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潔癖の夢

タイトル:(仮)潔癖の夢

▼登場人物
●木月(きづき)レイ:女性。35歳。独身OL。かなりの潔癖症。
●木月文江(きづき ふみえ):女性。60歳。レイの母親。本編では「母」や「お母さん」等と記載。
●嵯峨綱夫(さが つなお):男性。45歳。ガサツな印象。レイと結婚する。
●花咲(はなさき)カレン:女性。30代。レイの保身の心と欲望から生まれた生霊。かなりの美人。

▼場所設定
●レイの自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。部屋はかなり綺麗。
●Fortress of Cleanliness:都内にあるお洒落なカクテルバー。レイとカレンの行きつけ。
●墓地下の地下室:こちらはおどろおどろしく描いて頂ければ大丈夫です。

▼アイテム
●New Step:カレンがレイにあげる特製の瓶入りの栄養ドリンク。これを飲むと心が鷹揚になり豊かな生活を送れるようになる。でも全部で3本でその効果は3か月。

NAは木月レイでよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたは潔癖症ですか?それともガサツなほう?
いずれにしても必要な配慮をもって生活する事は大事ですが、
しかし神経質になり過ぎると必要以上の防御をしてしまい、
人生そのものを享受し、楽しむ事も忘れてしまうようです。
今回はそんな事で悩み続けた
ある女性にまつわる不思議なエピソード。

メインシナリオ〜

ト書き〈自宅で母と〉

母「ねぇレイちゃん、あなたいつになったら結婚するの?お見合いの話をこんなに沢山持ってきてあげてるのに、どうして誰ともお見合いしようって気にならないのよ。お相手の写真すら見てもいないし。こんな事じゃあなた、一生かかっても結婚なんて出来ないわよ?」

レイ「イイのよお母さん、私結婚なんかしないから。男の人に興味ないのよ。だから私の事にはもう構わないで、お母さんはお母さんの幸せを考えてよ、ね?」

母「ふぅ。本当にあなたはどうしてそうなんでしょうねぇ…」

私の名前は木月(きづき)レイ。
今年で35歳になる独身OL。
今は都内のデザイン企業で働いており、
この先もずっとそこで働くつもり。

そして今日もお母さんは私のアパートまで来て、
お見合いの話をしてくる。
もうこれが何十回も繰り返されていたが、
私は一向に見合いなんてする気もなく、
それどころか生涯独身で貫き通そうとまで覚悟していた。

と言うのは実のところ、私は潔癖症だったから。
男の人はガサツで野蛮で、身の周りも汚く、
私が一緒に生活する相手としては絶対に合わない。

私は昔からこんな性格でもあり、
潔癖症の気(け)があったからか、
小さい頃から何でも1人でする癖が身に付き、
その挙句、恋愛する事も結婚する事も諦めていた。

部屋はいつも綺麗にしていて、自分の容姿も綺麗にし、
身の周りに少しでも汚い物があればすぐに排除して、
体の外から中まで全部を美しく…
これが私の生活・人生のモットーでもあり、
それを崩す事は絶対になかった。

両親も確かにこんな私に苦労していたらしいが、
持って生まれた性格、そう簡単には治らない。

だから本当に私はこれまで1度も恋愛した事もなく、
生涯そのままの姿勢で貞操を守る覚悟をしていた。
綺麗な場所や清潔な人にしか身を寄せない。
そう決めてこれまで生きてきたのだ。

その上で清潔な人と言えばやはり女性であって、
男性はどうしても生理的に受け付けない。

だから縁談や恋愛の話など、
私にとっては無縁の話になってしまうのである。

ト書き〈カクテルバー〉

そんなある日の事。
会社帰りに私は1人飲みに行った。

そのお店も外観から内装までとても綺麗で美しく、
ちゃんと全ての物が整頓されていて、
お店の名前も『Fortress of Cleanliness』。
まるで私の為にあるようなお店だ。

そうしていつものようにカウンターにつき飲んでいると…

カレン「フフ♪こんばんは。お1人ですか?もしよかったらご一緒しませんか?」

と女性が1人声をかけてきた。
見るととても美しい人。

彼女の名前は花咲(はなさき)カレンさんと言い、
都内で美容エステサロンのお仕事をしていると言う。
私は少し彼女の美しさに見惚れる余り、
すぐに隣の席を空けて彼女を迎えた。

