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ビュッフェの神さま

郵便屋さんは何をしていても絵になる。
筋トレをする郵便屋さん、スマホで政治関連の記事を読む郵便屋さん、ザコシの動画でのたうち回る郵便屋さん……。
その中でも一番良いのは何かを真剣に選ぶ郵便屋さんだ。
ウィンドウショッピングも良い。
しかしそれだと私も買い物に夢中になってしまい、郵便屋さんに集中できない。
そこでビュッフェ・バイキングである。
席で食事を楽しみながら料理を選ぶ郵便屋さんを堪能することができる。
下を向く時の視線や首筋、そして大きめのお皿を持つ腕のしなやかな筋肉。
この瞬間を宝物のように思う。
初めて見る野菜に目を細めたり、『こういう食べ方が出来ます』という案内の通りに真似てみたりする様子を見るのも好きだ。
産んでもいないのに息子の如く愛おしい。
かと思えば美味しそうな料理はほんの少し多く持ってきて本当に美味しいと「食べてごらん」と私にも分けてくれる器量の良さがある。
そんな時は母性さえ感じる。
時々この人から産まれたかったと思うことがある。
それが不可能な今、結婚したのは限りなく正解に近いのかもしれない。

幸せを噛み締めている間にも彼の皿は空いていく。
次は何を持ってくるのかしら、と自分はモタモタと咀嚼しながら再び離れた彼を見て、待つ。

彼の盛り付けセンスに脱帽する。

こういうのはどこで習ってくるのか。

味噌汁で一ブース使ってしまう私とは訳が違う。

しかし郵便屋さんのビュッフェスタイルにも一つだけウィークポイントがある。

ソフトクリームが絶対にチンポっぽくなってしまうのである。
「えへへ、またチンポだよ」
そう照れ臭そうに笑いながらアイスを食べる郵便屋さんに、私もまた癒される。
チンポの先からこぼれない様に掬い取られたミルクの甘味が明日の郵便屋さんを作っていく。
明朝、目覚めた瞬間にまたこの人に逢える。
そう思うだけで少し胸が苦しく、その頃には腹も苦しくなってくるのであった。





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