまり考えずにバンって動くところを、よく行動力があるねって言ってもらえます。

toki:ご自身としては、行動力があるとはあまり思わない?

七緒:確かに行動力はない方ではないと思ってるんですけど、もっとできるよねっていつも自分に思ってる節があって。行動力あるねって言われて嬉しいし、それは事実かもしれないんですけど…。

過去:じゃあそれで私の人生いいのかって思ったときに、やっぱり自分のやりたいことが、小さい光でしたけど当時は見つかりそうだったので、そこに賭けてみたい気持ちがあったように思います。

toki:小さい頃はどんなお子さんでしたか?

七緒:小さい頃は、本が好きってことと、こないだ母に「天真爛漫だった」って言われました。
私の息子はかなり自由で天真爛漫なんですけど、それを見て「あなたもそういえば天真爛漫だったわ」って母が言っていて。大人になるにつれて天真爛漫さみたいなものは少しずつ無くなってしまったので、なんか嬉しかったです。

toki:なるほど。小さい頃はどんなことをして遊んでいましたか?

七緒:本をすごく読んでいたみたいです。
どちらかというと、外でわーって遊ぶタイプではなくて、家の中にいることが多かった気がします。

toki:小学校の頃の、印象深い出来事ってなにかありますか?

七緒:私、小学5年生で引っ越しをしたんです。それまでは神戸の、六甲山の麓に住んでいて、山に囲まれていて、目の前は田畑で茅葺き屋根の家がたくさんある、日本の原風景みたいなところで無邪気に4年生まで過ごしていました。
5年生になって、親の転勤で千葉市に引っ越したんです。そこは、いわゆるニュータウンみたいな感じで、駅前にイオンがあって、TSUTAYAがあって、高層マンションと団地が並んでる場所。神戸に住んでたときと、千葉に来たときと、まちの雰囲気も出会う友達もガラッと変わって。

それが良かったか悪かったかって話ではなくて、なんかそこですごく人生が変わったなっていう感じがしました。何でかっていうと、私、今、自然が好きで、それは小学校4年生まで、自然が多い場所で暮らしていた影響だなって思います。一方で、千葉に引っ越してこなかったら、行きたかった大学とか、やりたかった今の仕事には正直たどり着けなかっただろうなと思って。
小学校5年生の引越しっていうのは、自分にとってすごくターニングポイントだったなって感じがします。

toki:千葉にお引っ越しされてから、中学や高校など、学生時代はいかがでしたか?

七緒:学生時代を思い出すと、印象に残ってるのは部活とかサークルです。中学校はバトミントン部に入って、高校・大学はマンドリンという楽器の音楽サークルに入りました。で、結構どのタイミングもそこに時間を割くことが多くて、みんなと協力して試合に勝つとか、1曲を作り上げていくことの楽しさはすごく感じました。
その頃から、どちらかというと裏方ではなくて、例えば音楽サークルでは指揮者をやってたんですけど、指揮者としてみんなの意見をまとめて曲を仕上げていくっていうことを、やっていました。

toki:学生時代、性格的には、どんなお人柄だったのでしょうか?

七緒:性格は、あんまり今と変わらず。一般的には、明るいって言われる方ですけど、めちゃめちゃ自分が開いてるタイプではないです。
あと、容姿に自信がなかった頃なので、ぱっとしない感じはありました。ぱっとしない自分が嫌で、その反動で、部活でリーダー的なポジションをしてた節もあるかもしれないです。

toki:それくらいの時期から、コンプレックスを抱くようになられたんですかね。

七緒:そうですね。あんまり劇的な事件はないんですけど、やっぱり小学校の高学年とかになると、あの子はかわいいとか、雑誌に載ってるモデルさんがかわいいとか、そういうのって自然とみんな考えることで、そういう人たちと比較して自分は…みたいな。比較してたんでしょうね。
小学校高学年ぐらい、だからそれも千葉に来てぐらいからですかね。

toki:なるほど、ありがとうございます。
社会人になられてからのこともお伺いしたいのですが、一番最初に携わったお仕事ってなんだったんですか?

