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2024関東大学ラグビー春季大会Aグループ:帝京対法政を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
かなり外が暑くなってきた中、いかがお過ごしでしょうか

今回は4/18に行われた関東大学ラグビー春季交流大会Aグループ、帝京大学対法政大学の試合についてレビューをしていこうと思います

それではまずメンバー表から

次にスタッツです

それでは順番に見ていきましょう


帝京のアタック・ディフェンス

帝京のアタックシステム

帝京は当然のようにFWの選手が強烈なキャリアーということが挙げられますが、それと同じくらいBKの選手にも強烈なキャリアーが揃っているように思います
コンタクトの強さ単体で見ればより強い選手が他のチームにも揃っているかと思いますが、ランニングスキルとのバランスやパスワークを含めた「駒を動かすことのできる能力が高い選手」が帝京には揃っている印象ですね

主なアタック形式としてはSO役の本橋選手を絡めた10シェイプが比較的多く、8番のダウナカマカマ選手をキャリアーとして有効活用したアタックを繰り返しているような印象です
細かい回数に関しては後述しますが、回数的に見ると9シェイプが多く放っていますが、9シェイプはゴール前のようなこだわったキャリーが必要なシーンで回数を重ねており、中盤からゴール前への進入までは10シェイプを好んで用いているように感じられました

ゴール前の9シェイプを中核としたアタックはとにかくテンポが早く、9番李選手も21番上村選手もかなり速さを意識したパスワークをしていたように思います
それを可能にしているのは帝京のサポート選手のオーバーの質によるところがあるかと感じていて、キャリアーとの距離感や相手を完全に越え切るオーバースキルも含めて「ラックに圧を加えてくる相手選手」を完全に排除することによって相手とSH役の間に広いスペースを作り出し、パスワークを容姿にしている節があったように見えました

SH役の選手の動きも帝京のアタックに貢献する要素があり、法政がラック付近を少し切るようなディフェンスにしていたこともあってラックの周囲 ー一般的には0.5chと呼ばれるようなエリアー に少し脆弱性があったため、そのエリアにSHが少しでも仕掛けるような様子を見せることで大きな崩しができていたシーンも散見されていました
李選手も上村選手も一定のギャップがあれば前に仕掛けることができる選手なので、そのギャップからそのままSHが前に出るシーンもありましたね

アタックのイメージとしては中央エリアは手堅くポッドを中心とした「複数人のグループ」でアタックを重ね、相手が寄ったシーンやディフェンスラインの構築が遅れたタイミングでただでさえ早いテンポをさらに加速させ、空いたスペースをBKの選手で強襲するようなシーンが多かったように思います

中央エリアにはタイトファイブのような体の強い選手を固め、15mラインからエッジまでのエリアには6番福田選手や7番の青木選手のような「キャリアーとしての強さ、速さを兼ね備えた万能型のFW」を配置し、ギャップをより高い精度で攻めることを意図していたように思います
福田選手も青木選手もコンタクトからグッと前に出ることができますし、相手を一度弾くことができれば大きく前に出ることができる走力もあるので、適材適所になる配置であるように感じますね

帝京のキャリー

強烈なキャリーが目立つ帝京ですが、昨シーズンに比べると少し10シェイプでのキャリーが増えているようなイメージもあったように思います
まだ試しながらの様相もあるので1試合を通して多いわけではないかと思いますが、本橋選手を絡めるアタックが多かったように見えました

コンタクトシーンでは合計で30回のディフェンス突破数と、相手をコンタクトから突き崩すシーンが多かったのは事実かと思います
ただ弾くだけではなく、いなしたり、スピードで振り切るようなシーンも多かったですね
スピアーズの江良選手やヴェルブリッツの奥井選手のような「相手を弾くことに重きを置いたコンタクト」をするような選手は少し減ったように思いますが、青木選手のような圧倒的な個の強さを誇る選手や福田選手のようなスピードで振り切ることのできるFLがいる強みはいまだに残っていますね

キャリー数としては前後半合わせて89回と、極端な多さはなかったのではないでしょうか
こちらに関しては試合全体を通じて両チームミスが多く、結果的におそらくボールインプレーが短かったことが影響しているかと思います
法政側と合わせても150回程度と、お互いにボールを動かしきれていなかったようにも感じました

その中では9シェイプでのキャリーが26回と最も多い数値となっており、10シェイプは12回となっています
誰が最も多くキャリーをしていたかといったデータは取っていなかったですが、ダウナカマカマ選手や本橋選手のような昨シーズンからある程度のゲームタイムを経験している選手が中心となってポッドの中核をになっていましたね

