見出し画像

《動物介在療法の小説》 前川ほまれ『臨床のスピカ』無料公開2

♯1 2012年 春

 自宅アパート前には、桜の花弁が散り落ちていた。緩い風が吹くと、小さな薄紅が足元の側を転がっていく。遥は自然と、隣家の庭先で枝を伸ばすソメイヨシノを見上げた。この調子なら、二週間後には葉桜に変わってしまいそうだ。妙な感傷を抱いてしまうのは、入職式に対する不安や緊張が強いせいだろうか。今年は満開の桜より、リクルートスーツの窮屈さが新しい季節の到来を実感させた。
 歩き出そうとしたタイミングで、ジャケットのポケットから振動を感じた。スマホを取り出すと、画面には〈武蔵おじさん〉と表示されていた。
「もしもし?」
「おうっ。まだ家か?」
 電波に乗って、おじさんのしわがれた声が聞こえた。さっきまでの不安と緊張が少しだけ和らぐ。
「ちょうど、今から出るとこ」
「そうか。朝メシは、ちゃんと食ったか?」
「うん。昨日の夕方まで、おばあちゃんがいてくれたから。今日の分の朝ごはんも、タッパーに用意してくれて」
 おじさんは「そうか」と短く告げて、間を開けた。多分スマホを耳に当てながら、煙草を吸っているんだろう。
「おじさんは、今どこ?」
「静岡のラーメン屋の駐車場。さっき工事資材の積み下ろしが終わって、朝メシ食ってた」
 長距離トラックドライバーとして働いているおじさんは、全国各地を飛び回っているためシフトの都合で家を空ける日も多かった。
「とにかく、そっちでも頑張れよ」
「うん。わかった」
 改めて感謝を告げようと、息を吸い込む。新生活に必要な費用を出してくれたし、物件探しも手伝ってくれた。おじさんがいなければ、落ち着いて入職式当日を迎えることは無理だったはずだ。
「たまには帰ってこいよ。ばあちゃん、寂しがっから」
「了解。それでさ……」
 感謝の言葉を告げる前に、電話は切られた。まだ肌寒い風に、実家にいた頃に良く嗅いでいた煙草の香りを一瞬だけ感じた。
 駅に近づく度に、人通りは増えていく。大学生風の集団やお洒落にスーツを着こなしている女性を横目に、明大前駅の改札を通り抜けた。調布や橋本方面へ向かう車両が到着するのは、1番線ホームだったはず。普段より鼓動が速くなっているせいで、ホームに続く階段を上るだけで息が切れた。  
 下り方面に向かう京王線の快速電車に乗り、ドア付近で立ったまま一息吐いた。緊張のせいか、やけに喉が渇く。合皮のリクルートバッグから緑茶のペットボトルを取り出し、口に運んだ。埼玉の実家から東京のアパートに引っ越して、まだ二日しか経っていない。車窓に映る風景に馴染みはなく、街全体が白々しく目に映った。
 引っ越しが入職式直前になってしまったのは、国家試験に、不合格の可能性が高かったからだ。試験は二月十九日に実施され、合格発表はその翌月の三月二十六日。看護師国家試験の問題は大きく分けて、必修問題、一般問題、状況設定問題の三種類で構成されている。その中でも全五十問の必修問題は、絶対基準で評価される。たとえ総合点が合格ラインを超えていたとしても、必修問題の八割を正解しなければ不合格になってしまう。
 解答速報サイトによってはいくつか答えが割れている設問があったが、自己採点の結果、必修問題が三十九点しか取れていなかった。既に去年の秋には、時津風病院から採用内定を貰っていた。しかしあくまで「国家試験に合格したら」という前提があってのことだ。 
 運命の三月二十六日。恐る恐るアクセスした厚生労働省のサイトで、自分の受験番号を発見した時は信じられなかった。必修問題が満点だろうが、四十点だろうが同じ合格だ。看護師免許を取得できたことで、四月からの生活は一変する。二月十九日以降、顔を隠すように俯いていた日々は瞬時に消え失せた。目尻から垂れた嬉し涙が、興奮して熱を帯びた頰を湿らせたのを憶えている。
 合格の喜びを嚙み締めた後は、慌てて不動産屋のサイトに目を凝らした。不合格と自覚していたせいで、新生活の準備を何もしていなかった。実家の埼玉から、時津風病院まで通勤するのは難しい。去年発生した東日本大震災の影響もあり、おじさんからは耐震性の高いオートロック付きの物件を選ぶように忠告された。しかし三月下旬に新生活に向けて動き出す者は少ないのか、好条件の部屋はどれも契約されていた。結局予定していた家賃より五千円も高い、日当たりの悪い部屋を選んだ。それからは急いで荷造りを終え、必要最低限の安い家具を買い揃えた。中古で買った洗濯機を運び入れたのは、入職式二日前のことだった。
