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物語の精霊

ありふれた小話を 火にべる
葡萄のつるほどよい薫りはたたぬが
ポウッツと 瞬間はぜては
物語元素へと帰ってゆき
インクが焦げるそれに誘われ
古書の妖精までも 遠巻きに集っている

燭台の陰で 物語の精霊がみつめている
酒に飲まれるほどに 文士は燃やすだけの紙束をなじり
丸めて 破いては 霊厳なる元素の散乱をみる
物語の精霊は かつてW・B・イェイツに W・ブレイクに
数多の筆をとる者に 高貴な衝動を投げかけていた

文士は やぶれかぶれの疲れをおぼえる
暫し呆けては 中途の原稿が 炎のあかりで照らされて
  元素の帰還に誘われ ひきよせられた 物語の精霊は
 霊感を書き連ねえる者 そのガイストの幽かな響きを遠くにきき
その短い滞在の去り際 ふと光を投げかける

そうして 文士は書棚の机へと呆けたまま歩き始める



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