シェイプから外れたキャリーでは中央エリアで13回のキャリー、エッジエリアで16回のキャリーが生まれています
この数値に関しては決して均等なキャリーエリアを示しているというわけではなく、数値に表れない傾向としてはかなり外がかりのキャリーだったように思っています
中央エリアのキャリーとしてカウントしたものの中でも15mにかなり近いエリアで生まれたキャリーもあり、総じて外重心だったように感じました

このような傾向になった理由としてはアタックシステムの項でも説明したように「中央はポッドを使ったキャリーが多い」ということが挙げられるかと思います
時々自分でのキャリーにも優れた本橋選手が自分で仕掛けるシーンがありましたが、パスを回すフェイズでは外まで回し切るような様相があり、グラデーションというよりかは明確に外と中を攻め分けているように見えました

帝京のパス

パスに関しては総じて安定感はあったかと思いますが、一部のパスワークの中で荒れている様子もありましたね
実力的には若干の乖離があるチームとの試合ということもあってか、少し雑とも取れるようなプレーシーンもあり、無理につなごとうとして安定したパスワークにならなかったようなパスもあったように思います

ラックからの投げ分けに関して見ていくと、9シェイプへ27回、バックスラインへ17回のパスが生まれています
ゴール前でのアタックで稼いだ分もあると思うので、大きな傾向としてはほぼ似たような比率でFWとBKに投げ分けているように感じました
ラックが安定していることもあってラックからのパスアウトの時点で生じたミスは少なかったように思います

バックスラインに渡ったパスは12回が10シェイプへ、16回がバックスライン上でのパスワークとしてつながっています
バックスラインでのパスワークはフェイズ内で生まれたものを全てカウントしてるので、1回のフェイズで細かくパスを繋いだようなシーンは少なかったように思います
ワンパスで大きく動かしたシーンもあり、外まで回したらそのまま外の選手が勝負するような状況が多かったと思うので、パス回数が積み重なることがなかった感じですね

昨年度までのイメージと異なるのは9シェイプからバックドアへのパスが今回は一度もなかったことでしょうか
現在も在籍している本橋選手をはじめとして帝京の選手はスイベルパスと呼ばれる裏に立つBKの選手へのパスワークを得意としている印象があったのですが、一度も見られなかったのは正直意外でした
本橋選手も一般的なスイベルパスをもらうようなコースで動くシーンは少なく、ポッドとラインでのアタックには連続性はそこまで感じられませんでした

あとは「その他」にカテゴライズされるようなパスが多かったのもある種の特徴でしょうか
これに関しては少し荒れたパスも多かったことが影響しているかと思うのですが、崩れたシーンで繋ぐパスも多かったからかと思っています
普通であればそこでリズムが崩れるようシーンでも普段通りの試合展開に持ち込むことができるのも、ある意味帝京の強さですね

帝京のディフェンス

タックル成功率単体を見ると81%となっており、数値的には少し物足りないくらいになるかと思います
実際のゲームシーンを見ると弾き飛ばされるようなディフェンスは少なかったものの、少しずれが生じていたり腕を弾かれたりしてディフェンス突破をされるようなシーンが散見されており、結果としてミスタックルになっているような状況が多かったように思います

全体的にポジショニングに関しても昨年度のような精度には至っていなかったような印象があり、特に中央エリアから少し外のエリアにかけてでFWとBKの選手間などにギャップが生まれていたようにも見えました
法政がそのエリアをうまくつくことができていなかったシーンもあって致命傷にはなっていませんでしたが、そのあたりを確実にチャンスにしてくるようなチームを相手にした時は少し厳しい試合になりそうな様相ではありました

一方でタックルレンジの広さは目立っていたように思います
決して飛び込んでいるというわけではなく、足がしっかりついていく範囲内で体の動きを大きく使って相手を仕留め切っている感じですね
ディフェンス傾向として外の選手が少し外から被るような動きをしていたようなシーンもあり、相手選手を複数の選手のタックルレンジの中に追い込む追い込み量のようなディフェンスをしていたということもできるかもしれません

また、ブレイクダウンへのプレッシャーに関しても強烈なものがあり、もちろん青木選手のように1人でなんとかできてしまう選手の存在も大きかったとは思いますが、「圧をかけるか」「ダッシュを狙うか」「捨てて開くか」の判断水準に非常に高いレベルを感じました
仕掛ける時は複数人で確実なプレッシャーをかけ、仕掛けない時はタックルから起き上がった選手も含めてミスなく素早くライン構築をしていたように思います

