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復職と人インタビュー きさい-004 2024/01/22

このインタビューは、復職しようと考えている人間(当初はそうだった)が、でもやっぱり違うと思って大学院進学に向かうということの、心情を語っているものです。
今回で最終回。
これが、参加いただいたきさいさんからのメッセージ。

約4か月、休職してもんもんと、自分に何ができるだろうと考えた人の結論。
まえがき:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

過去記事はこちらから。


状況

qbc:直近ではどんな変化がありましたか?

きさい:先日、1回目の院試が終わりまして、今は合格発表待ちです。
院試は、普通の大学入試とかのニュースだったら明らかに勉強不足の状態で受けたけど、今年駄目だったら来年もう1回かな、と考えてるところです。学校の方はそんな感じで。

qbc:お仕事のほうは?

きさい:勉強時間を確保するために転職しました。
今までずっとディレクターで総合職だったんですけど、やっぱり自分自身があんまり総合職的なキャリアを望んでなかったのと、勉強時間を確保したいっていうのがあるので、週の出勤を2~3日ぐらいから組めるシフト制のデザイナー職に変わりました。っていう感じですね。なので結構、前回からは状況が変わりました。

qbc:おお。

きさい:動き出したって感じです。

qbc:今の気分はどうですか?

きさい:転職活動してるとき、すごい不安だったんですよ。これでいいのかというか。
あなたのスキルではどこにも行けないですし、そんな都合良く、勉強しながらっていうのは難しいですねって言われたらどうしようとか、実際それに類することを言うエージェント会社もあったので。

このまま、ただ勉強してるっていうのを言い訳に何もしてない人になったらどうしようみたいな不安がすごくあったんですけど。結果的に落ち着いて、とりあえずのポジションが定まったら、今が一番いい状態だと。
仕事でもやりたかったことやってるし、仕事以外の残りの時間は別のやりたいことに挑戦する時間として使えてるっていうのは、すごく、自分自身が健全な感じだと感じてます。

私は、人の上に立つのは本当はあんまり好きじゃなくて、ただどうしても学歴的に、どうしても総合職ポジションを任されがちで。具体的な作業は他の人にやってもらって、判断とか進行とか交渉をするポジションをちょっと任されがちだったんですけど。

個人としては、とにかく手を動かして何かを作ってる時間だけが幸せで生きてきたので、そこのズレをずっと感じていて。ただ指示とか進行を任せてもらえる分には、信頼されてるんだなって思って嬉しかったんですけど。信頼とかじゃなくて本当に根本的にできてないっていうシチュエーションが、前職のとき結構あったので、もう嫌だなと思ってて、次仕事を変えるならもうこれは2度とやらないなみたいな。

どうせ出世したらまたやんなきゃいけないとか、いろいろあるんだと思うんですけども、当面は目指さなくていいなっていうのがすごくあって。とりあえずただただ手を動かすポジションにつけたのが、今すごい一番嬉しいです。

したいこと

きさい:今一番思ってるのは、もともと外国文学の翻訳がしたいっていうのを、若い頃から思ってたので。今、圧倒的に語学力も、そういうお仕事を回してもらうつてもないので、修士の期間は、そういうコネクション形成と実力をつける練習期間だっていうのを、すごく思ってます。

その一方で、自分で文章を書く方のセンスがあるっていうのを、当時の指導教官に言われていて。正直あんまり研究書みたいなものを書くことには興味がそれほどないので、センスあると言われても書きたいものないですけどっていう状態なんですけど。もしかすると、書きたいものはやってたらできてくるかもしれないので、それも得意って言われたんだなっていうのをぼんやり念頭に置いてます。

一番は本当に語学力を伸ばして、業界に詳しくなりたいっていうことですね。出版業界というか、外国文学出してるところの版元とかに、大学の先輩だとか、先生の友達だとかっていう知り合いができたら、その後自分がやりたいことに繋がっていくかなっていうのを考えてます。

