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2023大学ラグビー関西リーグ:立命館対摂南を簡単な数字で見てみた

みなさんこんにちは
少し更新頻度は下がってしまっていますが元気です

今回は10/29に行われた関西大学リーグ、立命館大学対摂南大学の試合についてレビューしていこうと思います

それではメンバー表から

次はスタッツです

順番に見ていきましょう


立命館のアタック・ディフェンス

立命館のアタックシステム

一般的にバックドアと呼ばれる、FWの裏に立つBKのセンスへのパスを用いることが比較的多いチームということができるかと思います
詳しくはパス回数の項目で述べますが、FWの選手のチョイスの中に占めるスイベルパスの割合は一般的なチームよりも多かったように感じました

一方でFWで構成されるフロントラインのスピードはそこまでなかったので、相手のディフェンスとしては若干流してディフェンスがしやすかったようにも見えました
パスキャッチのところの精度も難がありそうだったので、スムーズなキャッチからアタックにつなげるというところまでは至っていなかったのではないでしょうか

ただ、10番の森選手のバックドアでのもらい方はうまく、少し流れながらも立て直すだけのスキルがあり、バックドアでもらった後に展開することも自分で走ることもできる状態だったので、アタックのバリエーションが広がりやすくなっていたかと思います
複数フェイズ時のアタックライン自体はシンプルだったので、森選手の動きによってアタックのテンポが変わる様相もありましたしね

戦略的なキック様相はそこまでなく、エリアの取り合いで用いられていたLongとペナルティが起きた時に条件反射的に用いていたPuntが主なキックの種別になるかと思います
キックの距離自体はそこまで全力で蹴るシーンがなかったこともあってあまり長さが出ておらず、摂南との蹴り合いではイーブンといったところでしょうか

ラックにかける人数に関してはかなりきっちりと規定している印象で、おそらくは厳密に「オーバーを2人以内で完結させる」というルールが指導の中でもこだわられている部分のように見えました
もちろん3人以上人数がかかってしまっていたラックもありますが、基本的に2人以下で完結させることのできたラックがほとんどで、テンポもSHの北村選手を中心に速め〜少し速めくらいのあたりでコントロールされていた印象です

立命館のキャリー

キャリーに関してはうまくDefenders Beatenを起こしながら順調に前に出ることができていたかと思います
前半スコアできなかったのは圧倒的に摂南側にボールを持たれていたからだと思うので、立命館としてはボールを持つことさえできればスコアにつなげることのできる感覚はあったのではないでしょうか

特に目立ったランナーというのはそこまで気になりませんでしたが、バックスリーの選手は程よくボールをもらってちゃんと前に出ることができていたかと思います
特に両WTBの三浦選手や吉本選手は極端にステップやスピード、パワーが優れているというわけではなさそうでしたが、タックルを受けても前に出ることができていたり、姿勢を崩しかけても立ち直すことができるだけの体の強さは兼ね備えていたように見えました

一方でFWの選手の部分では摂南の体の強さを生かしたディフェンスに少しやり込められていたように見えるシーンもあり、シェイプを用いて前に出ることはそこまでできていなかったように感じます
実際9シェイプは多く用いられていたキャリーの種別ですが、9シェイプの先頭に立った選手のハンドリングがうまくいかず、いわゆるハンズキャッチができずに姿勢がうまく作れないままコンタクトに至ったシーンなども見られました

回数を見ていきましょう
キャリー全体で見ると前半は28回で後半は65回と、後半にかけて倍以上のキャリー回数を示しています
後述しますが摂南は後半にかけてキャリー回数が半減していたので、前後半でポゼッションの割合が極端に変わっている珍しい試合展開だったように思います

種別で見ていくと9シェイプでのキャリーが25回、10シェイプでのキャリーが8回と、前後半合わせてポッドを用いたキャリーが33回見られています
回数的には全体の30%を占めていますが、一般的な試合傾向と比べるとアタックに占める割合はそこまで多くないかと思います

一方でシェイプ外のキャリーのうち中央エリアでのキャリーが20回エッジエリアでのキャリーが19回と、合計で40回近くのキャリーがシェイプに沿わない形でのキャリーとなっています
またオフロードも何度か見られていることから、純粋にラックから出たボールをシェイプで当てるだけ、というわけでもなさそうです

立命館のパス

パスワークは先述したようにシェイプ外でのパス回しを中心に表裏を使ったアタックをかなり意識しており、比較的外方向へのボール運びを目指した試合展開をしていたように見えました
バックドアへのパスワークは前後半合わせて12回と全体のパス回数のうち1割を若干下回る程度には使われていたので、意識の薄いチームと比べると割合的には多かったように感じます

パスを出す側の精度は極端に悪いといったことはなかったかと思いますが、受け手側のクオリティが若干低いシーンが散見されており、特に9シェイプにおけるポッドの先頭に立つ選手へのパスにおいて、受ける選手が原則したりスムーズな捕球ができないようなシーンが見られていました