七緒:一番最初は雑誌の編集者をしてました。
中学校の頃から、雑誌の編集者になりたいって夢があって、大学卒業後は公務員向けの書籍を手がけている出版社に入社しました。

toki:中学校の頃から編集者になりたかったんですね。それはなぜだったのでしょう。

七緒:元々本が好きなので携わりたいと思ったのが1つ。
何で編集者っていう職業を選んだかっていうと、千葉に来てからの幼なじみのお母さんが『主婦の友』という雑誌の編集長を当時やっていて。編集者っていう職業があるんだっていうこともそこで初めて知りましたし、そのお母さんが生き生き働いてる姿がすごくかっこよくて憧れたっていう感じです。

toki:雑誌の編集者のお仕事は何年続けられたんですか?

七緒:4年弱続けました。

toki:編集者のお仕事はいかがでしたか?ずっとやりたかったお仕事だったと思うのですが。

七緒:そうですよね、ずっとやりたかった仕事なんですけど、本当は雑誌の編集者をやりたいんじゃなかったんだってことに気付いた4年弱でした。
何でかというと、「雑誌の編集者ってかっこいい」みたいな、単なる憧れが大きい中で入社したので、実際に自分が仕事を始めてみると、あんまり適性がなかったなと思います。。
例えば、取材先との日程調整がそこまで得意じゃない、とか、そんな些細なことの積み重ねなんですけど。
4年弱在籍していて、自分に自信をなくす一方っていう、ちょっとほろ苦い時代でした。

toki:なるほど。4年弱編集者をやられて、そのあとはどうされたのでしょうか?

七緒:自分に自信がなさすぎて、でもなにか自分にできることはあると可能性を捨てきれなくて、公務員に転職しました。編集者時代の3年目から勉強して試験を受けて。

toki:転職先に公務員を選んだのはなぜだったのでしょう。

七緒:大きなきっかけとしては、消防士向けの雑誌を作ってたんですけど、消防士は公務員で、当時かかわる機会が大きくて、なんとなく憧れたのが1つ。。
あと昔から勉強が好きで、勉強したら入れるってところにも魅力を感じました。とりあえず、もう雑誌編集者としての能力はないから、公務員に逃げ込んだみたいな。

toki:公務員のお仕事はいかがでしたか?

七緒:逃げ込んだって感じだったので、全然合ってなくて。何が合ってないかっていうと、仕事にあまり興味が持てなかった。興味がわかない仕事を、朝9時から夕方5時までやることの葛藤。
あとは、周りで働いてる人の価値観もあんまり合わなくて。公務員全てがそうではないんですけど、どちらかというと気楽にやっていこうみたいな人が多かったので。頑張りたい精神を持ってる私としてはギャップもあって、結局3年弱で辞めました。

toki:なるほど。辞められてからはどうされたんですか?

七緒:退職する1年半前にInstagramを始めたんです。最初は朝の過ごし方を発信していたら、一気にフォロワーが1000人ぐらいになって。なんかこれちょっと行けるかも、写真と文で表現することって向いているかもと思って。
その半年後ぐらいに、さっきの話と繋がるんですけど、元々女の子を撮りたいって気持ちがあったので、友達の女の子を撮ってInstagramに投稿したんです。そしたら、その写真を見た方から、私も撮ってほしいですっていうDMが30分で10人ぐらい来て。

toki:おお。

七緒:今まで仕事もアルバイトも、本当にうまくできなくて。そんな自分でも輝ける場所があるのかもしれないと思って、そこから平日は公務員、週末は女の子の撮影。少しずつそういうことを続けていたら、仕事をもらえるようになってきました。
例えば、ヘアサロンでサロンモデル写真を撮ってほしいとか、ウェブマガジンで清澄白河の紹介をしてほしいとか。そういう仕事が公務員にも関わらず来るようになってきてしまって。
写真と文を活かせる仕事が舞い込んで来てるから、こっちに賭けようと決心して公務員を辞めて、今の仕事を始めました。

toki:公務員のお仕事を辞められるとき、不安とか、そういった感情はありませんでしたか?

