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私の好きな映画館。

「子どもの頃に好きだった童話で、いろんなことがわかる」という話を聞き、そういえば私は何が好きだったかな…と思い返してみたら、「赤い靴」と「ゆうれいあめや(子育て幽霊)」と「オルフェウスの竪琴」を繰り返し読んでいたことに気づき、美しくはあるけれどなかなか悲痛なラインナップ…と遠い目になりました。映画部の宮嶋です。

なぜこんな話を持ち出したかといいますと。GW期間中、渋谷の映画館シアター・イメージフォーラムに行きまして、スクリーンが地下1階なので階段を下りていったわけですが、「映画を観るのに、こうやって地下にもぐっていく感じ、好きだわあ!」と改めて思ったからなのです。

映画館で映画を観る、って非日常の体験じゃないですか。暗がりに下りていくことで“異世界感”を演出してくれる映画館って、個人的には、求めている非日常感覚と何ともいい具合にフィットするのです。地下にもぐって異世界を体験して、ちょっと違う自分になって地上に戻ってくる感じ。「オルフェウスの竪琴」で、オルフェウスが現世から冥界におりて、また上がってきて、でも上がってきた現世は前とはまったく変わってしまう、あの感じが好きだったのと似てるのかなぁと思ったりした次第です。

そういう意図なのか音響の問題なのかわかりませんが、地下にスクリーンがある映画館って結構多いですよね。私はあまり遠くの映画館まで遠出していくタイプではないのですが、それでも思いつくだけでもかなりあります。しかも並べてみると個人的に好きな映画館ばかり。

というわけで、今週のテーマは「映画館」です。

たとえば、“作り”が好きな映画館。

お気に入りの映画館、いくつかの軸がありますが、前述の地下に潜っていく感じ。原点はかつて通った渋谷のシネマライズ(2016年に閉館)の地下スクリーンなのですが、今でいうと例えば…


シアター・イメージフォーラム」(渋谷)

つい先日伺った、挑戦的な映画をみられるミニシアター。私の印象だとひとりで来ている硬派そうなかたが多くて、皆さん静かに、でもふつふつと期待をみなぎらせながら1階の受付にずらっと並んでいるのも、映画熱を感じられる光景で好きです。もちろんラインナップもキレッキレ。最近U-NEXTで独占配信がスタートした『MONOS モノス猿と呼ばれし者たち』も、同じく独占配信でコアな映画ファンのユーザーさんたちにとても喜んでいただいたケリー・ライカート監督の初期作品も、こちらで上映されていた作品です。

「テアトル新宿」(新宿)

こだわりの日本映画を観られるこちらも、入り口の階段をおりるのが楽しみな映画館です。入口にある縦に長い看板も独特で楽しみ。幅のある階段を下りて、下りきったところに受付があるのも気持ちが良いです。そして、監督のティーチ・イン付きの上映が多いのも嬉しい!ここから生まれるヒット作も多いので、U-NEXTではこんな特集を作っています。
それに、卑近な話ですが、TCG会員特典がめちゃくちゃお得なのもおサイフに優しいです…(ヒューマントラストシネマ、シネマート新宿、シネスイッチ銀座などで使えて、めちゃくちゃお世話になっておりますありがとうございます)。

TOHOシネマズシャンテ(有楽町・日比谷)

3スクリーンのうち1スクリーンが地下にある、ミニシアター文化の先駆者的に位置づけだった映画館は、いまもインディペンデント系がしっかりかかっています。私、じつは個人的にこちらの映画館にとても恩がありまして。『127時間』を観に行った時のこと。ネタバレになるので詳細は控えますが、少々ショッキングなシーンがあり、恥ずかしながら私、貧血を起こしてしまったのです…。上映が終わった後、這うようにロビーに出たものの、そのまま倒れこんでしまい、スタッフさんに介抱していただいたのでした。あの時はお世話になりました。お隣のTOHOシネマズ日比谷も、スクリーン12・13は地下に潜る動線で好きだし、スクリーン1-11は逆にエスカレーターで上がっていくんですが、このエスカレーターの視界(天井だけが見える不思議な視界)も何となく異世界に没入する感じがあってお気に入りです。

ほかにも、私が行く範囲ですと、大人の街のおしゃれ映画館「シネスイッチ銀座」も1スクリーンは地下にありますし、自主映画や新進監督の特集上映を多く行い『カメラを止めるな』をヒットに導いた「シネマ・ロサ」(池袋)もそう。「新宿シネマカリテ」も、新宿駅から徒歩数分の喧騒からまったく違う世界に降りていく感じがお気に入り。そうそう、二番館からは、U-NEXTのオフィスとご近所の「目黒シネマ」(目黒)も大好きです。目シネさんは、2本立ての組み合わせの妙にも、作品ごとにスタッフさんの手作りのデコレーションにも、映画愛があふれています。

加えて、信頼のラインナップ!

