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母親が6年前に自殺した人

最初面白半分に始めた無名人インタビューでしたが、だんだん世の中にあるいろんな問題に直面しました。問題という言い方は良くないか。人生の中での困ったり、大変だったりすることを正面から見据えることが増えてきました。
精神疾患を始め、毒親や離婚問題。生きづらいということについても、さまざまな局面があり、誰かの生きづらさが小さいとか大きいこともなく、それぞれその人の目の前において、苦しみを伴っています。いや、苦しみという言葉も適切かどうかわかりません。
今回参加されたのは、自死遺族の方です。たまたまnoteで見かけて、スキしたのがきっかけだったでしょうか。
今回のインタビュー、私のほうでうまく自分の感情が管理できず、まずいなあと思うところも自分で多々あるのですが、どうぞご覧いただければ幸いです。(主催:qbc)

今回ご参加いただいたのは 千鶴 さんです!

現在:最近は、何か綺麗なものっていうか、光を感じるもの、みたいな。そういうのを意識的に探すように

qbc:今、何をしている人ですか??

千鶴:今、フリーターでして。今まで居酒屋の厨房で働いてたんですけど。それが先月末で閉店しちゃって。次どこで働こうかなっていうのを考えてるっていう状態ですね。

qbc:次はどんな仕事をしようとしていますか?

千鶴:その居酒屋で6年ぐらい働いてたので。また調理の仕事がいいかなとは思ってるんですけど。

qbc:調理の仕事は楽しかったんですかね?

千鶴:結構楽しかったかな。

qbc:どんなところが?

千鶴:調理の作業自体も向いてるっていう感じだったし、いっぱい来るオーダーをどうさばいていくか頭の中で組み立てて、スピードと正確性持ってやっていくっていうのが、ちょっとゲーム感覚みたいなとこもあって楽しかった。

qbc:趣味はどんな感じのことをされていますか?

千鶴:ずっと、風景写真を撮るのが好きで。それを仕事にしていくっていうか。そういう方面も、ちょっとずつできたらいいなとは思ってます。

qbc:写真はいつ頃から撮られていますか?

千鶴:写真は、いつだろう。20歳ぐらいからやってますかね。7年前とか。

qbc:今、カメラっていろんな撮り方があるじゃないですか。スマホもあるし、一眼デジタルもあるし。そういう意味だと、何を使われてますか?

千鶴:一眼使ってますね。最初からいいのを持ってやってました。
父がずっと写真好きで。私も写真をやりたいって言ったら、譲ってくれたっていう感じです。

qbc:なるほど。どんな写真を撮られるんですか?

千鶴:お花とか。海とか自然のものばっかり撮ってますね。
最初は街中、東京の街とかを撮ったりしてたんですけどね。どっちかっていうと自然物の方が多いですね。

qbc:7年間で、変化はありましたか?

千鶴:なんだろうな。最初は、街中の落書きとか。ちょっと暗いものっていうか、そういうものを撮ってたのが、最近は、何か綺麗なものっていうか、光を感じるもの、みたいな。そういうのを意識的に探すようにしています。

qbc:光を感じるものを撮りだしたのは、いつごろから?

千鶴:ここ1~2年ぐらいですね。

qbc:作風の変化は、どうしてですかね? 例えば、コロナで作風が変わったみたいな人はわりと話に聞くんですけれど。

千鶴:あのう、私は母が亡くなって。それが6年ぐらい前なんですけど。
そこから、なんて言うんだろう。立ち直ってきた、やっと立ち直ってきたぐらいが、ここ1~2年で。その立ち直りが、写真に出てきたのかなって感じはしますね。

qbc:作風が変わった時期というのが、そのままインスタが始まったぐらいの時なんですか?

千鶴:そうですね、そのぐらいです。

qbc:なるほど。確かに、若干暗めな写真から、明るい感じの写真が増えてきた感じですかね。

2021年6月の作品。

2022年3月の写真。

qbc:作品を撮られるにあたって、こういうことを考えているとか、こういうことを伝えたい、といったことはありますか?

千鶴:基本、私は、生きるっていうことにあんまり希望的な人間じゃないんですよね。
生きるのしんどいなって思うことのほうが多くて。そんな中でも、生きてることをちょっとでも肯定できるような、そういう希望みたいなのがちょっとでも写っていればいいなって。

qbc:写真を撮っていて、どんな気持ちになりますか?

千鶴:気持ちかぁ。撮ってるときは、無に近い状態っていうか。
あ、これ撮らなきゃって思ったら、もう撮ります。

qbc:撮影場所は、どんなところなんですか?

千鶴:結構多いのは、公園とか。普段通ってる道で撮ったり。
目的地を決めることもあるんですけど。どっちかっていうと、生活圏内で撮ることが多いですかね。

qbc:自分の撮ったものを見返した時に、何を考えていますか?

