がいどらいん

きのこが癌に効く。そんな夢のような話があったらいいですね。腫瘍が見つかった……。手術は怖い。抗がん剤も怖い。他に方法はないかなと探してみると、きのこで治す、食事で治すとか、ホメオパシー、耳障りのよい言葉が載った本やウェブサイトが出てくるかもしれません。でも、そんな夢のような方法が存在するのでしょうか。100人医療従事者がいたら、99人が否定して、1人が主張する素晴らしい方法なんて存在するんでしょうか。

存在しないのであれば……人を惑わしてしまい害になるかもしれない。とても怖いですね……。某IT企業のトップであったり、有名な芸能人の奥さんであったり、代替療法を試した事により悲惨な結果になってしまうこともあります。

私は全くの無知で、専門家じゃないから詳しい事はわからないですが……最近「思うところ」がありました。私自身が喘息で苦しんでいたりするので、専門家じゃないなりに書いてみます。

100人中99人が否定するような代替療法が勧められないならじゃあどんな治療を受けたらいいのかな。どんな医療従事者にかかったらいいのかな。迷ってしまいますよね。そういう時に参考になるのが”標準医療”と呼ばれるものかもしれません。医療?というものは過去から現在にいたる膨大な知識を集積してエビデンス・治療の根拠を確立しているようです。それらのエビデンスを集めた診断指針・治療指針をいろんな学会や機構が”ガイドライン”としてまとめているようです。

自分が治療を受ける場合に、その治療が標準的なものなのかなと、と気になったら……治療をしてくれている目の前の医療者が標準医療・EBM(根拠に基づいた治療、どの医療者からもコンセンサスを得ている、失礼な書き方かもしれませんが、大多数の”まともな”医療者が行う標準的な治療)を行っているのか。そして、目の前の医療者が標準医療・EBMを行うために国内・海外のガイドラインをきちんと把握しているか、知る事が出来たらいいのかなと思います。

ですので、「お忙しい中申し訳ありません……私の病気は一般的にはどのような治療が行われているのでしょうか」とか「ガイドラインというものがあると聞いたのですが、とても不安で……もしできましたら、お時間を取って説明して頂くことは難しいでしょうか」とか、角が立たない言い方で医療者に聞いてみるといいかもしれません。失礼に感じる医療者もいるでしょうから難しいところですが、当たり障りのない聞き方をするといいかもしれません。「ガイドラインといった堅苦しいことに縛られた治療はしたくない」「薬は害だから全て辞めなさい(結果として入院……)」「自分がやっている事が正しいんだ」、とか言う医療者がいたら、、、もしかしたら見切りをつけた方がいいのかもしれません。残念ながら、知識のアップデートをせず、ガイドラインやレビューすら読んでいない医療者もおり、説明しないのではなく、説明できないケースもありますから……。思いつきで根拠のない、独善的な治療を行なっている医療者は論外?だと思います。

以下は蛇足です。

専門知識なく、むやみにガイドラインや文献を読んでしまうとかえって不利益になる事があります。ですので、こんなものがあるのかなと思っていただけるといいかもしれません。

ガイドライン。聞き慣れない言葉ですが……そのガイドラインがどのように作られているか知るとためになりそうです。専門的な事はよく知らないのですが、ちょっと書いてみます。

その前に、前提としてガイドラインは全ての人に画一的に適応できるわけではないですし、後で書くように医療の専門知識がないにも関わらず、むやみに参考にしてしまうと害になり得ますので、注意する必要があるかと思います。ちょっときつい言い方ですが……

ガイドラインはQ &A、アルゴリズムの形式で、どういった方針を取るのがベターかを提示しているものが多いです。下にあげたようなやつです。

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdgl/parkinson_2018_22.pdf

https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001241/4/pediatric_asthma.pdf

海外のものだと私が苦しんでる喘息……で参考になるものは下に書いてあるものですね。GINA……少しみづらいですが。

https://ginasthma.org/wp-content/uploads/2022/07/GINA-Main-Report-2022-FINAL-22-07-01-WMS.pdf

あとは……私は気持ちが落ち込んだり、元気になったりするのですが、下のガイドライン(カナダ)CANMATなんかをよく読んでいます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5947163/

