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ウォーキング考

ウォーキング考
デューク更家・角川SSC新書
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同じ年代の人なら「おお!」て思いなさるかしら。著者名に覚えのある方は多くいらっしゃいます?そうですあのウォーキング指導者のデュークさんです。こちら新書なんですが、裏表紙のキャッチ文がすごい興味深くて手に取りました。
「大切なのは、どれだけ歩くかの量や時間ではなく、どう歩くかの質である」
とありまして、悪い姿勢で一日一万歩歩いたら、健康になるどころか足腰を痛めてかえって健康を害してしまいますよ、というご懸念を元に書かれた本なんですね。優しい。

わたし存じ上げなかったんですけれど、デュークさん、まさに上記の理由でお母様を失ってらして、歩きの指導の道に入ったんですってね。
お母様、健康のためにとずっと歩いてたら膝を悪くしてしまい、医者にそれでも歩けと言われて続けたらさらに悪くしてそこから別の怪我をして車椅子生活になってしまった。それをきっかけに、短い期間であっという間に具合を悪くなさってしまった、とのことで。これは…なんてやるせない…デュークさん、運動頑張れってスニーカーまで送ってしまったって、ご自分を責めてらっしゃるんですね。残された側はね、どうしてもたらればを考えてしまいますよね。
もともとモデルウォークのお仕事はされていたようなのですが、その出来事までは歩きてのは服やモデルを美しく見せるためのもので、健康のための歩きとは、という点については考えたことがなかったそうなんですね。なのでそこを勉強・研究しなおしたそうで、悲しいきっかけではあるものの、それが多くの方を救うことになったんですね。立派だ…

ここまで感想を書いた複数の先生もそうなんですが、デュークさんもまた
「しんどいときにまで歩かんでええよ」
の姿勢です。姿勢の悪い10,000歩より良い姿勢の300歩と唱えておいでで、確かに最近の研究では10,000歩まではいらないとも聞きますし、大事なのは世間の常識よりも「自分にマッチした運動」ですね。

「歩く」についての本は一旦ここまでで気が済んだのですが、極まった方の情報はある程度同じとわかったからてのもあります。デュークさんも
「隙間時間での歩きを取り入れよう」「まずは立つところから」「無理はしないようにしよう」「正しい歩き方」を丁寧に説いておられます。
ただ少し文字情報に寄りがちかな。挿絵は入っているほうかと思いますが、もう少しここの説明の時にわかりやすいと嬉しかったかなー、て点もあります。
歩き方の指導ということで、一つ前の金先生の本
https://note.com/unisindo/n/n1d25500fcd2e
とつい比較しそうになってしまうんですが、内容的には齋藤先生の本
https://note.com/unisindo/n/n8e40904a54de
とも通じるところがありますね。歩くとは「禅」である、とか、ヨガのグラウディング、「我見と離見」や気脈の話など、フィジカル面の解説や実用情報を軸にした金先生の話ともまたちょっと違う色の、読み応えのある本でした。今回歩くことについての本を4冊ほど拝読しましたけれど、どれも傾向が違ってそれぞれ面白かったな。いずれも読めて大変良かったと思います。

この本の面白いところに「シチュエーション別の歩き方」の章があって、疲れている時や坂道を歩く時、といった日頃の心当たりのある話ばかりではなく、「ふかふかの絨毯の歩き方」とか「二日酔いの時の歩き方」「嫌なことを抜きたい時」など、メンタルが落ちているときほど気をつけたらいいんだろうな、といったポイントまとめが明確です。ただ優しいのが、そういうページであっても「やる時は楽しんでやってね」と書いてくれているところです。
間違わないようにてところにばかり意識が行くと楽しくないので、ちょっとぐらい間違えてもいいから心から楽しんで歩いてね、て言ってくれてます。こういうの嬉しいですよね。どうしてもこう、間違えないように間違えないように、って考えちゃう人って多いもんね。

この本、とにかく繰り返し繰り返し「体を痛めないように」「嫌々やらないように」と声をかけてくれますし、最終章なんて「骨休めのすすめ」です。「歩かないことも歩くこと」として、ツボ刺激などを行うことで歩くのと同じ刺激を体に与えたらいいんだ、と、休んでいる時に罪悪感などが出ないように出来ることも教えてくれるんですね。お母さんのこと思い出されてしまうのかな…ちょっとしんみりしちゃう…

あとがきまで優しさに満ちた御本でした。抑えめな負荷から始めたい、まずは歩く気持ちを作りたい、て人はぜひぜひ。

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