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無名人インタビュー:個性を認めない保守的な日本社会に合わないのでイタリアの医学部に行った人

みんな日本好き? 私は別に好きでも嫌いでもない。
海外に住んだり、海外に留学したり、そういう経験の結果、日本はあかんわーってなる人も何割かおりまして、今回のあのんさんも、そういう日本は苦手だなっていう人の一人かもしれません。嫌いっていうのは強すぎるかもしれませんね、合わないて感じ。
てか、海外って、海の外っていうことが日本という国境の外を表すってこと自体がもう特殊なんですわな。
風土というのは無くなるものなのでしょうか和辻先生! ということで、あのんさん回でございます! 楽しんでいってね!!

今回ご参加いただいたのは あのん さんです!

qbc:今、何をしている人でしょうか?

あのん:今は、英会話の講師をしながら、オンラインでイタリアの大学の医学部に通ってます。秋から学校に行く予定です。状況が悪くならない限りは。

qbc:授業は英語?

あのん:今の授業は、イタリア語を学ぼうっていう授業です。
校外は英語なんですけど、学校内はイタリア語なんでね。最低限は話せるようになろうって。

qbc:今、1年生ですか?

あのん:そうですね。日本の大学に通ってた時期とかもあったんで、年齢とやってることはずれてますけど。オンラインでイタリアの大学に入学したのは、今年の4月からですね。

qbc:授業はどうですか?

あのん:今は、イタリア語の勉強をイタリア語でやってるんで。めっちゃ大変ですね。
なんかすごい適当なんですよ、イタリアって。授業のはじまる2日前に、明後日から授業ですっていう。計画性がないですね。

qbc:連絡はメールでくるの?

あのん:はい。向こうのミスで、なかなかアクセスができなくて。2、3週間経ってから、やっとアクセスできたんで。

qbc:オンラインのシステムに入れなかった?

あのん:はい。すごいですよね。

qbc:イタリアって、時差どれくらい?

あのん:8時間ですけど、そんなに大変ではないですね。日本に比べたら授業の時間が少ないので。

qbc:学生をやりつつ、英語を教えてるってことね。わかりました。
普通に就職してるんですか?

あのん:英会話の塾があって、そこに所属させてもらったり。会社とか通さずに、個人で教えたりすることもありますね。

qbc:正社員として働いているわけじゃないんですね。

あのん:オンラインの英会話塾なんで。たぶん、非正規かなんか、そういう形で。

qbc:あのんさんの中では、急にではないと思うんですけど、どうして医学系へ?

あのん:日本で通ってた大学が、生命医学系だったのと、PTSDの研究がしたかったっていうのがありますね。

qbc:日本で精神医学をやられてた? 生命医学だったの?

あのん:生命医学系ですね。理系の生物系かな。
本格的に、PTSDの人たちを治すにはどうしたらいいんだろうっていうところを、やっていきたいです。

qbc:イタリアは患者を精神科へ入院させないという方針をとったり、先進的ですよね。そういう意味で選ばれた?

あのん:そうではなくて、イタリア好きだからですかね。

qbc:なるほど。日本の大学を卒業後、いったん就職はされたんですか?

あのん:就職はしてないですね。自分探しで日本の大学を休学してて。卒業せずに、こっちに変わった感じです。留学もしてました。

qbc:どんな大学生活だったんですかね。

あのん:日本って、一般的な日本人みたいなのを求められることがけっこうあって。私の生まれ育った場所が地方なんで、そういうのがすごく強くて。その考えをそういうもんなんだと思って東京の大学に行ったんですけど。大学に入っても、なんか違うなっていうような。
私は、日本人の人間関係がけっこう苦手なんですよ。文句言ってばっかりっていうのが。

qbc:日本、ちょっとおかしいですよね。独特だと思う。

あのん:言ってることとやってることが真逆なときがあって。今度USJ行こうよって言われて間に受けて、じゃあいつ行く? って言うと、え? みたいな感じに。それがすごく苦手で。
親が権威主義みたいなとこがあったんで。立派になれば、いい人間になれるとか、幸せになれるとか。日本、みんなそうですかね。
東京の大学で勉強してれば、高校生までに抱えてきたモヤモヤがなくなるのかなって思って入学しても、人間関係は変わっても、中身とかはあまり変わってないので、なんか違うなっていう。なにを目指せばいいのかなって。