七緒:不安でした。そのときの私、コネもツテも全くない、ゼロのまま独立したので。不安100%。でも、何かできるかもしれないみたいな自分への期待も100%で、ないまぜの状態だったことを覚えてます。

toki:コネもツテもないけれど独立するのと、公務員を続けるのを、天秤にかけたら前者を選ぶ結論が出たということですね。

七緒:そうですね。当時、29歳で、このまま公務員を続けたら、ぬるま湯から抜けられなさそうな恐怖がありました。
じゃあそれで私の人生いいのかって思ったときに、やっぱり自分のやりたいことが、小さい光でしたけど当時は見つかりそうだったので、そこに賭けてみたい気持ちがあったように思います。

toki:そこから独立されて、フリーランスとしてお仕事を始められて、最初の方はいかがでしたか?

七緒:最初の方は、何か1つ仕事をしたら、わりと数珠繋ぎで仕事が広がっていったんです。例えばウェブマガジンの撮影と執筆をしたら、リピートでお仕事をいただけたりとか、その媒体が所属している企業の別の媒体から仕事をもらえたりとか。最初はジャンルとかもあんまり絞らずに、いただけるお仕事をとにかくやっていたので、コネもツテもないわりに、最初からお金を稼ぐことができたんです。
がむしゃらではあったんですけど、手応えはすごく感じてました。

あとは、自ら企画を立ち上げて形にすることが、追い風になってくれました。ただ待っているだけじゃやりたい仕事は来ない、という現実があって、やりたいことはまず自分でやってみる。例えば「写真集を撮り下ろしたい」って思ったけど、そんな仕事はいきなりは来ない。だから独立1年目、モデルさんと一緒に台湾に行って、2泊3日で写真を撮り下ろして、クラウドファンディングをして90万円集めて、写真集の出版と表参道ヒルズにあるギャラリーで展覧会をしました。そしたら仕事の幅はぐんと広がった。
自分がやりたいことはこれですっていうのを、定期的に表現することは心がけています。。

未来:その人の生きる姿、生き様を届けることで、「私は、わたし」って思える人が増えていくのが、最終的にやりたいことなんですね。

toki:5年後や10年後、何年後でも、死ぬまでにでも良いのですが、七緒さんはこの先の未来をどう考えていらっしゃいますか?これをやりたいとか、こうなりたいとか。

七緒:なんか、今の積み重ねが未来に繋がっていくと思っていて。なので、ぼんやりとした未来像はあるんですけど、あんまりかっちりは決めていないです。あ、でも私、「It’s me!」っていうブランドを立ち上げていて。It's me!はその名の通り、「私は、わたし」って自分を誇れるように、対話と撮影とインタビューでお手伝いするブランド。独立前にはじめて、今7年目で、自分の原点なんです。だからIt's me!をブランドとして大切に育てていきたいです。
あとは、暮らしで言うと、もうちょっと自分が幼少期に住んでいたような、自然が多くて空が広い、静かな場所に住みたい気持ちが強いです。

toki:死ぬまでにこれはしておきたい、みたいなことは何かありますか?

七緒:死ぬまでにこれはしておきたい、なんだろう。1つあるのは、私、2022年8月に渋谷PARCOで、前田敦子さんの写真展をしたんです。毎月撮ってるから、”毎月毎月”って意味で「前田敦子の月月」って言うんですけど。
その写真展に来てくれた人が結構な割合、例えば10人に1人ぐらい泣いてたんです。それってすごいことだなと思って。私は写真を撮って文を書くけど、その先に人を感動させられるというか、人が自然と涙を流すぐらいのものを生み出せるのかもっていうのが、大きな気付きでした。
別に、涙を流すことが素晴らしいとか、涙を流してる人が多いからその作品は素晴らしいとかそういう話ではないんです。とはいえ、涙を流して写真と向き合ってる人を見たときに、自分がやっている…写真を撮ること、文を書くことで人の生きる姿を届けることは、誰かにとってはセラピー的にもなり得るんだと思ったんです。

