見出し画像

「あいつが一番わかってくれてるな」って思われたいライターの人

みなさんに、「推し」はいますか? アッッッという間に流通してしまったこの「推し」というニュアンスですが、そうですね2年前に10代インタビューしたときに、クラスに「推し」がいるって聞いたときに、オヤ? って思ったんですよね。
そんな身近な人が「推し」になるんだって。アイドルとかモデルじゃないんだ。メディアの向こうにいる人じゃなくて、そんな手が届いちゃう人が「推し」なんだ。
すごいね。
これは例の、日本語には主語が無くても成立するから日本語人には自発性がない、対象に自分の感情を投影することでしか自分というものを現象せしめない、というお話と関係があるのかもしれない。だから指図されないと動けないんだ私たちは。お母さんが行けって言うから一流大学に行って大手企業に入ったんだって私たちは。
なんてな。
私は最近はあんまり「推し」情熱というのはなくなってきてしまって、自分が最大の「推し」になってきてるのですが、もしやそれは自分の肉体が弱まり、自分の肉体をかわいがらなければもはや自分がこの現実世界にて存続できないことと、さとってきたからかもしれないですね(一知半解)。
搏土造人! 中国神話では蛇身人首、龍身人首、の女媧が泥をこねてつくったものだとされる人間を描いたハイパーリアリズムショー、無名人インタビュー!!! 本日も開演でございます。
【栗林康弘(無名人インタビュー主催)】


今回ご参加いただいたのは ゆこ さんです!

X:https://twitter.com/eeyukoee/

現在:「ライブあるから休みます」って、社会ではまだまだ言えなくないですか?

toki:ゆこさんは今、何をしていらっしゃる方ですか?

ゆこ:仕事としては、インタビュアーとライターをしています。
お話を伺うのは、学生さんから企業の代表の方とか、芸能関係の方とか、お相手問わずという感じです。
「ファンを作るお手伝いをしたい」ってずっと思っているので、自分が共感できたり、素敵だなって思う方だったら、その活動をお手伝いするために、聞いたり、書いたりしたいなと思っていて。そこから発展して、いろんな企業の方、個人の方とお付き合いさせていただいています。
で、プライベートは、ひたすらライブに通う、みたいな日々を送っております。

toki:仕事とプライベート、それぞれのゆこさんの中での位置付けって、どのような感じですか?

ゆこ:例えば、来週1週間分のスケジュールを組みますってなったとき、最優先で入る予定が、ライブ。応援しているアーティストさんの予定が最優先で入ります。
で、フリーランスなので、そこに「何日こういう取材いけますか?」みたいなお問い合わせをいただいて、取材が入り、空いてる時間で、執筆とかそういう作業していく、みたいな生活を送ってます。

toki:なるほど。ちなみにライブなどは月に何回くらい行かれるんですか?

ゆこ:月20本とか。事務所から送られてくるのが自分のスケジュールだと思って暮らしてるので。

toki:そんなに!

ゆこ:新年、1月3日から7連続ライブへ行き…みたいな感じで。今年は1、2、3、4、7、8…既に9本、行ってます。(※インタビュー実施日:2023年1月17日)
謎のペースで通ってますね。

toki:最近でも、今までで、でもいいんですけど、一番印象に残っているライブってなんですか?

ゆこ:ええ〜。一番って何だろう? 印象に残ってる、で言うとあれですね、前の10年以上好きだった子の、グループ初単独ライブかなあ。
個人を中心に活動している子が好きだったんですけど、グループでやっていきたい、みたいなのを初めてちゃんと感じられて。ちっちゃかったんですけど「全国ツアーをやりたい」とか、そうやってやりたいことをちゃんと口に出して、グループでやろうとしているのが見えたし、「そこについていこう」ってちゃんと思えた、こっちもガラッと変わった感じのあるライブでしたね、それは。

toki:今の、好きなアーティストの予定が最優先のご自身の生活、満足度としてはいかがですか?

ゆこ:やりたいことを最優先にして暮らしたいなってずっと思ってたんですね。
私、最初に就職したのが学校で、教員をしてたんですけど。プライベートは、本当に睡眠と最低限の生活をする時間しか取れなかったのが、今は本当にやりたいことを最優先にして暮らせているので、満足度で言ったらすごく高いし、当時こうだったらいいのになって思っていたことって、ほとんど叶った気がしています。

toki:もう少しこうなったらいいなとか、そういう願望は何かありますか?

