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明治大学ラグビー部とどう戦うか 〜傾向と対策〜

みなさんこんにちは
あと1ヶ月でワールドカップも開幕ですね

今回はプレビューの第3回、明治大学編です

参考記事はこちら(レビューした試合の関係で定期戦の同志社戦も含んでいます)

それでは見ていきましょう


メンバー

上位校の中では比較的1年生もメンバー入りしている方でしょうか
試しに1年生だけ色を変えてみました
シーズン中も結構メンバーに絡んできそうですね

スタッツ

※同志社戦を除くレビューした春季大会のデータ

ハンドリングエラーが少なくないのが気になるところでしょうか
それ以外の項目に関しては一般的な数値の範囲内であるように感じます

明治のアタック

重量級のFWが語られることの多い明治ですが、総合的に見るとキャリー数に対するパス回数が比較的多いということができるかもしれません
UNIVERSISの定義で言うところのキャリー・パス比ですね
パスが倍、とまではいきませんが、2:3と比べるとパス比率が多いように思えます

9シェイプももちろん多いのですが、10番の伊藤選手や15番の池戸選手が1stレシーバーに入る10シェイプや外への展開など、アタックのバリエーションが多いことも一つの特徴であると言うことができるかもしれません
12番に入るようになった廣瀬選手も器用なタイプですしね

また、ポッド内でのパスも多く、1パスでずらしたりビッグゲインに繋がったりすることもあったので、パスを効果的に使っているチームであるとの印象を受けています
また、ポッドをつなぐスイベルパスについてもよくみられるパスであり、質も高いように感じました

システムを単体で語るとしたらおそらくは1−3−2−2という形をとっているように思います
他のチームに比べると、比較的はっきりとポッドの人数が定められているように見えました
9シェイプに立つキャリアーももちろん脅威ではあるのですが、10シェイプに立ったFWの選手についてもスピード、アングルをつけた状態で走り込んでくるので、下手にディフェンス側が視線を切ると一気にゲインを図られる結果にも繋がりかねません

個人的にはBKのアタック能力にかなり注目していて、もちろん重量級のFWも健在ですが、BKの選手の総合的な能力の高さも気になるところです
特にBK3の選手はどの選手もランニングスキルに長けており、ステッパータイプからスピードランナー、スワーヴィングなど様々なタイプの選手が揃っているので見ていて楽しいですね

ただ、少し穿った見方をするとFWの選手の平均的な強さが健在である一方で突出したペネトレーターになるような選手がそこまで目立っていないのは気になるところかもしれません
実際、東海大学の外国出身選手や帝京大学の優れたペネトレーターと比較すると、明治の選手に尖った能力は今のところ見つけることができていません

もちろん抜ければどの選手も速くランニングスキルも兼ね備えているためビッグチャンスを作り出すことはできるかと思いますが、個人でゲームをひっくり返すことのできるような選手を欲しがってしまうのは少し欲張りでしょうか

あと、ハンドリングエラーが少なくない数見られているのはちょっと気にしてもいいかもしれませんね
試合を見たところプレッシャーを受けた結果の「フォースド・エラー」が多いように見受けられるため、気にしすぎるのも良くないかとは思いますが、ゴール前や敵陣深くに入ってからのミスも見られているのも事実です
この辺りの精度が変わってくるとまたちょっと手がつけられなくなるかもしれません

明治のディフェンス

次にディフェンスに関してみていきましょう

基本的に映像を見て感じられる範囲内では「アンブレラディフェンス(外側の選手が少し前に出る扇型のディフェンス)」気味のように見えました
外の選手が前に出て裏のラインに立っている選手へのパスを妨げるような動きをしたりすることでプレッシャーをかけたりするスタイルですね

タックル成功率を見ていくと、基本的には高水準を誇っていますが、東海大のような強烈な個の力を有するチームに対しては被Defenders Beatenが増えて結果としてタックル成功率が下がったりもしています
また、大まかに見ていくとステッパータイプのランナーも苦手としている傾向にあるかもしれません

タックルレンジ自体は一般的な選手たちに比べると広めな印象を受けていますが、FWの選手が少し飛び込み気味な傾向にあるようにも見えるので、それによって外されるシーンも散見されています
同様に、一部の選手が好タックルを狙って飛び出すシーンもあり、そこをうまく突かれる危険性も考慮しなければなりません

ダブルタックルに関しては強豪校らしさというか、質の高さを遺憾なく発揮しているように思います
一人一人がそもそも強いので、二人でうまくタックルに入られると簡単に仰向けに倒されますね
一人一人のレンジも広いため、他の選手も余裕を持って対面の選手を見ることができているのではないかと感じました

明治のピックアッププレイヤー

FWが有名なチームですが、今シーズンはそれと同じくらい、もしくはそれ以上にBKにタレントが揃っているように思います
今回はそんなBKの選手から2人をピックアップしました

CTB 廣瀬雄也

春シーズンの後半から復帰してきたキャプテンですね
CTBらしいCTBであると感じています

何よりもプレースタイルがCTBらしいですね
タテの突破を図るランニング、スピードをつけてボールをもらいにいく姿勢、シンプルなハンドリングスキル、どれを見ても高水準にあることが見て取れると思います
判断も良く、BKのテンポのいい展開にも繋がっていますね