でも少し談笑していると不思議に思ったが、
彼女と居るとなんだか心がほぐれる。
それに、
「昔から一緒に居てくれた人?」
のような感覚がうっすら漂ってきて、それがまた心を和ませ、
次に自分の事をなぜか彼女に無性に打ち明けたくなる。
かなり不思議な体験だった。

そして気づくと、
私は本当に今の自分の悩みを全て彼女に打ち明けていた。

カレン「潔癖症?」

レイ「ええ。お恥ずかしい話ですが、この歳になってもまだ恋愛の1つもした事がなく、多分この先もしないんじゃないかなぁ…なんて思ってるんです。母はいつもお見合いの話を私に持って来てくれるんですが、どうも無理で」

レイ「あははwこんなお話を初対面のあなたにしてしまうなんて、私どうかしてるんですねwただの愚痴ですから、どうか聞き流して下さいね」

でも彼女は真剣に聴いてくれた。
そして…

カレン「女性として潔癖を守る事は確かに美徳かもしれませんが、余り神経質になり過ぎると、却って自分の幸せを見逃してしまい、女としての本来の生活すら見失ってしまう事があります」

とアドバイスしてくれた後…

カレン「分かりました。もしよろしければ私にお力にならせて頂けますか?」

と言った。
そして栄養ドリンクのような物を3本私にくれたのだ。

レイ「こ、これは?」

カレン「それは『New Step』と言うまぁ心の栄養ドリンクのようなもので、それを飲めばきっとあなたの心に免疫が付き、社会に対するあらゆる事にも躊躇しなくなるでしょう。つまりあなたの場合、これまで潔癖に悩み続けてきたその悩みが消えると言う事です」

レイ「…はあ?」

カレン「フフ、信じる事ですよレイさん。詳しく説明しなくても、あなたはもう心でおそらく解っておられるでしょう。その通りのあなたに成長する事が出来るという事です」

確かにその時、彼女が言った事は何となく解っていた。
潔癖症に悩まないと言う事は、これまで避けてきた
あらゆる物事に普通に対処できるようになると言う事。

つまり男性恐怖症の気(け)にあった私でも
もう男性と普通に付き合う事が出来るようになり、
これまで何事に対しても神経質になり過ぎていたその心が次第に緩み、
周りの人と同じように生活出来るようになると言う事。

つまり恋愛する事も出来、結婚する事も出来る。

そして彼女はやはり不思議な人だった。
これまでずっと今の自分を変える事が出来ない…
と思い込んでいたその私が、彼女にそう言われると
その彼女の言った事を信じてしまう。
そしてその気になり、
その3本の栄養ドリンクを私はその場で受け取ったのだ。

カレン「お役に立てて何よりです。そのドリンクはひと月に1本、つまり3ヶ月分ありまして、その間にあなたは社会で生きていく為の土台を丈夫にこしらえ、その後は自分の力で幸せを守っていくようにして下さい」

カレン「そしてそのドリンクにはもう1つ効果があって、それは女性の魅力を最大限に引き出す事。つまりあなたの周りにもうすぐ素敵な男性が現れ、その人との将来を誓い合う事が出来ます」

レイ「え?」

カレン「フフ、レイさん。これも信じる事が大事ですよ。恋愛と結婚は信じる力で成り立っている…と言っても過言じゃありません。自分の明るい未来を信じ、そしてやってきた幸せをどうか自分の力で守れるようにして下さい」

レイ「はぁ…」(聴き入る形で)

カレン「そしてもう1つ。少し厳しい事を言うようですが、おそらく次にやってきたその幸せのチャンスを逃してしまえば、あなたはもうその後、本当に一生かけても幸せを手にする事は出来なくなるでしょう。ですから次にやってきたそのチャンスこそ、必ずモノにするように、勇気をもって自分を強くして下さいね」

ト書き〈数週間後〉

それから数週間後。
私の身に本当に素敵な事が起きたのだ。

私はカレンに勧められた通りそのドリンクを飲み続け、
まず潔癖症が本当に治っていた。

それまで付き合わなかった人とも付き合い、
行かなかった場所にも行くようになり、
何事にも鷹揚な心をもって生活していたら、
会社から最寄りの居酒屋で出会った人と関係が深まり、
その後、本当に結婚を約束する仲にまで成れたのだ。