ゆこ:あります。自由度って多分まだ上がるかなって思うし、仕事の方でも「ファンを作るお手伝い」っていう意味では、もっと、いらしてくださる方の力になれることってあるよなって思っているのでそちらはまだまだ、いろいろやりたいですし。働き方も、チームで働くというか、いろんな人と関わりながらやりたいです。

toki:はい。

ゆこ:私、人生で、ずっと誰かのファンをやってる人間なんです。それを、わりと最近まで、どっちかっていうとネガティブに捉えていたんですね。ファンであることをひっそり隠しながら生きている人ってまだまだいて。
そうじゃなくて、それをポジティブに使えるような働き方とか、お仕事を一緒に作れたらいいなってずっと思ってます。

toki:誰かのファンをやっていることを、最近までネガティブに捉えていらっしゃったとのことですが、その部分についてもう少し詳しくお聞きしてもいいですか?

ゆこ:「ライブあるから休みます」って、社会ではまだまだ言えなくないですか?

toki:たしかに。そうですね。

ゆこ:「仕事だから行けません」って言ってはいけない空気感みたいなのを、勝手に私はものすごく強く感じていて。でも私は、優先順位でいうとプライベート、ライブに限らず、友達や大事な人との予定とか、それのために暮らしてるのに「仕事だから行けません」っておかしくない? っていうのが前提としてあるんですね。
一番最初の職場とかだと、本当に誰にも言わず、時々勝手にお休みの届けを出して、ひっそり休んでみたりしていて。隠して暮らす、みたいなことが当たり前だってに思うくらいネガティブに捉えていたんです。
でも今は、働き方とかむしろプラスに使っていけばいいじゃないか、というふうに思うようになりました。

toki:なるほど。そうやって、以前はファンであることをネガティブに感じていたけれど、今はもっとポジティブに使っていきたいという思いと、今やっていらっしゃる「ファンを作るお手伝い」は、どこか繋がっている部分があるのでしょうか?

ゆこ:もう直結ですね。
すごく熱量を注ぐじゃないですか、好きなものがあるときって。人によっては、それのために生きてる、みたいな人すらいるのに、それを隠すっておかしいよなっていうのが、まず前提としてあります。
で、今お仕事で、本当にいろんな企業やサービス、個人の取り組みについてインタビューしているんですけど、私「推しポイント」みたいなのを探すのが、多分すごく得意なんですね。

で、この人のここ、とか、この会社のここ、めっちゃええやん! みたいなのを、見つけてくると、もう根っこがオタクなので、布教したくなるんですね。ここにこんなすごいことやってる人います、みたいな。

そうやって、いいものを見つけるのが楽しいし、喜びだし。人生使ってやってる方がそこにいるなら、それを広めるお手伝いをしたい。好きなものって、人の心や人生を豊かにすると思うから。それを知って、豊かに暮らせる人をさらに増やせるって、すごくポジティブなサイクルじゃないかなって思ってやってます。

toki:なるほど。ご自身の気質とお仕事がうまい具合にフィットしているんですね。
ここまで、好きなものや力を注いでいることについてお聞きしましたが、逆に嫌いなもの・ことって何かありますか?

ゆこ:好きもはっきりしてるけど、嫌いも結構あって。今ぱっと浮かぶのは、ルールとか決まりを守る、みたいなのは多分ものすごく苦手。というか、嫌いです。

toki:最近「嫌だな」と思ったルールって何かありますか?

ゆこ:最近は、ルールのない世界に生きてるから(笑)。

toki:そうでした(笑)。

ゆこ:けど、フリーランスになる前、会社に勤めていたときには、例えば、みんなが無駄だってわかってるのに作らなければいけない書類とか、嫌でした。なんだろう。
「え、それってこうやってこうやったらいいですよね?」とか「こうやった方が早くないですか?」って私、上司に直接言いに行ってしまうタイプだったんですが、上司の反応は「いやそうなんだけど、だけど…」みたいな。
みんなわかっているのに、無駄をあえてやる、みたいなことが結構、モヤモヤっとします。

toki:「上司に直接言いに行ってしまう」とのことでしたが、モヤっとすることに遭遇したとき、ゆこさんは結構、人に伝えるなりしてご自身で打開していくようなタイプなんですか?

ゆこ:そういうタイプになりました。
昔はそれこそ、趣味のこととかも言わんし、「休みたいです」とか「これっておかしいじゃん」とかも言えないし。学生のときも、服装違反をしたりとか、校則もあんまり守れなくて。「なんで?」とは思ってたけど、それを「おかしいですよね?」って堂々と言えない人だったんですけど。でも、言えるようになりました。いつしか。

toki:いつしか、ですか。

ゆこ:いつしか。徐々にですね。ある日突然、とかじゃないんですけど、徐々に言えることが増えた、ていう感じですかね。

toki:ゆこさんは、周りの方からどんな人だって言われることが多いですか?