回数を見ていきましょう
キャリー・パス比は大体2:3となっており、一般的な傾向からそう外れていない比率になっているかと思います
キャリー回数もパス回数も後半にかけて増加していますが、キャリー回数が倍増しているのに比べるとパス回数の増加は緩やかなものになっていることから、後半は経由するパス回数の少ない「ダイレクトプレー」のようなキャリーが増えていたのかもしれません
実際、オフロードを受けた選手がそのままキャリーするといったパスを複数回行わないキャリーも何度か見られていました

細かく見ていくと、ラックからのパスワークとしては9シェイプへのパスが29回でバックスラインへのパスが22回と、9シェイプが多いながらも一定の割合でバックスラインへのボール供給が行われていることがわかります
決してFW一辺倒のチームではないということができますね

また、BKに展開されたボールの行き先としては10シェイプへのパスが9回でバックスライン上でのパス回しが26回となっていることから、比較的外方向にボールを動かす傾向があるということができるかもしれません
ただ、キャリーの回数を鑑みると中央エリアとエッジエリアでのキャリー回数に大きな乖離がないことから、外と言ってもいわゆる大外と呼ばれるような15mラインよりも外のエリアに必ずしもボールが到達しているわけではないかと思います

立命館のディフェンス

ディフェンスのクオリティは、もちろん相手あってのものであるとは思いますが、極めて高いクオリティを示しているということができるかと思います

タックル成功率はもとより、注目していきたいのはタックルの質です
タックル成功率が高いチームは時として相手に差し込まれているシーンというのも多々見られるものですが、立命館のタックルは、全てではないですがいわゆるドミナントタックルと言われるような相手に刺さるようにタックルをしているシーンが何度も見られており、タックルスキルにはこだわりがあるように見えました

回数を見ても相手のキャリー数の1.5倍ほどのタックル数が見られていることから、ダブルタックルも一定数起こすことができていたことがわかります
ダブルタックルにおいても前方向にプレッシャーをかけることができており、極端に前に出られるシーンはそこまでなかったように思います

ただ、相手のジェネラルアタックに対するディフェンスの部分で、摂南のアタックラインに対してそこまで前に出ることができていなかったように見えるシーンもあり、結果的にはスコアに繋げられるシーンもあったところが今後の改善点になるかと思います

摂南のアタック・ディフェンス

摂南のアタックシステム

いかに強い選手にボールを回すか、と言ったところが目立ってくるようなアタックの方針に見えました
詳細は後述しますが、摂南のアタックでキーマンとなるのは5番のトゥポウ選手・11番のカストン選手・13番のサポイ選手で、極端に目立っていたわけではないですが比較的ボールタッチの回数は多かったように思います

そのため彼ら3人に渡そうと工夫しているシーンが多く見られ、特にカストン選手に関しては基本的に外のエリアにいることの多いWTBの選手でありながら中央エリアでのキャリーが多く、自分の意思でボールをもらいにいくシーンが目立っていました
トゥポウ選手はもちろんFWのポッドとしてのキャリーが多かったのですが、普段はNO8を務めることも多いサポイ選手が今回の試合ではCTBを務めていたこともあり、ポッドにサポイ選手が混じるシーンも多かったように思います

システム的に見るとそこまで整備されている印象はなく、ポッドの選手が規定された人数で固まっていたり、特定のエリアに固まっていたりと言ったシーンはほとんど見られませんでした
一応は1−3−3−1チックな構成で考えているように見えましたがポッド間の境界線も曖昧で、20m幅のエリアに6人ほどの選手が立っているシーンも何度か見られたように思います

アタックのフローとしてもポッドをきっちり当ててアタックを組み立てるというよりかは強い選手がキャリーする回数を増やしているように見え、シェイプも毎回作っているというよりはSHの判断で当てたい選手にパスを出すというような形だったように思います

キック戦略も見てわかるようなものは感じ取れず、エリアを取るために使われていたLongが最も多いという結果になりました
試合を見ていった感じだと立命館はキックゲームが上手くはまっていなかったようにも見えたので、もう少しキックを多用しても良かったのかもしれませんね

ラックに関しては精度が若干低いような印象を受けており、オーバーに入る人数がまちまちで、3人以上かけるラックが回数的には多くなってしまっていました
それも、必ずしも3人かけなければボールアウトができない状態だったかといえばそうでもなく、ラックにコミットせずにそばについているだけという選手も散見されたため、アタックラインに人数を割くことができていなかったようにも見えました