qbc:はい

あのん:あと、私が大学入ってすぐぐらいに、電通の職員さんが過労死でなくなったんです。あれが、けっこうショックだったんですね。せっかく勉強していい大学入って、いいところ卒業すれば、幸せで恵まれた暮らしができるのかなって思ってがんばってきたのに。なんだっていうふうなところがあって。
自分もこのまま、普通にしっかり勉強してっていう道を行ってしまったら、こういうモヤモヤを抱えたまま、一生終わるのかなって思って、休学しました。でも、目標があって休学したわけじゃないんですね、最初は。そんな状態で東京に住んでるのも家賃かかるんでもったいないんで実家に帰ってくると、やっぱりね、親戚や親から、すごくもういろいろ言われて。親に、娘はいません、みたいに言われたことがあるんですよ。

qbc:ちなみに、ご実家はどちら?

あのん:三重県の四日市ですね。休学して自分探しをしてるだけ。あまり日本にはいないので、受け入れられないっていうか。

qbc:ちょうどね、今、三重のインタビューの原稿やっててさ。その人、伊勢でさ。地元、大っ嫌いだって言ってた。

あのん:(笑)

qbc:三重が特殊だとは言わないけど、たまたまね。

あのん:地方ってね、けっこう高齢化も進んでるんでね、すごく保守的ですね。

qbc:でも、あのんさんの場合は、東京の大学ででも、ちょっと違うなあっていう感じだったんだよね。

あのん:自分は三重県に住んでるから保守とかって思ってたんですね、ずっと。三重県から出れば、保守的じゃなくて、いろんな考えを持って、期待に溢れてるのかなと思ったら、そうじゃなかったっていう。
東京へ行けば、保守的な一般的なものを押し付けてくる人から逃げれるのかなって思ったら、逃げれなかったので。がっかりしてしまったっていうのが、おっきいですね。

qbc:休学してるときは、何をしてたんですか?

あのん:音楽好きで、バイオリン弾いてました。

qbc:へえーかっこいい。もとから弾けたの?

あのん:バイオリン聞いて、コンサートみたいのがあったんで、はじめてみようかなって。あとはいろんな本読んだりして。そのときに、昔から恵まれない幼少期を過ごした子どもたちが、PTSDを負ったりして精神病になったり、非行に走ったりっていうことに、興味をもって。そういうことを突き詰めて、考えて行けたらいいなって思いました。

qbc:お休み中、ほかには何を?

あのん:外国がどんどん好きになりましたね。いろんなものを見ると、本当に外国が、私という存在をけっこう見てくれるじゃないですか。日本だったら、年齢や出身や職業が先行して、私が目の前にいても、あなたの年齢にしてはけっこう落ち着いてるねとか。目の前の人を見ない気がしてたんですね。外国だと、その人はその人っていうのがすごくいいなって。

qbc:そう思いますね。日本は見かけで判断してるだけ。その人自身を見てないよね。

あのん:私の行ってた大学って、女子学生が少ない大学だったんで、女子学生はこうこうこういうのがある、みたいなステレオタイプがすごく強くて。
私が、そのステレオタイプっぽい行動したら、あ、やっぱり女性っぽいって言って。ちょっと違う行為をしたら、なんで違うの? みたいに言われて。ステレオタイプで見るんじゃなくて、私を見て、私に質問したなら本当に面白い人間関係を築けるのに。最初に持ってる偏見っていうか、それを守るだけっていうか。それが私は嫌でしたね。
あと、今から2年ぐらい前かなイギリスに留学してたんですけど、昔。

qbc:休学中にイギリス留学?

あのん:はい。留学先の家の一番上の娘さんが結婚して、外国に住んでたんですね。あるとき、娘さんとその旦那さん、2人でイギリスに帰ってきたんですね。でも、娘さんしか家に来なかったんです。
旦那さんは、友だちと遊びに行ってたんです。自由じゃないですか。日本で同じ状況だったら、友だちと遊びたくても、いったん奥さんの実家へ2人で行くじゃないですか。

qbc:はいはいはい。

あのん:自分の思いとかより、夫という役割のほうが重んじられてしまう。イギリスだと、自分の考えっていうものが重んじられて。時間があるときは集まるみたいな。そういうのを間近で見せてもらって、ああいいなっていうのを感じたんですね。

qbc:どれくらいイギリスへ行ってたんですか?