ゆこ:どんな人…それでいうと、最近、面白いなって思ったことがあって。
私、数ヶ月前に、推しの子が変わったんですね。前の子、江田くんっていうんですけど、「推しが変わった」ってひっそり言うと「江田くんはどうするの?」って、みんな第一声にそれが来るんです。
みんなの頭の中でも、推しとセット扱いされているというか、もはや担当の名前が肩書きみたいになっていることを、推しが変わったことで改めて自覚させられたというか。周りから、そういう好きなものに、本当に、ひたすら注いでる人なんだなっていうふうに認識してもらってるんだなと思って。それはすごくありがたいことだなって思いました。

toki:その認識は、ゆこさんとしては嬉しいことなんですね。

ゆこ:そうですね。本当に、生き方がそうなので。それを優先で、仕事を入れて、みたいな暮らし方なので。みんなもそう見てくれてるんだなっていうのが、ありがたいなって。

なんか…普通おかしいじゃないですか。頭おかしいと思うんですよ。みんなが仕事してる時間、普通に私は今日もライブです、みたいな。
でも、それでも周りの人は「めっちゃいいじゃん」って認めてくれるし、応援もしてくれるし。周りの人も、すごいなって思います。

toki:ゆこさんご自身は、自分のこと、どういう人だと思いますか?

ゆこ:ゆるいのと、マイペース、ですかね。

toki:ゆるいをもう少し詳しめに言うと、どんな感じのゆるさですか?

ゆこ:多分私、体温で言ったら、35度とかなんです。ちょっと低い。ぬるいんですよ。熱血!みたいな感じじゃなくって。
すごく面白いなと思ったのが、昔一緒の職場で働いてた子に、当初、アンニュイ感のある人だと思われてたらしいんです。「なんでこの人はこんなにやる気を感じられないんだろう」って。
で、のちのち仲良くなって、ご飯とか一緒に行くようになって、実は、仕事の外で熱量を注いでるものがあって…っていう話をしたときに、「あ、そっちに熱を注いでるから、普段は省エネで生きてるんだ!」ってすごく納得されたんですよね。
そう、だから普段は多分、省エネで生きてます。

toki:なるほど。すごくゆるさのイメージがつきました。

ゆこ:取材とかでも、すごくこう、やる気があって、ガンガン前のめりで「これってどうなんですか?」みたいな、アツい方とかいると思うんですけど、私はそういう感じじゃなくて。
私は取材とか行っても、こんなテンションで、常温のままで行って。学校で教員やってるときも常温だったし。おはよう〜みたいな感じで。このままいって、このまま授業もやるし、インタビューもやるし。ぬるっとやってます。

過去:好きな人の好きなものを集めて今に至るし、今までいろんな人にいろんな世界を教えてもらってきた

toki:小さい頃は、どんなお子さんでしたか?

ゆこ:一言で言うと、すごくおとなしいというか、控えめな子供だったと思います。
小学生、中学生とかもずっとそうでしたし。多分、社会人何年目くらいかまでそうだったんじゃないかな。

toki:それは家の内外問わず?

ゆこ:ああ、なんだろう、私、距離感を詰めるまでにすごく時間がかかったんですね。開示ができない、みたいなところがあって。
なので「この人、大丈夫」って思えたら全部出すんですけど。本当に、出せる人は限られるし、時間がかかるし、みたいな感じですね。

toki:幼少期は、どんな遊びをしていましたか?

ゆこ:近所の子と集まって、外遊びとか、鬼ごっことかをすることもあったけど、私は家にいるのが好きでした。
ちっちゃい頃から、母が漫画を買ってくれていて。幼稚園くらいからずっと、漫画とか本とかをすごくいっぱい読むねって言われたし、読んでたし。
あとは、音楽番組がものすごく好きで。そういうのが放送されるときは、もうテレビの目の前に座って、かじりついて見てました。レンタルもいっぱいして、聴いて覚えて、みたいなことずっとやってました。

toki:一番最初にファンになった人って、覚えていらっしゃいますか?

ゆこ:それね、わかんなくって。でも、記憶にある中では、Mステ的な番組だったと思うんですけど、ジャニーズとかのお兄さんたちが歌って踊ってるのを「わあ、キラキラ!」と思って見てました。
グループ名もわからないんですけど“エンターテイメント”みたいなものには惹かれてましたね。私ハマり症なので、アイドルとかアーティストに限らず、人でも物でも作品でも、なんでもずっとハマってました。

toki:中学、高校時代を含めていただいても構わないのですが、何をしている時が一番楽しかったですか?

