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見知らぬ感触

タイトル:(仮)見知らぬ感触

▼登場人物
●戸茂煮 保夢(ともに やすむ):男性。50歳。独身。不細工。しがないサラリーマン。加恋にゾッコン惚れ込んでしまう。
●月下加恋(つきした かれん):女性。25歳。独身OL。超絶美人。
●架空の月下加恋:容姿は月下加恋そのもの。保子が保夢の為に作り出す。本編では「架空の加恋」と表記。
●中尾保子(なかお やすこ):女性。30代。保夢の「加恋とずっと一緒に添い遂げたい・孤独な生活から脱出したい」と心底願う理想から生まれた生霊。

▼場所設定
●月下加恋の自宅:高級マンションのイメージで。4階に住んでいる。
●架空の月下加恋の自宅:保子が保夢の為に用意する架空の空間。1か月間だけそこに住める。そこには保子が作り出した加恋も住んでいる。月下加恋の自宅と同じ、高級マンションのイメージでOKです。
●バー「Cosleeping」:お洒落な感じのカクテルバー。保子の行き付け。店名の意味は「添い寝」
●会社:保夢が働いている。一般商社のイメージで。提携社に加恋が働く会社がある。

▼アイテム
●「トランスエクスタシー」:保子が保夢の為にオーダーするカクテル。これを飲むと恋愛に対する勇気が湧いて来る。それと同時に保子がいざなう不思議な世界への切符ともなる。

NAは戸茂煮 保夢でよろしくお願いいたします。

メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4067字)

ト書き〈会社〉

俺の名前は戸茂煮 保夢。
今年50歳になる独身サラリーマン。
これまでまともに恋愛した事が無い。

ト書き〈社内トイレの鏡を見ながら〉

保夢「はぁーあ。こんな俺と付き合ってくれる女(ひと)なんか、どこ探してもいないよなぁ。周りはみんな結婚しているのに、なんだか俺だけが取り残されたような感じだ。でも俺だって…恋愛の1つくらいしたい!くそぉ」

ト書き〈仕事帰り〉

保夢「お疲れ様ー」

俺ははっきり言って顔が超ブサイク。
それに年収も少ない。
結婚はやっぱり遠い夢。

保夢「くそっ!クヨクヨしたってしょうがない!今日は飲むぞ!」

俺は1人で飲みに行った。

ト書き〈加恋登場〉

翌朝、いつも通りに出社した。
そして昼休みに入る頃。

加恋「それじゃ、お願いします♪」(保夢の上司と商談している)

保夢「はっ・・・(な、なんて可愛い人だ・・・)」

うちの姉妹会社から1人の女性社員が来社していた。
とにかくメチャクチャ綺麗。
顔はアイドル以上に可愛らしい。
俺はこの歳になって初めて本気で女に惚れ込んだ。

ト書き〈数日後〉

それから数日後。
彼女は頻繁に会社に来るようになった。
次のプレゼン企画の打ち合わせだろう。

ト書き〈社内トイレ〉

保夢「はぁ・・・なんとかキッカケ作れないかなぁ・・・」

俺はもうあの子の虜になっていた。
とにかく何でもいいからキッカケが欲しい。
自分をアピールできるキッカケが。

ト書き〈会社帰り〉

保夢「はぁ。結局、キッカケなんてあるわけないよな…」

俺はまた現実に振り戻される感じで、その日も飲みに行った。

ト書き〈バー「Cosleeping」〉

保夢「ん、あれ?新装か?」

いつもの飲み屋街を歩いていた時。
全く知らないバーがある。

保夢「『Cosleeping』ってのか・・・。ふぅん。ちょっと入ってみよ」

中は小洒落た感じのカクテルバー。
俺はカウンターでカクテルを飲んでいた。

保夢「はぁ。あの子、いいなぁ・・・」

やっぱりあの子の事を想ってしまう。
自分の心の中の鬱積した感情を、愚痴にして吐き出していく。

保夢「自分から女に告白した事、そう言えば1回も無いなぁ。多分周りにあんな魅力を持った人がいなかったからだ。なんとかあの子と付き合えたら」

その時・・・

保子「こんばんは。お1人ですか?ご一緒してもイイかしら?」

1人の女性が声を掛けて来た。
結構キレイな人だ。

保夢「あ、どうぞ」

俺達は軽く自己紹介した。
彼女の名前は中尾保子。
歳は多分30代。
恋愛コンサルタントをしてるらしい。
俺が恋に悩んでる顔をしてたから、声を掛けたと言う。
彼女は少し不思議な感覚を持っていた。
「昔から自分のそばにいた人」
そんな感覚がどことなく漂うのである。
気付くと俺は、悩みを殆ど告白していた。