あのん:1年もなかったと思います。帰ってきて、PTSDの勉強したい、ヨーロッパに行きたいっていう思いで。

qbc:イタリアの学校は、簡単に見つかったんですか? 大変でした? 

あのん:大変は大変ですね。ヨーロッパの大学一覧みたいなものがあって。そこにイタリアの大学も書いてあるんで。1つ1つ大学を調べていって、どういうふうな入試の方法か、いい学部あるのかなっていうのを調べたり、行けるのかなっていうのを調べたりしながら。

qbc:入試方法はどんな方法だったんですか?

あのん:ふだんは、受けに行かなきゃいけないんですけど。今はオンラインで受けれますからね。

qbc:へえー。

あのん:びっくりですよね、オンラインで受験って。

qbc:入試は英語で受けられるんだ?

あのん:英語です。

qbc:すごいですね、一発合格って。

あのん:運が良かったんですね。

qbc:とはいえ、医学部でしょ? だって勉強期間もそんなになかったじゃない?

あのん:あんまり大きな声で言えないんですけど。大きな声で言うんですけど。日本でも受けたんですよ、医学部。そのときに、私と同じ点数だった男の子が合格して、私が落ちてるんです。性別で。それで完全に日本の医学部を目指すのはやめようって。逆に決まりましたね、海外に行こうっていうふうに。

qbc:なるほどね。PTSDについて興味を持ったのは、なぜですかね。

あのん:あんまり親とうまくいってないんですね。俗に言う毒親みたいな感じで。そういうのですごく苦しんできた過去があって。自分に自信が持てないんですね。周りにもそういう子が多かったんです。日本って親の権限ってすごく強いじゃないですか。海外だと、子どもの権限がすごく高いですけど。
日本は親の権利が強くて。有名な高校や中学校に子どもを入れようと思って、勉強させられたり、音楽や、スポーツやらされたりして。拒否権がないじゃないですか。そういうとこで傷ついてしまって。大人になって自由なことができるような環境になっても、そこにいつも戻ってしまって、自分の人生を歩めない人たちっていうのが、私の周りも含めてけっこう多い気がして。
地元の友だちの子で1人、自殺した子がいて。その子もやっぱり、ずっと長いこと、親だったり社会だったり、いろんなことで苦しんできた結果だったので。自分の人生を生きられるようになったらいいなって思って。

qbc:日本の大学ってどちらへ行かれてたんですか?

あのん:早稲田です。埼玉の人間科学部でした。

qbc:未来について聞いていきたいのですが、今はポジティブ、ネガティブだと、どういう感じ?

あのん:今はけっこうポジティブですね。

qbc:なるほど。整理がバーッとできたきたきた感じなんですかね。

あのん:日本型の、22歳で卒業して、就職して、30歳前後で結婚して、子ども産んでみたいなのがあんまりいいと思えなくて。別に、そういう人生を歩んでいる人は、それですごくいいと思うんですけど。自分は違うなっていうふうに、うまく割り切れましたね。

qbc:それは、どのタイミングで気づいたんですか? イギリスに留学した時?

あのん:イギリスへ行っても、イギリス人になれるわけじゃないじゃないですか、移民ががんばっても。イギリス人になれるなら向こうへ行きたいけど、移民として苦労するのもなんかなあとか。いろいろ考えると、行きたいんだけど踏み出せないっていうのがあって。
でも、友だちの自殺と、医学部の不正入試で、もう行こう! って決まりました。

qbc:友だちの自殺っていつだったの?

あのん:医学部を受けるちょっと前ぐらいですかね。同じ点数の子は受かってるんですよ。私が補欠合格だった。60%まで補欠がまわったのに、まわってきてないんですよ。なんでやねん。もういいやって思って。海外に行こうって、逆に決心がついたって思って。

qbc:子どものころって、どんな子だった? 真面目な子だったのかな。

あのん:保守的で教育熱心な親に育てられた、けっこう真面目っていうか、悪いことができない子ですかね。

qbc:zoomのサムネを見ると、今、そういうのが弾けてしまった感じがするね。

あのん:(笑)イタリアの大学なんで、みんなこんな感じなんですよね。

qbc:大学の友だちと話してるから、こんな感じになるってこと? 最近の写真なの?