千鶴:構図とか、そういう技術的なことをちょっとまず気にして。ここもうちょっとこうすればよかったなとかって思ったり。
本当に、何だろう。綺麗に撮れてるっていうか、明るさみたいなものを感じれるように写ってたら、よかったなっていう。

qbc:光の話ですが、季節で言うと、いつ頃の光をイメージされていますか?

千鶴:冬から春に移り変わっていくあたりの、あたたかくなり始める頃の光ですかね。

qbc:今、何が一番したいですか?

千鶴:今一番したい。なんだろう。寝たいですね。


過去:精神状態が悪くなって学校辞めちゃって。で、ちょっとしばらく実家に帰ってたんですけど。

qbc:子供の頃は、どんなお子さんでしたでしょうかね?

千鶴:子どもの頃は、うーん、けっこう静かに、本当に勉強ばっかりして。1人でいるのが好きっていう感じでしたね。

qbc:兄弟は?

千鶴:兄弟はいないです。
地元が長野なんですけど、山のふもとみたいなとこに住んでて。同級生が住んでるところから結構離れた場所に住んでたし、近所に一緒に遊べるような子もいなくて。
大体、何か遊ぶといったら、家でシルバニアファミリーをずっと1人でいじっていて。

qbc:それは、小学校の頃もずっとそんな感じ?

千鶴:そうですね。

qbc:勉強は何が好きでした?

千鶴:勉強は国語が一番好きでした。

qbc:本を読むのも好きでしたか?

千鶴:本はずっと好きです。小学校の頃だと江戸川乱歩の怪人20面相って言うシリーズ。学校の図書館にあって、それを片っ端から読むほど好きでした。
ミステリー小説ばっかり読んでた気がしますね。三毛猫ホームズとか。

qbc:今も読まれます?

千鶴:今もう、そんなに量は多くないんですけど、読むは読みますね。ミステリーも読むし。
あとは、お笑い芸人のエッセイとか。テレビとかでは出てこない考え方とか、そういうのが、読めるのが面白いですね。

qbc:部活は何をされてました?

千鶴:中学生だけ陸上部やってまして。ただ、1年で辞めたんですけど。そこからはもう部活は何にもやらず帰宅部で。

qbc:余りある時間を、何してましたか?

千鶴:それこそ本を読んで。あとは、高校生の頃に、Twitterとかが流行り始めて。それで興味を持って登録してみて、ずっと見ているみたいな。

qbc:インターネットは好き?

千鶴:そうですね。Twitterばっかり見てましたね。
当時好きだったアーティストがいて、同じアーティストのことが好きな人たちと、Twitter上で会話したりして。
当時の学校の同級生とかに、同じアーティストが好きな人がいなくて。身近にそういう話をできる人がいなかったんですけど、Twitterにいったらめちゃくちゃいっぱいいて。
好きな話を好きなだけできるみたいな環境が手に入って。世界が広がった感じがして。それがすごいおもしろくて。そこで仲良くなった人と実際に、会ったりして。

qbc:高校生の時に?

千鶴:高校を卒業して大学生になってからですね。今もそれで付き合いのある人がいて。
貴重な出会いの場の一つとして、意味のある場所っていうか。そんな感じですね。

qbc:学校のリアル空間では、すごい仲のいい友達ができなかったってことですかね。

千鶴:そうですね。学校内で行動を共にするけど、外で遊ぶまでのことをする人はいなかったです。

qbc:高校出た後は、進路はどうされたんですか?

千鶴:高校出て。大学2年生まで行ったんですけど、そこで中退して。
その、精神状態が悪くなって学校辞めちゃって。で、ちょっとしばらく実家に帰ってたんですけど。

qbc:大学は東京?

千鶴:一人暮らしで関東に出てきて。鬱病だったんですけど。

qbc:原因は?

千鶴:原因か。なんだろ。ずっと、ずっと落ち込んでて。自分の将来を悲観して。

qbc:で、実家に戻ってきたと。

千鶴:戻ったんですけど。父親との考え方があんまり合わなくて。
で、父親は結構その、これからどうするんだみたいなことを聞く人なんですけど。こっちは、私はそれがわからないから、うつ病になったわけですよ。
でもそこが根本的にかみ合わないから。父親と一緒に暮らしてても、暮らしてた方がちょっと駄目なのかなと思って。
もう1回一人暮らしに戻って、フリーターになったんですね。

qbc:通院しながらフリーター?

千鶴:最初はそうですね。

qbc:通院は途中でやめられた?

千鶴:そうですね。

qbc:どれぐらい?

千鶴:母もうつ病だったんですよ。

qbc:いつ頃から?

千鶴:いやもうそれがわかんないぐらい前から。

qbc:千鶴さんが子供の頃から?

千鶴:もしかしたらそれよりもっと前からかもしれない。

qbc:うん。お母さんは病院に行っていた?