ゆこ:いやもう、「これが好き」っていうのをひたすら摂取してるとき。
それは例えば、中学校の時に、好きな男の子と服装違反をして、先生にばれないようにカーテンの裏で2人で着替えるとか。アーティストさんが好きすぎて、廊下で叫ぶとか。
「うわー好き!」ってなってるのが楽しいんでしょうね。人生ずっと片思い、みたいなところがあります。

toki:なるほど。ありがとうございます。
中学・高校時代で、何か印象に残っている出来事はありますか?

ゆこ:中学校の時に、選択教科があって。私、合唱選択だったんですよ。歌うとか、ハモるみたいなところが、すごく快感だったんですよね。で、中学校って合唱コンクールとかあるけれど、それじゃ足りなくて選択教科でもやっていたんです。
私はもう合唱がやりたくてやりたくて。授業は水曜日の、5時間目だったんですけど、掃除が終わった瞬間に教室の鍵を取りに行くみたいな感じで。準備運動から、すごいテンションでやっていて。

それで、そのまま高校で合唱部に入るんですね。で、高校は元々男子校だったところが共学になった学校だったので、先輩は男の子だけとかだったんですけど。そこで「男声合唱かっこいい」とか思って。「尊いな」と思って見ていたりとか。
自分でも歌うんですけど、当時は、もし身体の部位の中でどれか一つ使えなくなるとして、声が出なくなったら、喉が駄目になったら、私死ぬなとか思ってました。そう思って3年、ずっと歌ってましたね。

toki:「何かを好きな状態であること」は、ゆこさんの中ではもはや当たり前のことなんですかね?

ゆこ:そうですね。好きなものがあって自分があって、みたいな感じなので。そういう好きになったものや人に世界を広げてもらった、っていう感じがすごくあります。
私って、そもそもなんにも持ってないというか。空っぽだなって思っていて。好きになったアーティストさんとか、その人の曲を通して、言葉や、音楽観、価値観を学びますし。その人が「こういうものが好きなんだよね」って言ったら、それも全部知りたいんです、私。頭の中身を、攻略じゃないけど、集めたい、全部知りたい欲がすごくあって。
例えば昔、今井翼くんが好きだったときには、彼もハマり症で(今井翼くんが)謎にスペインにハマる時期があって。そしたらこちらも、スペイン語講座をひたすら受けたりとか、スペイン料理をみんなで食べに行ったりとかして。

toki:おおー。

ゆこ:あとは、サッカーに人生かけてる男の子が好きだったときには、試合にばかり行って全く会ってくれないからサッカーのことはすごく呪っていたんですけど、雑誌とかをめちゃくちゃ買ってルールとか当時の選手とかをひたすら勉強してサッカーにすごく詳しくなっていたりとか。そういう感じで。
そうやって、好きな人の好きなものを集めて今に至るし、今仕事で、本当にいろんな方にお会いするんですけど、どなたと会っても、なんて言うのかな、ある程度お話ができるっていうのは、今までいろんな人にいろんな世界を教えてもらってきたからかなって。その業界全然わかんないとか、こういうタイプの人は無理ですみたいなのはないんですよね。ありがたいことだなと思います。

toki:なるほど。ハマり症が、仕事でも生かされているんですね。

ゆこ:全部繋がってるなって、本当に最近、よく思います。

toki:ちょっと学生時代のお話に戻るんですが、大学生活はいかがでしたか?

ゆこ:大学生のときは、好きな子のことがずっと好きだったんですよ。付き合ってたんですけど。でもなんか、なかなか会えない人で。どうやったら会えるのかな、みたいなことが、24時間頭を占めているみたいな生活だった気がします。

toki:なるほど。好きになる対象は、芸能人とか、テレビや舞台に出る人に限らないんですね。

ゆこ:限らないですね。その子とは、一緒にaikoが好きだったんです。当時、私の中でもaiko熱もすごく高かったので、お化粧とか、服装とか、とにかくaikoになりたかった。一緒にはまってました。

toki:大学を卒業されて、一番最初に就いたお仕事は教員だったんですよね?

ゆこ:そうです。学校です。
振り出しが中学校で、そのあと小学校に異動しました。

toki:そもそも、教員になろうと思ったのはどうしてだったんですか?