法政のアタック・ディフェンス

法政のアタックシステム

法政のアタックシステムについては、まだまだ整備されていない感じはありましたが、大まかなレベルでは9シェイプを中心にした一段階の階層構造で、アタックのテンポでチャンスを狙うようなアタックシステムをしていたように感じます
詳細は後述しますが、ポッドをかなり重点的・意識的に用いている様子があり、表裏を作って崩そうとするイメージはあったように思います

一方でラックでのプレッシャーを受けてボールのパスアウトが遅れたり、帝京のブレイクダウンへのプレッシャーを受けてボールをうまく出せなかったりと少し安定感に欠けるような状況も散見され、春先ということもあってまだまだ発展途上というイメージも感じさせました
昨シーズンに重要なキャリーをになっていた選手が抜け、一部の主要選手も出ていなかったりと、「どこでキャリーにこだわるか」は少し不明瞭だったように思います

また、10シェイプに関しても好んで用いていたような印象があり、アタックがうまくいっていたシーンの多くは10シェイプから作り出されていたようにも思います
昨シーズンも10番の金選手は出場経験があり、ゲームのコントロールという点ではうまくチームを回していたように見えましたね
帝京のディフェンスラインのうち「FWとBKの境目」の部分に若干の脆弱性が生まれていたこともあって、ちょうどのそのエリアを10シェイプが仕掛けることができていたような感じです

一方でアタックラインを広く使うようなアタックはそこまで見られることはなく、多くてもツーパス圏内でキャリーが完結しているシーンが多かったように思います
CTB陣のうち13番の炭竈選手のキャリー水準が向上したこともあって中盤に脅威が生まれ、端から端までフィールドを広く使うようなフェイズを挟まなくとも中央付近でチャンスを作ることができていたシーンがあったのも影響しているかもしれません
11番の小林選手の利き足が左足ということもあってフェイズをキックで締めることもできますしね

逆にいうと、意図的ではないシーンでパスが繋がったシーンも少なくなかったように感じています
パス自体が荒れているフェイズが多く、意図しない選手に渡ったり、アタックラインにモーメンタムを生み出すことができないような位置にボールが飛んだりするような感じですね
とはいえ、不要なパスはそこまで多くはないと思うので、プレッシャーを受けたという点を除けばアタックは方向性が見えてきていたかと思います

それに加えてラック内でのボールコントロールも不安定だったように見えていて、帝京のプレッシャーもあってか倒れたキャリアーがボールをうまくコントロールすることができておらず、ラックから溢れるようにボールが動いてしまっていたシーンが散見されました
前半は特にラックに人数をかけなければいけないシーンも多く見られていたので、サポートが遅れているような様相はあったかと思います

法政のキャリー

一人一人のコンタクト水準でいうと、少し帝京サイドのキャリアーの後塵を拝するような形になっていたことは否定できないかと思います
特にフロントローの選手のコンタクトシーンで相手に上回られていたようなシーンが多く、余裕を持ってフェイズを重ねることができていなかったような状況も多かったかと思います

体の使い方の部分でそこまで大きく突き放されているような印象はなかったのですが、どちらかというと細かいディテールの部分で帝京のうまさが上回っていたような感じですね
体重の要素もそうですが、帝京の選手はコンタクトの瞬間のインパクトのタイミングが上手いように見受けられ、法政の選手は少し惰性でコンタクトをしてしまっているように見えます

一方で13番の炭竈選手は昨シーズンに比べてキャリーのレベル感は上がっていたように思います
元々ずっしりとした体型の選手ですが、今シーズンは昨シーズン少し不足していたように思えていた「機動力」の部分で傍目には向上が見られています
走力が上がった事によってコンタクトに使えるエネルギーが増加し、ヒットのディテールも改善しているように見えるので、相手とコンタクトした瞬間のインパクトは昨シーズンを大きく上回っているように見えました

8番の佐野選手も昨シーズンから出場機会のある選手ですが、こちらも機動力があるように見えますね
昨シーズンはレッドドルフィンズの高城選手が主に担うことの多かったNO8のポジションを務めるだけあってコンタクト水準も向上が見られ、それに合わせて機動力が優れているので、高城選手とは少し違う「スピード型のNO8」のスタイルの片鱗を見せていたように思います

キャリー回数を見ていくと、前後半合わせて61回となっており、帝京と比べると30%強キャリーが少ないという結果になっています
ポゼッション自体も差があったようには感じましたが、法政の方が少しパスが嵩んだ結果キャリー間のリズムがずれていたような様相もあったかと思います
全体的にどこでキャリーをするかといった部分でのディテールが詰めきれていないような印象もあり、少し選手ごとにバラバラの方向を向いているようにも感じました