 車両が千歳烏山駅に到着する。気合を入れるように、スーツの皺やシャツの襟元を正した。改札を通り抜け、区民センター前広場を通過し、左右に立ち並ぶ飲食店を横目に甲州街道がある方向へ歩き続ける。最寄り駅から時津風病院まで、徒歩十五分は掛かる。期待と不安を交互に抱きながら、駅近とは言えない通勤経路をやり過ごしていく。
 甲州街道に架かる横断歩道橋の階段を上り切り、地上から五メートルほど高い場所で足を止めた。眼下を眺めると、四車線の車道を乗用車やトラックがとめどなく流れ去っている。再び顔を上げた先には、職場となる白い建物が小さく見えていた。
 時津風病院は、社会福祉法人が運営する総合病院だ。病床数は五百床近くに及び、診療している科も多彩で沢山の患者を受け入れている。都心の住宅地で開院しているとはいえ、東京ドーム1・5個分の広大な敷地面積を有しており、本棟、新棟、診療棟、事務棟の四つの建物がそれぞれ渡り廊下で繫がっている。敷地内には病院の他にも、介護老人保健施設やケアハウス、精神疾患に特化したデイケアや訪問看護ステーションが存在し、高齢者や地域移行を目指す者へのサポートも充実している。去年参加した病院説明会でも、長らくこの地域の中核病院として機能していると説明されていた。
 病院の正門を通り抜けると、鼻先に木々の青い香りが触れた。時津風病院のコンセプトの一つに〈緑豊かな療養環境〉が掲げられている。敷地内には多くの樹木が植えられていて、コンクリートで舗装された通路には木漏れ日が描かれていた。鼓動が速まるのを感じながら、敷地内を歩き続ける。数メートル先では同じようにリクルートスーツに身を包んだ人々が、革靴やローヒールのパンプスを鳴らしていた。その響きが、また緊張を煽っていく。
 入職式の会場は、事務棟二階にある研修ホールだった。壇上に立つ司会者が開会宣言をし、次に院長の祝辞が始まった。「患者様の笑顔」「医療の発展」「職員同士の切磋琢磨」という言葉が、マイクを通して響き渡る。入職式には看護師の他にも、医師、薬剤師、理学療法士や作業療法士、臨床検査技師、放射線技師、事務クラーク等の新入職員たちが参加していた。続く事務長の訓示や先輩方の激励の言葉を耳にしながら、控え目に周囲を見回す。真剣な表情を浮かべた新入職員たちが、壇上を見つめている。その中に知った顔はない。自らが選んだ環境とはいえ、今になって心細くなった。
 一時間程度で入職式が終わると、それぞれの部門で院内オリエンテーションが開催されることになっている。新人教育係の看護師によって誘導されたのは、事務棟三階にある第一会議室。スライド式のドアの向こうには、二人掛けの長机が横に三列、縦に十列以上は並び、奥行きがある室内は広々としていた。今年入った看護師は、計四十八名と聞いている。入職式の場でも、看護部に割り当てられた席が一番多かった。
「十分後に、看護部長が顔を出します。トイレに行きたい方は、今のうちに」
 新人教育係の掛け声を聞いてから、窓側の一番後ろの席に腰を下ろした。リクルートバッグを机の下のラックに仕舞い、密かに息を吐く。周囲では、既に仲睦まじく話し込んでいる同期も多かった。多分、看護学校からの友人同士なんだろう。
「ここ、座って良いですか?」
 気付くと、同じようにスーツを着た女性が隣の椅子を指差していた。
「……どうぞ」
 短く返事をすると、隣で椅子を引く音が聞こえた。年上のような気がした。それも一つや二つではなく、二十代中盤か後半ぐらいだろうか。老けているというわけではなく、自分にはない落ち着いた雰囲気がある。
「もし良かったら、飴舐めます?」
 突然、個包装された飴が目の前に差し出された。そのパッケージには、葡萄のイラストが描かれている。軽く頭を下げて飴を受け取ると、彼女が続けた。
「何科を希望したんですか?」
「えっと、第一希望は消化器外科です。第二希望は脳外科にしました。第三希望は外科系とだけ」
「全部、特に忙しそうな病棟ですね」
「術後の患者が多そうなので、新人としては勉強になるかと思って」
 無事合格したことを病院に伝えた際、所属したい病棟についても希望を訊かれていた。
「そちらは、何科を希望されたんですか?」
「あたしの第一希望は、小児科。でも同じように第三希望まで訊かれたし、思い通りには行かなそうだけど」
 苦笑いを浮かべながら、彼女は飴玉を口に放った。甘い葡萄の香りを纏った声が届く。
「武智詩織です。これからよろしくね」
「こちらこそ。凪川遥です」