それに合わせてプレースキッカーも務めており、明治の得点に多大な貢献をしていると思います
成功率だけで見ると極端に高い数値ではないかもしれませんが、廣瀬選手のプレースキックが安定してくると、相手としてはペナルティゴールでのスコアも警戒しなければいけないため、心理的にもプレッシャーをかけることができるのではないでしょうか

WTB 安田昂平

正直なところ、個人的に対抗戦では彼が優れたランナーの3本の指に入ってくると考えているくらいには良い選手です

・ストレートランが速い
これだけでも十分な強みということができますね

・スワーブも文句なし
外に一度大きく膨らむようなランニングスタイルが安田選手の特徴であるというように考えていて、開くタイミング、角度、スピードはどれも効果的であるように見えます

・ポジショニングも良い
14番を背負うことの多い安田選手ですが、左サイドに顔を出したり中央エリアでランニングをすることも多々見られるため、自身の価値をグッと高める結果になっていると思います

・ディフェンスも大外ししない
もちろん大外を守っているポジション特性上少なからず外でゲインを切られることもありますが、ゲインは切られてもラインブレイクまでは至らない、「痛手にならないディフェンス」をすることができているように見えました

明治と戦うには

最低条件:FW戦で負けない

これはあくまでも最低条件ですが、セットピースを含むFWの関わる部分でのバトルで負けないことが必要になってくると考えます

明治はFW戦に強みを持っており、セットピースでプレッシャーをかけてくる点、9シェイプや10シェイプを多用してくる点から考えてもかなりこだわりを持っていることが歴代のチームを見ても分かることではないでしょうか
そのため、そのこだわりと同じ土俵に立って、かつ負けないことが求められてくるわけですね

具体的なところで言うと、特に明治のFWの選手のキャリーについて、「ロータックル→バインドを外さない」といったタックルの基本的なところに忠実に、かつ完遂することが重要です
明治の選手は、コーチングによるものかはわかりませんが、中盤ではそこまで姿勢を下げてキャリーしてくる様子は見られていません
つまり、懐から下半身にかけてタックルに入ることのできる空間があるわけです
相手を外してランニングする上では姿勢を変えずにコンタクトすると言うのは一つの戦略であるとは思うのですが、ディフェンス側からすると、比較的タックルに入りやすいのではないかと思います(「入れる」と「倒せる」が違うのは至極当然ですが)

タックラーの肩を狙ったコンタクトをしてこないため、個人的にはレスリングのようにクイックで倒すことができればブレイクダウンにプレッシャーをかけたり、素早いディフェンスラインの構築にもつながるという風に考えています

BK3の連携

二つ目の着眼点は「いかにエッジでのビッグゲインを阻むか」と言う点です

今回のピックアップからは外していますが、BK3には他にも海老澤選手や竹之下選手といった好ランナーが揃っており、明治はエッジにスペースがあるとキックパスやロングパスを積極的に狙ってくるチームでもあります
そのため、エッジにスペースを作らない、もしくはエッジまで回される前にプレッシャーをかけると言うことが一つの戦略になってくるのではないでしょうか

そのために必要なのがBK3の連携です
特に振り子運動とも形容されることもある「WTBが前に出てFBが後ろのスペースをケアする動き」について、質を高めていく必要があると考えます

わかりやすい例で言うと、2019年W杯の日本対スコットランドにおける松島選手のトライ、福岡選手の1トライ目がディフェンスシステム上のエラーの顕著な例であるように思います
この試合ではフィン・ラッセル選手やスチュアート・ホッグ選手がバックフィールドをケアしていましたが、日本のアタックで連携が乱れ、前に出るタイミングを逸脱したことによって2つの失トライが生まれたのではないでしょうか

例のように振り子運動のシステムが崩れると、優れたランナー、優れたパサーがいるチームに相対した時に危険であるということがわかります
そのため、BK3の連携が重要であるということを主張しています

2パスでシャットダウン

「2パスでシャットダウン」というのも表現すると簡単で、言い換えるならば「SOからの1パス圏内で相手のアタックを止めるつもりでディフェンスをする」ということになります
SH→SOで1パス、SO→10シェイプなどの1パスの合計2パス以内で止めることで、エッジでのブレイクを前もって予防することもできるかと思います

そのために重要となってくるのが、もちろん個々のスキルもそうですが、「素早く・揃って前に出る」という部分です
ここがぶれてしまったりずれてしまうと、結果として細かいパス繋ぎを得意とする明治の思う壺となってしまいます
ずれた結果生まれた結果生まれたギャップに走り込まれてしまうわけですね

1対1の精度もさることながら、このようなチームディフェンスの精度を高めることができれば明治とも戦っていくことができるのではないでしょうか

まとめ

意外と長くなりましたが、明治は極端に突出した選手が少ない代わりに能力のアベレージが高く、チームでの決め事がはっきりしているような印象を受けました

今回は以上になります
それではまた!



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