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【ワットチャイヤティット】ホラーみが強すぎる扉絵「乙女の果実がなる木」のはなし

タイは日本で地獄寺の本が出版されるくらい地獄絵に関しては充実しています。

ワットバーンクンティアン
壁画の地獄部分

凄惨な攻め苦の地獄絵や死体が白骨化するまでの過程を描いた九相図は日本でも見ることができますし、タイのそれらはコミカルなタッチで、日本のものの方が不気味さでは優っていると思います。

この本面白いのでオススメ!

しかしタイの寺院めぐりをしていると、ジャータカ物語をベースとした「ちょっと意味が分からん」不思議な壁画やモチーフに出会うことがあります。

暑い日が続きますので、ちょっと寒くなるようなお話しをしてみましょうか。

今日は【乙女のなる木】の扉絵がある寺院を紹介しようと思います。

変則的な壁画の配置

ワット・チャイヤティットはMRTバーンクンノン駅から歩いて10分ほどの所にある小さな寺院です。

平日の夕方近くに伺ったので、本堂が空いてないなぁと外から眺めていたら、お掃除のおばさまが僧侶に声をかけてくれて鍵を開けてくれました。
こういう瞬間は本当にお寺が呼んでくれたんだなぁと感じます。
(何回行っても本堂が開いていない寺院もあります)

柵の外側から必死に写真を撮っていると
おばさまが声をかけてくださいました

グーグルマップの口コミも少なく見逃してしまいそうなこの寺院を訪問したきっかけは、タイ版ヤフー知恵袋とも言える”Pantip”に「バンコク・ノーイ側で古い壁画のある寺院を探しているのでみなさんのおすすめを教えてください。」と投稿したところ、多くの方に回答を頂き、そのうちのひとつがワット・チャイヤティットだったからです。

砂岩の結界石と台座がいい!

ちなみに皆さん熱心にたくさんの寺院をおすすめしてくださったのですが、仕事や授業の兼ね合いもあり全てを訪問できず、次回の宿題としています。

しっかり正面から撮らせていただきました

さて、さっそく中に入ってみると、さすがマニア(?)おすすめの寺院だけあって、素晴らしい壁画が展開されていました。

アユタヤ時代後期に建てられたというこの寺院、すぐ横に川があるのですが、1942年に大きな氾濫があり下部はほとんど剥落しています。

この寺院の壁画はなかなか珍しい配置になっています。

釈尊の後ろに須弥山を中心とする仏教の宇宙観・トライプーム。

窓のあるところから下は下界になります。

そして入り口側、釈尊の正面には三道宝階降下。

とここまでは、どこの寺院でもよくある配置なのですが、降魔成道図が本堂の北側に描かれているのです。

三点フルセットであることはあまり珍しくはないのですが、だいたい降魔成道図は本尊の正面に描かれることが多いです。

メートラニー(釈尊の下にいる女神)好きの私としては、写真を撮りやすい場所に描いてくれてありがとう!ですが、寺院による壁画配置の個性はどのように決まるのか興味があります。

またいつかまとめて書こうと思っているのですが、メートラニーの図像には立っているかしゃがんでいるかの2通りしかないのです。
卒論のテーマにしたいのですが、タイではこんなに愛されているメートラニーなのに、彼女だけに焦点をあてた論文が少ないのが悩みです。

美しい壁画の数々

話がそれましたが、他壁画を見ていきましょう。
これも個人的に好きなシーン、ゴータマが愛馬に乗ってこっそりとお城を抜け出すシーン。

右手の立っている女性がマーヤー夫人で、脇からゴータマを出産したシーン。
中央に立っている子供がゴータマ。

釈尊が亡くなり遺骨の分配どうするねん!と内輪もめ中の図

などなど360度、素晴らしい壁画がびっしりと描かれています。

これは兄弟ブタの話かな?

これなんか面白いですね。
虎に身を捧げる「捨身飼虎」の図か、はたまたいつどういう原因で死ぬか分からないよという図なのか。

捨身飼虎の話だったら
小虎が描かれているんじゃないかな?
とも思います 

木からぶら下がる乙女

さて、十分堪能させていただき、再度本尊にお礼をし外に出ようと思ったら、入り口のドアの裏側に奇妙な絵が描かれていました。

木に女性が成ってる!
これはなかなか気持ち悪い絵だな…

調べてみると、「ナリーポン」という乙女が実る木で、これもジャータカ物語にある物語だそうです。
もしかしたら他の寺院にもあったかもしれませんが記憶にないんですよね。

ナリーポンは7日間だけ乙女の形の実を付けます。
ジャータカ物語の中で、ヴェッサンダラ王子の妻マディがヒンマパンの森に隠れているときに、彼女が安全に過ごせるようにインドラ神が森に住むルーシー(仙人)をはじめとする男たちの気をそらすために植えた木です。
好色の仙人たちがナリーポンを摘んで性交するとたちまち魔力を失うとされています。

このナリーポンの話は、東南アジアでは様々な呼び方で存在していて、ラオスでは果実を彫って干したものをミイラっぽく仕上げてお守りとして販売しているとか。

とにかく、こういう図像も存在するんだなということが分かって、新しい発見となりました。

シンプルだけどひと癖ある仏堂

では、次に順序が逆になってしまいましたが、ヴィハーン(仏堂)を見てみます。

布薩堂は中華風、仏堂はタイ風としつらえが異なるのが面白いです。

中は、いたってシンプルですが、仏像のお顔はこちらの方が好みかも。

こちらの扉の浮彫もちょっと変わっていて、体は鳥、頭は人間の二匹がキスしているようなモチーフがありますね。

なかなか面白い寺院に出会えて、楽しかったなーと大満足。

布薩堂を開けてくださったおばさまと、僧侶にお礼を言って寺院を後にしました。


今回の「Pantip寺院リスト」はいずれもなかなかクセのある、珍しい寺院が多かったので、タイの寺院めぐりがお好きな方は「Pantip」で質問してみてはいかがでしょうか?

さすがタイだけあって、寺院や仏像、ご利益に関するジャンルが豊富です。
占いやパワースポットが好きな方は「サーイムー(สายมู)」ジャンルで質問するときっと山ほど答えてくれると思いますよ。


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