今日のしくじり⑦ー患者さんの希望と福祉と信頼関係ー

 今日はなかなかの長文となりましたが、
よかったらお付き合いください。

今日のしくじり④の患者さん。
よく話す高齢男性患者さんなのですが、
愚痴が多いと書きました。
不平不満を持ちやすく、他人の非に意識が向きやすいタイプと分析しています。

その方はとても珍しい病気を持っていて、生活保護を受けながら、なんとか一人暮らしをしている状態です。

その病気のかかりつけの先生が、車で20〜30分ほどかかる近所とは言えない距離の病院(A病院としましょう)にいます。

先日、その病気とは直接関連がなく、別の診療科が担当になる症状が出て、クリニックから病院を紹介しなければいけなかった時。

その患者さんは、A病院を強く希望されました。
しかし、実際にそこに行くには、福祉の費用、すなわち税金を使って、タクシーに乗っていく必要があり、
それなりの額になるため、それは望ましくないと私は判断しました。
近くにもその症状をみてくれる病院は複数あり、
いくつか提案しましたが、個人的には理解できないような理由をつけて、断られました。
ようやくある病院(以下、B病院)なら行ってもいいと渋々承諾され、そのB病院を受診されました。

その結果、B病院では治療できない悪性の病気が見つかり、A病院を紹介してもらうことになりました。

個人的には、晴れてA病院を受診することになってよかった、と思っていたのですが、
彼の中ではそうはいかないようで。

今日の訪問時には、色々と不平不満をぶつけられました。
正直、面と向かってそこまで患者さんに言われたことは初めてかもしれません。

その内容は、
B病院の医師の態度の悪さ、
建物の古さ、トイレまでの距離の長さ(!)
A病院では検査が楽にできたこと(B病院の検査結果があったからなのですが、そこは理解されておらず)。
初めからA病院に行っていたらよかったと、
B病院を紹介した私への不満。

確かに検査を2度受けることになってしまい、
大変な思いをさせてしまったのは事実なので、
申し訳ないと伝えました。
そして改めてA病院に紹介状を書きましょうと提案したところ、
「いつも血圧とかちょっと測って、ちょっとみてるだけなのに、何か書くことあるのか」
と言われました。

その時は平気な顔して、
それでも紹介状があった方が、病診間で連携できて結局は患者さんのためですよ、
と言ったら納得はされましたが。

さすがに、血圧とか測ってちょっとみてるだけ、という発言は…私の心に重く残っています。

悪性の病気が見つかって、不安が強くなっているのは理解しているつもりですが。
調子がいい時は、先生が家まで来てくれるおかげですと言ってくれていたのも憶えていますが。

そんなふうに思わせてしまった一因はやっぱり、
きちんと信頼関係を築けなかった、
私の技量不足にあると、認めないといけないと思います。

実際には、患者さんの希望を何でも叶えるのがいい医者なのかと言えばもちろんそうではないのですが、
希望に沿えないとご本人の満足度が下がるのはたしかです。
こだわりの強い患者さんなんかでは特に、です。

けれども、福祉のお金を使って生活しているという認識は、
見下しているとか、そういうことではなく、
フラットに考えても、生活保護受給者の方々に必要な考えであると私は思います。

一方で、結果的には初めからA病院を紹介しておいた方がよかったのかと考えているところもあります。

今日のしくじりは、以上です。

ここまで読んでくださった方、もしいらしたら、
ありがとうございます。

この患者さんに関しては、本当に色々と考えさせられることが多いです。


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