あのん:大学の友だちとInstagramとかのSNSを交換して、写真を見るじゃないですか。もうすごいんですよ。日本ではあり得ないような、8割近くが水着なんですよ。水着しかり、お風呂出てバスタオルを1枚羽織っているだけの写真とか。すごくセクシーです。そういうのを見たら、ここまでは普通の範囲なんだって。

qbc:面白っ。(笑)

あのん:日本人の女性はすごいですよね。服も着てるし、水着の写真載せてない。歯を1ミリも見せてませんみたいなのしか載ってないから。浮いてますよね、絶対、私。

qbc:どうしてヨーロッパいいなって? なんとなく?

あのん:ヨーロッパに住んでる人のブログとか本とか読んで。

qbc:どんな本?

あのん:イギリス人と結婚しましたとか、ドイツ人と結婚しましたとか。

qbc:そういうやつか。

あのん:あとは、私が個人的にキリスト教を信仰してて。それで、普通に向こうのミサとかを見たり、教会がいっぱいあるから、カッコいいなとかと思って。イタリアとか、まさに本場なんで。いいなって。あんまり日本人はキリスト教もいないんで、共感は。

qbc:キリスト教は、ご家族も?

あのん:私だけです。

qbc:自分だけ? いつ?

あのん:高校生ですね。高校がキリスト教の学校で。募金をしましょうとか、ボランティアには行きましょうとかいうので。クリスマスに、何円でもいいから募金をしなくちゃいけなかったんですね。それで、1月に募金したお金が貧しい国に届けられたビデオとかを見せてもらって。そういうのでいいなと思って。

qbc:親子関係の良くなさというのは、言える範囲で聞きたいですね。

あのん:うちの家族は、祖母も祖父も、けっこう支配をしたがるんです。なんでも自分の思い通りに子どもを動かすのが幸せだろうみたいな方法で、私の自主性っていうものは見ないんですよ。母の思惑と違うことをしたら悪い子。私がしたくなくても、母の思惑をしたらいい子。悪い子とみなされると、容赦ない暴言が飛んでくるんで。中学生ぐらいになるときには、反射的に母親が言いたそうなことを考えてやってしまうような。自分ってものがわかんないって悩みはじめましたね。

qbc:イギリスに行ったときは、違和感ってなかったですか? さっきの夫婦の話聞いて、確信を持ったって感じか。

あのん:けっこうみなさんが、何かを押し付けてくるっていうことがないじゃないですか。その人はその人。あの人はあの人。
あとは、イギリスで勉強してたときに、クラスメイトと、ビール飲みに行こうってなったときに、1人の子が、私はイスラム教徒だからってそのまま帰っちゃったんですね。じゃあ、ビール飲まないときに誘おうかって。それが、なんかいいなって思って。
日本だったら、人に合わせられないと、そこから悪口言われたり、誘われなかったりするのに。その子はイスラム教だから行かないんだって。別のビール飲まないときに誘おうって、個人を尊重する関係っていうのがいいなって思いましたね。

qbc:そうね。

あのん:もちろん、イギリス、今だと本当に人種差別とかも激しいんで、全部が全部いいとも思わないんですけどね。

qbc:結局移民だしっていうのは、なんかあったんですか? イギリスに対してあった?

あのん:移民のスポーツ選手が、勝ったらドイツ人、負ければ移民って言われますけど、まさにそうだと思って。いいことをしたらその国に馴染めるんだけど、ちょっと変なことをしたら移民とかアジア人っていうふうに言われてしまう。やっぱりそうかなって思います。

qbc:5年後、10年後、あるいは死ぬ時に、こう思われたいみたいな。どうしていきたいです? 

あのん:今は日本で、昔の私みたいに道に迷っている人がけっこういると思うので。そういう人たちに、こういう生き方もあるよとか教えたいですし。外国へ飛び出したいっていう人に、どうがんばっても英語勉強しないと生きていけないんで、教えたいなって思いますね。
あと、これからPTSDについて学んで、同じように苦しんでる人たちを支えたいですね。

qbc:それを、たとえば組織化したいとか、こういうコミュニティをつくりたいとか、もう具体的にあったりするんですか? どんな形で。今はもう、勉強するっていうところか。

あのん:実は、もうつくってるんですけどね。

qbc:今もある?

