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【前世の記憶】古代文明を生きた娘

アメリカ・コロラド州。ジリアンとクリスにはアナという娘がいる。

アナは赤ちゃんの頃から静かだったものの、好奇心が強く、自然に触れて深く感動する力を持っていた。また、早くから知的な兆候も見られ、生後16ヶ月でとても明確な文章で話していた。

アナが3歳の頃、飼っていたウサギが亡くなり、彼女は深く悲しむ。どんな子でも悲しむはずだ、と両親は思っていた。

しかしアナは泣いた後に、繰り返し言うようになる。

「体を離れるわ。私は大丈夫。大丈夫。あなたも大丈夫。」

まるでウサギの死のプロセスを行なっているかのように。彼女が傷つき、困惑しているのが伺えた。3歳児にしては世慣れた人生の見方だと思った両親だったが、さらに驚くことが起きる。

家族で外を歩いていた時、ある曲が流れていた。”Arms of an Angel” というサラ・マクラクランの曲だ。するとアナが言う。

「この曲を聞くたびにグランマ・マーティを思い出すの。」

アナの祖母が亡くなった時、彼女は2歳だった。祖母マーティが化学療法をしていた時に、癒しのためにArms of an Angelを聴いていたことをアナは知る由がない。

両親は唖然とする。アナ家族は最近までミズーリ州に住んでいて、クリスの母親である祖母マーティはコロラド州に住んでいた。物理的に離れているマーティがアナ家族を訪れることは、治療のため稀だった。

同じくアナが3歳の時のこと。家族はレストランを出て、アナが先を歩いていた。すると天に向かい、目に見えない誰かと会話をしている。その様や視線、体の位置から本当に誰かと会話をしているようだった。

誰と話しているのかと聞くとアナは、「グランマ・マーティ」と答える。祖母マーティが亡くなってから数ヶ月後のことだった。ケンは泣き崩れそうになる。

ジリアンは言った。

「母親なら、我が子が想像で話をしているのか、そうでないのかは分かります。」

自分達が理解していない何かが起こっていることは明らかだった。

6〜7歳の頃、アナは祖母やウサギ、亡くなった人たち宛へのメッセージをノートに書くようになる。寝る前に書いたノートを窓辺に置くと、あちらの世界からの返信が来るのだと言う。

その会話はシンプルで、アナが「元気にしていることを願います」「会いたいです」と書くのに対し、「私は元気です」「すべて順調です、何も心配ありません」というものだった。

クリスは、娘は想像力がとても強い子なのだと捉えていた。

アナが9歳頃のことである。古代のビジョンと、そこでの人生について彼女が話し出したのは。その話ぶりはまるで、その時代にその場所を歩いているかのようだった。

彼女は洞窟について描写した。砂漠のような環境、質素な家や行事、移行の時期、洞窟の中で一緒に生活する地域の人たち。それは古代文明を思わせるものだった。

アナはそこに住む誰かの観点から、非常によく描写していた。決してそこに住む人を想像したり、本を書く人からの観点ではなく、そこで生きる人間が日課をこなしていることを感じさせるものだった

クリスは言う。

「娘の中で説明できない何かが起こっていました。とてもリアルに感じられる何かです。」

アナが話せば話すほど、そこで見たことを単に報告しているのだと気付く。それは広範囲にわたる経験の数々、そしてそれに基づく感情だった。

幼い少女が古代文明についての情報をどうしてこれだけ知っているのか。そもそも子供が学校で話すような話題ではない。このような経験を持つ子供は、少し孤独を感じることもあるだろう。

両親は困惑する。しかし友人や家族にこのことは話さなかった。アナ自身も、これらの経験を他の人たちの前で語るのは気が進まないようだった。

ある日アナはトラウマとなる出来事を話す。村で起こった地震だった。アナ曰く、地震により地面が割れ、砂が落ちていったと言う。屋根が崩壊しはじめ、住民の多くが逃げた。

アナはまるでそれを今再度目撃しているかのように明確に描写した。両親はあっけにとられる。

彼女は記憶に関するいくつもの絵を描いていた。描いた絵の一つは、彼女が住んでいた島である。かつてそこにいた時に見た光景を地図にしているようだった。

アナの記憶はさらに蘇っていく。ある朝目覚めるとアナは、

「言語を全部思い出した。どうやって思い出したのか、どうなっているのか分からないけど、紙とペンが必要。」

そう言うと彼女は、記号のようなものを描き、その横に英語の意味を書きはじめる。古代の文字のようだった。これらのことに両親は非常に驚く。

両親がアナから聞いたことにマッチする情報を探し始めた時、さらに驚くことになる。

PCのスクリーンに映ったものは、考古学者によって2000年に発見されたヘラクレイオンという古代文明で、紀元前12世紀まで遡る。

ヘラクレイオンは、古代エジプト最大の港湾都市だったという伝説が残されていたものの、史実としての証拠が確認できず、長い間謎に包まれていた。

ヘラクレイオンは、アレクサンダー大王が紀元前331年にアレクサンドリアを建設する以前、何世紀にもわたってエジプトで最大の地中海の港湾都市だった。複数の大地震を受け、粘土質の地層が液状化したことで地盤が緩み水没したとされている。

アナが描写する、連続した地震は、ヘラクレイオンと非常に似ていた。

ヘラクレイオンは水路に囲まれた一種の島のようなもので、妙な形をしている。それを見た時、ジリアンはアナに、

「これってあなたが描いた絵そのものじゃない!」

と言ったほど。

そこでジリアンはアナが前世を思い出しているのかもしれないと考えるようになる。

「アナの言葉というよりも、その話す様がリアルで、前世が存在することへの確信となりました。」

クリスも言う。

「これはメディアや想像力からくるものではない。記憶だと感じました。」

アナは11歳になっていた。彼女は言う。

「小さい頃、古代の町で生活してた記憶があったの。日常生活の鮮やかな記憶だった。地震が来た時のことも覚えてる。ヘラクレイオンは自分の前世に繋がりがあると思うの。最近になって発見されたことが古代に繋がるなんてすごいと思うわ。両親は前世のことを信じてると思う。このことを友達に話そうとは思わないわ。言ったって理解してもらえないと思うから。」

自分と同じような経験を持つ子供達が存在することはアナも知っていて、深い絆を感じていた。

家族はネバダ州で同じような経験を持つ子どもとその家族の集まりに行くことにする。グループの名前は、「Earth Angeles」。

アナは前世の記憶を持つ他の子供たちに会うことを楽しみにしていた。前世の記憶を持つ人にこれまで一度も会ったことがない。

会場となる家に着くと、たくさんの子どもたちがアナを笑顔で迎えてくれた。両親もとても歓迎されて、すでに深い絆があるように感じた。このコミュニティは皆一つにまとまっていると。自分達家族だけで悩む必要もない。両親にとってはサポートグループのようだった。

他の家族にとっても同じで、子供が他の同じ経験を持つ子達と会って話したいと言ったことからグループは発足したのだと言う。

こんな経験をしているのは自分だけじゃない、と家族はそれぞれの経験を共有する。他の家族の話を聞くこと、他の子供の経験を聞くことで、家族はワクワクしていた。

子供たちの中には、他の友達に話すのは気がひけると言う子もいた。

子供たちはペイントをしたり外でトランポリンをしたりして楽しんだ。アナはその後もグループの子供たちとコンタクトをとっている。コミュニティの中の一人だと感じることができる。

「いい人たちがたくさんいた。アートもできたし、とっても楽しかった。」

この経験はアナにとっても両親にとっても人生を変える出来事だったと家族は信じている。


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