ゆこ:私、別に教員になりたかったんじゃないんですね。子供が好きで…とかっていう、お手本みたいな答えは全然もっていないです。じゃあなんで? って言われたら、多分、高校の時にお世話になった先生がすごくいい人だったからだなって思ってます。今思えばですけど。

toki:当時の理由で言うと?

ゆこ:当時の理由で言うと、私、高校時代の進路選択の時、こういう研究がしたいとか、こういう勉強がしたいみたいなものを持ってなかったんですね。それで、親から医療系とかがいいんじゃないってちっちゃい時から言われていたので、一応理系クラスにいて、そういう系の模試とか受けてたんです。ただ、2年生のときの担任の先生に「これは無理です」ってはっきり面談で言われて。そこで「あ、無理なんだ」と思って。じゃあ頑張ろう、でもなく、なんかこうスパンって、そっちの道に諦めがついたんですね。

じゃあなにをやるんだろうと思ったときに、私、理系クラスにいたけれど、脳みそ的に自分では文系だと思っていて、でも文系でも理系でもやりたいことがなかったんです。
そしたら、センター試験終わった後、担任の先生が「お前はどこに行くかわかんないから」みたいな感じで、とりあえずB判定以上の大学が書かれた紙を何十枚もくれて、ここから選べ的に出してくれて。「わあ〜いっぱい」って思った記憶があります。

toki:はい。

ゆこ:で結局、なんで教育学部を選んだかっていうと、将来たとえ教員にならなかったとしても、子供と関わることって絶対あるだろうなと思ったから。使える知識だろうなっていうことと。
あと私が行った大学は、小学校と中学校の免許を取らないと卒業できなかったので。中学校の免許だけってなると、この教科を極めるみたいなことになるけれども、小学校の教科もとるってことは、全部の教科を広くやるから。私は1個を突き詰めるより、広いことを勉強できた方が、多分性格的に合うだろうなと思って選びました。
で、教育学部にいるのは、大体先生になりたい人たちなので、そういう情報も学科からいっぱい教えてもらって。乗っかって、乗っかって、乗っかっていったら、教員になりました。っていう感じ。

toki:ほうほう。実際教員になってみていかがでしたか?

ゆこ:一番先にくるのは「しんどかった」なんですね。働き方が。
そもそも私、あんまりルールとか守れない。ちゃんとしてはいないタイプの人間なので、学校っていう現場はそもそも合わなかったなっていうのと。あと、仕事の休みがない。好きなことができないっていう働き方はすごいしんどかったなと思うんです。
でも、仕事の中身としては、子供たちと密に関われるし。私、エンターテイメントが好きだから、行事とかものすごい好きなんですよ。特に最初は中学校だったので、クラス対抗とかにもうハマリにハマって。毎日めっちゃ楽しい〜みたいな感じで注いでいました。
あと、頑張ってる人が好きなので。成績伸びた!とか、こういうことがやりたくてとかって言ってる子を近くで見ていられるのはすごく恵まれてたなって思いますね。かわいかった。

toki:そのあと、教員からフリーランスになるまでには、どのようなキャリアチェンジがあったのでしょう?

ゆこ:最初の中学校のあと、小学校に異動します。退職した後はITエンジニアを9、10ヶ月ぐらい。短い会社員人生でした。そこから会社を辞めてフリーランス。最初はデザインメインにやっていて、今はライティング、みたいな感じですね。

toki:なるほど。教員のお仕事は長くやられていたんですね。

ゆこ:そうですね。

toki:そこから、会社員に転向されることになったきっかけといいますか。どういうお考えがあったんですかね。

ゆこ:多分、教員になった時点から、ここじゃないなっていうのがあって。でも、どこに行きたいとか、なにをやりたいとかがないから、動けなかったっていうのが一番正直なところです。
そうやってどうしよう、どうしようと思いながら、じゃあなんで教員をやめる決断ができたかというと、きっかけは舞台ですね。仕事がうまくいかなくってお休みを取っていた時期に、一番好きな子が出ている作品を観に行ったんです。そこで、彼のソロの曲があったんですけど、それを聴いて、こんなところで、という言い方はよくないですけど。やれないところとか、合わないところで、グズグズグズグズ文句言っててもしょうがないな、やめようって自然に思えました。

toki:なるほど。
辞められて、次の職場はITエンジニアだったんですよね。なぜITエンジニアになろうと思ったのでしょうか?