あのん:いちおうありますね。困っている人を助けたり、ホームレス支援とか、弱者の権利を守ったりするのが好きなんで。イタリアで働くことができたら、イタリアは移民船が押し寄せてくるような国なんで。本当に支配に苦しんできた移民たちを癒せるような何かをしたいなって思いますね。

qbc:それはオンラインコミュニティなの? それともイタリアにある施設なの? そこでみんなでワークショップやったりするような。どんな場所?

あのん:今、けっこうあるんですね。NGOかNPO。イタリアの移民船を助ける会みたいな。イタリアにずっと住むことができたら、関わっていきたいなって思ってます。
あと、もう1つは、PTSDの研究を深めていきたいっていうのはすごくありますね。

qbc:「ケーキの切れない非行少年たち」って知ってる?

あのん:知ってます。読んだことないですけど、すごく気になってる本です。

qbc:話を聞きながら、それを思い出してたんですよ。

あのん:日本ではたぶん知らないと思って、あんまり言わなかったんですけど。アメリカでACEっていう病気が出てるのって知ってますか?

qbc:初めてお伺いしました。

あのん:ACEは、小児期に虐待があったり、暴力があったりっていうのが条件として調べていくっていう。まだ研究もはじまったばかりで。日本ではなかなか研究が難しいなって思うんですね。親子の関係が、すごい厳しいし。大人になったら幼少期の親の育て方で、今傷ついてるっていうのは、たぶん日本では研究が難しいかなって思ってるんですけど。ヨーロッパは個人主義なんで、こういうことができるんで。そういうこともやっていきたいなと思って。あくまで、移民船を助けるのはボランティアみたいな感じで。研究したいですね。

qbc:じゃあもし、PTSDとか、小児トラウマみたいなものが解決された世界にいた状態。日本的な社会じゃなくて、人目を気にしなくていい状態になった。やりたいっていうことが、もう解決した状態だったら、何をします?

あのん:何しましょうね。難しいですけど。それでも世界に弱者はいると思うんで。貧困問題だったり、戦争もいっぱいあるんでね、そういう支援をやりたいなって思いますね。

qbc:こんな早く答えが返ってくるとは思わなかった。バイオリン弾きます、て回答とかが来るかと思った。

あのん:やっぱり、ニュースとかで困ってる人っていうか、本当に放っとけないじゃないですか。自分だけバイオリンとか、できないですね。

qbc:なんで? 何がそうさせるんだ、あのんさんを。

あのん:苦しんでいる人たちが、自分と被ってしまうからかもしれないです。

qbc:その記憶から逃れられないのか。

あのん:そうですね。

qbc:ちょっと泣いちゃった。自分の悩みが解決したのにさ、どうするって聞いたら、自分の幸せなことをするんじゃなくて、また違う問題を解決しにいくっていうのは、すごいなと思った。

あのん:ありがとうございます。なかなか難しいんですけどね。でも、もし外国も簡単に行けて、語学もお金もオッケーってなったら、もっとやりたいですよね。
マザー・テレサをすごい尊敬してるんですよ。マザー・テレサがまさに、すべて捨てて弱者支援やってた人なんで。私もそんな人になりたいなって思ってますね。

qbc:あのんさんみたいな人を抑えつけようとするような日本の世界があるわけだもんね。利他的な生き方すら認められてない。ある意味、すごい保守へのパワーだね、日本の文化風土っていうかね。

あのん:親や先生が子どもに言うのは、自分もして嫌なことは他人にするな、自分のしていいことは他人にしようって言うけど。それって、自分と他人をまさに一緒の人間と見てるじゃないですか。ストーカーなんかは、まさに自分がしてほしいから付きまとうわけじゃないですか。自分と相手は違うんだから、違いを認めた上で、喜ばせたり、楽しく過ごせばいいって教えてほしいのに、他人を自分と一緒であるように教えてしまって。

qbc:なるほどね。

あのん:日本のすべての人を抑えつけて、差を認めないっていう考え。そういうのは、なかなか受け入れがたいですよね。

qbc:ああ、英語の個人のレッスンの話、紹介しなくて良かったかな?