保子「なるほど。年甲斐も無く若い子に恋をしてしまい、その気持ちをどう消化すればいいか、自分でも解らなくなってしまってる・・・という訳ですか」

保夢「ええ。お恥ずかしいです。50にもなってこんな事言ってるんですもんね。まったく他の人が聞けば呆れるでしょう。・・・でも僕は本当にあの子に惚れたんです。分からないかも知れませんが、この歳になってこれだけ惚れ込むっていうのは相当なものなんですよ。本当に、今まで無かった気持ちです」

保子は親身に聴いてくれた。
そして・・・

保子「恋愛に歳は関係ありませんよ。知ってますか?オーストラリアではその昔、1936年に40歳以上の歳の差を乗り越えて結婚したカップルもいたそうです。イギリスでも80歳の老男爵と17歳の娘が結婚した例もあります」

保夢「そうなんですか!・・・で、でもそれは特殊なケースでしょ?」

保子「いいえ、それは偏見ですよ。相手を信じ、心から愛する事が出来れば、そういった結婚も普通に出来るものです。いいですか?恋愛は先ず相手を信じられるかどうかです。勇気を持って下さい。一歩踏み出せば、それまでとは必ず違った状況が生まれ、その状況から新しい未来が開けていきます」

保子「いいでしょう。私があなたのその悩みを解決して差し上げます」

そう言って、彼女は俺の為にカクテルをオーダーした。

保子「さぁどうぞ。グッとやって下さい。そのカクテルは『トランスエクスタシー』と言いまして、飲むと不思議な力が湧いてきて、きっと恋愛にも立ち向かえる勇気が漲ってきますよ。騙されたと思って、まぁ一気にどうぞ」

俺はそれを一気に飲み干した。

ト書き〈翌日の夜〉

そして翌日。
会社帰りに俺はまたバーへ寄った。

保夢「あの、何ですか?大事な話って?」

保子「あなたが惚れ込んだ彼女の事です。少し調べてみました」

保夢「えぇ?!」

保子「彼女の名前は月下加恋。25歳の独身OLです。今は都内のマンションに住んでいて、地方から上京しているみたいですよ。好きな色はベージュ」

保子「男性恐怖症の気あり。お風呂には1日2回。そして何より1番好きなのは寝る事。会社から帰るとすぐベッドへ体を投げ出して、その日1日の反省をするのが日課のようです。ベッドに寝そべって読書するのが趣味のようですね。あなたの会社に少しお邪魔した時に彼女に会いまして、その時いろいろ聞いたんですよ。女同士ですから彼女も警戒せず答えてくれました」

保夢「ふぇぇ・・・」

中尾保子というこの女性、得体が知れない。
幾ら恋愛コンサルタントをしてるからって、こんな事までするものか?
でも保子はやはり不思議な力を持っている。
俺は保子の言う事を何でも鵜呑みに信じてしまう。

保子「それで、あなたの事も彼女に話したんです」

保夢「えぇ?!ど、どうしてそんな勝手な事を!」

保子「あなたには告白する勇気が無いだろうと思って、少しお手伝いしました。でもご安心下さい♪彼女、あなたの気持ちを聴いてとても喜んでましたよ」

保夢「そ、そんな・・・!」

保子「それでは参りましょうか?彼女が待っています」

保夢「ど、どこへです?」

保子「彼女のマンションですよ」

保夢「ええ!?」

ト書き〈架空の月下加恋の自宅〉

それから俺は保子に連れられて、月下加恋の自宅へ行った。

架空の加恋「お待ちしてました♪どうぞお入り下さい」

保夢「ま、まさか・・・こんな事が」

加恋はマンションの4階に住んでいた。

保子「どうぞごゆっくり♪良かったですわね、彼女に想いが通じて」

保子「でも保夢さん、これだけはお約束して下さい。彼女とここに住めるのは1か月の間だけです。それは彼女も承知しています。ですから『それ以上彼女と付き合いたい』『結婚したい』なんて欲は出さないようにして下さいね」