ゆこ:私、教員の中ではパソコンができたんですよね。オタクをやってるといろんなスキルが身につくんです。なにかをすごい愛してる人ってスキルも高くて、ものすごい好きなんですけど。私もやりたいことがあったから必然的にパソコンのスキルとかがある程度身に付いて、IT化がそこまで進んでいない学校現場だと簡単なことなら教えられるし、褒められることが多かったんです。
今でこそプログラミング教育とか当たり前にやってますけど、私が勤めてた地区の学校は先取りしてプログラミングにも取り組んでいる学校でした。自分もある程度勉強して、お子さんたちに教えていました。そこで学んでみたら、考え方とかがすごく納得がいったし、面白いなと思えたんですね。
それで、IT関係だったら、キャリアとしてはゼロだけど、行けるかなと思って。転職先を決めました。

toki:なるほど。ITエンジニアとして実際に働かれてみて、いかがでしたか?

ゆこ:やってみて、違うなと思ったんですね。なので、1年も待たずにやめてしまうんですけど。
なにが違ったかっていうと、相手の顔が見えるお仕事がしたいんだなって、わかったんです。私がしていたエンジニアの働きかただと、誰と毎日連絡をしてるのかわからない。メッセージのやり取りと電話は毎日するんですけど。しかも、扱ってるシステムが、誰の何に役立ってるのかよくわからない。それを毎日繰り返すのが耐えられなくて、私はそこにモチベーションを感じられませんでした。
じゃあなにができるかなってなった時に、Web関係はすごく働き方として合っているなと思ったので。デザインとかだったら、一緒に見た目を作れる。それってなんかすごいなって思って会社をやめて勉強し始めました。

未来:好きがないことは、ないんだと思います。

toki:5年後や10年後、何年後でも構わないのですが、どういうことをやりたいとか、どうなっていたいとか、未来についてはどんなイメージを持っていらっしゃいますか?

ゆこ:それね、取材でいつも人に聞くんですけど、自分では何もないんですよね。いつも。なんだろう、予定も計画もなんにもないですけど…好きな人たちとチームを作って働けていたらいいなとは思います。

toki:冒頭にも、チームで働くっていうことをちらっとおっしゃっていましたよね。”チーム”でやりたいという思いが出てきたのは、どうしてですか?

ゆこ:ひとりでいるのは嫌いじゃないんですけど、なんだろう。私わりと、ボーイズグループにハマることが多くて。ジャニーズとか、今好きな子たちも、男の子9人のグループなんですけど。ひとりでは出せないものが出るのってなんかすごいし、チームに所属しているっていう状態に多分、惹かれるんですね。
教員をやってたときも、”クラス”みたいな、集団にすごく愛おしさがあるというか。なんか、概念じゃないですか。そういうグループの名前とか、「4組」とか。別に形はない。入れ物でしかないのに、そこに所属しているっていう自覚だったりとか、所属している誰々さんって思われることで、引き出されるものがある。そこで掛け合わせて生まれるものにすごく惹かれる部分があるんですよね。

toki:なるほど。ありがとうございます。
今、どういうことをしたいかをお伺いしたんですが、どういう人になりたいかでいうと、その辺りいかがですか?

ゆこ:どういう人になりたいか。私の自覚としては、多分、今のままでいいんだなって思っていて。悪いところも、できないこともいっぱいありますけど、これはこのままなんだろうなって。ここ変えたいなっていうところもないです。
ただ、好きな人を応援したいみたいなのはずっとあって、そのための力は欲しいなと思っているので。例えばより深く読み解く力とか発信力とか、そういうものは絶対あった方いいので身につけたいし、伸ばしたいなって思ってます。

toki:うんうんなるほど。さっき過去のところで、今のお仕事のことについてあまり深くお聞きできなかったんですけれども、フリーランスになられて、何年くらいになるんですかね。

ゆこ:2020年末で仕事辞めたから…丸2年やったってことですね。3年目に入りました。

toki:お仕事が軌道に乗るまでとかって、いかがでしたか?

ゆこ:私とりあえず、できなかったら就職しようって思って会社を辞めてしまったんです。それでもなんとなく暮らせています。
軌道に乗るまで…最初はデザインをやっていて、デザイナーをメインにしたかったんです。でもここでもやっぱり「これじゃないな」って気が付きました。で、ライティングの話は、今日のインタビュー中に全然登場してないんですけれど文章を書く仕事は教員やってたときからしているんです。だから、遠回りして、元の場所に戻ってきたっていう感じ。遠回りして遠回りして、なんかいろいろあったけど、結局私が使えるのは、言葉、文章だな、って思った。いろいろ寄り道して、いろんなところを覗いた結果、ここだったみたいな。行きついた、という感覚です。

toki:ご自身が望んでいた、好きなことを優先に過ごすという生き方を、ある種達成されたように私からは見えるんですけれども、そういった生活を実現させてみて、ゆこさんご自身としてはいかがですか?

