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Day.5 脂質異常症の診療メモ【総合診療トピックゼミ】


<Story>

定期受診の患者さんが、毎月の薬をもらいにやってきました。前回来院の際には、他の先生が採血をしていたようなので覗いてみたところ、脂質関連の項目に異常値が……。処方はどうしたらいいんだろう……。

<脂質異常症の捉え方>

脂質異常症を採血で考えると下記の通りです。
◇LDL-C>140mg/dL
◇HDL-C<40mg/dL
◇TG-C>150mg
但し、治療介入による予後改善効果がはっきりしているのは、LDL-Cのみです。言ってしまえばこれだけが別格ですので、LDL-Cを中心に考えます。

<まずは脂質異常症が2次性でないか確認する>

下記は脂質に影響するため、可能性がないか検討します。
内分泌系:甲状腺機能低下症、クッシング症候群
肝臓:ネフローゼ症候群
内服:ステロイド、経口避妊薬、βブロッカー
などなどです。

<次に、冠動脈疾患と糖尿病があるかを確認する>

そもそもに高脂血症がよくないのは、心筋梗塞が増えるからです。従って…1)冠動脈疾患を抱えている場合には、全例薬物療法を導入します
→二次予防の対象です。LDL-Cを100mg/dL以下まで下げに行きます。

2)心血管疾患 and/or 糖尿病を抱えている場合も、薬物療法を導入します
→一次予防の対象ですが、ハイリスクです。

3)上記に該当しなければ生活指導。
*高リスク群には薬物療法を導入します
→どこまで下げていいかは、実は分かっていません。
*高リスク群は「吹田スコア」を確認してもらえばと思いますが、ここまでの条件(つまり心血管疾患と糖尿病)にひっかからずに、かつ、誰がどうみてもこれは薬物療法をするぜというリスクに届くのは、中年男性+喫煙+高血圧が揃っている場合くらいです。

<生活指導を行う>

この辺を避けてもらってください。
◇白い穀物 → 玄米はOK
◇野菜・果物ジュース → 野菜や果物そのものはOK
◇赤い肉(豚・牛)、加工肉 → 豚肉、左官はOK
◇動物性脂肪、サラダオイル → オリーブオイル

<薬物療法>

◇二次予防の対象の場合(つまり心筋梗塞既往がある場合)
→ロスバスタチンカルシウム 1回10mg 1日1回
*初回投与は5mg以下から開始して漸増する。

◇一次予防の対象の場合
→アトルバスタチンカルシウム 1回5~10mg 1日1回

◇高TG血症の場合
フィブラートをスタチンに追加して使用する場合はある(原則、単剤ではなくスタチンと併用)ものの、使用する意味がどれだけあるかははっきりしていない。膵炎リスクも下がるやら下がらないやら。

<Column>

予防という領域は結構面白いですよね。脂質異常症のコントロールそれ自体が、心筋梗塞を起こす確率を下げるためにやっているわけで。理想的には、心筋梗塞を適切に治療するよりも、心筋梗塞そのものが発生しない医療が展開できたらと思うのですが。

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