 武智さんは艶のある黒髪を、後ろで一つに束ねていた。吊り上がっている目尻は涼しげで、ダークブラウンのアイシャドウが少し冷淡な印象を足している。左目は、白目の部分に青紫が滲んでいた。目の周囲に腫れや傷があるわけではないから、アザの一種なのかもしれない。
「ちなみに、この辺の看護学校卒なの?」
 質問を聞いて、横顔を見つめていたことを悟られないように視線を逸らした。
「いえ、通っていたのは埼玉にある三年制の専門学校です」
「それじゃ、今は二十歳過ぎぐらいだ?」
 頷くと、武智さんの視線が宙に向けられた。
「ってか、なんで埼玉の専門からこの病院? 遠くない?」
 すぐに返答ができず、目を伏せた。本心を隠して、適当な噓を告げる。
「就職を機に、一度東京に住んでみたくて。それにこの病院は、新人研修制度が手厚そうだったので」
「なるほどね。あたしは数年前まで、こことは違う病院で働いてたの。今は正看なんだけど、当時は准看として。そこは新人研修なんて、ほぼなくてさ。先輩も怖かったし」
 正看護師は厚生労働大臣が発行する国家資格だが、准看護師は各都道府県知事が免許を発行する。どちらも基本的に業務内容は変わらないが、准看護師は管理職になれなかったり、正看護師と比較すると給与や賞与が低く設定されていたりすることが多い。そんな理由もあり、途中で正看護師を目指す准看護師の方もいると聞いたことがあった。武智さんは准看護師として何年か働いた後、正看護師の資格を取得するために再び看護学校に入学したんだろう。一応同期という扱いだが、臨床経験で言えば武智さんの方が先輩だ。ようやく飴玉を口に入れ、場を繫ぐように質問した。
「武智さんは、どうしてこの病院を選んだんですか?」
「今住んでる家が近いから。桜上水って知ってる?」
 桜上水は明大前から二つ先の駅だ。思わず、声のトーンが一段上がった。
「知ってます。私、明大前に住んでるので」
「おっ、ご近所じゃん」
「二日前に引っ越して来たばかりなんです。なので、まだ全然慣れなくて……」
 言い終わらないうちに、会議室のドアが開いた。白いスクラブユニフォームを着た看護部長が現れると、騒めいていた室内が水を打ったように静まり返った。隣の武智さんが背筋を伸ばすのが見え、遥も慌てて居住まいを正した。
「皆さん、入職おめでとうございます」
 壇上に上がった看護部長は入職式でも祝辞を述べていたが、改めて同じような内容を快活な声で話し始める。一番後ろの席に座っていたため、多くの同期が看護部長の言葉に熱心に頷いているのが目に映った。そんな光景を眺めていると、病院という組織の一員として組み込まれた実感がした。
「この一年、皆さんの成長を心から楽しみにしております」
 看護部長が締めの言葉を口にしてから、不意に相好を崩した。
「それじゃ、皆さんが一番気になっていることを発表しますかね」
 看護部長はそう前置きをし、ポケットから折り畳んだ紙を取り出した。
「今から、それぞれの配属先を発表します」
 静かだった室内が、瞬時に騒めいた。確かに今ここにいる全員の関心事は「果たして自分は、どこの病棟に配属されるのか?」だろう。思わず、生唾を飲み込む。周囲の騒めきに交じって、隣から飴を嚙み砕く音が聞こえた。
「当院では個々の臨床経験を豊かにするため、二、三年で病棟間を異動してもらうことが多いです。なので今回が希望に沿った配属でなくとも、落胆はしないように」
 看護部長は不敵に微笑み、広げた紙面に目を落とした。
「まずは救急外来……以上、五名」
 見知らぬ同期の名前が、室内に響き渡る。
「次に集中治療室……」
 次々と同期の配属先が決まっていく。心臓の鼓動が速くなる。
「次に消化器外科……」
 第一希望の病棟になり、少し身を乗り出した。計四名の同期が呼ばれたが、そこに遥の名前はない。落胆する暇もなく、次は第二希望の病棟だった。今度こそと思いながら、全神経を看護部長の声に集中する。しかしまたしても、名前は呼ばれなかった。看護部長は淡々と、配属先を発表していく。斜向かいに座っている茶髪の同期は、希望が通ったのか満面の笑みを浮かべている。その表情とは対照的に廊下側にいるメガネを掛けた同期は、不安気な表情を隠そうとしていない。未だ鼓動を高めながら、自分の名前が呼ばれるのを待った。時津風病院の全病棟を把握はしていないが、既にほとんどの同期は配属先を発表されているようだった。徐々に不安が胸を満たしていく。もしかすると何かの手違いで、忘れられているのではないか。第一希望も第二希望も通らなかったのだから、あり得る。きっと、そうだ。