ゆこ:なんかすごくありきたりな答えになるんですけど、とりあえず一旦、あるべきところに収まったかなっていう感じがします。
多分昔、仕事が嫌だなとかしんどいなとか思ったり、次の週末まであと何日とかって数えて耐えていたのって、合わないことをやってたからなんだなっていうのがすごくよくわかって。今フリーランスなので、別にいつが休みとか、仕事は毎日何時間するとか、1ミリも決めてないんです。土日に仕事の連絡が入るのとか以前はイヤで仕方なかったのに、今はそんなの全然気にならない。毎日が決まっていなくて、新しくて楽しいです。

toki:死ぬまでにやっておきたいこととかってなにかありますか?これをやらないと死ねない、みたいな。

ゆこ:後悔なく現場に行く。

toki:現場っていうと、やっぱりライブとか舞台とか。

ゆこ:そういうことですね。やっぱり、エンターテイメントを生で見る、みたいなところで後悔をしたくないなっていうのがずっとあって。本当それしか言ってないんですけど(笑)。
それだけの数の現場に行くのって、多分気が狂ってると思うんです。でも、なんでそこまで行くんですか? ってもし言われたら「後悔したくないの一心です」って言います。
本当に、いつなにが起こるかわからない世界だなって、いればいるほどに強く思わされます。この間福岡行ったときにも思ったのは、行かないって決めたら、きっと後から「行けばよかった」ってめちゃくちゃに後悔する。でも行ってしまえば「行かなきゃよかった」っていう後悔をすることはきっとないです。
なので、やりたい、行きたいと思ったら行こうって。私、今しか見えてない女なので、多分それをずっと続けて続けて、最後死ぬんだろうなって思います。

toki:今の積み重ねみたいな?

ゆこ:ああ、本当ですね。何年後までにこうなっていたいとか、過去も未来も私にはよくわからんくて。今これをやりたい、今日ライブに行きたいから今日行く、みたいな。それだけです。

toki:ここまでお話を聞いていて、すごく気になったんですけど、ゆこさんの「全部知りたい欲」ってどこから湧いてくるんですかね。
同じ「この人が好き」でも、いろんな尺度があるじゃないですか。ゆこさんみたいな方もいれば、そこまで詳しくないけどまあ好きみたいな方もいて。その中で、ゆこさんがそこまで好きなものを愛することができる根源って、何なんでしょう?

ゆこ:なんだろう、多分「私が一番知っている」って思いたいんだと思います。
ライブにいっぱい行ったよとかっていうような、回数とか頻度で測れるものがほしいんじゃない…それを自慢してもしょうがないと思うんです。私はいくらお金使ってるとか、そういう部分での一位は特に目指してないんですけど。
それなら何の部門で一位になりたいんだって自分に問いかけてみると、「私が一番わかってる」って思いたいんだなって思います。アーティストさんでも、お取引のある会社の方でも、「あいつが一番わかってくれてる」って思われたいな。

toki:ほうほう。

ゆこ:だから私、前の名刺の肩書きに「担当」って書いていたんです。それって、元々ジャニーズのオタク出身だからっていうのもあるんですけれど、「担当」っていう立ち位置ってすごくいいなって感じていて、今も私の中でしっくりきているんです。人との位置関係を表すものとして。
伝わりやすいので最近は私もよく「推し」って使っちゃうんですけど、「推す」って表現だと立ち位置が前後な感じがするんです。好きな人が前に立っていて、自分が後ろにいて、背中をおす。でもおすと、作用・反作用の法則で、遠くに行ってしまう。おせばおすほど存在が遠くなるっていうのが、なんかすごく嫌なんです、私。

toki:ああーなるほど。

ゆこ:でも、「担当」って言葉だと、立ち位置が隣な気がする。一緒にどこどこに行きたい、歩いて行きたいみたいな感じがすごく好き。私はそのとき一番に推してる人や、仕事でお付き合いのある人にとっての「担当」になりたい。なので、一番分かっている女になりたくて、できる限り全部を見たいし知り尽くしたいっていう欲が根っこにあるんでしょうね。

toki:「推し」と「担当」の微妙なニュアンスのちがい、すごくなるほどと思いました。普段、何気なく「推し」と口にしてしまいますが。

ゆこ:多分、人によって定義とか、位置づけとかっていっぱいあって。私も興味があるのでいっぱい聞くんですけど、「推し」っていう言葉を使うことで、ファン活動がライトなものになったっていう、専門の方の話も聞いたことがあります。
でも私はそうは思わなくて。「推し」っていう言葉を使うから、軽い気持ちで推してるとかじゃないですね。

toki:ありがとうございます。
毎回皆さんに、もしもの未来について質問しているんですけれども。
もしも、今日から1年間、現場に行ってはいけないことになったら、この1年間どうやって過ごされますか?