保子「一瞬の夢ですが、こうしてあなたの願いは叶えられたのです。それで良しとして、あとは潔くこの空間を立ち去るようにして下さい。もしこの約束を破れば、きっとあなたはこれまでの生活を失います。必ず守って下さい」

よく解らなかったが取り敢えず頷いた。
加恋とここに住めるのは1か月。
でも俺は加恋と一緒にいられる事を心底喜んだ。

ト書き〈1か月後〉

そして1か月後。

保夢「加恋!どこに行ったんだ、加恋ー!」

目を覚ますと加恋がいない。
今までのバラ色の生活が、音を立てて崩れていった。
そんな俺の目の前に、あの保子が現れた。

保夢「あ!や、保子さん!」

保子「約束した筈ですよ?あなたと加恋さんの新婚住まいは1か月だけの約束でした。あなたは一瞬でも『加恋さんと過ごせた事』を今後の糧にして・・・」(遮るように保夢が話し出す)

保夢「嫌だ!お願いします保子さん!僕と加恋さんがずっと過ごせるように、この空間を永遠のものにして下さい!お願いします!あなたは不思議な人だ!初めて会った時からそう感じてたんです。きっとあなたなら出来るんでしょう!?加恋さんとのこの空間を用意してくれたのもあなただ。お願いです!僕と加恋さんをどうか引き離さないで下さい!どうかお願いします!」

俺は無心した。
すると保子は冷静にこう言った。

保子「そこまで彼女の事を・・・。分かりました。ではあなたの望みを叶えてあげます。でもその場合、2度と今の生活には戻れませんよ?いいですね?」

保夢「はい!いいです!それでいいですからお願いします!」

ト書き〈数日後、月下加恋の自宅〉
ト書き〈新しいベッドが届く〉

加恋「あ、来た来た♪新しいベッド!」

この日、月下加恋の自宅にベッドが届いた。
同時に郵便受けに、1枚の手紙が入っていた。

加恋「ん、手紙?誰からだろ」

ト書き〈ベッドに寝そべって手紙を読む〉

(手紙の内容)

親愛なる月下加恋様

このお手紙が届く頃には、僕はきっとあなたと共にいます。
あなたのそばで、あなたのぬくもりを感じている筈です。
今日、新しいベッドが届きましたよね?
あなたはベッドに寝そべって、本を読んだりするのが好きだと聞きました。
僕が出したこの手紙も、きっとベッドで読んでくれてますね?
嬉しいです。
僕はあなたを永遠に愛します。
あなたの重みと、ぬくもりが、たまりません。
これからも、ずっと僕と一緒に寝て下さい。

あなたを永遠に愛する戸茂煮 保夢より

そのとき加恋が寝そべるベッドの下で、何かがモゾ・・・と動いた気がした。

ト書き〈加恋の自宅マンションを見上げながら〉

保子「私は保夢の『加恋と一緒にいたい・孤独な生活を終わらせたい』と言う本望から生まれた生霊。望み通り、保夢をベッドに変えてあげた。加恋がいつも寝そべるベッドに。もう元の生活に戻れない。でもそれが本望だった」

保子「加恋はうら若き25歳のOL。現実的に保夢とは釣り合わない。結婚するなんて夢のまた夢。確かにそんな状況で結婚できるのは特殊なステータスにある人達か、純愛に生きられる人達、さもなければ相手の財産を狙った計略結婚になるだろう。加恋は初めから保夢など恋愛対象に見ていなかった」

保子「だから私は架空の月下加恋と彼女と一緒に住める空間を作り出し、その2つを1か月間という期間限定の約束で保夢に与えた。それでなんとかこれから強く生きられる土台を獲得してほしかったけど、無理だったわね・・・」

保子「もし加恋があのベッドを処分すれば、保夢も一緒に処分されてしまう。そうならなきゃいいけど。でも例え処分されても、彼にとっては本望かしら」

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