「次に皮膚科・泌尿器科混合。6B病棟。武智詩織さん、凪川遥さん」
 自然と隣に顔を向けていた。たった今同じ病棟に配属が決まった同期と、視線が重なる。
「同じ病棟だね」
「……ですね。予想外でした」
 窓から差し込んだ線のような光が、武智さんの顔を斜めに照らしていた。その光の影響で、アイシャドウにわずかなラメが交ざっていることに気付く。星からこぼれ落ちた砂塵のような輝きが、妙に眩しい。武智さんが微笑みかけてくれたが、何も反応できずに目を伏せた。
 配属発表の後は、院内を見て回ることになっている。座っていた席が窓側だったので、自然と武智さんの後に続く形になった。いそいそと椅子から立ち上がると、頭の中に霧が立ち込めるような感覚がした。すぐに焦点がズレて、視界に映る全てが霞んでいく。
 他の病棟が良かったな。
 さっきまでの戸惑いが、確かな落胆に変わっていた。正直、皮膚科と泌尿器科に興味はない。一応術後の患者はいそうだが、学生の頃から今まで一度も選択肢に挙がらなかった領域。こんな結果になるなら、第三希望も具体的に伝えておけば良かった。外科系だけにこだわらず、内科や循環器だって今考えれば興味があった。もっと遡れば、あの人のせいだ。母がグループホームを追い出されて実家に戻ってこなければ、東京の病院に就職することはなかった。
「遥ちゃん、行こうよ」
 武智さんが、少し離れた場所で手招いている。慌てて一歩を踏み出し、これから同じ病棟で働く同期と肩を並べた。
「なんか遥ちゃん、ボーっとしてなかった?」
「いや……別に」
 曖昧な返事は、進み始めた列の足音に搔き消された。
「お互い希望は通らなかったけどさ、なんとかなるよ」
 それはあまりに楽観的な予想だったが、不思議と胸の騒めきが凪いでいく。武智さんの口調に、確信めいた響きを感じたからだろうか。
「なんとかなる……」
 暗示を掛けるように、今耳にした言葉を呟く。吐き出した息は、ほのかに葡萄の香りが残っていた。

 遥が握った車椅子のハンドルは、少し湿っていた。看護助手さんが除菌クロスで掃除してくれた直後なのかもしれないし、誰かが手を洗って乾かないうちに触れたのかもしれない。目的地の大浴場に向かいながら、ふと気付く。ハンドルが湿っているように感じたのは、自分の手汗のせいだった。
 病棟勤務が始まって、約一ヶ月半。そのほとんどの時間を、未だ緊張して過ごしている。臨床では、看護学生の頃のように参考書を開けば答えに辿り着く場面ばかりではなく、実際に処置を見学したり経験したりして学ぶことも多い。それに患者の病態把握や症状アセスメントをするのはもちろんだが、同時に煩雑な業務をこなす必要もあった。勤務中に着るスクラブ上着の左肩には、ひよこのイラストと〈Fresh Nurse〉と刺繍されたワッペンが縫い付けられ、新人看護師というラベルはまだ剝がされてはいない。しかし患者を受け持つようになってからは、忙しさに拍車がかかっていた。先輩が適宜フォローに入ってくれているとはいえ、多重業務に陥ってしまうこともしばしばだ。何より受け持ち患者の存在は、看護師としての〝責任〟を強く意識させる。その二文字は退勤のタイムカードを押すと、すぐさま〝疲労〟に変わってしまうが。
「ここまで悪くなると、痛くもねぇな」
 投げやりな声が聞こえ、車椅子に座っている男性の頭頂部に目を落とした。辻村勇さん、診断名は糖尿病性足病変。坊主頭は白髪交じりで、毛量も少ないせいか頭皮が透けている。年齢は五十七歳とカルテに記載してあったが、それ以上に老けて見えた。辻村さんの顔には黒ずんだシミが目立ち、目元は落ち窪んでいる。頰や顎の肉付きは良いが、皮膚に張りはなく皺を刻みながらたるんでいた。毎日シャワー浴を実施しているはずなのに、身体からは使い古した天ぷら油のような臭いが漂っている。唯一若々しさを感じられるのは、歯切れの良い口調とよく通る声だけだ。
「痛くないって、足のことですか?」
「おう。見た目はひどいけど、何も感じねぇんだ」
 人ごとのような返事を聞いて、車椅子のフットサポートに乗せている両足に視線を移す。靴を履いているのは右足だけで、左足は吸液性に優れた処置用パッドで包まれていた。辻村さんの左足の一部は、皮膚組織が死んだ状態となっている。いわゆる、壊疽。左足の第五趾は黒く変色し、ひどい悪臭が漂っていた。それに足背には2㎝×2㎝程度の潰瘍も認められ、皮下組織まで露出している。その創部からは、血液や滲出液が多量に滲み出ていた。吸液性パッドで左足を保護していないと、体液ですぐに汚染してしまう。少なくとも今は、両足で靴を履くことは困難なはずだ。