細かくキャリーを見ていくと、9シェイプでのキャリーが14回、10シェイプでのキャリーが6回と、全体の1/3くらいがポッドを用いたキャリーとなっていますね
そもそものイメージで法政はポッドを意識的に組み立てているような印象もあったので、そこまで印象と異なる結果ではないといった感じです

シェイプ外のキャリーを見ると中央エリアが17回、エッジエリアが6回となっており、全体的に中央エリアでのキャリー密度が高いということができるかと思います
試合を見ていたイメージレベルでも大外までパスを回し切るようなシーンはそう多くなかったように見えたので、イメージ通りの範囲ですね
ポッド偏重のラグビースタイルということもあるかと思いますが、幅のあるパス回数が少ないということも影響しているような気がしてくる数値かと思います

法政のパス

キャリー・パス比はほぼ2:3となっており、数字的にはかなりバランスの良いアタックをすることはできていたと言えるかと思います
一方でアタックの質的な安定感には欠いていたようなイメージがあり、帝京のプレッシャーとは関係ないところでのミスもいくつか見られていたように感じました

パスを細かく見ていくと、ラックからのパスは22回が9シェイプへ、12回がバックスラインへと展開されており、それに加えて6回のバックドアへのパスが生じています
前半に限っていうと8回の9シェイプへのパスに対して4回がバックドアへのパスとなっていることから、前半はかなり表裏を使いながら崩そうとしていたということができるかと思います
後半は14回の9シェイプへのパスと2回のスイベルパスなので、後半にかけて少しずつ戦略的発想がシフトしていったともいえますね

バックスラインへと回ったボールは5回が10シェイプへのパス、13回がバックスライン内でのパスワークとなっています
全体的なパス傾向や試合に視覚的イメージから見ると、これに「少し崩れた外方向へのパス」もあるので、数値以上には外に回そうとする意思はあったように思います
後半は10シェイプへのパスが1回となっているので、9シェイプへのパスワークの傾向と同じように、少し安定感のある戦略的なイメージにシフトしていった結果かもしれませんね

法政のディフェンス

帝京もなかなか渋い数値を示していましたが、法政もタックル成功率に関しては結構苦労していた印象で、回数的には5回に1回がミスタックルになっているという状態です
帝京と同水準とはいえ、ラインを前に上げる傾向からか後ろ側のカバーが手薄になっており、ミスタックルが被スコアにつながっていた様相もあるかと思います

ロータックルにいって外されるシーンというものはなく、立ち位置としては問題なくタックルをすることができるような状況にはあったと思うのですが、相手の芯を捉え切ることができずに少し軸がずれてしまっているようなタックルが多く、結果として振り解かれたり弾かれたりするようなタックルが多かったように感じましたね
スピードで手を弾かれるようなコンタクトシーンも多く、一つ一つのシチュエーションで上回られていたように見えます

ディフェンスを時間軸で見ていくと、ある程度の時間帯まではディフェンスでグッと前に出ることができており、しっかり体を張ることもできた甲斐もあって相手のキャリーを押さえ込むことはできていたと思います
時間経過とともに帝京のパス感覚にも馴染み、詰める際のリズム感があってきたようにも見えています
一方で終盤にかけてラインに立っている選手間のギャップが開いてきているようにも見え、整備が遅れてきている様子もありました

また、セットピースで後手に回ったのも失点の要因としては大きかったですね
前半こそかなり優位にスクラムを進めることができていたものの、帝京側のメンバー交代を挟んで押し込まれるシーンが増え、最後のトライシーンを代表とした完全にあおられるシーンが散見されていたように思います
モールを確実にトライに繋げられていたのも渋かったですね

まとめ

グループAとしての初戦であり、両チームともの主力の卒業に合わせて新戦力や力を蓄えてきた選手たちの活躍の場になったと思います
そんな中帝京がチームカルチャーとしての攻守の安定感を示した一方、法政は攻守ともに安定感を書いたような試合展開となってしまい、結果として大きくスコアを離されるような状況になりました

とはいえ、王者である帝京も万全の試合運びとはいえなかったように見ています
昨シーズンまでのゲームタイムの短い選手に関する安定感が不足しており、まだまだ「お互いに対する意思疎通」の水準が昨シーズンのレベルに至っていないようにも感じました
実力者は両チーム揃っていると思うので、ここからの5ヶ月間ほどが勝負になってきそうですね

今回は以上になります
それではまた!

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