彼の名前は、嵯峨綱夫(さが つなお)さん。

とても大きな体の持ち主で、
おそらく着ている服は何日間か洗ってないもの?
地肌は日に焼けて浅黒く、髪もボサボサで、
それまでの私なら絶対に付き合わなかったようなそんな人。

でも私はそこで出会ったその人に妙に心が惹かれ、
初めて心の底から特定の人を好きになる…と言う
恋心を覚えていたのだ。

それに付き合っていく内に分かった事は、
彼が本当に優しくて誠実で、
私の事を第1に思ってくれると言う事。

本当に今までの私は一体何を見て生きてきたのか?
と思わせてくれる程、彼は私の心の目を開いてくれた。

綱夫「レイちゃん、俺、精一杯働いて君のこと絶対幸せにするから、これからずっと2人で将来に向けて歩いて行こうな」

レイ「うん♪決まってるわ。私、絶対あなたから離れないわよ」

そして交際がスタートし、1ヵ月、2ヶ月が過ぎて行き、
私達は電撃結婚するように既に同棲していた。
そして付き合ってから3ヶ月目で結婚したのだ。

ト書き〈トラブル〉

しかしここで問題が起きてしまった。

(カクテルバー)

レイ「え!?そ、それじゃあもう本当に貰えないんですか!?あのドリンク…」

私はやはりあの栄養ドリンクのお陰で生活を変える事が出来、
鷹揚な心をいつも携え、人を愛する強さを持つ事が出来ていた。

そのドリンクがカレンの言った通り3ヶ月目に切れており、
私はもう少しの間あのドリンクに頼ろうと、この日、
カレンに会いに又あのカクテルバーへ来ていたのだ。

でも、やはり彼女はあのとき言った通り、ドリンクはもう無いと言う。

レイ「そ、そんなあ!嘘でしょう!?あの時は私を励ます為にああ言っただけで、本当はあるんじゃないんですか!?」

私はどうしてもドリンクの力が欲しいと願い、
何度も食い下がって無心した。
でも彼女は…

カレン「レイさん。あのドリンクはもう本当に無いのです。私はあなたの心に『自分で生きていく為の力を身に付けて貰おう』とあのドリンクを用意したまで。ですからこれからは自分の力でどんなトラブルも解決して行けるようにしないと、本当の意味であなたは自立する事が出来ないのですよ?」

カレン「最後にもう1度だけ言います。あなたは自分の力でトラブルを乗り越えて、自分の生活に活路を見出さなければなりません。誰もがしている事です。それがどうしても嫌だと言うなら、あのとき言った通り、あなたはもう今後2度とこんな華やかな幸せを手にする事は出来なくなるでしょう」

もう何を言っても埒があかないと思い、
私は怒り調子に彼女に文句を投げつけ、その場をあとにした。

ト書き〈オチ〉

そして彼と一緒に住んでる自宅に戻り、
ハッと我(われ)に返った私は、
「やっぱりどうしてもこんな不潔な人と一緒に生活する事なんか出来ない!」
となり、その心のほうを自分で固めて強くして、
彼には何も言わず出て行き、姿をくらまして、
私は今、誰も知らない別の場所に住んでいる。

(墓地の下の地下室の様な場所)

カレン「やはりこうなってしまったか。彼女は自分の人生を自分で放棄して、誰もが乗り越えるハードルを乗り越えようとせず、結局自分の殻に閉じこもり、全ての幸せを見逃した」

カレン「ここは誰も近づかない古い墓地の下。その地下に私が1つ部屋を作り、彼女の為に安住の地を与えてあげた。私はレイの保身の心と欲望から生まれた生霊。その願いを叶える為だけに現れ、本当は日常の生活で幸せを掴んで欲しかったけど無理だったわね」

私は彼女が言うように地下室のような場所に居り、
そこにはベッドが1つだけ置かれてあって、
私はそのベッドの上でずっと眠り続けていたようである。

カレン「夢の中でなら、潔癖症に悩まされる事もなく、全てが理想通りに運び、もしかすると結婚する事も出来るかも。結局こんな状況でしか、彼女は自分の夢を叶える事が出来なかったのね。これは彼女自身が選んだ理想の生活。夢の中で、幸せな人生を送りなさいな。その人生を終えるまで、私がここであなたを守ってあげるから…」

動画はこちら(^^♪
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