摂南のキャリー

キャリーで目立っていたのは先述した3人の選手で、ボールタッチの回数を考えると比較的自然な流れかと思います

11番のカストン選手は毎試合ちゃんと目立っていますね
南アフリカ出身の選手らしいバネのあるランニングももちろんですが、外で待っているだけではなく中央エリアで積極的にボールをもらいにいく姿勢もあり、一人で打開できるタレントを備えた選手であるように思います
ただ、中央エリアのようなディフェンスが固まっているエリアでのキャリー回数が他のWTBの選手に比べると多いことから、相手のタックルに捕まってしまう場面も多かったですね

キャリーの回数を見ていくと前半は74回で後半が32回のキャリーとなっており、回数としては半減していることが見て取れます
実際、後半にかけて立命館側のキャリー回数が増えていることから、単純にポゼッションの部分で上回られていたということができるかと思います
ただ、前後半でそれぞれ2本ずつのトライをとっていることから、キャリーを重ねれば必ずトライを取れるチームではなく、その場の流れを上手く掴むことでトライを生み出すことのできるチームということができるかもしれません

細かく見ていくと、9シェイプでのキャリーが34回と全体の1/3近くを占め、シェイプ外のキャリーである中央エリアでのキャリーが37回と最も多い回数を見せているという結果になりました
一方で10シェイプでのキャリーは5回に留まり、エッジエリアでのキャリーも12回程度となっていることから、9シェイプを中心に中央エリアでのキャリーが多いということがわかるかと思います
アタックのシステム的にも外に回すというよりは近場でどんどん体を当てていくというスタイルに近いようにも見えますしね

摂南のパス

パスワークの部分ではキャリー・パス比もほぼ2:3と一般的なパス傾向にとどまっています
気になる部分を挙げると、立命館と同様にパスキャッチの部分での精度の一貫性はなかったように見えました
特に9シェイプやそれに類するFWの選手のパスキャッチの部分で上手くボールを掴むことのできていないシーンが見られ、アタックのテンポをうまく上げることはできていなかった印象です

もう一つ気になった部分としてオフロードパスの多さが目立っていました
前後半合わせて28回のオフロードパスが通っており(試みたものも含めればそれ以上)、ラックを作らずにアタックを継続しようとしているようにも見えました
ただ、ネックとしてはオフロードパスを繋いだ直後のキャリーがそこまで効果的なものになっていなかったという点でしょうか
一応はつながっていますが相手ディフェンスとのすれ違いを引き起こすことができるようなものではなく、直後にコンタクトが起きたりとアタックの勢いは途切れ途切れになってしまっていたように思います

細かく見ていきましょう
ラックからのパスワークとしては9シェイプへ放ったものがほとんどで、36回のパスが生まれています
一方でバックスラインへのパスは13回にとどまっており、アタックの柱となっていたのが9シェイプだったことがわかります

そもそもパスの通ることのなかったバックスラインへのパスはその後に10シェイプへ5回のパス、バックスライン上で11回のパスへとつながっています
バックスライン上でのパスに関してはラックからのパスアウトの回数の割に回数が少なかったこともあり、おそらくはそこまでパス回数を挟まずにキャリーに至っていたことが想像できるのではないでしょうか

Otherが多かったのも特徴といえば特徴ですね
うまくつながらなかったパスやカテゴライズが難しいパスが含まれるOtherが多いということは「システマチックなパスワークがあまり起こっていない」ということにもつながっており、綺麗に構築されたアタックができていなかったことを示唆しています

摂南のディフェンス

ディフェンスとしてはチームとして及第点だったとは思いますが、結果的に相手を下回るタックル成功率となっていました
弾き飛ばされる回数こそ少なかったものの相手に外される回数も多く、ビッグゲインを複数回許していました

ディフェンスラインとしてはそこまで極端に前に出るというわけではなく、じわりじわりと前に出る感じでしょうか
立命館がある程度バリエーションがありつつもシンプルなアタックに終始していたこともあり、ディフェンスを綺麗に崩されるというシーンはほとんどなかったように思います

気になるのはむしろ少しアンストラクチャー気味なアタックをされたシーンで、ディフェンスラインがまばらになって一人一人のディフェンスが孤立した状態でタックルをせざるを得ない状態になったり、タックラーが飛び出して相手に外されたりする状況が散見されました
また、タックル自体も頭が下がった状態で前に出るようなものも多く、相手の動きを最後まで見ていないことからワンステップで外されてしまっていたりと、局所的な勝負には負けてしまっていた印象です

まとめ

前半と後半で様相が大きく変わり、立命館があと1本キックを決めていれば結果も変わっていたであろう試合だったと思います

摂南大学はパワーゲームに終始していたというか、システムというよりもシンプルな規定のもとでアタックを組み立てており、立命館は表裏を用いたアタックを中心にバランスよくボールを散らしてアタックをしていました
本当にあと一つ何かが違っていれば結果は全く違ったものになっていたと思うので、面白い試合展開だったように思います

今回は以上になります
それではまた!

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