繰り返しになってしまうのですが、専門知識がないのにこういったものを読んでしまうとかえって有害無益(?)な事の方が多いかもしれません。

ですので、先程書いた事と被ってしまうのですが……まず標準的な治療というものがあるという事を知っておいて、治療をしてくれる人に対して、「一般的にどんな治療が行われているのでしょうか」「海外だとどんな治療があるのでしょうか」と角が立たないように、聞いてみるのがよさそうです。忙しい時に質問責めにしてしまうと迷惑かもしれませんから、ご多忙の中申し訳ありませんが治療方針を聞いてみたいです……とかなんとか言って、医療従事者にまとまった時間を取るようにお願いしてみてもいいかもしれません。もちろん、治療を受ける側は聞く権利はあるのですが、何事も角を立てないことが大事ですね。先程書いたように上に書いたような質問に対して理路整然と答えられるかどうか。調べながらでもいいから説明できるかをじっくり観察してみるとよいかもしれません。そもそも目の前の医療者の診断の見立てや、推論方法、鑑別自体が誤っていたら話にならないのですが……それはまた別の機会に書いてみます。

日本のガイドラインの話に戻ります。
色々読んでみると、各Q &A形式のページやアルゴリズムには、推奨レベルが記載されます。推奨レベルが高いものから順にランク付けがされ、一番推奨レベルが低いもの、推奨されない物はネガティブといった評価になります。ネガティブ……やらない方がいい。やったら害になるといった方針ですね。

この推奨レベルはRCT(ランダム化比較試験、バイアスを避けるための研究方法の一つです)やメタアナリシス(代表的なもの複数のRCTを解析したもの)といった大規模な研究の結果を背景にして決められます。たくさんの人を対象にした研究。そんな研究を集めていい結果が出た治療。信用できそう……ですね。

ただここで一つ問題が起こります。大規模なRCTは新しい薬で行われる事が多いという事です。大規模な研究結果ががたくさん提示され、そこに出版バイアス等が加わり、推奨度が上がることにつながる場合があります。大規模な試験は、新しい商品を販売しようとする企業の援助により行われる事は少なくありません。古い薬や治療の大規模試験は行われていなかったり、古い基準による研究を基に行われていて、仮に効果があっても推奨レベルが上がらないといったパラドックスが起きてしまいます。見かけ上新しい商品の推奨度が上がってしまうということですね。お金もうけのため。でも、製薬会社が潰れちゃったら薬も作れません。慈善事業じゃないから仕方がないのです……

エビデンスを作る際にはいくら避けようとしてもたくさんのバイアスがあります。また、ガイドラインは国ごとの事情を反映します。人種の違い、その国の社会福祉制度、経済レベルの影響を受けている事は無視できないですね。日本のようにすごいやすく治療受けられる国ばかりではないでしょうから。経済的に困窮して、医療福祉サービスが不十分な国で高くて使えない薬をFirst Lineにするのは、その国の実情にあっていません。

そして、ガイドラインは有効性よりも安全性を重視する場合が少なくありません。有効な方法よりも、安全性……つまり保守的になりがちかもしれません。

ですので、もしかすると……ガイドラインに厳格になりすぎることにも問題がないわけじゃないかもしれません。また繰り返しになりますが、専門家じゃないのに中途半端にガイドラインを見てしまうと、見当違いな解釈をしているかもしれませんの注意が必要です(怖いです……)。

そうはいってもガイドライン以外に客観性が担保されたものがない以上、目の前の医療者がガイドラインに沿って行動しているか、”独善的な事をしていないか”を知ることは大切なのかなと思います。そもそもガイドラインすら知らない、自分がやっていることが正しいんだ、ではお話にならないですよね……一番最初の話に戻るわけですね。

最後に、エビデンス自体がない、少ない病気の方が多いので、そういう時にはエキスパートの意見に頼らざるを得ない場合が多いです。いわゆるベテランの臨床経験です。そういった病気については「エビデンスが確立されていない」、「この治療はあくまで報告レベルに留まるのですが」、ときちんと言ってくれて、「試行錯誤にならざるを得ない」、と十分に説明をしてくれる医療従事者にかかりたいかな、と私は思います……

なんだか難しい言葉がたくさん出てきました。文章を書くのが苦手なこともあって、私には理解が難しいのですが……怪しげな治療じゃなくて、標準的な、良心的な医療従事者に治療をしてもらいたいですね。


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