でも、大きくは前向きなんですけど、あんまり目の前のことは考えないようにしてるみたいな感じですかね。

qbc:なるほど。

きさい:試験までは明確な目標があって。それに向かって、ペース配分して走れるっていう、ある意味なんかマラソンの途中みたいな状態で。毎日これやるぞ、よしやったっていう達成感が得られて、それはすごい楽しかったんですけど。

終わった瞬間、燃え尽きじゃないですけど、急に目の前の目標がなくなったことによる、ちょっと鬱っぽい気分になって。本当にこれでいいのかなとか、この先に本当にやりたいことあるのかなみたいなところから、瓦解して。えっ何しよう今の空き時間、って。もう勉強することないのに、今余ってる時間、何をしたらいいんだろう。今更、何か楽しいことをしようってやっても、今やりたいのはこれだって目標を勉強の方で掲げちゃったばかりに、他のことは全部現実逃避に思えてしまうみたいな時間が急に来て。

今は、そこから普通に日常に戻ろうとしている過渡期ですね。あと2週間ぐらいはこれが続くかなと思います。

qbc:経済的なところは、2~3日働くだけで、大丈夫なんですか?

きさい:大丈夫です。というか、とりあえず、働いてさえいれば、周りが資金面は割と支えてくれるので、そこはあんまり心配してないです。それもどうなんだっていうのは、我に返ると思うんですけど、もう考えないことにしてます。考えると深みにはまっちゃうので。何とかなるって思いながら生きてくようにしてます。

qbc:引け目、感じてらっしゃるんですね。

きさい:引け目は全然感じます。感じるというか、今は頑張ってる途中だから許されると思ってます。なんていうんでしょう。でも、何だろうな。最終的にやりたいことができたら、気にならないような気もしますね。

未来に

きさい:最近の思いとして、漠然としてるんですけど、「ひとかどのものになりたい」みたいなのがあって。何かの分野で、これは自分が成し遂げたことだっていうのを、胸を張って言える状態にしたい。あるいは、今自分が意義を感じられることに取り組んでいる。多分、こっちの状態の方が大事ですね。自分が、心からこれは意味があるって思えることに取り組んでる状態を作りたいと思ってて。

今は、なんていうんだろう。これぐらいならいいか、みたいな感じなんですよ。
一生懸命毎日やってるんですけど、満たされ方の水準が、こんな感じでいいかみたいな感じなんですけど。じゃなくて、私の中で本当はもっとこういうことの方が価値があると思うのにっていうことがたくさんあるので。qbcさんの無名人インタビューみたいに、それに本気で取り組んでる状態を作ったら、自分が本当に価値を感じてるもののためだったら、多少犠牲になるものがあってもいいって思えるって思うんですね。

私にとって、それが一番思えてるのが、今のところ翻訳業とか。国外だったり小さな声だったりして、あんまり世の中には行き届いてないものを、自分が架け橋になって届けるみたいな役割に、一番多分興味があると思います。

いや、あんまりそこは考えてないというか。自分が満たされた状態であれば、絶対誰か認めてくれる人はいると思っているので、それでいいって感じですかね。自分の周りに自分が尊敬できる人はもう集めてる、元からたくさんいるし。そういう人たちに胸を張って、今自分はこういう感覚を持ってこういうことをやっててっていうことを説明できて、それはいいねって言ってもらえたら、それはもう私の中で水準を満たしてる、という感覚です。

qbc:うん。

きさい:私、自分のもっとできることを放置してるみたいな感覚で、ずっと生きてるので。

社会に出てからぐらい、周りの友達にもっといろいろやってると思ってたって言われて。一番言われるのは、本の仕事なんですけど。本の仕事してると思ってたのにしてないんだっていうことを、割と複数名からバラバラの時期に言われていて、それが一番心残りというか。

やるやらないは置いておくにしても、まずそれに向かって頑張るってことが自分にできるのかどうかっていうのが、ちょっと気になってるんですね。周りにそんなに言われるっていうことは。私は、自分のことを割と本好きの中では標準的な方というか、そんなに変わったところもないつもりでいるんですけど、周りからはそうではなく見えるらしいので。っていうことは、ちょっと周りから見たら生かせる能力が浮いてるように見えるのかなっていうのが結構ずっと気になってて。

実際自分がそれをやり続けるかは別にして、まずチャレンジしてみるということ。それで、すごい自分が意義を感じられるんだったら続けてみたらいいし。やっぱり違うなって思うんだったら、今やってる、物を作ったりする方の仕事に重点を戻していけばいいという思いで、今はやってます。

qbc:今日で、この「復職と人」というシリーズインタビューを終わりにしようと思っています。最後に言い残したことはありますか?