もちろん、私が好きな映画館には、作りや構造の要素だけではなくて、ラインナップ自体に絶大な信頼を置いている映画館もたくさんあります。出先であいた時間にふらっと映画を観たりもするので、「とりあえずここに行けば…!」という信頼のラインナップは超重要なのです。

でも、そういえば上記の“作りの好きな映画館”はそういう「信頼の映画館」の中に入ってるかも!

もちろんこれ以外にもラインナップに信頼している映画館はたくさんあるのですが。たとえばヒューマントラスト有楽町とか、ホワイト・シネクイントとかはビルの中の映画館ですがラインナップが大好きです。ミニシアター文化ど真ん中のユーロスペースはいつもチェックしているし、最近はちょっと大人のル・シネマもよく行きます。そうそう、新宿武蔵野館も外せないですよね!

※いずれにしても、東京の、しかも「私の交通の便が良い」とか「土地勘のあるエリア」というかなり狭い範囲の中なので、他にも素敵な映画館はたくさんあることは申し添えておきます!行ってみたいなぁと思いながら、エリア的に心理的距離があって行けてない劇場さんも多いのです。

劇場ごとの個性ってありますよね。

去年までは映画館ではヒューマンドラマばかり観ていた私も、最近はジャンル映画もスクリーンで観るようになりまして、やっと感覚として「作品によってそれに応じた設備の映画館(スクリーン)を選ぶとよい」ということに実感を持てるようになって、シネコンの最新設備のスペックの魅力にも気づいてきました。いやはや、気づくのが遅くてお恥ずかしい。映写機や音響によって、没入感って違うものですね~。

一方で、それとは違う切り口で、「シモキタエキマエシネマK2」のような独自のコンセプトの映画館が生まれているのも気になっています。(まだ行けていないのです…!)

また、生活に根差した場(ショッピングセンターなど)にある映画館の気軽さ、というのも見逃せませんよね。ファミリー層には強い味方、若年層が映画文化と出会う場としても、大切な気がします。思い返せば私も田舎の学生時代にこっそり通っていたのはモールにある映画館でした。

それに、別の軸ですと、バリアフリーやユニバーサル対応などを整えている劇場さんも多いです。ユニークな映画祭やイベント上映を仕掛けているところもありますね。

「映画をかける」という一点で、それ以外はいろいろな背景や個性、こだわりがある映画館という世界は、掘ってみるととても面白いです。

映画と出会おう。映画館にいこう。

私たちは配信プラットフォームなので、明確に繰り出せる個性、最もコアになる部分は「皆さんの観たい映画を揃えます!」です。できるだけ色々な時代の色々な映画を揃えて、作品との出会いの場を提供できるプラットフォームでありたい、と思っています。

映画館のような異世界感や、体験としての映画鑑賞ではないかもしれないけれど、生活のなかにスルっと入り込むことができる配信というメディアは、作品との出会いを(理論的には)際限なく提供できるもの。(もちろん権利処理などで難しいものもあるのですが、あきらめずに頑張っております)

配信で出会った作品から興味を広げて、映画館に行ってみてくれたら嬉しいなぁ。映画館で観た作品から、監督や作風でディグって楽しむのに配信をうまく使ってくれたら嬉しいなぁ。

そんな思いでU-NEXTはポイントを映画館で使える施策を頑張っていたり、作品から芋づる式に興味が広げて頂けるような動線づくり(各作品の詳細ページに、シリーズ作品やおすすめ作品が表示されています)をしたり、アップデートを続けています。活用して頂けたら嬉しいです。

さてさて、次の休日は、どこで映画を観ましょうかね。おススメの映画館、ぜひ教えてください!







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