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Day.21 縫合と抜糸の診療メモ【総合診療トピックゼミ


<Story>

 頭を打って、皮膚がぱっくり割れてしまった男の子がやってきた。幸い意識ははっきりしていて元気に四肢を動かしているので傷の処置だけでよさそうだ。麻酔、洗浄、そして縫合。翌日、キズを一度見せてもらって……抜糸っていつがいいんだろう?

<縫合前後のステップ>

1)キズの処置だけでいいのかを判断する。

例えば、気を失って転倒したなら、失神の原因検索が必要。思いっきり打撲したのなら、または異物が残っている可能性があるなら、レントゲンでの評価が必要になる。

2)麻酔を行う。

歯科で局所麻酔を行うことが多いため、歯科麻酔の注射など中心にアレルギー歴を確認して、問題なければ局所麻酔を実施する。

3)洗う。

とにかく洗う。汚染があれば、感染の原因になる。また、感染しなくとも、外傷性の刺青として跡が残ってしまう。可能な限り綺麗にする。

4)キズを評価する。

縫う必要があるのか、ステリテープでいけるのかを判断する。また、異物がのこっていないかをよく確認する。加えて、猫咬傷(猫に噛まれた)、犬咬傷(犬に噛まれた)、人咬傷(人に噛まれた)のような、縫ってはいけないキズでないことを確認する。

5)必要なら縫合する。

縫合前に、キズが残ること、創部離開や感染のリスクがあることも説明しておく。縫合が終わったキズは被覆する。

6)感染予防を行うかを決定する。

屋外でけがをした場合や、創口に砂があった場合など、創部がきれいとは考えにくい場合には、抗菌薬と破傷風ワクチンを使用する。

7)再診の指示を出して帰宅。

まずは、翌日1度来てもらう。来てもらって、創部がずれていないか等を確認する。そして、創部に問題なければ感染徴候があれば再診をお願いするとともに、トラブルなく経過したら抜糸の日にまた来ていただきたいことをお伝えする。

<抜糸はいつがいい?>

目安は下記の通りである
◇体幹部・頭部:7日程度
◇四肢:10日~14日程度

<ついでに、糸の太さの目安も……>

頭部      4-0 or 5-0
顔面      6-0
肩関節~肘関節 3-0 or 4-0
肘関節~手関節 4-0 or 5-0
手関節以遠   5-0 or 6-0
大腿部~足関節 3-0
足関節~足部  4-0 or 5-0
足指      5-0 or 6-0

<Column>

 さて問題です。縫った傷が一番開きやすいのっていつでしょう?答えは、抜糸の直後です。抜糸したとき、表面から見ると完璧に皮膚がくっついたように見えます。但し、実際には一度傷をおった皮膚がもともとの耐久度に戻るには結構時間がかかります。だから、抜糸をする1~2週間の段階では、指で触ったり引っ張ったりすると、キズが開くことが結構あります。じゃあ、もっと抜糸を遅らせればいいかと言えば、そういうわけでもありません。抜糸を遅らせれば遅らせるほど、ブラックジャックの顔面のように縫合痕が残る確率が上昇します。
 そういう意味では、抜糸のタイミングは、縫合痕が残りにくい範囲でできるだけ長い時間というイメージで目安が決まっています。お願いですから抜糸後のキズはひっぱったりせず、優しくしてあげてくださいね。

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