「糖尿病を患うと、足の感覚が鈍くなる人もいますから」
 糖尿病の三大合併症を早口で説明しても、辻村さんは退屈そうに大きなあくびをこぼすだけだった。
「最初は、巻き爪のところが悪くなってよ」
 辻村さんの足趾の壊疽は、糖尿病を患ったことが原因だ。高血糖の影響で末梢の血流は滞り、それに加えて神経障害によって足の感覚は鈍くなっていたようだ。血液が上手く行き渡らないと、細胞に酸素と栄養は届きづらくなる。故にちょっとした傷が出来ても、治癒しづらい状態に陥ってしまう。巻き爪がきっかけで出来た小さな傷は徐々に炎症を拡大させ、今はなす術がないほど患部を黒色に変えていた。
「今までのツケが回ってきたんだな。随分と好き勝手に酒飲んで、食っちゃ寝してきたもの」
 明後日には壊疽した部分を切断する手術が控えているのに、やはり口調に切迫感はない。「もっと早く生活習慣を改善していれば……」という言葉を、声に出す寸前で呑み込む。今更そんなことを伝えても、慰めにもならない。入職して一ヶ月半の新人看護師は、近日中に足の指を切断する患者に掛ける言葉をまだ持ち合わせていなかった。
 大浴場に到着し、辻村さんを車椅子に乗せたまま洗い場に向かった。彼の体重は八十キロを超えている。片足で立つ大きな身体を支えながら、洗い場の介助用椅子に座らせた。足背の潰瘍に塗布する軟膏や医療用ガーゼは、既に用意していた。一つ息を吐いてシャワーの蛇口を捻り、水が微温になったのを確認してから処置用手袋を嵌めた。
「それでは、軟膏処置を始めますね。痛かったら教えてください」
 辻村さんが無言で頷いたのを確認して、左足を覆う吸液性パッドを開いた。洗い場に漂い始めた湯気に、細胞が死んだ悪臭が交じる。鼻の粘膜を焦がすほど強烈なのに、ほのかに甘さが滲む臭い。密かに息を止め、やるべき処置に集中した。
 シャワーで丁寧に洗浄している最中、辻村さんは痛みを口にすることも、苦悶の表情を浮かべることもなかった。洗浄が終わってからシャワーの蛇口を閉め、医師が処方した軟膏に手を伸ばす。容器の蓋を緩めている途中で、大浴場に誰かが入ってくる足音が聞こえた。
「凪川さん、いる?」
 思わず背筋が伸びた。上擦った声で「います」と返事をすると、大浴場の引き戸から色白の綺麗な顔が覗いた。小島美里先輩の大きな瞳と、すぐに視線が重なる。彼女は一瞬で状況を把握したようで、口元に笑みを浮かべた。
「処置中に悪いんだけど、ちょっとだけ良い?」
「はいっ」
「辻村さん、本当ごめんなさい。一分もしないで済みますから」
 小島先輩が辻村さんに向けて、申し訳なさそうに胸の前でほっそりとした手を合わせた。遥もそれにならって患者に頭を下げ、大浴場の引き戸に駆け寄る。小島先輩は脱衣所の方へ二、三歩下がると、瞬時に笑みを消した。
「凪川さんさ、加藤さんの十四時の抗生剤は繫げた?」
 加藤さんも、今日の受け持ち患者だ。全身の毛穴が一気に開くような感覚を覚えながら、恐る恐る脱衣所の掛け時計に目を向けた。軟膏処置のことで精一杯だったせいか、時刻はいつの間にか十四時十五分を表示している。医師が指示した時間に実施しなければならない点滴の存在を、完全に忘れていた。
「この処置が終わったら、すぐに……」
 力なく呟くと、対面から大袈裟な溜息が聞こえた。
「あのさ、確か昨日もタイムスケジュールを意識してって伝えたよね?」
「はい……」
「はい、じゃなくてさ。処置が終わる頃には、もっと時間が過ぎてるでしょ。それで十四時の点滴は、どうすんの?」
「できるだけ急いで、処置を終わらせてから……」
「焦ってやって、創部の観察とかはちゃんと出来るわけ?」
 派手なメイクで彩られた顔が、一気に歪んだ。眉間に皺が寄る度にブラウンに色付いている眉毛の形は崩れ、アイライナーで強調してある目尻は吊り上がっていく。小島先輩は昼休憩の時に、週末には消防士との合コンが控えていると他の同僚に漏らしていた。きっとその席では、こんな表情を浮かべないんだろう。
「ねぇ凪川、ちゃんと聞いてる?」
 敬称が消えて更に尖った声が耳に届き、雑念を振り払いながら二度頷いた。小島先輩からは午前中も、採血の手順について注意を受けていた。昨日は看護経過記録の書き方について細かく指導を受け、一昨日は処置に関する清潔・不潔の観点について言及されている。あくまで指導の一環ということは伝わるが、毎日叱られることが続くと萎縮してしまう。最近では彼女が日勤メンバーにいるだけで、脇の下に汗が滲み始める。