だから、そういうことをずっとしていきたい。すっごい漠然とした答えですね。
私、月に1、2回ぐらい、、なんとなく元気がなくなるときがあって。そういうときに、誰かが模索しながら頑張ってる、人生の欠片みたいなものに触れると、頑張ろうって思えたりとか、前を向けたりするんです。だからそういうものを生み出したい。
写真と文を通じて、「私は、わたしなんだ」って深く思えることを、生涯やっていきたいなって思ってます。

toki:うんうんなるほど。ありがとうございます。
お仕事をする中で、「これは譲れない」みたいな、七緒さんなりのこだわりって何かございますか?

七緒:自分の世界観とか、情緒みたいなものを大事にしてます。
駆け出しの頃は、メディアに合わせた文を書いたり、メディアに合わせた写真を撮ったりしていました。私、食事のディテールとかあまり興味がわかないんですけど、フードの撮影を依頼されて、うまく撮れなくて、凹むみたいなこともありました。
そうじゃなくて、自分の持ち味を活かせることをする。私の写真とか文に宿る空気感。ちょっと湿度があって、でもどこか優しい部分もあるみたいな。
そういう世界観は大事にしたいなって思ってます。

toki:ありがとうございます。
インタビューに申し込んでいただいた時に、今年(2022年)の7月に改名されたとお聞きしたのですが、その改名についてもお伺いしてよろしいでしょうか?

七緒:あ、そうでした!その話をするのを忘れてました。
それまでは「フォトグラファー/ライター 忠地七緒」だったんです。フォトグラファーっていうと写真を撮る人で、ライターっていうと文を書く人ですけど、どうしても役割が限定されてしまうというか。
ライターって名乗ると、エッセイみたいな仕事は来なかったりとか。例えば、歌詞を書くことにもチャレンジしたいんですけど、ライターって書いてるとそういう仕事が来なかったりして、ちょっとわかりづらいなと思って。「写真と文」っていう超シンプル、でもいくらでも広がりがある肩書きにしました。

あと、「忠地七緒」を「七緒」にした理由としては、忠地っていうのが旧姓なんですけど、出産してから、新姓で呼ばれる機会が多くなって、旧姓がフィットしなくなってきた。より自分が自分らしくいるために変えました。
私、「七緒」という名前がすごく好きで、印象的だし、手前味噌ですが、美しい。大好きな名前をちゃんと活かしたいと思って「写真と文・七緒」っていう形にしました。

toki:ご自身のお名前の、どんな部分が気に入っていますか?

七緒:字面って言うんですかね、「七」と「緒」。字の並び、視覚的な見た目がすごく好きです。
あとは「七」はラッキーセブンっていう意味が込められてて。「緒」には何かを繋ぐとか、何かの始まりみたいな意味があります。
話を聞いたり、誰かを撮って届けるっていうことは、縁を繋いでいくこととイコールなので、仕事ともリンクもしている気がしています。
toki:ご自身のお名前を体現されている、そんな感じがしますね。お名前自体が生き方になっていらっしゃるといいますか。

七緒:すごいめっちゃいい表現。
今現在そうできてるかわからないんですけど、そういうふうになっていきたいなって思ってます。

toki:七緒さんは、ご自身のことを、どんな人間だと思いますか?

七緒:一見、明るいとか行動力があるとか、どっちかっていうと社交的な側面が表に出ることが多いんですけど、本当はそんなこともなくて。なので、すごく二面性、多面性がある人間です。

toki:その多面性って、どのように生まれてきたのでしょう?

