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総合診療トピックゼミ

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地域病院で診療を行うための診療ノート(メモ書き)です。
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#初期研修医

Day.22 低Na血症の診療メモ【総合診療トピックゼミ

<Story> 休日の救急外来担当日、1人の中高年女性が来院された。なんとなくだるいから診てもらいたいと思ったそうだ。なんなら他院でも、倦怠感の精査を進めているそうである。Vitalの崩れもないし、意識レベルもクリア。ぱっと見の印象としても元気そうだが、一応採血へ。結果、低ナトリウム血症が判明する。さて、どうする……。 <まずは、重症か軽症かを判断する> 重症か軽症かによって、初動が異なります。基準は以下です。 ◇重症:痙攣・昏睡 ◇軽症:軽微な意識障害や食思不振以下の症

Day.21 縫合と抜糸の診療メモ【総合診療トピックゼミ

<Story> 頭を打って、皮膚がぱっくり割れてしまった男の子がやってきた。幸い意識ははっきりしていて元気に四肢を動かしているので傷の処置だけでよさそうだ。麻酔、洗浄、そして縫合。翌日、キズを一度見せてもらって……抜糸っていつがいいんだろう? <縫合前後のステップ>1)キズの処置だけでいいのかを判断する。 例えば、気を失って転倒したなら、失神の原因検索が必要。思いっきり打撲したのなら、または異物が残っている可能性があるなら、レントゲンでの評価が必要になる。 2)麻酔を

Day.16 肝硬変周辺疾患の診療メモ【総合診療トピックゼミ】

<Story> お腹に腹水が溜まっていて、意識もなんとなくぐったりして見える。そう、肝硬変だ。幸いVital Signは崩れていないけれど…… <肝性脳症について>◇病態◇  肝硬変患者は、アンモニアを尿素回路で分解することができない。代償として、他の回路(骨格筋でのグルタミン合成)での消費を行っている。  ここに追加の要因(感染、消化管出血、便秘など)が加わると、代償機構が破綻する。 ◇症状◇  意識障害、羽ばたき振戦が有名だが、初期の意識変容は「疲れやすい」、「

Day.15 椎体骨折の診療メモPlus【総合診療トピックゼミ】

<Story> 高齢者の転倒による圧迫骨折の対応は分かるけど、高エネルギー外傷による若者の椎体骨折も同じように扱っていいんだろうか……。そう思っていたところに、整形外科医の先生が。「すいません、ちょっと質問いいですか???」 <手術適応について:TLICSスコア> Thoraco-Lumbar Injury Classification and Severity score (TLICS)が手術適応を非専門医が判断するのに使いやすい。項目は以下の通り。 1)形態☞Xp・C

Day.13 下痢の診療メモ【総合診療トピックゼミ

<Story> 外来に来られた患者さんの主訴は、数日下痢が続くことだった。腹痛や血便など確認するが、下痢以外は症状がなく、本人も元気そうでケロッとしている。これなら、感染性腸炎の暫定診断(診断ではない。ゴミ箱診断なのだから)で経過観察ができそうだ。と思いつつも、頭の片隅に思う。下痢の診察って何に気をつける必要があるんだっけ??? <なにはともあれVital Sign> 下痢は、例えば水様便という形で大量に水が体から失われる疾患である。回数や量によっては、水が失われ過ぎてショ

Day.12 急性膵炎の診療メモ【総合診療トピックゼミ

<Story> 女性の腹痛患者が運ばれてきました。Vitalは安定していますが、お腹がちょっと張っているようです。どこを触っても痛いと言われます。便秘がちと言われるし、便秘でしょうか、しかしそれにしては顔がしんどそう。画像評価をしてみると、膵臓の周囲の脂肪織が目立ちます。採血にアミラーゼを追加すると、なんと1000越えです。急性膵炎ですね。とりあえずは点滴で脱水補正を開始しました。さて、入院になるでしょうが、この後どうする……? <最初のオコトワリ> 膵炎の対応には、どこ

Day.8 熱性けいれんの診療メモ【総合診療トピックゼミ】

<Story> 1歳の男の子がけいれんを主訴に救急搬送されてきました。38度のお熱もあったようです。お父さんにだっこされて処置室に入ってきましたが、けいれんしていた男の子はと言えば、目もしっかり空いていて、きょろきょろしています。さて、熱性けいれんの診断で、帰宅でOKでしょうか? <一応ですが、もし痙攣が止まっていなかったら> PALSに従ってください。気道確保(とりあえずは体勢を整える+吸引でいいでしょう)、酸素投与を行いつつ、抗けいれん薬を投与してください。 けい

Day.7 高血圧症に潜む原発性アルドステロン症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】

<原発性アルドステロン症の特徴> ◇副腎皮質からのアルドステロンの自律分泌・過剰分泌が病態。 ◇アルドステロンの作用で…… 1)Naが体内に貯留して、高血圧に 2)血管、腎臓、心筋にダメージを生じる →つまり、高血圧の背後にいるのであれば、見つけ出して介入したい疾患です。血管、腎臓、心筋にダメージって嫌じゃないですか。 そしてそもそもに、2次性高血圧の原因としては最多です。 <スクリーニングする> 採血で下記を調べます。 〇PAC:アルドステロン濃度:pg/mL 〇

Day.5 脂質異常症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】

<Story> 定期受診の患者さんが、毎月の薬をもらいにやってきました。前回来院の際には、他の先生が採血をしていたようなので覗いてみたところ、脂質関連の項目に異常値が……。処方はどうしたらいいんだろう……。 <脂質異常症の捉え方> 脂質異常症を採血で考えると下記の通りです。 ◇LDL-C>140mg/dL ◇HDL-C<40mg/dL ◇TG-C>150mg 但し、治療介入による予後改善効果がはっきりしているのは、LDL-Cのみです。言ってしまえばこれだけが別格ですの

Day.4 椎体骨折の診療メモ【総合診療トピックゼミ】

<Story> 屋根で作業をしていた若い男性が足を踏み外して2mの墜落。救急搬送となった。幸いにもVitalは安定していて神経症状もない。ただ、腰をすごく痛がっていて、画像検査で腰椎が1か所折れていることが判明した。入院はできるが整形外科医はいない。さてどうする? <初期評価> 次の事項を確認します。 1)神経症状が出ているかどうか。 ☞神経症状(特に運動障害)が出ている場合には、除圧+固定術の実施(判断)を急ぐ必要があります。Ope体制と整形外科のある病院へ。 2)