見出し画像

市場規模は約1兆円に。農業の課題に挑む世界のアグリテックロボット3選

農業にまつわる課題をテクノロジー解決するアグリテック(Agriculture+ Technology)。今、アグリテック市場が大きな盛り上がりを見せています。

マーケティングリサーチ会社「Research and Markets」の発表によると、現在およそ90億米ドル(およそ1兆円)の世界農業用ドローン・ロボット市場は、2026年までに約3倍の300億米ドル(およそ3兆円)に到達すると予測されています。2026年までの年平均成長率は22.3%です。

そんな中、次に来るアグリテックロボットはどのようなものなのでしょうか? 今回は、世界の最新のアグリテックロボットをご紹介します。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。このマガジンでは、海外の情報を中心に様々な社会課題の解決のために開発されたロボットを紹介しています。

除草剤なしで雑草を除去する自走ロボット

米Carbon Robotics社が開発する「LaserWeeder」は自走型の雑草除去ロボットです。除去に使用されるのは除草剤や化学薬品ではなく、「レーザー」となっています。このレーザーは、米国ワシントン州より公式に「オーガニック農業に使用することができる機器」だと認定されているそうです。

除草剤を使わないことから作物の品質向上や生産高の増加、より安全な作物の生産に役立つといいます。また、除草剤に耐性のある雑草への有用性や農業の人手不足問題の解消、オーガニック農業での除草作業へのコスト削減という点でも期待を寄せられているとのことです。

画像1

▲LaserWeederで雑草除去が行われた玉ねぎ(上)と除草剤で雑草除去が行われた玉ねぎ(下)Carbon Robotics社公式サイトより

▲ LaserWeederが稼働しているときの様子。作物を傷つけることなく、雑草のみをピンポイントで除去できるとのこと

2021年9月には、$27M(約29.7億円)の資金調達に成功したCarbon Robotics社。その技術への期待の高さが伺えます。

作物の一つひとつをデータ化するロボット

Small Robot社の「Tom」は作物一つひとつのあらゆるデータを収集するロボットです。Tomは農場を走行しながら、雑草の有無、除草剤の効果、病気の検知や土壌のサンプリングも行います。

採取されたデータは専用のAI搭載ソフトウェアプラットフォーム「Wilma」上で視覚化され、一つひとつの作業に対してデータやアラートを提供するとのこと。農家の方の意思決定に大きく貢献しそうです。

また、Small Robot社は彼らのロボットの軽さを売りにしています。人が土壌を歩きながら作物をチェックすることと比較し、土壌への圧縮度を3分の1減らすことができるといいます。

画像2

▲データ収集ロボット「Tom」。Small Robot社 プレスリリースより

画像3

▲「Tom」から収集されたデータを分析し、視覚化する「Wilma」 Small Robot社公式サイトより

まだ実証実験段階の機能も多いようですが、2021年8月にはクラウドファンディングで400万ポンド(およそ6億円)を調達することに成功。合計調達資金は、1100万ポンド(およそ16億円)となりました。

あらゆるプロセスの自動化を目指すIron Ox社

農業に関わる全ての要素をデータ化し、またあらゆる工程を自動化・効率化した屋内農園の実現を目指しているのがIron Ox社です。

データ化されるのは作物の栄養素や水分レベル、グリーンハウス内の温度湿度、作物の見た目など。これらをAIが処理することで、収穫量をより正確に予測したり、必要な水や日光を調節したりすることができるといいます。

画像4

▲作物の状態を画像より処理している様子 Iron Ox社公式サイトより

また、これらのデータをもとに実際の作業を行うにはロボットを活用するそうです。2021年11月に発表された最新ロボットは「Grover」です。

Groverは自走型の農業ロボットで450kg以上の作物を持ち上げることができるというのが驚きです。作物のモニタリングや水やり、収穫もアシストするとのこと。これらのデータやロボットの活用で、従来の屋外農場と比較し、「90%水の使用を抑えることができる」と同社は語ります。

画像5

▲作物を運ぶGrover Iron Ox社公式サイトより

まだ実証実験的な要素も強いようですが、米国カリフォルニア州北部やテキサス州でグリーンハウスを運営しているとのこと。すでに一部スーパーマーケットでは、Iron Ox社が生産したバジルなどが購入できるそうです。

2021年9月には、$53M(約59億円)の資金調達に成功しているIron Ox社。まるで近未来のような農業が実現する日も遠くないのかもしれません。

国内でもアグリテックで労働時間を大幅に削減

農林水産省もスマート農業を掲げ、全国各地でロボット、AI、IoT等の先端技術を農業の現場で活用した実証実験を行っています。

今年3月には、ほぼ全ての先端技術導入地区で労働時間の削減効果が見られたと報告されています。例えば、みかん農家の選果プロセスでは、労働時間が9割以上削減されるなど大きな成果をあげています。

大きな盛り上がりを見せるアグリテック市場。人手不足や気候変動など様々な課題に直面する日本の農業にも生かされる場面が多そうです。

株式会社ユニキャストは、人とロボットによる未来の共創を目指すソフトウェア開発会社です。当社では、新規ロボット・ITシステムソフトウェアの開発や最新ロボットの導入支援を行っております! ご関心がございましたら、こちらのページからお気軽にご相談ください。

出典:
Research and Markets: Press Release Global $30+ Bn Agriculture Drones and Robots Markets, 2020-2021 & 2026 - Opportunities in Rising Technological Advancements in the Asia Agriculture Industry
Carbon Robotics: Autonomous LaserWeeder, CARBON ROBOTICS CLOSES $27 MILLION IN SERIES B FINANCING ROUND LED BY ANTHOS CAPITAL
Small Robot Company: 公式サイト, Small Robot Company £4m Crowdfunding Success: Public Back Sustainable Farming Future
Iron Ox:Technology, Meet Grover
農林水産省:スマート農業, 「スマート農業プロジェクト」について, 「スマート農業の導入によるさまざまなメリットや課題が明らかに!」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?