七緒:私、AB型なんです。AB型って血液型占いとかで大体二面性があるって言われるんですね。子供の頃から、AB型は二面性がある、裏表あるって言われ続けてきたんで、なんか「私、裏表ある人間なんだな」ってずっと思っていました。
そういうのがベースにありながら、自分が写真を撮ったり、文を書くときにどうしても消せない、影があって。フワちゃんみたいな100%の明るさは全くなくて、どうしても湿度が残るんですよね。写真も、文も。
そういうところを、昔は、消そう消そうと思っていたときもあって。明るい方が好かれそうだし、その方がいいじゃんって思っていたけど。女の子撮るときに笑顔だけ撮ってればいいのかもしれないけど、どうしても本心が見え隠れする表情を撮っちゃうとか、そういうことの積み重ねで、自分は明るいだけの人間じゃないんだなっていうのを、ここ1、2年でようやく受け入れられたし、認められました。そしてそれはきっと、私だけじゃなくて世の中の人みんなに言えることだなと思ってて。

例えば、今日私とtokiさんは、どっちかっていうとA面の顔で喋ってると思うんですけど、で人には絶対B面とかC面とかもあって、その部分ににその人らしさみたいな、私にとっての湿度みたいなものが宿ると思う。
昔はAB型で裏表があるみたいなどちらかというと否定的に捉えていたのが、最近はそこがユニークさに繋がっているし、そこが興味深いなって思ってます。

toki:毎回インタビューで「もしもの未来」について質問させていただいてるんですけれども。
もしも、明日からカメラもペンもキーボードも使えないとしたら、写真と文が、七緒さんの中から無くなったら、どうしていきたいですか?

七緒:写真と文がなくなるのか、辛いなあ。難しいけど面白い質問ですよね。
私にとって、写真と文って手段で、その人の生きる姿、生き様を届けることで、「私は、わたし」って思える人が増えていくのが、最終的にやりたいことなんですね。
なので、写真と文がなくなったら、また別の方法、別の手段を探しそうですね。それが声なのか、服を作ることなのか、パフォーマンスなのか、今は思い浮かばないですけど、そうする気がします。

toki:ありがとうございます。そろそろ1時間経ってしまうのですが、最後に言い残したことはありますか?

七緒:大丈夫です。本当に素晴らしいインタビューありがとうございます。

toki:いえいえ、とんでもないです。では、これでインタビューを終わらせていただきます。
ありがとうございました!

あとがき

自分を愛することさえできれば、もしかしたら他に何もいらないのかもしれません。
いや、何もいらないことはないか。でも、欲しいものを何もかも持っていたとしても、それを持っている自分を愛することができなければ、持っていることそれ自体が、あまり意味の無いことのような気がします。
やっぱり、自分を愛すること、愛するまでは行かなくとも、これが私なんだよなあと自分を認めること、受け入れることは、かなり重要なことであることは、間違いなさそうです。

七緒さんにとっての自分を愛する第一歩が、一枚の写真だったというお話は、個人的には目から鱗でした。写真ってそんなこともできるのかと、新たな一面を見せていただきました。

自分らしい生き方、言い換えるならば、自分の信念に忠実な生き方って、一筋縄では実現できないと思うのですが、インタビューを終えて、自分らしい生き方を実現するために1番大切なことの一つって「こつこつ続けること」なのだなと実感しました。

ある日突然、自分の求める生き方がてくてくとやってくるわけではないし、誰かが「こっちにいくといいよ〜」と道案内してくれるわけでもないのだから。地道にこつこつと、自分の心の赴く方向へ、その歩みを止めないということが何よりも大切なんだなということを学びました。

このあとがきを書いているのは2022年12月27日なのですが、今年を振り返り、そして新しい年を迎えるこのタイミングで七緒さんとお話しできたことに、すごく意味を感じる、そんなインタビューとなりました。
七緒さん、ご参加いただきありがとうございました!

最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
次回の無名人インタビューもお楽しみに。

インタビュー担当:toki

編集協力:生きにくい釘

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