「もう、いい。十四時の抗生剤は、あたしが繫げとく」
「……すみません」
「マジで、ちゃんとして。このままだと、いつか患者を殺すことになるよ」
 小島先輩は冷たい声を残し、大浴場から出ていった。一人になった脱衣所で、今告げられた言葉が耳の中で残響した。誰かを助けるために看護師になったはずなのに、このままだと患者を殺すことになる。二度深呼吸をしてから、潤み始めた目元を手の甲で拭った。まだ一ヶ月半とはいえ、実際に臨床に立っているからわかる。言い方はキツイが、今言われた内容は決して的外れではない。ある種の点滴や薬を間違って投与したり、処置一つとっても適当に終わらせれば、患者の命を脅かす事態になりかねない。責任という二文字が重さを増して、床に手をつきそうになるのを必死に耐えた。正直これから何年経ったって、小島先輩のように機敏に働ける自信なんてない。
「おーい。いつまで、一人にさせんだー」
 洗い場に反響する声を合図に、急いで涙を拭いた。とにかく今は、余計なことは考えずにやるべき処置を終わらせないと。奥歯を強く嚙み締め、目の前の担当患者の元へ急いだ。
「すみません。お待たせしました」
 引き攣った笑みを浮かべながら頭を下げると、視界の隅に何かが過った。軟膏の蓋が、大浴場の床に落ちている。さっきは慌てていたし、ちゃんと蓋を閉めることができなかったんだろう。
 辻村さんに背を向け、蓋を拾い上げるために腰を落とした。再び立ち上がろうとした瞬間、お尻から「パチン」という乾いた音が鳴った。突然のことで動揺する暇もなく、痛みすら感じなかった。振り返ると、辻村さんが口元を緩めていた。
「さっきは絞られてたな。頑張れよ、新人さん」
 無言で軽く頭を下げ、滅菌済みの八ツ折りガーゼが入っている包装を破る。淡々と処置を進めていく間も、ゴツゴツとした手で触れられた箇所に嫌な熱が広がり続けた。気付くとそれは激しい不快感に変わり、お尻よりも胸の奥に痛みを走らせていった。
 退勤のタイムカードを押したのは、二十一時二十三分だった。入職して一ヶ月の間、新人は定時に上がるよう促されていたが、ここ半月はそんな声も掛からなくなった。一昨日は十九時五十五分、昨日は二十時五十二分に退勤の打刻をしている。任される業務が増えていくにつれ、帰宅する時刻は遅くなっていた。
 近くの窓を眺めながら、溜息をこぼす。窓ガラスに反射する顔は、想像以上にひどかった。カサついた唇は半開きで、眼差しは麻酔から覚めた直後の患者のようにうつろだ。後ろでお団子に結んでいた髪の毛は乱れ、前髪は皮脂や汗で額に張り付いていた。廊下に伸びる疲れ切った自分の影は、長くて濃い黒を呈している。
 千歳烏山駅から各駅停車に乗車し、自宅がある明大前の一つ手前の駅で降車した。下高井戸には大型スーパーがあり、自宅までは徒歩十分もしないで到着する距離だ。駅前には生鮮食品や惣菜が並ぶ商店街があり、今乗って来た京王線以外にも二両編成の路面電車が走っている。駅前から外れた路地に入れば定食屋のくすんだ暖簾が風に揺れ、年季が入った外観の喫茶店も目に留まる。そんなどこかレトロな街並みは、気持ちを落ち着かせた。最近は最寄り駅より、こちらの方へ足を運ぶことが多くなっている。街全体に漂う庶民的な雰囲気は、実家がある街を想起させるからだろうか。
 改札を抜け、北口に続く階段を下った。外に出ると〈下高井戸駅前市場〉と書かれた看板が目に映る。既に周囲の個人商店には、シャッターが降りていた。日中の活気が消えた通りは、静かというよりは寂し気だ。
 気怠い両足に鞭を打って歩き出そうとすると、着ているパーカのポケットから振動を感じた。スマホを取り出して光る画面に目を落とす。同期の名前が表示されているのを確認し、自然と口角が上がった。
「もしもし」
「お疲れ。はるちゃん、今電話大丈夫?」
 電波に乗って、詩織さんの明るい声が耳に届いた。この一ヶ月半の間に、彼女とは大分打ち解けることができた。6B病棟の新人看護師は二人だけだし、色々と助け合う機会が多いから、日に日に距離が縮まっていくのを確かに感じる。あっちはいつの間にか「はるちゃん」と呼んでくれるようになり、こちらも「武智さん」から「詩織さん」と下の名前で呼ぶようになった。今でも敬語は使っているが、口調にも話す内容にも特別な親しみを込めていた。
「大丈夫ですよ。今は日勤終わりで、家に帰ってる途中なんで」
「マジ? 今日、こんなに遅かったの?」