千鶴:そうです。病院通ってた母が、あの、自死というか自殺っていう形で亡くなっちゃったので。
これ、病院って、通ってて意味あんのって思って。

qbc:お母さんは、千鶴さんがフリーターになってどれぐらいで亡くなられたんでしょうか?

千鶴:ええっと、多分2年。2年ぐらいですかね。
ただ、私の前では、普通で。本当に普通の人だったんですよ。落ち込んでるのを見せないようにしてたのか。

qbc:そうすると、突然亡くなるとは思ってなかったってことですよね。

千鶴:うん。そうですね。

qbc:お母様が亡くなられた時、ご自身のnoteにも書いていますが、どういうお気持ちでしたか?

千鶴:本当に直後は、現実味がないっていうか。そっから、え、何で? 何でこんな選択しかなかったって、疑問。疑問が一番大きかった。

qbc:遺書はあったんですか?

千鶴:「ごめんなさい」っていう一言だけ、あったんですけど。
6年前に比べたらだいぶ和らいでますけど、まだ、こう、人に話すとかっていうのは、ちょっと苦しくなっちゃう。泣いちゃうっていうか、苦しくなっちゃうって感じですね。

未来:「ああ自分、まあまあ回復してきてるんだな」って自覚ができて。

qbc:未来についてお話をしていきます。5年後10年後、死ぬときには周りからこう思われていたいというか。未来というと、どういうイメージをお持ちですか?

千鶴:あんまり、はっきりしたものがなくて、ずっと。なんだろうな。
穏やかに穏やかに生きていきたくて。具体的な像は全然ないんですけど。とにかく穏やかに生きていたいっていう、本当にそれだけっていう。それだけです。

qbc:穏やかというのは、どんな感じのことでしょう?

千鶴:写真の話にも繋がってくるんですけど、光。太陽の光とか、そういうのを、ちゃんと、感じられるっていうか。

qbc:今の気持ちとしての「穏やか」っていうのは、苦しまないという意味ですかね?

千鶴:そうですね。なるべく苦しみが少なめっていうイメージですかね。

qbc:立ち直ろうとするきっかけって、なんだったんでしょうか?

千鶴:noteの最後に引用した、引用元の本を読んで「ああ自分、まあまあ回復してきてるんだな」って自覚ができて。
じゃあ、もう一歩進めるかなと思って。それで、あの記事を書きました。

qbc:お母さんの死について他人と話すのは、初めてですか?

千鶴:そうです。喋る言葉で話すのは、まだちょっときついかもしんないですね。
なんか、なかなか難しいっていう。

qbc:難しいっていうのは、どういう難しさですかね?

千鶴:自分の中でうまく組み立てられたか、というか。書く、書いて伝えると時間をかけてゆっくりできるから、まだできるんですけど。
話しながらそれをやるのって、難しいなって。

qbc:はい。

千鶴:自殺っていうものへのタブー視ってすごいじゃないですか。
他の死に方だったら普通に話せる。自殺だけなんかこう、話しちゃいけないことっていうか。そういうふうになっているのが納得いってないっていうか。それがあります。

qbc:千鶴さんの中で、お母さんが亡くなったことで変わったことは、ありますか?

千鶴:自分のために生きなきゃみたいな思いが強くなった。そういうふうに思うようになった。

qbc:もしもの未来の質問っていうのをしています。
もしも、お母さんが自分が病気だっていうことを教えてくれていたらよかったなと思いますか?

千鶴:もし教えてくれてたら。でもなんだろうな、気を遣い過ぎちゃったりとか、心配し過ぎちゃったりとか、そういうのがあって。今みたいないいお母さんでしたって言えない形になってたかもしれない、と思うんで。教えられてない方がよかったのかなって思いますね。

qbc:最後に言い残したことがあればお伺いしています。

千鶴:言い残したこと、なんだろう。なんか、意外となんとかなるから、みんな死なないでほしいですね。自ら。

qbc:ありがとうございました。

千鶴:ありがとうございました。

千鶴さんの当時の気持ちはこちらに詳しく書かれています。

“母が死んで、私は生きやすくなってしまった。その理由が知りたくて、すべては始まり、今まで歩んできた。一人暮らしに戻ることを選び、noteを書いたり、写真を撮ったり、誰にも言わず一人旅をしたり、新しいバイトに打ち込んだり、ライブに行ったり――孤立した自分を社会に再接続し、破壊された自己の根幹を再構築する作業に日々を費やした。”

あとがき

皆さまはどのような感想を持ちましたでしょうか?
ぜひ! どうぞ感想をコメント欄に残していってくださいね!
今回は、お話聞かせていただけて良かったなと思っています。
参加いただいた方にも、良い機会であったのならば幸いと思います。
私があらためて感じたことは、他人の感情は自分の価値尺度では測れない、ということ。
その人の感情を前にして、他人はそれを推しはかることができないと。

インタビュー担当:qbc

編集協力:かがみゆきこ

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