あのん:紹介してほしいです。

qbc:では、どうぞ!

あのん:自分で考えて英語を使っていけるような、レッスンをしてます。初心者さんが多いんで、私が教えてる生徒さんって。本に書いてある文法を、こういうときにどうやって言う? とかからはじめて。自分の身近な家族だったり、地元だったりを使いながら。この文法を使って言えそう?って感じで。

qbc:授業の形態は? オンラインレッスン? 週に何回っていう、そういうのは?

あのん:生徒さんがやってほしいように言ってくれれば1回30分でも90分でもいいですし、毎週でも月に1回、2回でも。マンツーマンなんでね、自由に。
30分で千円です。

qbc:安い!

あのん:普通は、けっこう高くついちゃうんですね。それでね、勉強するのがなかなか難しい。生徒さんによりますけど、初心者の人が英語を覚える用に、いろんな単語帳をつくっているので、生徒さんによってそういうのも配りながら、やっていく感じですね。

qbc:今は、楽しく学校に通ってる感じなんですか?

あのん:そうですね。さっきも言ったように、自分と他人は違うって分けてから、すごく気が楽になって。楽しくやってます。

qbc:自分と他人は別って気づけるのもすごいと思う。インタビューした人の中では、50歳になってそれにようやく気づいた人とかもいるからね。

あのん:なかなか気づかないですよね、日本にいると。それはわかりますね。

qbc:ありがとう、時間をいただいて。

あのん:ありがとうございました。

あとがき

あなたはこのインタビューを読んで、どう思いましたかや? 良かったら、感想を残していいってね、愛してる。
インタビューを初めて1年、のべ150人くらいの無名の人にインタビューしてきました。専門的な言葉でいうと、この無名人インタビューは非構造化インタビューです。
「非構造化インタビュー」って何?
質問などがあらかじめ用意されていないインタビューのことを「非構造化インタビュー」と呼びます。
いっぽう、「あなたの生活はコロナでどう変わりましたか?」といった質問があらかじめ用意されているインタビューを「構造化インタビュー」と言います。ちなみにその中間は半構造化インタビュー。
この記事アカウントをよく読んでいただいている読者様におかれましては、無名人インタビューにも「現在過去未来を聞くお決まりの質問があるじゃないか」と思われる慧眼の人たちがいらっしゃるかもしれませんが、これはあくまで構成の呼び水、インタビュー参加者の意識を自己から自己の外へ摘出、開放させていくための空間的時間的意味的マイルストーンであって、質問じゃないんですよ。
迷路にさまよっているときに、ふと見あげたときに目にうつってしまった警句めいた世迷言であって、タロットカードのイラストレーションだと思ってください。質問した結果、相手から現在と過去と未来の話が返ってくることを望んでいるわけではない質問項目なんです。
脱線した。
本線に戻ります。
「無名人」という看板を掲げたインタビューは、ある視点から言えば、
「応募した方たちから、どんな結果になるか分からん非構造化インタビューという形式で取材してみたらどうなるのだろうか」
という試みでした。
まだ統計処理はしてないのですが、一つの類型として「誰かが自分と同じ苦しみを味あわずに済むために話す」というのがあります。あのんさんもこの中に納まるのではないかと思います。
この心性というか、この心的経路をどう評価すべきか、なんてところまでは行きつけてないのですが、ぱっと思いつく似た現象としては、太平洋戦争時の原爆被害者たちが、戦後の原発推進、すなわち原子力の平和利用側にまわったことですね。自分たちを苦しめた力を、どうか平和に使ってほしいという願い。
これが、人間に原初から備わっている社会的機能としての語り部本能なのか、それとも自分の恐怖を和らげるためのヒーリングなのか、まだ皆目見当がつかない。
ただ、自分自身の恐怖を和らげるために話すという行為とは別に、多くの人に自分の経験を伝えて、それを社会資源にしたいという願いがあるのは確かなのではないかと。仮説。
内面のナラティブと、外の世界のストーリーを組み込もうと、織り込もうと、綾を成そうとしていこうとする人間の心象世界挙動が透けて見えるように思っています。
次回もまた会おう。

編集協力:有島緋ナさん 5周年さん

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