「はい……オペ出しが二件と、入院もあって。それに看護計画の評価や、処置に関する記録を書くのに手こずっちゃって」
「うわぁ、大変だったね。お疲れ。また気晴らしに、ご飯でも行こう。ってか、踏切の音が聞こえるけど。はるちゃん、まだ千歳烏山?」
「いえ、下高井戸です。スーパーに寄ってから帰ろうと思って」
「えっ? どの辺?」
「北口の前にいますけど」
「マジ? ちょっと、そこで待ってて」
 唐突に電話が切れた。まだ詩織さんの家に遊びに行ったことはないが、彼女は桜上水に住んでいると話していた。電話の話し振りからすると、偶然にも近くにいたのかもしれない。
 踏切を挟んだ向こうの通りで詩織さんらしき姿を捉えたのは、電話を切って二分も経たない時だった。予想は当たったようだ。こちらに駆けてくる彼女は、上下ブルーのジャージを着ている。思わず手を振ろうとしたが、途中で腕を下ろした。点々と並ぶ街灯や飲食店から漏れる明かりに照らされ、詩織さんの足元で何かが動いている。目を凝らすと、それは彼女と並走しているようだった。
「……犬?」
 詩織さんとの距離が縮まる度に、夜に紛れる動物の姿が鮮明になっていく。よく見ると、彼女の右手にはリードが握られていた。踏切を越えて徐々に一人と一頭が近づいてくる。犬の身体は大きく、走る姿は遠目からでも迫力があった。
「ごめん、お待たせ」
 詩織さんはリードを握ったまま胸の前で手を合わせ、浅い呼吸を繰り返した。犬は口元から舌を出して、地面の匂いを嗅ぎ回っている。
「ワンちゃんを飼ってるなんて、知りませんでした。何て、名前なんですか?」
「あれっ? 言ってなかったっけ? ジョンって名前。ちょうど、この辺を散歩してて」
 同期の足元をウロウロしている動物を、目で追った。顔付きを見ても、犬種はわからなかった。全身の被毛は所々黒と茶がまだらに交じり合い、シェパードに似た色合いをしていた。毛足はそれほど長くはないが、柴犬ほど短くもない。鼻先と口元は黒く、ゴールデン・レトリバーのように両耳は垂れていた。多分、雑種かもしれない。ジョンは到着してからずっと、メトロノームのように茶色い尻尾を左右に振り続けている。可愛らしい犬に微笑んでから、飼い主の方へ顔を向けた。
「それで、さっきの電話って?」
「あっ、そうそう。明日の日勤で、ESWLの患者を受け持つんだけどさ。初めてだから、ちょっと訊きたいことがあって」
 ESWLの和名は〝体外衝撃波結石破砕術〟だ。尿路結石症に対する治療法の一つで、特殊な装置から発生する衝撃波を体内に照射し、身体の外から結石を粉々に破砕する。多くの外科的手術とは違って身体への侵襲は少なく、入院期間もあらかじめ二泊三日の短期スケジュールで組まれていた。
「ESWLの治療ってさ、一時間ぐらいだっけ?」
「そうですね。病棟に戻ってからは、採血や抗生剤の点滴を落としました」
 スッピンらしき詩織さんと目を合わせながら、帰棟後の業務を淀みなく伝えた。蓄尿が必要なことや、照射部位に皮下出血が認められること、血尿が出る人が多いことを教えている間、同期はずっと真剣な表情で頷いていた。
「業務の流れは、そんな感じです」
「ありがとう、マジで助かったよ。ちなみに、明日は休み?」
「はい。休みです」
「良かったじゃん。今夜は爆睡だね」
 詩織さんの口元には、膿んだニキビが点在している。ここ数週間で目立つようになった肌荒れは、疲労が溜まっている証拠だ。
「仕事終わりに引き留めちゃって、ごめんね」
「いえ、大丈夫です」
 早くも別れの気配が漂う。もっと他愛のないことを話していたかったが、明日が勤務の同期を無駄に引き留めるわけにはいかない。
「明日、頑張ってくださいね」
 詩織さんの返事より先に、短く鼻を鳴らす音が聞こえた。足元に目を向けると、街の光を反射して煌めく瞳と視線が重なる。茶色の身体には健康的な艶があり、毛並みは良い。一目で、飼い主が沢山の愛情を注いでいることが伝わった。
「ジョンも、またね」
 最後にジョンの頭を撫でようとして、手が止まった。良かれと思って、勝手に触れて良いのだろうか。この犬は、嫌かもしれない。
『頑張れよ、新人さん』
 大浴場に反響していた声を思い出し、お尻に嫌な熱が蘇った。ジョンに触れようとした指先が、小刻みに震え始める。もう季節は梅雨に向かっているというのに、夜風はひどく冷たい。
「どうかした?」
 詩織さんに問われ、思わず手を引っ込めた。こめかみには痛みが走り、つむじあたりは痺れている。悔しさや情けなさが胸の中で混ざり合い、わずかな吐き気を呼び起こした。今夜、一人でこの不快感を抱え続けるのは無理かもしれない。今はもう少し誰かの側にいて、気を紛らわせていたい。
