短編小説「カツサンドの慟哭」
許せなかった。チーズバーガーを選んでしまった自分が。
「なんでよ」
悲しげな表情でそう漏らした君の手は震えていた。最低だってことはわかってる。君に対する裏切りを平然とやってのけた自分が憎いはずなのに、許せないはずなのに、僕はチーズバーガーを口に運んだ。
「こうするしかないんだ」
僕は君に背を向けた。罪の意識に耐えられずに逃げた。罪を認識しているのに改めようとしない人間になってしまった僕に、君の目に映る資格はないから。
必死でチーズバーガーに齧り付く僕の目から涙がこぼれ落ちた。君に背を向けてよかった。泣いてるところは見られたくないから。
なのに僕は涙を掬った。流していれば泣いていることは気付かれないのに。でも掬った。だって、チーズバーガーがこれ以上塩っぽくなったら、台無しじゃないか。
真冬の張り詰めた空気に、君の慟哭が伝わってきた。時間が崩れて消えた。
ー完ー
書いた人 : 脳溶け夫
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