きさい:多分、まだちょっと周りと比べて焦ってしまう癖が残っているっていうのを言おうと思ってました。

今、大学のときお世話になった研究室に戻ろうと思ってるんですけど、そのときに同期だった子とか、先輩にいた方とかに、すごく優秀で熱心な方が多かったというか。最初からわりと自分はそれよりも下だって決めて接していたので。最初に会ったとき、こんなに好きで頑張ってる人がいたら、自分はこの道極めるのには向いてないやっていうのが、ファーストインプレッションにあったから、一度も多分その道考えなかったんですよ、私は。

多分今は、先を進んでるすごい人って、頭の中で片付けちゃってるけど、また身近にそういう人たちがいるようになったときに、果たして自分は目の前の勉強を頑張って、自分の好きなことを仕事にしてっていうことができるのか。また結局、自分はその人たちに比べたら全然できてないから、やらなくていいやって心が折れちゃう瞬間が来るんじゃないかっていうのは、ちょっとずっとうっすら不安に思っていて。

ただ、学生のときよりも断然そこは心折れなくなったなっていうのは思ってて。複数の仕事をしたのもあるので、何が自分にとって良くて、何だったらどんな気分で頑張ったらうまくいくのかっていう法則性が、10年前よりも全然つかめてるので。そこを、不安になるときがあったらうまく外に出し、時には周りに支えてもらいつつ、とりあえず自分が頑張れるのかどうか、自分がこの分野で頑張れるのかどうか、人と比べてじゃなくて、自分の頑張りとしてわかるところまではやってみたいなと思ってます。

qbc:読んでいる読者に、メッセージをお願いします。

きさい:「自分にはこれはできない」と思ってる人に、メッセージを送りたいですかね。自分には何か興味があることとか、気になることがあるけど、それは他の人がやることで自分にはできないって思ってる人って、たくさんいると思う。むしろマスだと思うんですけど、それが。

私が今回、デザイナーに転職したのと、大学院をとりあえず受けたところまで、すごく思ってるのが、意外と、できるかできないかじゃなくてやるかやらないかで世界って回ってるみたいな感覚があって。もちろん能力で測られたり、当然人からは他人と能力を比較して選ばれたりするわけなんですけど。単にやるということを選んでないから、そこに引っかかってないだけっていう、実力のある人っていうのは世界にはたくさんいるし。

案外、世界の法則って、興味があるっていうだけで適性があるというか。
やりたいですって手を挙げたら、回る場所が必ずある。やりたいですって言っても、あなたは駄目って言われるのは、割と環境の問題だったりするだけ、環境との相性であったりするだけで。目指したいことに対して自分の適性がないわけじゃないっていうのは、すごく1年で感じるようになりました。

やりたいです、やりますって言って、やりたい気持ちのままに勉強していたら、気づいたら普通にそれを専門にやっている人レベルになれるんだなっていうのが、実感としてあるので。それは、自分にはできないと思って最初から諦めちゃってることがある人みんなに。もしかして自分がそう思ってやってないだけじゃないって、そう思ってもらいたいなって、思います。

qbc:ありがとうございました。

終わりに

4回のインタビューの中で、この最後のインタビューが、一番すっきりした心持でお話してもらった気がします。
悩んでいたものが晴れて、目の前のことが決まると、やはりすっきりするんだよねと。

過去記事はこちら。同じ休職中の人の参考になればと。

きさいさん、ご参加、ありがとうございました!

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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