ゆこ:ええっ、現場に行けない?!

toki:1年間、エンターテイメントを生で享受できないっていうような状況です。

ゆこ:私、1年暮らせますかね…(笑)。
でもやれることはやると思います。SNSとか、オンラインとかで。多分好きはなくならないと思うから、そういうできる形での応援はしつつ、ずっとめちゃくちゃに片思いに苦しむというか、恋煩いしてると思います。

私、のだめカンタービレがすごい好きなんです。主人公の女の子、のだめちゃんは、ピアノもバイオリンもできる指揮者の千秋真一くんのことがめちゃくちゃ好きなんですね。で、音楽の遠征でしばらく離れて暮らすってなったときに、のだめちゃんは耐えきれなくて、彼が着たワイシャツの匂いを嗅いで耐えしのぐっていうシーンがあるんです。
これ、めちゃくちゃわかりみしかなくて結構な頻度で思い出しちゃう。そうやって、今までもらった言葉とか、今ある写真をみて、SNSで「こんなことしたよ」とかっていう日常を覗きながら「あぁ」って。ワイシャツの匂いを吸うように、耐えて暮らすと思います。

toki:ちなみに、ゆこさんって好きなものがなかったことってないんですか?

ゆこ:多分、自分の中ではあるんです。今も、特にすごくハマってるものってないなって思うんですけど。でも多分それを、世間の平均と比べたら、ずっとあるんです。
例えば本屋さんの、このコーナーが自分の中でキテいる、とか謎に。あと著者の人とかも、この人の考え方アツいとか。あと、YouTubeの動画とかも、最近この人の考え方めちゃいいと思うとか。短期でハマるみたいなのも全然あるので。

月に何度か会い続けている友達には、毎回違うものの話を私のなかでアツいものとして語り続けてます。常時活動みたいな“好き”がベースにあって、その上に、違う小さな好きが入れ替わりながらいつも複数乗っかってるみたいな感じかな。
好きがないことは、ないんだと思います。お取引してる会社の経営者の方がこんなん言ってて興味もった、とか。常時なにか、好きなもの・気になるものはありますね。

toki:ありがとうございます。そろそろインタビューも終盤ですが、最後に言い残したことや、ここもっと話したかったなってところはありますか?

ゆこ:たくさんお話させていただいて、すごく気持ちよく聞いていただいたので、特にありません。大丈夫です。

toki:わかりました。そしたらこれでインタビュー終わりにさせていただきます。
ありがとうございました!

ゆこ:ありがとうございました!

あとがき

私事ですが、昨年生まれて初めて推しができました。
推しのいる日々は本当に鮮やかで、豊かで。
いったい、推しができる以前、私は何を糧にどうやって生きていたんだろうと思うくらいです。

中学生・高校生くらいまでは、部活や行事、勉強などと、エネルギーを注げるものが、学校のシステムに沿って生きる中で、自動的に目の前に用意されてきた実感がありました。
ですが、高校を卒業し、良くも悪くも”選択の自由”が増えたことで、何にエネルギーを注ぐか、その対象を自分で用意しなければいけなくなったような気がします。

そんな中で、
好きだと思えるものがある。エネルギーを注ぎたいものがある。
それって、とても幸福なことなのではないかなと、2日前、推しにあった帰り道に、ふと思ったりしました。

誰かや何かに思いを馳せることって、馳せれば馳せるほど、何かを期待したり、見返りを求めたりしてしまいそうなもの。
ですが、ゆこさんの場合、「ただ自分が好きでいたい」という、”無償の愛”とも言えるような、馳せる思いの純粋さを強く感じました。
対象がなんであれ、それだけ誰かやなにかを深く愛することができるのって、やっぱり素敵です。

何かを好きでいることの尊さに気づかせてくださったゆこさん、どうもありがとうございました!ゆこさんの”担当”ライフに幸多からんことを。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
次回の無名人インタビューもどうぞお楽しみに。

【インタビュー・編集・あとがき:toki】

【文字起こし:あおい】

#無名人インタビュー #インタビュー #自己紹介 #ライター #推し

マガジンで過去インタビューも読めますよ!

インタビュー参加募集!


この記事が参加している募集

自己紹介

いただいたサポートは無名人インタビューの活動に使用します!!