「あのっ……暇だし、散歩についていって良いですか?」
 ジョンから目を離し、今度は飼い主に視線を移す。街灯に照らされた唇から「別に、良いけど」と、軽い返事が届いた。  
 自宅とは逆方向の夜道を歩きながら、今日の出来事を話した。小島先輩からの叱責や辻村さんからのセクハラに関する内容の時は、ほとんど愚痴めいてしまった。しかし喉を震わせる度に、先ほど感じた吐き気は不思議と治まっていく。詩織さんは時折相槌を挟むだけで、ずっと真剣な表情を浮かべ続けていた。
 話すことに夢中で、いつの間にか周囲には見慣れない住宅地が広がっていた。
「あのエロオヤジ、マジで最低。明日、師長に報告するよ」
 青紫が滲む左目は鋭さを増し、夜の暗闇に塗り潰されたように光を失っている。怒りを隠そうとしない同期に向けて、遥は慌てて首を横に振った。
「大丈夫です。次の勤務の時に、自分で報告します。それより、ごめんなさい。こんな時間に、色々聞いて貰って」
「気にしないで。最初は、こっちから電話したわけだし。それにいつも仕事のことで愚痴ってるのは、あたしの方だもん」
 詩織さんがジョンの頭を撫でると、目元の鋭さが和らいだ。小島先輩も犬を抱きながら勤務していたら、新人に対する態度が穏やかになるかもしれないのに、とありえないことを思ってしまう。
「話に夢中になってたら、着いちゃった」
 詩織さんが足を止めた先には、二階建ての一軒家が夜に紛れていた。敷地の周囲は灰色のブロック塀で囲まれ、庭からは橙色の実を宿した木が夜空に向かって伸びている。多分、枇杷の木だろう。一人暮らしだと思い込んでいたが、見当違いだった。
「詩織さんって、実家住まいだったんですね?」
「違うよ。ここは、おばさん家。実は看護学生の頃から、間借りさせて貰ってるんだよね」
 敷地内にある小さな駐車場にはハイエースが停まり、その横に自転車が二台置かれている。一階には雨曝しの縁側があり、束ねた古新聞や段ボールが無造作に放置されていた。二階は一つのベランダと、二つの出窓が並ぶ造りをしている。確かに犬を飼うとなれば、遥が住むアパートのような六畳間では窮屈だ。
「今は閉鎖してるんだけど、おばさんはずっと自立援助ホームの施設長をしてたの」
「自立援助ホーム?」
「そっ。以前はこの家で、子どもたちが自立を目指して暮らしてたんだ。でも今は、あたしと元施設長の二人暮らし」
 上手く理解が追いつかず、戸惑いながら一軒家を眺めた。夜で暗くても、年季が入っていることが伝わる。去年発生した東日本大震災の影響だろうか。煤けている白い外壁の一部には、長い亀裂が走っていた。屋根を覆っている瓦も、所々剝がれている。
「施設っていうか……普通の民家みたいですね」
「でしょ。中も、家庭的過ぎるぐらいだから。今度、遊びに来てよ」
 詩織さんが胸ほどの高さの門扉を押すと、軋んだ音があたりに響いた。
「それじゃ。ジョンが眠そうだから、もう行くね」
「あっ、はい」
 門扉の先の短い通路はヒビ割れたコンクリートで舗装され、玄関の引き戸に続いていた。人感センサーで灯った光が敷地内を明るく照らし、玄関横の木製プレートが目に入る。
「そうそう。明日のフォローが、小島先輩じゃないことを祈っといて」
 冗談を言って離れていく詩織さんが大きく手を振り、ジョンも別れを告げるようにこちらを振り返った。遥も手を振り返しながら、一人と一頭の後ろ姿を見送った。
「自立援助ホーム……星河ハウス」
 夜風が、呟いた声をさらっていく。プレートに書かれている文字は手書き風で色も薄くなっていたが、容易に読み取れた。

(♯1 終わり)

続きはこちら

前川 ほまれ(まえかわ・ほまれ)
1986年生まれ、宮城県出身。看護師として働くかたわら、小説を書き始め、2017年『跡を消す 特殊清掃専門会社デッドモーニング』で、第7回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。2019年刊行『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』は第22回大藪春彦賞の候補となる。2023年刊行『藍色時刻の君たちは』で第14回山田風太郎賞を受賞。その他の著書に『セゾン・サンカンシオン』がある。

8月23日発売!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?